臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
38 巻, 6 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
第38回総会
シンポジウム5
造血幹細胞移植におけるサイトカインの臨床的意義
臨床研究
  • 新津 望, 梅田 正法
    1997 年 38 巻 6 号 p. 496-504
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    濾胞性リンパ腫の頻度は欧米に比し本邦では低く,bcl-2遺伝子再構成も低率である。また,治療成績も欧米ではwatch and waitと強力な化学療法の間に予後の差がないといわれているが,本邦での治療方法の早期の確立が望まれるところである。今回当科に入院した非ホジキンリンパ腫582例中濾胞性リンパ腫78例(13.4%)を対象とした。全症例の完全寛解(CR)率は83.3%で,10年生存率は63.7%であった。また,CRに至った60例の5年生存率は76.9%で,部分寛解例に比し有意に高率であった(P<0.01)。治療法別ではCHOP療法の5年生存率は40%, COP-BLAM療法74.3%, biweekly COP-BLAM療法3年生存率88.4%であった。また,CR例の5年無病生存率は80.5%で,42カ月でplateauとなり9年以降も持続した。濾胞性リンパ腫に対しても強力な化学療法が有効であると考えられ,またCR例の方がPR例より有意に5年生存率が高率であり,初回治療の有用性が示唆された。
  • —小児癌白血病研究グループ(CCLSG) 10年間の治療成績—
    鶴沢 正仁, 片野 直之, 廣田 貴久, 三間屋 純一, 堀越 泰雄, 川村 尚久, 楊井 正紀, 上玉利 彰, 辻 芳郎, 藤本 孟男
    1997 年 38 巻 6 号 p. 505-512
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    1984年より1994年の10年間に小児癌白血病研究グループ(CCLSG)の急性骨髄性白血病の治療研究(ANLL-861研究,ANLL-8912研究,ANLL-9205研究,APL-ATRA研究)に登録された小児AML167例の成績を報告した。従来の多剤併用療法を主体にした861/8912治療研究の成績(寛解導入率76/71%, 3年EFS36/30%)と比較して,アンスラサイクリンとAra-C持続静注を主体とした9205治療研究の成績(寛解導入率91%, 3年EFS 58%)は明らかに優れていた。この改善は単球系(M4+M5)白血病に著明に認められた。一方,急性前骨髄性白血病(M3)に対するAPL-ATRA治療群の成績(30カ月EFS 78%)はATRAを用いない861/8912治療群の予後(16カ月EFS 0%)に較べて明らかに優れていた。9205治療研究での化学療法単独群と同種骨髄移植群のレトロスペクテイブな解析では両者の予後に統計学的有意差は認められなかった。
症例
  • 長井 忠則, 平山 泰生, 太田 英敏, 小山 隆三, 松永 卓也, 久我 貴, 坂牧 純夫, 新津 洋司郎
    1997 年 38 巻 6 号 p. 513-519
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は34歳,男性。1990年12月,白血化した濾胞性リンパ腫small cleaved cell, stage IVと診断しCHOP, COPP療法で治療したが不完全寛解で経過。3年後の1993年12月,急激なリンパ節腫大を来して再入院となった。左頸部リンパ節生検組織像は初診時と変わりなく,また骨髄細胞DNAのPCR分析でbcl-2遺伝子再構成を再び確認した。Salvage療法としてnovantrone, cytarabine, methylprednisolone(NOAC-M療法)を施行。2コース終了後88%の腫瘤縮小を見たが完全寛解ではなかった。しかし骨髄細胞をPCR法で検討した結果,bcl-2遺伝子再構成の消失を確認し得たことから自家骨髄細胞を採取した。末梢血幹細胞研究会のprotocolに準じてMCNU, CBDCA, VP-16, CPMを用いた自家骨髄移植併用大量化学療法を施行し完全寛解を得た。濾胞性リンパ腫など低悪性度non-Hodgkin's lymphoma (NHL)の標準的治療法は未だ確立していない。本邦NHLの10%にすぎない濾胞性リンパ腫の貴重な症例と考え報告した。
  • 折井 幸司, 小林 光, 上野 真由美, 石田 文宏, 斉藤 博, 羽田 悟, 青木 和雄, 成田 厚子, 下平 滋隆, 北野 喜良, 内丸 ...
    1997 年 38 巻 6 号 p. 520-525
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は79歳,男性。全身倦怠感,盗汗を主訴に受診。理学上,眼瞼結膜下に腫瘤,全身リンパ節腫脹,巨脾,腹部腫瘤を認めた。胸部X線およびCT上胸水と内胸リンパ節腫脹,腹部USおよびCT上肝脾腫と腹腔内腫瘤を認めた。頚部リンパ節,眼瞼結膜下腫瘤,上部消化管病変および骨髄の生検にて,いずれも比較的小型でくびれた核をもつ細胞の混在したリンパ球の浸潤を認めた。骨髄浸潤リンパ球の表面マーカーはCD19, 20およびCD5が強陽性でCD23は弱陽性であった。骨髄細胞を用いた染色体分析は正常核型であったが,Northern blot法にてPRAD1遺伝子の過剰発現を認め,これらの所見より本例をmantle cell lymphoma (MCL)と診断した。cyclophosphamideとvincristineによる治療は効果なくetoposide少量経口投与(50 mg/day)が有効であった。MCLの節外浸潤臓器としては骨髄や消化管が知られているが,本例ではそれらに加えて涙腺および胸膜を含む多彩な臓器浸潤を来し,MCL細胞の特異性を示すものと思われた。
  • 三浦 裕次, 上田 幹夫, 近藤 恭夫, 山崎 宏人, 高見 昭良, 杉森 尚美, 斎藤 正典, 中尾 真二, 塩原 信太郎, 斎藤 勝彦, ...
    1997 年 38 巻 6 号 p. 526-531
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は28歳男性。1983年に再生不良性貧血と診断された。副腎皮質ステロイド剤以外の治療には抵抗性で頻回輸血を必要とし,20歳よりヘモクロマトーシスを合併した。1994年2月に同種骨髄移植を目的に入院した。移植前心エコー検査は正常であった。前処置にはTLI 7.5 GYとCY 50 mg/kgを4日間投与し,HLA一致,MLC陰性の妹から同種骨髄移植を施行した。移植後1日目に意識障害が出現した。心エコー検査にて著明な心嚢水を認め急性心タンポナーデと診断し,心嚢穿刺を施行し心嚢水約100 mlを採取した。一時意識は改善したが,day 2に死亡した。剖検所見で出血性心筋炎と心筋間質浮腫を認めた。ヘモクロマトーシスを合併した再生不良性貧血例に骨髄移植を施行する場合は,前処置としてCYを減量し,かわりにATGやTBIを追加するなどの工夫が必要と思われる。
  • 河合 泰一, 福島 俊洋, 大倉 清孝, 吉尾 伸之, 山内 高弘, 中山 俊, 通山 薫, 和野 雅治, 津谷 寛, 上田 孝典, 中村 ...
    1997 年 38 巻 6 号 p. 532-538
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は不応性貧血の72歳,女性。10単位の血小板製剤を週3回ずつ輸血していたが血小板数は10×103l未満で常に皮下出血が顕著であった。早期胃癌から出血しHb 3.9 g/dlに低下したため,胃半切除術が予定された。輸血後1時間における補正血小板増加数(1-hour CCI)は14×103l/m2と軽度に低下しており,輸血後24時間における補正血小板増加数(24-hour CCI)および(24-hour CCI)/(1-hour CCI)はそれぞれ0.5×103l/m2と0.36と高度に低下していたが,抗HLA抗体は陰性であった。初診時から経時的に脾臓容積が増大していることから,脾腫と輸血不応状態との強い関連が推測された。40単位の血小板製剤の輸血下に胃半切除術および脾摘が施行された。術後の1-hour CCIと(24-hour CCI)/(1-hour CCI)はそれぞれ76×103l/m2, 0.79と著明に改善し輸血回数の減少と出血傾向の著明改善が現在も持続している。骨髄異形成症候群において脾腫が血小板輸血不応状態の一因と推察され,脾摘によりその反応性が改善した報告はなく貴重な症例と考えられた。
  • 大久保 千寿子, 金森 平和, 佐々木 津, 田口 淳, 大塚 真美, 原野 浩, 小川 浩司, 松崎 道男, 毛利 博, 大久保 隆男
    1997 年 38 巻 6 号 p. 539-543
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は51歳,男性。出血斑と頭痛を主訴とし入院した。血液,骨髄検査よりDIC(汎発性血管内凝固症候群)を伴った急性前骨髄球性白血病と診断された。ATRA, enocitabine, daunorubicinによる寛解導入療法およびDICに対する支持療法を行った。第二病日,頭部CTにて硬膜下血腫が確認され,翌日には瞳孔不同,意識障害が出現したため血腫除去術が行われた。手術時,DICは持続していたが支持療法により特に問題はみられなかった。第6病日にはDICは改善した。ATRA投与後35日目には完全寛解が得られ,その後3回地固め療法が行われた。DIC存在下での脳外科手術は一般的には困難であるが,基礎疾患の治療効果がえられる可能性がある場合には,積極的に手術適応を考慮すべきと考えられた。
  • 濱本 健次郎, 大野 友彦, 小川 博遊, 伊達 宗広, 木村 隆, 福原 資郎
    1997 年 38 巻 6 号 p. 544-549
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    70歳,男性。高血糖と白血球数増加を指摘され紹介入院となる。腹部では肝は触知せず,脾を左季肋下3横指触知した。WBC 17,300/μl (Lymp 72%), RBC 513×104l, Hb 16.1 g/dl, Ht 43.8%, PLT 13.3×104l。末梢血のリンパ球は,塗抹標本では細胞表面の1極あるいは2極に偏在する短く細い細胞突起が観察された。位相差顕微鏡下や透過型電顕においても同様に細胞表面に短く細い細胞突起を認めた。このリンパ球は酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ陰性であった。末梢血のリンパ球の表面マーカーは,CD19, CD20, CD21, CD24, HLA-DR, SmIgA, SmIgM, SmIgD, Sm-λ強陽性,CD5, CD22, CD25弱陽性,CD10, CD11c, CD23, CD38, B-ly-7陰性。血清M蛋白,尿BJPはともに陰性。末梢血の染色体分析は,lipopolysaccharide (LPS)添加5日間培養で,47, XY, +der(3) t(3;13)(q26;q12) inv(3)(?), t(7;14)(q21;q11), der(13) t(3;13)(q26;q12)の核型異常を20細胞すべてに認めた。以上よりSLVLと診断したが,無治療にて経過観察とした。
短報
feedback
Top