臨床血液
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38 巻, 9 号
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臨床研究
  • 川村 眞智子, 林 泰秀, 別所 文雄, 柳澤 正義, 花田 良二, 山本 圭子, 堀部 敬三, 本郷 輝明, 上田 一博
    1997 年 38 巻 9 号 p. 719-726
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    小児急性リンパ性白血病(ALL)におけるp53遺伝子変異と臨床像について検討した。対象は小児ALL 147例および細胞株38株で,p53遺伝子のエクソン5∼9(一部2∼11)について,polymerase chain reaction-single strand conformation polymorphism (PCR-SSCP)法により変異を検出し,直接法にて塩基配列を同定した。T-ALLでは,初発3/62例(5%), 再発1/14例(7%), 細胞株13/20株(65%), t(1;19)-ALLでは,初発2/20例(10%), 再発4/4例(100%), 細胞株4/5株(80%), その他のcommon ALLでは,初発1/23例(4%), 再発2/22例(9%), 細胞株5/12株(42%), B-ALLでは,初発3/3例(100%)に変異を認めた。変異の有無による予後の検討では,t(1;19)-ALLで統計学的有意差がみられ,B-ALLを除き変異症例は予後不良の傾向があった。p53遺伝子変異は必ずしも臨床的予後因子と相関せず,少数のp53遺伝子変異細胞の検出が可能になれば小児ALLの予後因子として重要になると思われた。
  • 松岡 美鈴, 浜田 恭子, 雑賀 智子, 溝渕 詔子, 高橋 功
    1997 年 38 巻 9 号 p. 727-733
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    伝染性単核球症例における末梢血リンパ球の動態を異型リンパ球数,アポトーシス細胞数,Fas抗原陽性細胞率ならびにDNA-ladderの面から検討した。まず,末梢血に出現したアポトーシス細胞を白血球500個分類で検討したところ,伝染性単核球症27例中10例(37.0%)に正常健康人に認められなかった3個以上のアポトーシス細胞を認めた。また,発症後急激に増加する異型リンパ球にやや遅れてアポトーシス細胞は出現,増加し,異型リンパ球の減少とともに減少した。Fas抗原陽性細胞は初診時の異型リンパ球が高頻度に出現し,アポトーシス細胞の出現が見られない時期から高率に認められ,異型リンパ球,アポトーシス細胞の消失と共に正常域に復した。またDNA-ladderはアポトーシス細胞の増加に伴い検出され,その後アポトーシス細胞の減少とともに消失した。
  • —内科・小児科共同研究による成績—
    佐藤 武幸, 王 伯銘, 青墳 信之, 松浦 康弘, 柏村 真, 高木 敏之, 酒井 力, 沖本 由理
    1997 年 38 巻 9 号 p. 734-739
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    若年者(15-22歳)急性リンパ性白血病の10例を,1989年より内科・小児科の共同プロトコールにて治療した。完全寛解は全例で5週以内に得られた。低危険群(初発時白血球数30,000/μl以下)の6例中4例および高危険群の4例中1例が完全寛解を持続している。3例が骨髄(BM)再発であり,2例がBMおよび中枢神経(CNS)同時再発である。全例が感染症以外の重篤な合併症もなく治療を遂行出来た。今回の研究において,低危険群に関しては良好な治療結果が得られたが,高危険群においては得られなかった。15歳以上の若年者の急性リンパ性白血病は内科・小児科両者の境界にあたるため,把握が不十分である。精神的にも特異な年齢である点も考慮すると,両者の密接は協力が不可欠であろう。
  • —特に二次発癌について—
    鈴木 憲史, 前川 勲, 三国 主税, 山口 哲郎, 坂巻 寿, 森 眞由美, 全国一般病院血液懇談会
    1997 年 38 巻 9 号 p. 740-744
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    1982年から91年までの10年間に確定診断のついたB細胞型慢性リンパ性白血病(CLL)で96年5月現在でアンケート調査を行い,計75例の全経過および死因について検討する。症例は男性58例,女性17例で発症平均年齢は66.0±1.35 (±S.E.)歳,平均生存期間は43.7±4.13カ月であった。死因としては感染症が27例(36%)と最も多く,現病死との主治医診断が12例(16%), 他の併発悪性腫瘍も12例(16%, 固形腫瘍のみでは13%)認められた。特筆すべき12例の併発悪性腫瘍では,胃癌4例,肺癌3例,悪性リンパ腫2例,肝臓癌・膵臓癌・前立腺癌が各1例みられた。CLLの治療は長期に亘る現病の管理と感染症の早期治療,および二次発癌を起こしにくい化学療法,そして二次発癌・二重癌の早期発見・早期治療を常に念頭に置く必要がある。
症例
  • 都築 基弘, 岡本 昌隆, 山口 哲士, 井野 晶夫, 江崎 幸治, 平野 正美
    1997 年 38 巻 9 号 p. 745-751
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    重症再生不良性貧血(再不貧)に対するG-CSF, サイクロスポリンA (CsA), ダナゾール併用療法中に観察されたmonosomy 7を伴うMDSの1例を報告する。症例は24歳女性。1994年11月に重症再不貧と診断(骨髄染色体分析は正常女性核型)しG-CSF 400 μg/m2持続点滴,CsA 6 mg/kgおよびダナゾール5 mg/kg内服投与にて治療を開始した。治療開始56日後より白血球数,網赤血球数の増加が見られたが血小板数は1万/μl以下の状態が続いた。白血球数の増加が見られたため92日後よりG-CSFは漸減し172日以降は300 μg隔日投与とした。治療開始後228日の骨髄は過形成で3系統造血成分に形態異常を認めMDS (RA)と診断した。染色体分析では45, XX, -7を20分析細胞中16細胞に認めた。この時点までのG-CSF総投与量は75 mgであった。本症例におけるMDSの発症は最初から存在したMDSクローンの顕在化,拡大によると推測される。その誘因としてG-CSF, CsAおよびダナゾールが考えられ,中でもG-CSFの関与が大きいものと思われた。
  • 鈴木 拓, 高橋 徹, 林 敏昭, 笠原 薫, 浜本 文恵, 安達 正晃, 日野田 裕治, 今井 浩三
    1997 年 38 巻 9 号 p. 752-756
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は79歳,男性。平成7年3月頃より,上半身に結節性の皮疹が出現し,同年5月当院皮膚科受診。CD4·CD56陽性の悪性リンパ腫と診断され,少量VP-16療法が開始された。同年10月下血を来たし,精査・加療目的にて当科転入院した。入院時,紫斑を伴った結節状の皮疹が顔面,体幹,四肢とほぼ全身に拡大していた。末梢血像および骨髄中にて単球の増加が認められた。皮膚生検では大型な異型細胞の皮膚・血管周囲への浸潤が認められ,皮膚浸潤を伴うCMMLと診断された。化学療法にて末梢単球数および皮膚浸潤の一時的な改善を見たが,入院後約3カ月後に急性転化を来たし,死亡した。
  • 高井 和江, 真田 雅好, 廣瀬 保夫, 渋谷 宏行
    1997 年 38 巻 9 号 p. 757-762
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は77歳男性で心嚢液貯留と心房中隔腫瘤で発症。心嚢液細胞診および胸部皮下腫瘤組織像より,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(Burkitt-like)と診断。表面形質はCD5+ CD20+ CD22+ CD38+ HLA-DR+ CD19-。染色体分析ではt(8;14)(q24;q32)を基本核型とした複雑な異常を示し,サザンブロット法でc-myc遺伝子の再構成を認めた。THP-COP療法を施行したが治療抵抗性で,心タンポナーデをきたし心嚢ドレナージ,ADM心嚢内注入施行するも効なく全経過5カ月で死亡した。剖検では心房中隔に径約6 cmの腫瘤,心外膜に広範な浸潤あり。リンパ節腫脹なく,皮下,左肺下葉,膵頭部に小腫瘤を認めるのみで心臓原発と判断された。免疫染色で腫瘍細胞の核内にp53蛋白が高率に検出されたが,ISHでEBER-1は陰性であった。c-myc遺伝子の再構成およびp53蛋白の過剰発現はBurkittリンパ腫をはじめ高悪性度リンパ腫の一部やAIDS関連の節外性リンパ腫に認められ,本例の治療抵抗性との関連が示唆された。
  • 河内 康憲, 桑島 靖子, 西原 利男, 内田 立身, 瀬津 弘順, 森 将晏, 池田 和眞, 池田 宇次, 佐々木 一乗, 高原 二郎
    1997 年 38 巻 9 号 p. 763-769
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は26歳,女性。1995年11月29日腰痛のため当科に入院。骨髄NCC 51.7×104l(芽球96.8%)。芽球はMPO陰性,CD11a, b, c, CD33陽性,α-naphthyl butyrate esterase陽性で,t(9;11)(p22;q23)とこれを含む-7と+19の3種類の核型異常を認めた。DICを合併していた。BHAC-DMP療法で一度寛解し,1996年1月15日よりIDRとAraCを投与したが,3月6日の骨髄で芽球は3.6%に増加した。3月7日よりAraC 30 mgとVP-16 25 mgを,3月15日よりG-CSFを投与したところ,3月18日より全身に皮膚浸潤が出現した。4月16日よりBHAC-AMP療法を開始し2日間G-CSFを併用した。WBCは900/μlより23,200/μl(芽球84.5%)と急増し皮膚浸潤も増悪した。G-CSF中止後WBCは減少し皮膚浸潤も消失したが寛解はえられず,6月30日脳浸潤のため死亡した。芽球のG-CSFRは低値だったが,in vitro刺激試験で著しい反応を認めた。低用量AraCとG-CSFの併用療法でも芽球増加に注意が必要である。
  • 前田 美穂, 継 仁, 大久保 隆志, 山本 正生, 中村 恭子, 檀 和夫
    1997 年 38 巻 9 号 p. 770-775
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    妊娠29週に急性前骨髄球性白血病と診断され,all-trans retinoic acid (ATRA)治療施行中の29歳の女性から出生した新生児例を報告する。児は帝王切開により出生し,出生体重2,086 g, 外表奇形は認められなかった。2カ月時に肺炎に罹患した以外,2歳になる現在まで,正常に発育,発達している。なお,出産時母体の末梢血にATRAの影響によると考えられる過分葉好中球がみられ,同様の好中球が臍帯血にも認められたが,児の末梢血中には過分葉好中球も白血病細胞も認められなかった。ATRAはほとんどの抗癌剤と同様に胎盤を通過し,動物実験では催奇性が確認されている。しかし本症例は胎児の主要器官形成時期を過ぎた30週からATRA治療が開始されており,催奇性に影響を与えることは乏しいと思われた。ATRA療法を受けた白血病母体から出生した新生児の報告は内外の文献上,本例を含め8例あり,いずれも順調に成育している。
  • 百名 伸之, 成富 研二, 知名 耕一郎, 具志堅 俊樹, 當間 隆也, 伊藤 悦男
    1997 年 38 巻 9 号 p. 776-781
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は12歳女児。白血球増多,貧血,血小板減少で発症し急性骨髄性白血病(AML, M2)と診断されたが,同時に顆粒球系,赤芽球系に異形成が認められた。核型は47, XX, +8[20]であった。多剤併用化学療法で寛解に至ったが,2年後に再発した。HLA一致の兄より骨髄移植が施行され血液学的寛解を得たが,移植1年後に異形成の出現とともに複雑な核型を有するAMLを再発し死亡した。8番およびY染色体特異プローブを用いfluorescence in situ hybridization(FISH法)によるクローン解析を行ったところ,初発時にリンパ球を除く芽球,骨髄単球系,赤芽球系細胞にtrisomy 8を認めた。初回寛解時には単球にのみわずかにtrisomy 8が検出されたが,初回および移植後(第二回)再発時には初発時と同様の解析結果であった。以上より,本症例では全経過を通じてtrisomy 8を持つ幹細胞異常症が存在し,それが白血化と密接に関連していることが示唆された。
  • 久野 由恵, 竹尾 高明, 川島 康平
    1997 年 38 巻 9 号 p. 782-787
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は72歳,女性。1984年11月に健診にて血液検査異常を指摘され当院受診した。血液検査所見では汎血球増加症,脾腫,骨髄所見などにて真性多血症(PV)と診断した。瀉血,脾臓への放射線照射を含め,ニムスチン,ブサルファン,ハイドロキシウレアなど投与して経過観察を行っていた。1995年11月末梢血に芽球30%が出現した。骨髄穿刺にて芽球はミエロペルオキシダーゼ(MPO)陰性であり,表面マーカーではCD7, HLA-DR陽性であった。その後芽球増加時にはCD34が陽性となった。電顕所見にてもMPO陰性であり幹細胞に非常に近いレベルでの急性白血病と診断した。プレドニン,ビンクリスチン,シタラビン,ダウノルビシン,エトポシドなどにて治療をしたが完全寛解には至らなかった。PVから幹細胞性と思われる急性白血病の発症報告は極めて稀である共に,多能性幹細胞レベルでの白血化を示唆する興味深い症例であると思われる。
短報
  • 沢田 仁, 和気 敦, 山崎 嘉宏, 和泉 洋一郎, 大野 裕樹, 中田 浩一
    1997 年 38 巻 9 号 p. 788-791
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    We report here with a 46-year-old man with refractory multiple myeloma receiving allogeneic peripheral blood stem cell transplantation from his HLA-matched brother. The preparative regimen consisted of TBI (12Gy), VP16 (15mg/kg) and cyclophosphamide (120mg/kg). GVHD prophylaxis consisted of cyclosporin A and short course of methotrexate. The donor received G-CSF at 10μg/kg/day for 5 consecutive days and underwent leukapheresis on days 5 and 6. The neutrophil recovery to 500/μl and platelet recovery to 20,000/μl were day 12 and day 15, respectively. The patient is currently well with no GVHD or graft failure and a complete donor's chimerism.
  • 竹内 誠, 多田 敦彦, 宗田 良, 高橋 清
    1997 年 38 巻 9 号 p. 792-794
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    53-year-old man with chronic lymphocytic leukemia resistant to alkylating agent containing regimens, was treated with fludarabine phosphate. Hematological data before the administration of fludarabine phosphate was as follows: RBC 216×104l, Hb 7.7g/dl, WBC 69,400/μl (lymphocyte 96%), PLT 0.2×104l. Bone marrow was fully occupied with lymphocytes. Red blood cells and platelets transfusions were frequently required. Fludarabine phosphate was administered at a dose of 40mg (23mg/m2) intravenously for 5 days every 4 weeks. After the start of the therapy, peripheral lymphocyte counts were markedly decreased and recovery of normal hematopoiesis was observed in bone marrow. Any transfusions were no longer neccesary. Fludarabine phosphate may be active even for advanced, refractory and terminal stage chronic lymphocytic leukemia.
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