臨床血液
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38 巻, 11 号
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総説
臨床研究
  • 塩原 信太郎, 高橋 聡, 矢部 普正, 丸田 壱郎, 小寺 良尚
    1997 年 38 巻 11 号 p. 1162-1169
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    本邦における同種骨髄移植後の白血病再発例に対するdonor leukocyte transfution (DLT)の治療効果を,アンケートによる全国調査で検討した。適格症例69例中20例(29%)に治療効果を認めた。疾患別の治療効果はCML細胞遺伝学的あるいは慢性期再発4例中3例(75%), MDS 5例中4例(80%), CML移行期あるいは急性転化期再発例13例中3例(23%), AML 25例中5例(20%), ALL 20例中4例(20%)であった。II度以上の急性GVHDは適格症例73例中22例(30%)に合併し,6例(8.2%)は致命的であった。GVHDは6ケ月以内の再発例で合併しやすい傾向を認めた。GVL効果が得られた24症例中14例(58%)がその後再発した。DLTのみでGVL効果が得られた9例中の最小輸注細胞数は2×107個/kg, 致命的GVHDが合併した6症例中の最小輸注細胞数は7×107/kgであった。DTLの治療効果は疾患と病期によって異なること,GVHD発症は輸注細胞数よりも再発時期が関係することなどが明らかとなった。
  • 第1報All-Trans Retinoic Acidの体内薬物動態と間歇交代療法のPilot研究
    廣田 貴久, 藤本 孟男, 金野 浩二, 榊原 吉峰, 片野 直之, 鶴澤 正仁, 滝谷 公隆, 三宅 宗典
    1997 年 38 巻 11 号 p. 1170-1176
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    8例の白血病およびMDS患児にall-trans retinoic acid (ATRA)を投与し体内薬理動態について検討した。ATRAを30 mg/m2経口投与し,血中濃度は平均150分で430 ng/mlのピーク値を認め,速やかに低下した。寛解が得られなかった1例はATRAのピーク値が低値であった。ATRAの血中濃度は連日投与で低下傾向を認めたが,休薬期間をおいた間歇投与では,再び高い血中濃度が維持できた。われわれは従来の化学療法に不応のAPL 2症例に対し,ATRAと化学療法を組み合わせたAPL-ATRAプロトコールによるパイロット研究を行い,2症例ともDICも早期に改善し寛解導入に成功した。体内薬理動態に基づき,小児APLの治療に対しては,ATRAの間歇投与と化学療法の組み合わせが有効であると思われた。小児癌・白血病研究グループでは,ATRA間歇投与法のPhase II研究を予定している.
  • 第2報:All-Trans Retinoic Acid間歇交代療法の長期治療成績
    廣田 貴久, 藤本 孟男, 片野 直之, 鶴澤 正仁, 江口 春彦, 中舘 尚也, 上玉利 章, 川上 清, 西川 健一, 浅見 恵子, 白 ...
    1997 年 38 巻 11 号 p. 1177-1182
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    ATRAの体内薬理動態および臨床におけるパイロット研究の結果を基に,われわれは17例のAPLに対し,ATRAによる寛解導入療法と,ATRAの間歇療法と他の化学療法剤の組み合わせによる治療(CCLSG APL-ATRAプロトコール)を検討した。対象は男児10例,女児7例で平均年齢は9.0歳。初診時白血球数は12.1×103l, ヘモグロビン値7.8 g/dl, 血小板数4.5×104l。1例を除きt(15;17)の染色体異常があり,RT-PCRで検索し得た15例すべてにPML/RARαのキメラ遺伝子を認めた。17例中13例(88%)に完全寛解が得られEFSは67%であった。ATRA非使用例に比べATRA使用例は寛解導入率,EFSに向上が認められた。ATRAの副作用はretinoic acid症候群,pseudotumor cerebli各1例認め,その他頭痛,口唇炎,消化器症状,骨痛を認めた。ATRA間歇療法と化学療法の併用(APL-ATRAプロトコール)は,APL患児に対し寛解率を上げ,再発を防ぐ有効な治療法である。
  • 小林 良二, 公文 和子, 渡辺 直樹, 井口 晶裕, 長 祐子, 吉田 真, 有岡 秀樹, 内藤 広行, 鹿野 高明, 石川 順一
    1997 年 38 巻 11 号 p. 1183-1188
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    非血縁者間骨髄移植およびHLA 1座不一致症例などの骨髄移植8症例にantithymocyte globulin (ATG)を含めた前処置を施行した。このうち1例において副作用のため中止を余儀なくされたが,7例は安全に施行できた。また,投与中の血小板数の減少は少ないものの,血小板製剤の輸注に対する反応性が低下した症例もみられた。移植後のリンパ球数・CD3, 4, 8, 20陽性細胞数の推移はATGを併用していない移植症例と比較して差を認めなかった。移植合併症は生着不全・acute GVHDは少ないもののサイトメガロウイルス感染症が有意に多く,また造血器腫瘍では再発が多い傾向がみられ今後の課題と考えられた。
症例
  • 佐藤 勉, 山内 尚文, 小林 大介, 佐藤 康史, 望月 智博, 堀 千鶴子, 渡辺 直樹, 新津 洋司郎
    1997 年 38 巻 11 号 p. 1189-1193
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は88歳,男性。血尿を主訴として来院,末梢血でWBC 18,200/μl, Neut. 92%と好中球優位の著明な白血球増加を認めた。画像診断で右腎腫瘍を認め,血清G-CSF濃度が120 pg/mlと高値であったことより,G-CSF産生腫瘍を疑った。入院後,腫瘍の急速な増大にともない好中球数はさらに増加し,末期には38,700/μlに達した。組織学的検索では,腎細胞癌,紡錘細胞型,Grade 3であった。また,抗ヒトG-CSFモノクローナル抗体を用いた免疫染色で腎癌細胞のG-CSF産生を証明した。G-CSF産生腫瘍のなかでも,腎原発は6例が報告されているのみであり,免疫組織染色で腫瘍細胞のG-CSF産生を証明したのは本症例が2例目で,貴重な症例と考えられた。
  • 眞田 功, 河野 文夫, 塚本 敦子, 清川 哲志, 紫藤 忠博, 古賀 震
    1997 年 38 巻 11 号 p. 1194-1198
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    82歳の女性。発熱,食欲不振で発症。皮疹,腋窩リンパ節腫脹,血沈亢進,白血球増多,低アルブミン血症そして肝障害の存在,抗核抗体とリウマトイド因子の陰性および腎障害の欠如より,成人発症Still病(AOSD)と診断された。播種性血管内凝固症候群(DIC)の合併も明らかとなった。鎮痛解熱剤の投与でAOSDは軽快し,それに伴いDICも改善した。約3年後,再びAOSDを再発した。検査データより,DICの診断基準は満たさなかったが,凝固および線溶の亢進状態が認められた。その後偶然,頭部外傷で硬膜下血腫をおこし,DICへ進展した。初回入院時の保存血清で,可溶性接着分子や可溶性トロンボモジュリンが高値を示し,内皮細胞障害が基礎にあると推測された。
  • 升谷 耕介, 藤丸 政義, 坪田 順昭, 松井 謙明, 岡村 孝
    1997 年 38 巻 11 号 p. 1199-1205
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は79歳女性。全身倦怠,黄疸,肝脾腫を主訴に入院。末梢血ではHb 8.0 g/dl, Plt 1.5×104l, 白血球10490/μlで,白血球分画では86%が異型リンパ球で,CD2+, CD3±, CD4-, CD8-の表面形質を有するTリンパ球であった。抗HTLV-1抗体が陽性で,末梢血リンパ球へのHTLV-1 provirus DNAのmonoclonalな組み込みが認められた。骨髄では異常リンパ球の浸潤のほか,幼若~成熟組織球による血球貪食像を認めた。以上の所見より血球貪食症候群(HPS)を伴ったATLと診断。ステロイド,γグロブリン併用療法を行ったが,肝不全のため入院14日目に死亡した。剖検時骨髄標本でEB virus LMP-1がATL細胞と一致して証明された。ATLにHPSを伴った報告は少なく,2つの病態の関連について検討し報告する。
  • 平山 泰生, 長井 忠則, 太田 英敏, 小山 隆三, 松永 卓也, 坂牧 純夫, 新津 洋司郎
    1997 年 38 巻 11 号 p. 1206-1211
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は69歳女性。初診時,顆粒リンパ球数正常であったため特発性の赤芽球癆と診断。Erythropoietinおよび各種蛋白同化ステロイド投与は無効であった。初診1年後に,末梢血中顆粒リンパ球数が漸増傾向を示し,T細胞受容体(TCR)再構成を認めたため顆粒リンパ球性白血病に合併した赤芽球癆と診断した。Cyclosporin 400 mg/day, cyclophosphamide 100 mg/dayそれぞれ単独投与では,腎機能障害,骨髄抑制のため投与を中止せざるを得なかった。そこでcyclosporin 200 mg/dayおよびcyclophosphamide 50 mg隔日投与を行ったところ,2カ月後に貧血が改善し併用投与開始より12カ月経過後の現在も経過は良好である。本例は顆粒リンパ球数が正常範囲内で推移したが,TCR再構成により顆粒リンパ球性白血病の合併を診断した赤芽球癆症例で,その腫瘍細胞がBFU-Eを特異的に抑制することを証明しえたと共に,cyclophosphamideおよびcyclosporin併用投与が有効であった貴重な症例と考えられた。
  • 森田 孝一, 水野 聡朗, 田中 泉, 鈴木 彦次, 田中 公, 三輪 啓志, 西川 政勝, 北 堅吉, 珠玖 洋
    1997 年 38 巻 11 号 p. 1212-1217
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は68歳男性。1989年某病院にてリンパ球増多(WBC 39,090/μl, リンパ球93.5%)を指摘され,その表面マーカー検索では,CD5, CD19, CD20, CD21, sIgG, κ陽性であった。慢性リンパ性白血病(CLL), Rai分類Iと診断され,Bestrabucil(総投与量35,150 mg),etoposide(総投与量23,100 mg)が経口投与されていた。1995年9月頃より貧血,血小板減少が次第に進行したため,1996年1月当科紹介入院となった。表在リンパ節腫脹,肝脾腫認めず。WBC 21,200/μl (blast 4%), Hb 7.9 g/dl, PLT 5万/μl, 骨髄検査では過形成で,骨髄芽球および単球様細胞が70.6%を占め,その表面マーカー検索では,CD11c, CD13, CD15, CD33, HLA-DR陽性であり,急性骨髄性白血病(AML-M4)と診断された。染色体検査は,正常核型を示し,MLL遺伝子再構成も認められなかった。化学療法に対する反応は良好で完全寛解の状態を維持している。本例はCLL発症後6年目にAML-M4を続発した症例で,われわれが検索した限りでは本邦第1例目である。
  • 田屋 登康, 鳥本 悦宏, 平井 克幸, 大西 浩平, 斉藤 永仁, 徳差 良彦, 三代川 斉之, 高後 裕
    1997 年 38 巻 11 号 p. 1218-1223
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    多発性骨髄腫の骨病変は,骨融解像や骨粗鬆症様の変化など骨融解性病変が一般的である。一方,骨硬化性病変を呈する症例の報告もあるがきわめてまれである。今回われわれは第7頚椎に限局して著明な骨硬化像を呈した多発性骨髄腫を経験した。症例は60歳の男性。1995年6月より両上肢のしびれ感が出現した。頚部XPで第7頚椎の孤立性骨硬化像を認めた。同部位からの外科的骨髄生検で骨髄の骨化と著しい結合織の増生がみられ,残存する造血巣に形質細胞の増殖と,血清中にIgG-λ typeのM蛋白を認めた。また腸骨よりの骨髄クロットと骨髄生検組織で形質細胞の集簇が多数認められ,骨硬化性多発性骨髄腫と診断した。骨髄血清中のTGF-β, PDGF濃度が高値で,これらの骨形成性サイトカインが骨硬化性病変の形成に関与している可能性が考えられた。
  • 茂木 良弘, 倉 敏郎, 瀧本 理修, 武藤 文夫, 前田 健, 村松 博士, 新津 洋司郎
    1997 年 38 巻 11 号 p. 1224-1228
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は84歳,男性。糖尿病,高血圧,慢性腎不全のため入院中,腎不全の悪化による高カリウム血症に対してsodium polystyrene sulfonate (Kayexalate)を投与したところ,投与7日後より血小板減少症が出現,投与前20.7×104lあった血小板が投与12日後に8.6×104lに低下した。Kayexalateの中止と共にすみやかに血小板数は回復がみられた。その後も高カリウム血症をおこしKayexalateを投与する度に血小板減少がみられた。骨髄穿刺では有核細胞数,骨髄巨核球数は正常で異常細胞もなく,他に血小板減少の原因となる疾患がみられずKayexalateによる免疫性血小板減少症と考えられた。Kayexalateによる血小板減少症の報告は本邦および諸外国でもなく,今後十分注意すべきことと思われる。
  • 合井 久美子, 杉田 完爾, 宮本 直彦, 柄木田 直子, 中村 誠, 小鹿 学, 飯島 純, 加賀美 恵子, 中澤 眞平
    1997 年 38 巻 11 号 p. 1229-1233
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    乳児急性リンパ性白血病(第一寛解期)の1歳男児に対して,HLAの一致した弟の臍帯血を用いて,臍帯血幹細胞移植を施行した。採取した臍帯血は120 mlで単核球数は4.2×107/kg, CFU-GM 3.1×104/kgであった。移植前に発熱と肝機能障害が出現し,抗サイトメガロウイルスIgMの上昇が認められたため,サイトメガロウイルスの初感染と診断した。ganciclovirの投与で,臨床症状は軽減し,検査データも正常化したが,CMVの再活性化を抑制するため移植後1カ月まで投与を継続した。移植前処置はbusulfan (16 mg/kg/4 days)とcyclophosphamide (120 mg/kg/2 days)で行い,GVHD予防はcyclosporin A (CyA)単独でおこなった。急性GVHDはday 19に発熱を示しただけでCyAの増量で解熱した。造血能の回復は順調でday 12に白血球1,000/μl以上,day 42に血小板5万/μl以上となった。現在移植後1年1カ月で完全寛解を維持している。
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