臨床血液
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37 巻, 8 号
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第37回総会
シンポジウム1
難治性白血病の治療—現況と将来の展望
症例
  • 土居 忠, 坂牧 純夫, 小池 和彦, 松永 卓也, 小林 大介, 村松 博士, 佐藤 勉, 渡辺 直樹, 高後 裕, 新津 洋司郎
    1996 年 37 巻 8 号 p. 676-681
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    皮下腫瘤,胸腺腫を合併したacute undifferentiated leukemia (AUL)の1例を経験した。芽球の表面抗原解析ではCD7, HLA-DR, CD38が陽性,CD34は17.5%で陽性であったが他のT細胞系,B細胞系および骨髄系の系統特異的抗原はいずれも陰性であった。Southern blot法による遺伝子解析ではTCR-δ, IgH鎖遺伝子再構成を認めた。また染色体分析では47, XY, +8, t(13;17)(q12;q21), -17, +Mの染色体異常を認めた。以上よりリンパ系,骨髄系いずれの系統特異的抗原をも発現していないAULと診断した。一般にAULは寛解導入率が悪く予後不良と言われている。本症例もJALSG-ALL87プロトコールでは寛解導入し得なかったがara-C大量療法および中等量ara-Cにmitoxantrone, etoposide, prednisoloneを用いる併用療法により寛解に導入し得た。
  • 森本 聡, 平田 俊幸, 辰巳 哲也, 山形 昇, 芦原 英司, 後藤 秀夫, 稲葉 亨, 藤田 直久, 河 敬世, 中田 哲雄, 島崎 千 ...
    1996 年 37 巻 8 号 p. 682-687
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は57歳の女性。検診にて右肺に結節影を指摘され,精査中に右頚部リンパ節腫脹が出現,生検にて悪性リンパ腫(diffuse, small cleaved cell)と診断され,VEPA療法等により順調に経過していた。7カ月後発熱,汎血球減少と共に末梢血にlarge granular lymphocyte (LGL)が出現,骨髄にてLGLの増加と血球貪食像を認めた。LGLの表面抗原はCD2 (+), CD3 (-), CD16 (+), CD20 (-), CD56 (+), T細胞受容体遺伝子のβおよびγ鎖は再構成なく,EBウイルスのDNA termini probeを用いた検索でmonoclonalityが証明された。初診時のリンパ節生検標本の再検討でCD3 (-), CD20 (-), スタンプ標本でLGLを認めNK細胞リンパ腫が末期に白血化したものと考えられた。また血球貪食症候群(HPS)を合併し,血中のIFN-γ, M-CSF, G-CSF, IL-6の高値を認め,これらのサイトカインのHPS合併への関与が考えられた。
  • 佐野 文明, 小池 満, 石橋 正人, 辻 和江, 加藤 雅之, 長谷川 誠一, 前波 輝彦, 高橋 正知, 大和田 滋, 井上 眞夫, 石 ...
    1996 年 37 巻 8 号 p. 688-693
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    慢性腎不全(CRF)患者に合併した非Hodgkinリンパ腫(NHL)の報告は少なく,その化学療法をどのように行うかの検討は十分になされていない。今回われわれはCRFで維持透析中にNHLを合併した2例に初回化学療法として投与量を減量したCHOP療法を施行し2例ともに完全寛解を得た。さらに初回寛解導入時に用いたadriamycin (ADR)と,その後に投与したetoposide (VP-16)の血中動態に関して検討した。症例1は37歳男性,diffuse pleomorphic, stage IEの診断で化学療法を4コース施行し完全寛解を得た。症例2は56歳男性で,diffuse mixed, stage IIIEと診断し化学療法2コースで完全寛解に到達した。化学療法による副作用は骨髄抑制,末梢神経障害などであったが,臨床的に管理可能であった。また,ADR, VP-16の血中濃度は腎機能正常者と比較して高値となる事はなかった。以上よりADR, VP-16についてはCRF患者でも腎機能正常者と同量を投与でき,同等の効果が期待できる可能性が示唆された。
  • 鈴木 岳, 黒沢 光俊, 高梨 良秀, 板谷 利幸, 国枝 保幸, 前田 史朗, 岡部 實裕, 浅香 正博, 宮崎 保
    1996 年 37 巻 8 号 p. 694-700
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    肺原発ムーコル症から脊髄へ二次感染し,脊髄横断症状を呈した急性骨髄性白血病の1例を報告する。症例は54歳,男性。1989年11月に急性骨髄性白血病を発症し,種々の化学療法を行ったが,寛解導入は得られなかった。加療開始5カ月頃より全肺野に小粒状影並びに右肺底区に半円形の胸椎に接した腫瘤影が出現した。抗生剤とamphotericin Bの静脈内投与を行ったが無効であった。1990年5月1日に突然第6胸髄以下の対麻痺並びに全知覚脱失が出現した。その後,DICにより他界した。剖検では右肺S6にムーコル菌塊を認め,肺静脈本幹並びに胸髄(Th6∼8)に連続していた。胸髄病巣横断面では血管内にムーコル塞栓が認められ,壊死に陥っていた。免疫不全患者に発症したムーコル症の生前診断は困難なことが多く,いずれかの臓器の梗塞症状が生じた際には本症を積極的に疑うことが重要と思われた。
  • 白川 親, 榎本 寛, 田中 久夫, 米川 智, 入交 清博, 堀内 篤
    1996 年 37 巻 8 号 p. 701-706
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    71歳の女性が全身リンパ節腫脹と貧血,血小板減少のため当科に紹介入院した。入院時末梢血液検査では,RBC 195×104l, Hb 5.0 g/dl, Plt 2.2×104l, 網状赤血球は認められなかった。骨髄検査所見は,有核細胞数1.0×104lと低形成で,巨核球は認められず,また赤芽球は0.3%と著減していた。血清検査では,多クローン性高γグロブリン血症とCoombs試験(直接,間接)を含む自己抗体の産生を認めた。リンパ節生検の結果,IBL様T細胞リンパ腫と診断された。cyclophosphamide, doxorubicin, etoposideによる治療後,リンパ節の縮小と高γグロブリン血症の改善とともに骨髄有核細胞数の回復と血小板数の増加をみとめたが,貧血は改善せず骨髄中の赤芽球も0.5%と依然低値であった。本症例の赤芽球の低形成の原因は不明であるが,赤芽球癆の発症と類似の免疫学的異常が考えられた。
  • 竹田 誠, 小池 健一, 吉江 春人, 長谷川 康久, 緒方 洪之, 小宮山 淳
    1996 年 37 巻 8 号 p. 707-712
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は2歳5カ月,男児。平成6年11月14日,屋外の散歩後間もなくして赤褐色尿がみられたため,市立岡谷病院小児科を受診した。直接Coombs試験は陰性,間接Coombs試験は陽性であった。Sugar Water試験,Ham試験は陰性であった。Donath-Landsteiner (D-L)試験が強陽性を示したことから発作性寒冷血色素尿症(PCH)と診断した。D-L抗体の性状を検討した結果,抗P特異性を示すIgGおよびIgMに属するD-L抗体の存在が示唆された。梅毒血清反応は陰性であった。寒冷凝集素価は128倍に,マイコプラズマ抗体価は80倍に上昇していた。骨髄穿刺所見で,白血球や赤血球を貪食した組織球の増加がみられた。入院時の血中サイトカイン値ではIFN-γ値<5 pg/ml, M-CSF 1007 units/mlと正常値を示した。このことから本例でみられた組織球の血球貪食はhemophagocytic syndrome (HPS)とは異なり,血球側が貪食されやすくなったことが原因として推測された。
  • 原島 伸一, 岡村 孝, 梅野 守男, 高木 宏治
    1996 年 37 巻 8 号 p. 713-718
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は60歳,女性。7 kgの体重減少と腹部膨満感を主訴に来院した。巨大脾腫,WBC 18,500/μl, Hb 8.2 g/dl, Plt 68.0×104l, leukoerythroblastosis, 骨髄は著明な線維化を認め,骨髄線維症(MF)と診断した。MCNU投与により貧血は改善したが,治療7カ月後,頭痛,目眩が出現し,RBC 739×104l, Hb 19.1 g/dl, Ht 65.9%と真性多血症(PV)の所見を認めた。合計1,200 mlの瀉血にて,RBC 571×104l, Hb 13.5 g/dl, Ht 45.5%と改善した。その後貧血のコントロールもよく経過したが,MF発症32カ月後,WBC 28,800/μl (blast 90%)と白血病化が認められ,ペルオキシダーゼ染色陰性,CD2, CD13, CD33陽性により,AML (M0)と診断した。多剤併用化学療法を施行するも寛解には至らず,MF発症36カ月後,播種性血管内凝固症候群を併発し死亡した。MFからPVへの進展は珍しく過去15例の報告が見られるに過ぎないが,本患者はMF発症当初から染色体異常46, XX, t(3;12)(q25;p11)を有しており,急性転化時には,del(11)(q-)の染色体異常が付加されていることが白血病化に関連したものと考えられた。
  • 高倉 康人, 小林 裕, 高橋 由布子, 近山 達, 池田 元美, 魚嶋 伸彦, 木村 晋也, 田中 耕治, 和田 勝也, 小沢 勝, 北住 ...
    1996 年 37 巻 8 号 p. 719-724
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は24歳の男性。発熱と咽頭痛を主訴に近医受診。肝脾腫,黄疸,体幹の紅斑,血清,LDH, GOT, GPT, 総ビリルビン値の上昇,両側胸水も認めた。肝脾腫,黄疸等は改善したが胸水は消失せず精査のため当院入院。EB-VCA-IgM, VCA-IgGが高値,EBNA陰性であり,伝染性単核球症と診断。胸水は浸出性で単核球優位に細胞数が増加していた。細菌学的検査では陽性所見得られず,細胞診,染色体検査,遺伝子解析でも腫瘍性の増殖は認めなかった。胸水中のリンパ球は表面マーカー上T細胞優位に増加しており,胸膜生検でも血管周囲に免疫染色上T細胞優位な単核球浸潤の所見を認め,胸水の成因としてT細胞の浸潤による胸膜炎が考えられた。胸水は自然経過にて約1カ月で消失した。伝染性単核球症による胸水の報告は過去40年で20例と希であり,ここに報告した。
  • 三田 正行, 石橋 敏幸, 七島 勉, 丸山 幸夫
    1996 年 37 巻 8 号 p. 725-730
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は63歳男性。47歳時,白内障手術の際にWerner症候群と診断された。平成6年8月,汎血球減少を呈し入院した。身長148 cm, 体重39 kg。顔色不良で,腕は細く,顔貌は鳥様,頭髪は疎ら,声は嗄声で,皮膚は萎縮し肘に潰瘍が認められた。Hb 8.7 g/dl, PLT 1.5×104l, WBC 2,900/μl(芽球3%)であった。骨髄穿刺では過形成で芽球が11.8%, 血球三系統に異型性が認められ,FAB分類によりMDS (RAEB)と診断した。骨髄液の染色体分析は,44, XY, -3, -5, add(4)(q?31), add(6)(p2?), del(7)(q22), add(10)(q24), del(12)(q?), add(14)(q32), -15, -16, -17, +mar1, +mar2, +mar3をはじめとする異常を呈していた。肺炎,消化管出血をきたし第11病日に死亡した。Werner症候群の報告は約700例(本邦300例)あるが,造血器腫瘍の発症は稀で白血病8例,MDS 4例である。Werner症候群では癌遺伝子や癌抑制遺伝子が変異しやすいため悪性腫瘍の発症率が高いものと考えられる。
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