臨床血液
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40 巻, 1 号
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臨床研究
  • 山崎 哲男, 蔵 良政, 佐藤 靖, 入江 哲也, 兼板 佳孝, 持丸 純一郎, 花井 将彰, 安川 清貴, 沢田 海彦, 堀江 孝至
    1999 年 40 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    1981年から1995年までに当院で診断された非Hodgkinリンパ腫496例の内,low grade follicular lymphomaであるfollicular small cleaved (FSCL)は26例,follicular mixed (FML)は16例であった。FSCL, FMLの5年生存率はそれぞれ74.3%, 70.0%であった。Stage III以上のFSCLの治療はcyclophosphamide単剤かCHOP等の化学療法または経過観察のみであったが,経過観察群,化学療法群の5-year failure free survivalはそれぞれ66.7%, 33.1%であり“Watchful waiting”の有用性が確認された。Stage II以上のFMLの治療はCY単剤かCHOP, MACOP-Bの多剤併用療法が施行されたが多剤併用療法群におけるCR率は33%で2年以上の無病生存は得られなかった。Diffuse lymphomaへのhistologic transformation (HT)は7例に認められた。HTまでの平均期間は約50カ月でMACOP-B等の治療により3例に長期生存が認められていることからHT後の強力化学療法は有効であると考えられた。
  • —トブラマイシン,バンコマイシンを用いた腸内無菌化法との感染頻度の比較—
    保仙 直毅, 手島 博文, 烏野 隆博, 氏家 秀敏, 中尾 隆文, 屋木 敏也, 畑中 一生, 川本 晋一郎, 平岡 諦, 中村 博行, ...
    1999 年 40 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    当院において1984年から1997年の間に同種骨髄移植を施行した患者において,腸内無菌化のためにニューキノロンを投与した患者90人とバンコマイシン/トブラマイシンを投与した患者79人の感染症の頻度を比較した。両群において,発熱の頻度,発熱日数,感染症の頻度,急性GVHDの頻度は,有意差がなかった。しかし,ニューキノロン群では有意ではないものの,グラム陽性菌による菌血症の頻度が高い傾向が見られた。また,ニューキノロンの投与を受けた患者の中で,血縁者間移植と非血縁者間移植を比べてみると,非血縁者間移植の方が,発熱期間が長い傾向が見られた。以上から,ニューキノロンによる腸内無菌化は同種骨髄移植においても感染予防に有効な方法と考えられた。しかし,グラム陽性菌による感染症の発生,および非血縁者間移植例への投与には注意が必要であると思われた。
  • 鈴木 章孝, 宮澤 啓介, 片桐 智子, 荘司 奈穂子, 西巻 治朗, 岩瀬 理, 伊藤 良和, 田内 哲三, 川西 慶一, 木村 之彦, ...
    1999 年 40 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    Hodgkin病(HD)に対するABVD療法にG-CSFを併用することにより,治療スケジュールを変更することなく,末梢血幹細胞採取(PBSCH)が可能であるか検討した。6例のHD(未治療5例,再発1例)でのABVD療法のday 8∼13にG-CSF (5μg/kg, SC)を投与し,1)末梢血白血球数,CD34陽性細胞数(CD34+), CFU-GM数を測定した。2) CD34+, CFU-GMの増加を認めた症例については,以後のABVD療法後に同様のスケジュールのday 12, 13にPBSCHを施行した。結果は,1)一部の症例にてCD34+の上昇が不良であったが,白血球,CFU-GMは良好な増加を認めた。2)全症例において2∼4回のPBSCHにおいて末梢血幹細胞移植に必要なCFU-GMが得られた。以上,ABVD療法+G-CSF併用にてスケジュールを変更することなくPBSCHが可能であった。
症例
  • 関川 哲明, 岩瀬 さつき, 河野 毅, 高原 忍, 根本 忠, 伊藤 潔, 山田 順子, 山崎 泰範, 山田 尚
    1999 年 40 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    骨髄腫の髄外浸潤は剖検では決して少なくないとされるが1),胸膜および髄膜への浸潤の報告は比較的まれである。われわれは,骨髄腫によると考えられる胸膜,髄膜浸潤を伴い,胸壁や骨盤に腫瘤を形成し,きわめて経過の急峻な症例を報告する。症例は66歳男性。貧血,血小板減少,呼吸苦のため当科に紹介された。胸部X線上両側胸水貯留に加え構語障害,筋力低下がみられた。末梢血に2%の異型形質細胞を認め,骨髄穿刺標本,免疫電気泳動にてBence Jones lambda骨髄腫と診断した。胸水にM-タンパク,異型形質細胞を認め,髄液からも異型形質細胞を検出したことより胸膜,髄膜浸潤をきたした症例と考えた。Cyclophosphamide, doxorubicin, prednisoloneによる化学療法,methotrexate, cytarabineの髄腔内投与を行い,胸水の減少,髄液中の形質細胞の消失を認めた。しかし左胸壁に皮下腫瘤が出現し,VAD療法に反応せず,肺炎を併発し入院より5カ月の経過にて死亡した。剖検では,胸膜浸潤,肋骨から独立して発生した胸壁腫瘤をはじめとする他部位の形質細胞浸潤が確認された。
  • 沢田 仁, 和気 敦, 山崎 嘉宏, 和泉 洋一郎
    1999 年 40 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    同種骨髄移植に代わって近年,造血能回復が早く重症graft-versus-host-disease (GVHD)の増加がない同種末梢血幹細胞移植が行われている。われわれは,骨髄線維症を伴った骨髄異形成症候群(MDS)の61歳の患者にHLA一致の68歳の兄より同種末梢血幹細胞移植を施行した。移植前処置はbusulfanとcyclophosphamideで行い,GVHD予防はcyclosporin Aとmethotrexateを用いた。ドナーはgranulocyte colony-stimulating factor (G-CSF) 10 μg/kg/day, 4日間の皮下注を受けた。患者体重あたり4.04×106/kgのCD34陽性細胞が1回のアフェレーシスで採取でき,直ちに輸注された。生着は好中球500/μl以上,血小板2.0×104l以上がともにday 15であった。grade IIの急性GVHDを発症したがmethylprednisoloneの投与で軽快した。患者はday 97にthrombotic microangiopathyで死亡した。ドナーのG-CSF投与とアフェレーシスは問題なく施行できた。同種末梢血幹細胞移植は早期生着をもたらし高齢のMDS患者にとっては利点となるかもしれない。
  • 横濱 章彦, 村田 直哉, 島野 俊一, 櫻谷 昌孝, 田村 遵一, 唐沢 正光, 成清 卓二
    1999 年 40 巻 1 号 p. 34-39
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    71歳男性。1995年5月,赤芽球癆(PRCA)と診断し各種免疫抑制剤にて加療を行ったが貧血の改善は得られず輸血依存性となった。以後末梢白血球,血小板数が増加し,1996年6月までに白血球数10,100/μl, 血小板数98.1×104lに達したが1996年7月より逆に汎血球減少をきたした。96年11月には骨髄細胞にi(17)(q10)の染色体異常が出現した。1997年10月には骨髄で芽球が16.6%と増加しており骨髄異形成症候群(MDS (RAEB))と診断したが同年11月に死亡した。比較的短期間のうちにPRCA, 慢性骨髄増殖性疾患(CMPD)様の増殖期,MDSと血液所見が推移し,また骨髄の赤芽球低形成,好酸球増多は一貫して認められたため,いずれの病態も共通の造血幹細胞の異常に起因する可能性が示唆された。また急速な芽球の増加,汎血球減少の進行は17p欠損の獲得に関連する可能性が想定される。
  • —GVL効果のみを認めた症例におけるNK細胞活性および骨髄T細胞のTCRレパートリーの解析—
    末廣 陽子, 牟田 耕一郎, 梅村 創, 本村 誠一, 西村 純二, 名和田 新, 木村 暢宏
    1999 年 40 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    慢性骨髄性白血病(CML)の移行期に同種骨髄移植(BMT)を受けた37歳男性が,BMT後255日で慢性期再発をきたした。2回にわたりdonor leukocyte transfusion (DLT) (CD3: 5×106/kg)を施行し14週目に細胞遺伝学的寛解が得られその後17カ月間,寛解を維持している。経過中に急性および漫性のgraft-versus-host disease (GVHD)は認められなかった。DLT後にNK細胞活性は上昇した。また経時的な骨髄T細胞のTCR Vβ領域の解析では,白血病細胞の減少が認められた時期に一致してVβ5a, Vβ4, Vβ3の高頻度発現を認めこれらに属するT細胞クローンがgraft-versus-leukemia (GVL)効果に関与している可能性が示唆された。本症例はGVL担当細胞の輸注によりGVHDと分離されたGVL効果が得られる可能性を示唆しておりCMLの治療を考える上で興味深い症例である。
  • 天野 逸人, 森井 武志, 山中 貴世, 塚口 信彦, 西川 潔, 成田 亘啓, 下山 丈人
    1999 年 40 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    16歳,女性。他院にて重症再生不良性貧血と診断され,副腎皮質ステロイド薬パルス療法を2クールとアンドロジェン療法を併用されたが無効であった。当科転院後施行したALG療法も無効であった。アンドロジェン療法に炭酸リチウム600 mg/日を併用したところ,著効を示し,投与後3週間で赤血球輸血が不要となり,さらに1,200 mg/日に増量して血小板輸血も不要となった。白血球数も増加し,投与開始から約半年でまったく正常の末梢血液像となった。薬剤性肝障害の疑いで2カ月間炭酸リチウムの投与を中断したところ,白血球数,血小板数がともに減少したが,炭酸リチウム400 mg/日を再投与し,800 mg/日に増量すると,再び血液3系統に改善を認め,現在経過良好である。antilymphocyte globulin (ALG)療法無効の難治性重症再生不良性貧血で明らかな有効性がみられ,リチウム療法は有用な治療法と考えられた。
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