経過観察中にインヒビターの自然消退を認めた血友病Aの2例を経験した。症例1は8カ月時に皮下血腫を主訴に来院。F. VIII:C 1.5%にて血友病Aと診断,2歳時の麻疹罹患時に2.5 Bethesda Units (BU)/m
lのインヒビターを検出。臨床的にも止血不良で,インヒビターは2歳5カ月時には11.6 BU/m
lと上昇するも,経過観察にて1.5 BU/m
lへと低下し,2歳8カ月には消失した。症例2は皮下血腫を主訴に5カ月時に来院,F. VIII:C<1%以下と判明。8カ月時に19 BU/m
lのインヒビターを認めるも,出血症状も少なく経過観察にて1歳時には11.5 BU/m
lと低下し,1歳2カ月時に消失した。これまでの文献報告例からその自然歴をみると,第VIII因子製剤投与開始後中央値で225日(79-448日)に2 (0.5-19) BU/m
lのインヒビターが出現し,速やかに最高値3.6 (0.5-60) BU/m
lとなり,投与開始後665日(282-1140日)で消失していた。インヒビターの発症病態の観点から見て,自然消退例の存在は大変興味深く,インヒビター治療に際して考慮すべき現象と思われた。
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