臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
38 巻, 1 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
臨床研究
  • —Ferroerythrokineticsデーターに基づく新指標に照らした不均等性について—
    高橋 豊, 馬止 裕, 大野 陽一郎
    1997 年 38 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    Ferroerythrokinetics (FEK)施行myelodysplastic syndrome (MDS) 100例に新たに考案した指標を適用して赤芽球系無効造血(IEP)を定量評価した。指標は,正常対照,溶血過形成(H), 低形成(O), 無効造血(I) 134例のFEKデーターから導き出したV-1(有効産生量)とV-2(産生の有効率,R-Ef)で,V-1, V-2で区分される5領域(無効造血I-z, 溶血過形成H-z, 低形成O-z, 前者と後二者複合I-H-z, I-O-z)にMDS各症例の算定値を当てはめてFEK 5型に分類したI-z型の比率は48%, I-H-z, I-O-z複合型は30%であった。Refractory anemiaから芽球の増加による亜型別にV-2/R-Efが低下し,I-z型の比率が増加した。I-z群で,V-2/R-EfはETUやスコア化による赤芽球の形態異常,就中,核異常の程度や環状鉄芽球出現度と有意の相関(r=-0.628, R=0.664, R=0.742)を示した。他方,I-H-z, I-O-z群でこの相関・回帰線から有意に偏位し,IEPの相互関係に無視できぬ不均一性の存在が見い出された。
  • 宮本 京子, 大塚 輝久, 水野 晋一, 船津 清香, 稲葉 頌一
    1997 年 38 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    末梢血幹細胞採取時におけるCD34陽性細胞中のThy-1陽性,陰性細胞のコロニー形成能を測定した。より未熟な造血幹細胞の指標とされるhigh proliferative potential colony forming cell (HPP-CFC)はThy-1陽性細胞の方が陰性細胞よりも多く,CD34陽性細胞中のThy-1陽性細胞はより未熟であると考えられた。採取前に,末梢血の単核球中CD34陽性細胞測定とともにCD34陽性細胞中のThy-1陽性率を測定することはより的確な採取時期の決定に有用である事が示唆された。さらにCD34陽性急性骨髄性白血病において,CD34陽性細胞中のThy-1陽性率は全例10%以下であり,PBSCH時にこれを測定する事により,再発の推定が可能であると考えられた。
症例
  • 渡辺 浩, 浅井 治, 多田 則道, 矢野 真吾, 加藤 明徳, 香取 美津治, 小林 直, 倉石 安庸, 星 順隆, 伊東 慶悟, 藍沢 ...
    1997 年 38 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は46歳女性,慢性骨髄性白血病慢性期にABO major mismatch(レシピエントA型Rh (+), ドナーB型Rh (+))非血縁者間骨髄移植を施行した。HLA適合,MLCはGvHD方向のみ陽性であった。busulfan 8 mg/kg, cyclophosphamide 120 mg/kg, 全身照射10 Gyにより前処置を行った。GvHD予防はcyclosporinと短期methotrexateの併用にて行った。採取骨髄はCOBE Spectraで単核球を分離後に移植し,移植後11日目に生着を確認した。移植後10日目より急激な溶血性貧血を発症した。抗A抗体価16倍,A型血球に対する直接クームス試験陽性より,ABO mismatchによる溶血と考えられた。その後II度の急性GvHDと微小血管障害性溶血性貧血を併発し,移植後44日目に死亡した。ABO mismatchの同種骨髄移植,特に非血縁者間骨髄移植では,移植後早期に致命的な溶血性貧血を発症することがあり,十分な管理と適切な治療,予防法の確立が必要と思われた。
  • 原 武志, 鶴見 寿, 山田 俊樹, 澤田 道夫, 内藤 智雄, 村上 啓雄, 森脇 久隆, 武藤 泰敏
    1997 年 38 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    患者は63歳,男性。肺炎にて近医に入院したところ末梢血および骨髄に芽球の増生を認め当科紹介入院となった。骨髄は線維化を伴う低形成骨髄で,芽球は,CD7, CD34, HLA-DR, 免疫グロブリン重鎖再構成陽性で,他のリンパ球系マーカー,myeloperoxidase染色を含む骨髄球系マーカーは陰性のため低形成性幹細胞性白血病と診断した。芽球を短期間液体培養するとサイトカインなど無添加条件下で新たにCD33が陽性となるも,ATRA, G-CSF, 少量AraCによる分化誘導効果は認めなかった。各種化学療法を試みるも反応は不良であったが,全身状態は比較的良好であった。発症1年後,培養結果が予測したようにin vivoにおいてもCD33が陽性となった。本症例は緩慢な経過をたどり,smoldering leukemiaと思われた。発症1年7カ月後,各種支持療法にもかかわらず,肺炎,肺出血による呼吸不全にて死亡した。
  • 山田 俊樹, 鶴見 寿, 村上 啓雄, 森脇 久隆, 武藤 泰敏, 山田 鉄也
    1997 年 38 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は46歳男性。1994年5月31日心窩部痛,体重減少を主訴に入院。Werner症候群に特徴的な外表所見を呈し,血液検査にて著明な貧血と血小板,好酸球増多を認めた。骨髄穿刺は吸引不良であったが,巨核球と好酸球増多,血球2系統の異形成とともに芽球6.6%を認め,1;7転座も呈していた。骨髄生検は骨髄線維症の像であり,この時点ではMDS with myelofibrosisまたは本態性血小板血症を最も疑った。次第に汎血球減少進行,末血にミエロペルオキシダーゼ染色陰性,CD41強陽性の芽球が出現,骨髄はdry tapとなった。同年9月肺炎にて死亡。剖検骨髄にて,線維化とともに高度異型を示す巨核球と芽球の著増を認め急性巨核芽球性白血病に移行したものと思われた。白血病を合併したWerner症候群の報告はまれであり,さらに二次性白血病に多いとされる1;7転座も有しており,Werner症候群と二次性発癌の関連性を考察する上で興味深い症例と思われ報告した。
  • 豊澤 賢明, 篠原 健次, 有好 浩一, 安藤 寿彦, 小林 優, 引地 一昌
    1997 年 38 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    18歳,女性のAML, M2の患者がt(6;9)(p23;q34)を有した。BHAC-DMP-療法2コースにて血液学的には寛解に入り染色体異常は消失した。しかしRT-PCR法によるDEK/CANキメラm-RNA検出によるMRDは地固め療法,強化療法後にも,量的には減少したが,持続的に存在し,また採取したPBSC中にも認められた。次いで行ったPBSCT後2カ月目に,発症より1年後に,同転座を伴う白血病細胞により再発した。再寛解導入療法に不応性であり5カ月後に死亡した。
  • 小野 葉子, 伊藤 薫樹, 村井 一範, 宮入 泰郎, 榎本 さなえ, 金子 潤子, 菅原 健, 沼岡 英晴, 下瀬川 健二, 槍澤 大樹, ...
    1997 年 38 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    BHAC-DMP療法施行中に十二指腸潰瘍の穿孔を来したt(7:11)(p15;p15), del(10)(q11;q21)を示す急性骨髄性白血病(FAB分類M2)の53歳,男性例を経験した。潰瘍穿孔時の骨髄は未だ過形成で白血病細胞が過半を占めていたため,抗白血病化学療法による骨髄低形成を早期に達成することを目的にBHAC, mitoxantroneおよびrhG-CSFの同時併用治療に切り替え,潰瘍穿孔に対しては保存的治療を採用した。その結果,治療変更後8日目には骨髄は著明な低形成となり,その16日後には完全寛解に到達した。本例の白血病寛解導入過程でrhG-CSFが明らかに役割を果した直接証拠はないが,AML症例において緊急に白血病細胞量を減少させる必要がある場合には,rhG-CSFと細胞周期特異性のある抗白血病化学療法薬の同時併用治療が有用である可能性を本例は示している。
  • 田中 孝幸, 秋藤 洋一, 森 政樹, 植木 寿一, 中本 周
    1997 年 38 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は21歳,女性。著明な貧血と血小板減少にて紹介入院。骨髄は前骨髄球が91.5%を占めており,急性前骨髄球性白血病と診断。末梢血中白血球数が多かったため,化学療法にて減少させた後,all-trans retinoic acid (ATRA)投与を開始した。投与開始11日目より激しい頭痛,嘔気と複視が出現。両側眼底に著明な鬱血乳頭を認めた。頭部CTおよびMRIにて頭蓋内病変を認めず,ATRAによる頭蓋内圧亢進症と診断した。ATRAを中止し,対症療法を行ったところ自覚症状は消失し,鬱血乳頭も徐々に改善した。ATRAはretinoic acid syndromeを除けば重篤な副作用はなく,また成人は小児に比較し耐容量は高いとされている。本邦において,頭蓋内圧亢進症は現在までに小児例2例が報告されているのみであるが,ATRA投与中の成人においても注意すべき副作用と考えられる。
  • 北詰 浩一, 臼杵 憲祐, 遠藤 光絵, 大澤 まゆみ, 壹岐 聖子, 浦部 晶夫
    1997 年 38 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例はIgG-λ及びIgM-λのM蛋白をともなうCrystal storing histiocytosis associated with malignant lymphomaの48歳男性。入院時にPT値低下(68%), APTT延長(50.0秒),FDP高値(218 μg/ml)を認め,抗凝固療法を施行するも改善せず,原病に対するステロイドパルス療法に伴い凝固検査は正常化したが,FDP値のみ増加した。患者血清を用いた妊娠反応が陽性であり,FDP測定系での希釈実験の結果からラテックスに対する血中凝集素によるFDPの偽性高値と診断した。この凝集素は抗免疫グロブリン抗体で吸収され,またFDP値と血中IgM濃度に正の相関があり,偽性FDP高値はM蛋白による可能性が考えられた。
  • 黒須 哲也, 坂下 千瑞子, 山本 晃, 東田 修二, 三木 徹, 小山 高敏, 三浦 修, 村上 直巳, 根本 哲生, 宮坂 信之, 神山 ...
    1997 年 38 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は49歳,男性。1995年5月に左下腿浮腫と左下腹部腫瘤を主訴に来院して,入院。白血球増加(15,000/μl, うち41%は形質細胞),IgAの著増(2,557 mg/dl), 免疫電気泳動にてIgAλ型のM蛋白を認めた。身体所見にて,左下腹部に,5×10 cmの腫瘤を認め,腹部単純,CTの画像所見から,石灰化を伴う腸腰筋内の腫瘤と判明した。髄外性形質細胞腫を伴う形質細胞性白血病と診断し,dexamethasone(40 mg/day, 4日間)で治療したところ,末梢血より異型形質細胞消失とIgAの50%以上の減少がみられた。その後,IgAは増加傾向を示し,種々の治療にも拘わらず,5カ月後に心不全にて死亡した。死亡後,家族の同意を得て,腸腰筋部腫瘤部位の検体を採取したところ,病変部位は形質細胞の浸潤,アミロイド沈着を伴う骨形成像と骨細胞の存在がみられた。髄外性形質細胞腫の部位に骨形成を示す症例は稀であるので報告した。
  • 品川 篤司, 伊藤 孝美, 米野 琢哉, 小松 恒彦, 長谷川 雄一, 小林 敏貴, 小島 寛, 二宮 治彦, 長澤 俊郎, 阿部 帥
    1997 年 38 巻 1 号 p. 64-71
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は61歳男性。慢性糸球体腎炎の既往あり。1993年3月より,高尿酸血症に対しallopurinol (AL)を内服していた。同年5月,血小板増多のため本院第1回入院。WBC 10,100/μl(未熟好中球+, 赤芽球+),Hb 12.7 g/dl, Plt 971×103l, 末梢血染色体正常。骨髄では著明な線維化を認め,骨髄線維症が疑われた。2カ月後,汎血球減少のため第2回入院。WBC 1,300/μl, Hb 6.2 g/dl, Plt 10×103l, 骨髄は著明な低形成であった。ALによる汎血球減少と考え同剤を中止後,granulocyte-colony stimulating factor (G-CSF), erythropoietin (EPO), oxymetholoneの投与にて,約1カ月半後,3血球系の回復を認めた。回復後の骨髄細胞を汎血球減少時の血清とoxipurinol (OL)の存在下で培養すると,CFU-G, E, Megの著明な抑制が認められた。ALによる汎血球減少は稀で,致死的な報告もみられる。本例はサイトカイン併用療法で比較的短期間に造血の改善をみた。
短報
地方会
feedback
Top