臨床血液
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36 巻, 7 号
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第36回総会
特別講演
教育講演
臨床研究
  • 森 弘行, 栗山 一孝, 俵 正幸, 檀野 雄一, 藤本 健志, 対馬 秀樹, 斉藤 眞美子, 山村 政臣, 波多 智子, 有村 光生, 糸 ...
    1995 年 36 巻 7 号 p. 648-656
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    難治性急性骨髄性白血病(AML)のAra-Cに対する感受性を高めることを目的としたG-CSFとの同時併用療法を試みた。対象はAML 13例(再発例10例),年齢中央値は46歳(17∼70歳)であった。治療はAra-C少量療法を主体に,G-CSFを併用して行った。完全寛解(CR) 5例,部分寛解(PR)は4例に得られ,有効率(CR+PR)は69.2%であった。再発例10例のうち5例にCR, 3例にPRが得られた。しかしCRおよびPR持続期間はいずれも短かかった。AML-MO, MDSからの移行例,de novo AML with trilineage meylodysplasia (AML/TMDS)症例はいずれも無効であった。また無効例中検討した3例ではいずれもG-CSFを含む培地での白血病コロニーの形成がみられなかった。副作用は骨髄抑制が主であり,感染症の合併が高頻度にみられた。本療法の有効性に関してはprospectiveに計画された多数例での検討が必要である。
  • —特に強力化学療法不適応例において—
    鶴見 寿, 三浦 宜久, 山田 俊樹, 沢田 道夫, 中村 憲昭, 友田 隆, 高橋 健, 大山 正巳, 森脇 久隆, 武藤 泰敏
    1995 年 36 巻 7 号 p. 657-664
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    強力化学療法不適応のAML 25例(低形成性白血病3例)に対してAraCとVP16の少量持続療法を試みた。対象年齢は19∼85歳(中央値63歳),男女比は11:14であった。原則としてAraC 20 mgとVP16 50 mgを14日間連続持続点滴投与を行った。完全寛解は,初回治療例12例中7例(58.3%), BHAC-DMP療法などの初回寛解導入療法不応例6例中2例(33.3%), 再発例7例中2例(28.6%)に得られた。寛解例の寛解期間は初回治療例1.5カ月から20カ月(+)(中央値8カ月),初回寛解導入療法不応例・再発例では2カ月から22カ月(中央値10カ月)であった。副作用は消化器症状が多いが継続投与に支障はなかった。骨髄抑制は必発で25例中22例に発熱を認めたが致死的感染症,化学療法関連死はなかった。本療法は決して寛解率,寛解期間が十分とは言えないが,高齢者,全身状態不良例,初回寛解導入療法不応例,再発例の一部に対して有効であり,検討する価値のある治療法と思われた。
症例
  • 佐伯 明子, 小笠原 洋治, 大坪 寛子, 関田 徹, 西脇 嘉一, 増岡 秀一, 島田 貴, 海渡 健, 小林 正之, 酒井 紀
    1995 年 36 巻 7 号 p. 665-671
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    ADH不適切分泌症候群(SIADH), ネフローゼ症候群(NS), 血球貪食症候群(HPS)など多彩な病態を呈したAMMoLの1例を経験した。症例は59歳の男性,1991年8月当科受診,CD13, 14, 33陽性芽球の増加,低Na血症,高ADH血症を認めSIADHを伴うAMMoLと診断。SIADHは寛解導入とともに改善し,以後寛解を維持していたが1992年2月頃より蛋白尿が出現,NSを呈した。腎生検では膜性増殖性腎炎とマクロファージの著明な浸潤を認め,また血清IL-6が著高を示していた。ステロイドにて蛋白尿は減少したが,同年7月には汎血球減少と胆道系酵素の上昇を認め,骨髄での血球貪食組織球の増加よりHPSと診断。化学療法にて一時的に改善したが,10月には再度同様の病態となり化学療法の効果も一過性で重症感染症にて死亡した。以上いずれの病態にもマクロファージやサイトカインの関与が示唆され,AMMoLとの関連を考える上で興味ある症例と思われ報告した。
  • 津田 弘之, 城野 憲二, 清水 佳奈子, 下村 泰三
    1995 年 36 巻 7 号 p. 672-676
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は30歳女性。妊娠後期より鉄欠乏性貧血に対し,鉄剤の投与を受けていたが,出産後,9日目より貧血が急速に進行し,倦怠感,冷汗,頭痛,微熱を呈して本院紹介入院。末梢血では赤血球特に網状赤血球の減少が著明であったが,経過を追うと白血球特に好中球ならびに血小板の一過性の減少も観察された。骨髄所見では,有核細胞数の減少,特に赤芽球系の減少が著明で,巨前赤芽球が1.2%, 盛んな血球貪食像を示す組織球が1.2%見られた。ヒトパルボウイルスB19 (HPV)抗体は入院当初は陰性であったが,のちにはIgM, IgG抗体とも陽転した。また,入院時の血液中にウイルスDNAがドットブロット法で検出された。以上より,この症例は鉄欠乏性貧血治療中の妊婦の出産後という赤血球回転の高まった状態にHPVが感染し,赤芽球癆および血球貪食症候群を呈したものと考えられた。本症例は,HPV感染が鉄欠乏性貧血の治療時や急性出血時の急性赤芽球癆の原因になりうること,汎血球減少症が少なくとも一部は血球貪食症候群によることを示唆している。
  • 山崎 宏人, 中尾 真二, 高松 秀行, 伊藤 高明, 上田 幹夫, 塩原 信太郎, 松田 保
    1995 年 36 巻 7 号 p. 677-681
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    慢性骨髄性白血病の慢性期に同種骨髄移植(BMT)を受けた45歳女性が,BMT後4年目に細胞遺伝学的再発をきたした。Graft-versus-leukemia効果を誘導するため,BMTのドナーから3週間にわたって計2.47×108/kgのbuffy coatを輸注した。最終の輸注後50日を経過しても急性移植片対宿主病(graft-versus-host disease, GVHD)はみられなかった。しかし,骨髄のフィラデルフィア(Ph1)染色体陽性細胞の割合は,donor leukocyte transfusion (DLT)前の16/20が50日目には1/20に減少し,78日目には消失した。その後,10%以下に減少していたドナー型赤血球は徐々に増加し,4カ月後には100%となった。71日目頃に慢性GVHDを発症したが,cyclosporine少量投与により軽快した。本例の経過から,DLTによるPh1染色体陽性細胞の根絶に,急性GVHDは必ずしも必要ではないことが示された。
  • 彼谷 裕康, 中村 忍, 山崎 宏人, 熊走 一郎, 大竹 茂樹, 松田 保
    1995 年 36 巻 7 号 p. 682-686
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は67歳女性。多発性骨髄腫(IgG-λ型),臨床病期IIで,約3年間のMP-P (melphalan+prednisolone, prednisolone)交替療法,多剤併用療法を行っていた。次第に汎血球減少が出現し,骨髄検査上骨髄腫細胞と共に多数のアズール顆粒を持つ芽球を認め,染色体異常を伴っており,二次性白血病と診断した。DICはなくPML/RARαキメラ遺伝子も陰性であり,細胞表面抗原解析からはmyeloid/natural killer (NK) cell acute leukemiaと考えられた。Etoposide少量療法を行ったところ,白血病は完全寛解となった。その後,骨髄腫は次第に増悪してきたために,etoposideとdexamethasoneの投与を行ったところ,骨髄腫は軽快したが,再び白血病細胞の増加を認め,敗血症も併発し死亡した。骨髄系とNK細胞系との共通な幹細胞レベルでの二次性白血病と考えられ,骨髄腫と白血病の病勢が逆相関し,etoposide少量投与により一旦寛解となった極めて興味深い症例である。
  • 森近 省吾, 嶋 緑倫, 今中 康文, 中島 充, 岩崎 聖, 吉岡 章
    1995 年 36 巻 7 号 p. 687-693
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例1は中等症の血友病Aで血腫切開術の際腰椎穿刺後,腰部脊柱管内硬膜外血腫をきたし,L3以下の知覚,運動麻痺が出現した。クリオ製剤の投与とL2での椎弓切除を施行した。麻痺症状は漸次回復し,起立および松葉杖歩行も可能となった。症例2は入院時220ベセスダ単位/mlのインヒビターを有する重症血友病Aで外傷歴なく起立後に突然四肢の知覚,運動麻痺が出現した。頚部CTとMRIによりC3∼C7における硬膜外出血が認められた。インヒビター力価が高値で,椎弓切除術は施行できず,FEIBAによる止血療法を行なった。麻痺症状はT5以下までには回復したが,座位不能で四肢の知覚,運動麻痺が残った。その後のMRIで頚髄内出血も認められた。血友病における脊柱管出血はまれではあるが,脊髄損傷という重篤な後遺症を残しやすい。特に,インヒビター陽性例での有効な止血療法の確立が切望される。
  • 野本 信彦, 斉藤 基, 柏村 真, 青木 定夫, 柴田 昭
    1995 年 36 巻 7 号 p. 694-699
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は62歳,男性。平成5年8月全身倦怠感を主訴に当科受診し,精査の結果BJ型多発性骨髄腫の診断にて入院となる。入院直後より意識障害出現し,髄液中にMタンパク出現したため多発性骨髄腫の髄膜浸潤と診断した。頭部CTでは腫瘍細胞の浸潤を示す所見は認められなかったが,MRI(T1強調画像)にて硬膜全体が著明にenhanceされ,骨髄腫細胞の硬膜浸潤が疑われ,硬膜生検を施行した。硬膜の組織学的検索では硬膜の線維性肥厚と骨髄腫細胞の広範な浸潤が認められた。急性リンパ性白血病や悪性リンパ腫など他のリンパ増殖性疾患ではしばしば腫瘍細胞の髄膜浸潤が認められるが,多発性骨髄腫ではまれであり,さらに腫瘍細胞が骨病変から硬膜へ浸潤し,髄膜浸潤をきたしたと考えられる症例は極めて少ない。このような点で本症例は極めて貴重な症例と考えられ,若干の文献的考察を加え報告する。
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