臨床血液
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36 巻, 2 号
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臨床研究
  • 江頭 元樹, 金子 多香子, 押味 和夫, 溝口 秀昭, 石田 尚志
    1995 年 36 巻 2 号 p. 69-75
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    正常のNK (natural killer)細胞の大部分はCD16+ CD56+であり,CD16+ CD56-のサブセットはごくまれにしか存在しないといわれている。われわれはCD16+ CD56-のNK細胞が増えた顆粒リンパ球増多症(NK-GLPD)を2例経験したため,臨床像,細胞の性状などを,CD16+ CD56+の通常のNK細胞が増えているNK-GLPDの2症例と比較検討した。CD16+ CD56-の症例とCD16+ CD56+の症例では,細胞形態に若干の違いはあるものの,臨床像に著変なく,慢性に経過した。CD16+ CD56-の細胞でも強いNK活性を認めたことから,NK活性の発現には接着分子のCD56は関与していないことが示された。CD56抗原は未熟なNK細胞に強く発現しているといわれているが,CD16+ CD56-のNK-GLPD細胞をインターロイキン2で活性化すると,短期間でCD56の発現が誘導されたため,CD56の発現の強さは分化だけではなく活性化とも関係していることが示された。
  • —九州・山口小児がん研究グループでの現状—
    古賀 広幸, 宮崎 澄雄, 石原 高信, 井上 敏郎, 武 弘道, 石井 栄一, 松崎 彰信, 植田 浩司, 柳井 文男, 丹生 恵子, 三 ...
    1995 年 36 巻 2 号 p. 76-83
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    九州山口小児がん研究グループでは1984年10月より,ALLに対して6種類のプロトコールを作成,治療を行ってきた。この6種類のプロトコールでの髄外再発予防法と髄外再発例について検討した。対象は1984年10月より1993年7月までに登録されたALL 302例。中枢神経系白血病(CNS-L)は10例(3.3%)に認めた。再発後4例が生存しており,うち1例はCNS-Lを繰り返している。8例に睾丸再発を認めた。8例中3例のみが生存している。治療中止7カ月後に卵巣再発した例が1例あり,第2寛解を持続して生存している。90年9月までは標準危険群には18 Gy, 高危険群には24 Gyの頭部放射線照射を行ってきた。90年10月以降は低危険群は非照射とし,中間危険群は15 Gy, 高危険群は18 Gyに照射線量を減少させた。この放射線照射量を減少させたプロトコールではCNS-Lの増加を認めていない。
  • 新津 望, 梅田 正法
    1995 年 36 巻 2 号 p. 84-90
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    COP-BLAM療法にG-CSFを併用し,治療成績および副作用などについて検討した。対象は未治療NHL 104例で,II期22例,III期52例,IV期30例,びまん性大細胞型75例,びまん性中細胞型18例,びまん性混合型11例である。治療方法はLaurenceらの方法に準じてCOP-BLAM療法を3週間ごとに行い,顆粒球数1,000/μl以下にてG-CSFを開始し,白血球数10,000/μlにて中止した。全症例104例中98例(94.2%)に完全寛解を得,観察期間中央値26カ月で4年生存率は82.4%であった。LDH低値例,B細胞例,II期,CRP低値例で有意に生存期間の延長を認めた。G-CSF使用日数中央値は5日で,感染症を合併した症例は12例であった。G-CSFの副作用は骨痛,発熱など従来より言われているものに加え,間質性肺炎を2例認めた。G-CSFを併用したCOP-BLAM療法は高い寛解率を得,感染症の頻度を減少させた。また,ほぼ全例が21日周期で治療を行うことができ,dose intensityを高めた治療に有効であると考えられた。
  • 藤沢 信, 丸田 壱郎, 小川 浩司, 酒井 リカ, 田口 淳, 富田 直人, 児玉 文雄, 佐々木 津, 府川 仁哉, 村田 興, 橋本 ...
    1995 年 36 巻 2 号 p. 91-97
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    高齢者急性非リンパ性白血病(ANLL)患者49名の病態,治療成績についてretrospectiveに検討した。症例は男性34名,女性15名であり年齢は65∼69歳(15例),70∼74歳(18例),75∼79歳(12例),80歳以上(4例)に分け中央値は73歳であった。治療法はAra-C少量療法(LDAC)かBHAC-DMP療法を主治医の判断により選択した。完全寛解率は65歳以上全体で43%, 65∼69歳43%, 70∼74歳44%, 75∼79歳42%, 80歳以上33%であった。生存期間の中央値では65歳以上全体で263日,65∼69歳298日,70∼74歳260日,75∼79歳168.5日,80歳以上38.5日であった。多変量解析により寛解導入に関わる因子として染色体異常を認めないこと,GOT≤30 mu/mlかつGPT≤40 mu/mlに有意差を認め,また生存期間に関する予後因子としては完全寛解導入のみに有意差を認めた。治療開始前の肝機能の良否が治療成績に反映する重要な因子の一つと考えられた。
  • 有村 光生, 栗山 一孝, 宮崎 泰司, 長井 一浩, 福島 卓也, 吉田 真一郎, 森内 幸美, 樅田 三郎, 朝長 万左男
    1995 年 36 巻 2 号 p. 98-105
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    AML/TMDSは初発AMLの10∼15%を占め,化学療法に対する反応性が悪いことが知られている。われわれは,48例の初発AML中12例(25%)にTMDSを認めた。TMDS群は有意に血小板が多く(P<0.05), 骨髄中の芽球比率が低かった(P<0.05)。性,年齢,白血球数および赤血球数の中央値はTMDS群,non-TMDS群間で有意差を認めなかった。免疫学的マーカーやMPOの陽性率は,一定の傾向は認めなかった。完全寛解(CR)率は66.7%でnon-TMDS群(83.3%)と比較して低かった。CR中の骨髄標本で7/8例に明らかなdysplastic changeを認めた。50% CR期間と50%生存期間もそれぞれ169日,511日と有意に短かった。しかし,再発早期に同種骨髄移植を行った2例はそれぞれ4年以上および2年8カ月間無病生存中である。したがって,予後不良なAML/TMDSを克服するためには出来る限り早期の同種骨髄移植の実施が望まれる。
  • 武島 稔, 中村 忍, 望月 康弘, 服部 憲尚, 彼谷 裕康, 大竹 茂樹, 岡部 洋子, 奥村 廣和, 吉田 喬, 又野 禎也, 神野 ...
    1995 年 36 巻 2 号 p. 106-114
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    再発性および治療抵抗性の非Hodgkinリンパ腫30例に対して救済化学療法(salvage chemotherapy)としてmitoxantrone 15 mg/m2, methotrexate 400 mg/m2, ifosfamide 2 g/m2を第1日に点滴静注,prednisolone 20 mg/m2を第1日から第5日まで経口投与するMMIP療法を施行した。全例の完全寛解率(CR率)は20%, 生存期間中央値は153日であった。Performance status不良例を除くと,CR率は30%, 生存期間中央値は407日となり,これは既存のsalvage regimenの成績に匹敵した。CR例の無病生存率は4年で62%で,salvage chemotherapyとしては優れた結果であった。Etoposide非使用例では62.5%にCRが得られ,有意に既使用例を上回った。MMIP療法は有用なsalvage regimenと思われる。ただしetoposide既使用例は本法ではsalvageが困難であり,今後の検討課題である。
症例
  • 三橋 彰一, 長澤 俊郎, 鴨下 昌晴, 大谷 浩司, 長谷川 雄一, 小島 寛, 二宮 治彦, 中澤 正樹, 阿部 帥
    1995 年 36 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    67歳女性。1945年広島で被爆。1991年被爆者検診にてはじめて貧血,白血球減少を指摘され,1992年汎血球減少指摘され,6月筑波大学付属病院入院。身体所見には異常なし。血算RBC 312×104l, Hb 10.5 g/dl, Ht 31.7%, Plt 8.0×104l, WBC 2,600/μl。末梢血には芽球を認めず。骨髄は低形成で芽球32.8%。芽球は光顕MPO(-), SBB(-), 表面マーカー分析CD2+, CD3±, CD10-, CD19-, CD20-, CD13+, CD33+, CD34+。two-color分析にてCD2+/CD33+が認められた。TCR, Ig遺伝子再構成を認めず,骨髄染色体分析では正常核型を示した。低形成性微分化型急性骨髄性白血病と診断した。約6カ月の経過で血球減少の進行,骨髄中芽球の増加が認められ,BAM療法に反応したが,肺炎にて死亡した。
  • 森 啓, 高橋 直樹, 多田 淳一, 前田 剛, 樋口 敬和, 清水 透, 原田 浩史, 三好 保由, 岡田 定, 新倉 春男, 小峰 光博 ...
    1995 年 36 巻 2 号 p. 121-127
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は57歳女性。昭和63年9月にWBC増多を指摘され受診。貧血と巨大脾腫あり。WBC 33,400 (Neutro 95%), Hb 10.5 g/dl, Plt 14.4万/μl, 好中球に中毒性顆粒あり,NAPスコア482, VB12 14,600 pg/ml, IgG 559 mg/dl, IgA 3,428 mg/dl(λ型M蛋白),IgM 48 mg/dl。骨髄は過形成で顆粒球系が著明で形質細胞も増加していた。染色体は正常核型で,bcr再構成なし。透過電顕にて,顆粒球系細胞内に線維状封入体が認められた。本例は,骨髄腫を伴う慢性好中球性白血病(CNL)と診断された。経過はブスルファン治療を行うが効果なし。平成2年10月,左腰部に巨大皮下血腫を作り入院。WBC 55,300/μl, Hb 7.0 g/dl, Plt 3.3万/μl, IgA 6,607 mg/dl。輸血を頻回に行ったが,平成3年7月に肺炎を併発し死亡した。このような特異な線維状封入体をもつCNLの報告は始めてである。この構造物の由来,意義は不明である。
  • 大和 肇, 山田 圭志, 小池 利幸, 吉田 瑞穂, 角掛 哲, 青柳 正邦, 中村 裕一, 渡辺 完爾, 斉藤 憲治, 榎原 英夫, 古沢 ...
    1995 年 36 巻 2 号 p. 128-133
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    免疫抑制療法により重症再生不良性貧血(SAA)の軽快後,急性骨髄性白血病(FAB分類:AML M 6)に移行し,少量Ara-C, aclarubicin, G-CSF併用療法(CAG療法)により完全寛解に導入しえた症例を経験した。症例は37歳,男性。1991年SAAと診断し,ステロイドパルス療法,続いて蛋白同化ホルモンの投与を行い,汎血球減少の改善を認めたが,2年5カ月後にAML (M6)に移行。染色体分析では,45, XY, -7が認められた。Ara-C 20 mg/m2 7日間,aclarubicin 14 mg/m2 4日間,G-CSF 200μg/m2 7日間投与の“CAG療法”により48日後に寛解に導入しえた。SAAから急性白血病への移行例は多くが1年以内に死亡しておりきわめて予後不良であるが,本例では“CAG療法”が有効で,かつ重篤な合併症なく施行できた。本療法は今後もかかる症例に対して試みるべき価値があると思われる。
  • 錦織 優, 野田 貴代, 永井 朝子, 黒川 一郎, 岡村 明治
    1995 年 36 巻 2 号 p. 134-140
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    50歳女性が全身丘疹,リンパ節腫脹,間質性肺炎を生じ入院した。酸素吸入とステロイドのパルス療法を開始した。左鼠径部リンパ節の生検組織所見はTリンパ領域の拡大,血管増生,多形性に富むリンパ球の血管壁への浸潤が著明でangiocentric lymphomaと診断した。EBウイルスの関与は認めなかった。ProMACE-CytaBOM療法によく反応したが,化学療法の開始前から貧血が進行し網状球0‰, LDH 870U/l, 直接クームス試験陽性であった。骨髄は赤芽球癆の所見を呈し巨大前赤芽球を認めた。Hbは4.7 g/dlまで低下しアナボリックステロイド,頻回の輸血を要した。ウエスタンブロット法によるパルボウイルスB19の抗体は当初陰性であったが,IgM抗体,次いでIgG抗体が陽性となり,網状球のバースト,骨髄赤芽球の回復をみて貧血が改善した。リンパ腫に伴う自己免疫性溶血機転があり,パルボウイルスB19の感染により著明な貧血を生来したものと思われる。
  • 仁木 健雄, 河村 洋一
    1995 年 36 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は46歳女性。紫斑,鼻出血,歯肉出血,肉眼的血尿,脳出血および脳梗塞にて救急入院。WBC 17,500/μl, Hb 5.1 g/dl, PLT 0.3×104l, LDH 924 IU/l。骨髄の線維化および脾臓の髄外造血が認められ原発性骨髄線維症と診断した。さらに血小板の著明な減少と血小板輸血の不応性より特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の合併が疑われた。prednisolone大量投与,γ-globulin大量投与,摘脾が行われたがすべて無効であった。azathioprine 100 mgの連日投与を行ったところ2週間後にはWBC 10,000/μl, PLT 2.0×104l前後に安定し,出血症状もすべて消失した。また赤血球輸血も不要となり,4週間後にはHb 13.0 g/dlまで増加した。本症例は抗カルジオリピン-β2GPI複合体抗体が陽性であり脳梗塞発症と併せてITPよりも抗リン脂質抗体症候群と考えられた。原発性骨髄線維症とともに免疫抑制剤に反応を示しており免疫学的に興味深い症例と考えられる。
  • 滝谷 公隆, 川村 尚久, 山口 仁, 森信 若葉, 吉田 紀子, 渡辺 一男, 三宅 宗典, 辰巳 和人, 美濃 真
    1995 年 36 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は17歳女児。1986年に(12歳)急性前骨髄性白血病(APL)と診断され,小児癌・白血病研究グループANLL 861プロトコールにて治療し,完全寛解に至り,1989年に治療終了となった。1991年に紫斑が出現し,骨髄検査にてAPL再発と診断。出血傾向およびDICの状態であり,all-trans retinoic acid (ATRA)の単独経口投与(40 mg/day)にて治療開始した。治療中白血球数増多などの副作用がみられたが,出血傾向は改善され,18日目に完全寛解を得た。維持療法にATRA (40 mg/day)を連日経口投与し,現在ATRA開始後3年を経過しているが,再発は認めない。経過中ATRAの血中動態(20 mg/m2, 単回経口投与)を調べたところ,その最高値は89, 149 ng/ml(おのおの再発より12, 22カ月後)であった。ATRA血中濃度の測定はATRA単独投与での寛解の維持の指標になりうるものと考えた。
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