臨床血液
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40 巻, 7 号
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臨床研究
  • 小林 良二, 金田 真, 渡辺 直樹, 井口 晶裕, 長 祐子, 吉田 真, 有岡 秀樹, 内藤 広行, 鹿野 高明, 石川 順一
    1999 年 40 巻 7 号 p. 531-535
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    再生不良性貧血の治療および骨髄移植前処置として29症例にのべ37回ATG/ALGを使用した。その結果,23例(62.1%)に副作用が発現し,もっとも多い副作用は発熱であった。しかし,投与を中止せざるを得なかった症例は4例(10.8%)であった。副作用はウマ由来の製剤よりウサギ由来の製剤で多い傾向がみられ,再投与症例では8回(7例)投与中6回(6例)に副作用の発現を認め,前回からの投与間隔の短い場合に副作用が重篤化する傾向を認めた。
  • 早川 晶, 佐野 公彦, 長谷川 大一郎, 小阪 嘉之, 中村 肇, 井手口 裕, 原野 昭雄
    1999 年 40 巻 7 号 p. 536-541
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    ヒトパルボウイルスB19 (HPVB19)感染症を契機に発見された先天性ヘモグロビンH (HbH)病の姉妹例を経験し,その家系につき遺伝子分析を行った。発端者は8才女児で,発熱と顔色不良を主訴に当科を受診,小球性低色素性貧血と溶血の所見を認めた。姉は9日遅れて発熱し,妹と同様の血液学的所見を認めた。陽イオン交換樹脂高速液体クロマトグラフィー法による血色素分析にて異常血色素(β4, HbH)を検出したため姉妹ともαサラセミア(先天性HbH病)と診断した。姉妹とも発熱以外には発疹,関節痛などの症状は認めなかったが,HPVB19のDNAを血液中よりPCR法にて検出し,抗体価の上昇も認めたため,今回の貧血発作はHPVB19感染症によるものと考えられた。また,患児およびその両親についてαグロビン遺伝子の解析を行ったところ,父は(-α37/αα), 母は(--/αα), 姉妹は(--/-α37)であった。
  • 高橋 直人, 中鉢 明彦, 三浦 偉久男, 中村 栄男, 三浦 亮
    1999 年 40 巻 7 号 p. 542-549
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    成人リンパ腫関連血球貪食症候群(LAHS)の全国アンケート調査を行った。142例の病態の分析から得られたLAHSの特徴を報告する。68例がB細胞性で64例がTまたはNK細胞性であった。B-LAHSはT/NK-LAHSに比べ高齢者に多く(63.5歳vs. 49歳),血球減少,凝血学的異常,肝障害が軽度で,予後良好であった(50%生存242日vs. 69日)。EBVゲノムはT/NK-LAHSで高率に陽性であった(3/24 vs. 19/23)。T/NK-LAHSは鼻および鼻型NK/T細胞性リンパ腫の続発あるいは進展による型と病初期より肝脾腫,骨髄浸潤を主徴とする型に臨床的に分類することができた。B-LAHSは病初期より肝脾腫,骨髄浸潤を主徴とし,半数にIntravascular lymphomatosis (IVL)を認めた。この調査に基づき新たなLAHS診断基準を提案した。
  • —厚生省HIV感染者発症予防・治療に関する研究班調査報告—
    福武 勝幸, 上田 良弘, 立浪 忍, 味澤 篤, 岡 慎一, 高松 純樹, 瀧 正志, 白幡 聡
    1999 年 40 巻 7 号 p. 550-555
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    血液凝固因子製剤を通じてヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)に感染し,1997年10月30日までに死亡した患者数の年次推移と死因について報告する。全国1,446医療機関を対象に調査し,施設間の重複を排除して症例を固定した。血液製剤によりHIV-1に感染した1,434症例のうち,493症例が死亡していた。出生年代が早いほど死亡率が高く,AIDSの特徴的症状を認めた群のCD4陽性細胞数は平均25個/μlであったのに対して,AIDSの特徴的症状を認めずに死亡した群の平均は158個であった。AIDSの特徴的症状を呈した死亡者は1994年まで増加を続け,1995年と96年は45人,42人とほぼ同数であったが,1997年は19人と著明に減少した。抗HIV療法の進歩で日和見疾患も減少したが,予防が可能なカリニ肺炎や非定型抗酸菌症などがなお死因の上位を占めた。日本での死亡数の減少は米国に比べて1年遅れた。適切な治療法の普及と新薬の迅速な導入が,患者の生命を守る上できわめて重要である。
症例
  • 宇野 久光, 藤田 充啓, 日野 理彦, 中川 浩美, 宮川 秀樹, 青木 潤, 谷山 清己, 佐々木 なおみ
    1999 年 40 巻 7 号 p. 556-562
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は32歳,女性。右乳房のstage IIの浸潤性乳管癌で乳房切除術後約1年の1996年夏より,微熱と全身倦怠感,肝胆道系酵素の上昇,さらに皮膚腫瘤が出現した。1997年1月の入院時には,全身の皮膚腫瘤,全身リンパ節の腫大,肝脾腫に加えて多発性肺転移,骨転移があり,骨髄が乳癌細胞でほとんど置換されていた。入院後CPA, ADMのCA療法を5コース,CPA, ADM, 5-FUを2コース,docetaxelを5コース,さらにCAを1コース施行するも皮膚所見は完全に改善しなかった。固形腫瘍のauto-PBSCTは骨髄と末梢血幹細胞(PBSC)に腫瘍細胞が少ないことが前提になるが,化学療法で骨髄が回復してから,G-CSFを投与後PBSCを採取し,骨髄とPBSC中の乳癌細胞を抗cytokeratin 19抗体を用いて定量した。その結果,骨髄とPBSC中の乳癌細胞数は,通常の非転移性乳癌のレベルであったので,auto-PBSCT支持で大量化学療法を施行し寛解を得ることができた。
  • 吉村 光太郎, 原 武志, 鶴見 寿, 後藤 英子, 田近 正洋, 福富 尉, 村上 啓雄, 森脇 久隆
    1999 年 40 巻 7 号 p. 563-567
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例:62歳,男性。平成10年6月9日,発熱および全身リンパ節腫脹のため当科入院。リンパ節生検の結果,非Hodgkinリンパ腫(diffuse mixed T cell lymphoma)と診断,縦隔リンパ節,傍大動脈リンパ節腫大,胸腹水,骨髄浸潤を認め,臨床病期はIVB, 国際予後指数はHighであった。診断後CHOP療法を開始したところ,第11日目に突然意識障害(JCS III-300)出現。頭部CTに異常なく,脳脊髄液のサイトスピン標本上トキソプラズマ虫体を認めトキソプラズマ脳炎と診断した。sulfadoxine/pyrimethamineを開始し,数日にて意識障害は改善,約1カ月後,脳脊髄液を用いたサイトスピン標本およびRT-PCR法では虫体の消失が確認された。非Hodgkinリンパ腫はCHOP療法2コースで完全寛解に導入された。悪性リンパ腫のような免疫不全状態における意識障害の原因の一つとして,頻度は少ないがトキソプラズマ脳炎も念頭に置くべきと思われた。またその診断には髄液の検鏡も重要と思われた。
  • 三木 純, 小池 健一, 沢井 信邦, 松浦 宏樹, 黒川 由美, 坂下 一夫, 中沢 孝行, 伊藤 進, 日高 惠以子, 小池 正, 小宮 ...
    1999 年 40 巻 7 号 p. 568-573
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    11カ月の男児。1998年3月13日,発熱と出血傾向を主訴に当院に転院した。血液生化学検査では,白血球数は43,360/μlで,芽球を75%認めた。Hb値は8.4 g/dl, 血小板数は23×103lであった。フローサイトメーターを用いた芽球の表面形質の解析では,CD41は21%でCD42bは11%であった。膜透過性亢進処理後,GPIIIaと無関係にGPIIbを認識する抗CD41抗体を用いると,GPIIbが高発現を示した。しかし,GPIIIaと結合しているGPIIbを認識する抗CD41抗体,抗CD61抗体やCD42b抗体では,処理の有無で発現に差異はなかった。芽球はPPO陽性であったことからM7と確定診断した。細胞内CD41の解析は,細胞表面のGPIIb/IIIaが無∼低発現を示すANLLの診断やM7における芽球の分化段階を決定する上で有用であると思われる。
  • 長谷川 大一郎, 佐野 公彦, 小阪 嘉之, 早川 晶, 川越 里佳, 天羽 清子, 多屋 馨子, 平林 紀男, 中村 肇
    1999 年 40 巻 7 号 p. 574-580
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    化学療法に対して抵抗性となったT細胞性急性リンパ性白血病の1歳7カ月男児に対しHLA2座不一致の母親をdonorとしてCD34選択同種末梢血幹細胞移植を施行した。移植前処置はBU 140 mg/m2/day×2, TBI 12 Gy, L-PAM 210 mg/m2でGVHD予防はCyAにて行った。幹細胞の純化はBaxter社のIsolex 50 Immunomagnetic Cell Separation Systemを用いて行ない,処理後4.4×106/kgのCD34陽性細胞を移植した。移植後14日目に骨髄細胞の性染色体FISH法を用いた解析により生着を確認した。GVHDに引き続いてTMAによる難治性の下痢を合併し,移植後71日目にHHV-6による間質性肺炎のため死亡した。CD34陽性細胞移植はHLA不一致血縁者から重篤なGVHDを回避して生着を期待しうる有望な治療であるが,重篤なウイルス感染症の増加など克服すべき問題が多く残されていると考えられた。
  • 大津 聡子, 一戸 辰夫, 野吾 和宏, 北原 光輝, 塩村 惟彦, 島田 秀人
    1999 年 40 巻 7 号 p. 581-586
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    初回寛解導入化学療法に高度の抵抗性を示した53歳男性の赤白血病(FAB M6)症例に対してHLA部分不適合血縁ドナー(PMRD)からのT細胞非除去骨髄移植を試みた。Total body irradiationを含んだ前処置の後,移植片対宿主病(GVHD)予防にFK506およびmethotrexateを用い,HLA表現型二座不適合の妹から採取した骨髄を移植した。生着は速やかであり,急性GVHDも早期から出現したが皮膚に限局し,ステロイドによるコントロールが可能であった。Day 31, day 66の骨髄穿刺にて完全寛解と100%のドナー型キメリズムを確認したが,day 154に再発後の肺感染症により死亡した。HLA disparityの比較的少ないPMRDからの移植においてはT細胞除去を行わなくてもFK506の使用によってGVHDの重症化を防げる可能性があり,より強い移植片対白血病(GVL)効果の期待されるT細胞非除去骨髄の使用も検討すべきと思われた。
  • 矢田 健一郎, 和田 秀穂, 大槻 剛巳, 定平 吉都, 杉原 尚, 山田 治, 八幡 義人
    1999 年 40 巻 7 号 p. 587-592
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    悪性リンパ腫の脾への浸潤は臨床上,しばしば認められるが,脾原発の悪性リンパ腫はリンパ腫全体の1%以下で節外性リンパ腫の中でもきわめて稀である。今回,われわれは摘脾にて診断を確定でき,BCL-6遺伝子再構成を認めた脾原発悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する。症例は62歳女性で,全身倦怠感にて当院受診。腹部エコーにて脾腫瘤を認めた。針生検の結果,悪性リンパ腫が疑われ,摘脾術を施行した。組織診断はdiffuse large cell lymphoma, B cell typeで腫瘍細胞の染色体分析の結果,46, XX, t(3;14)(q27;q32), add(10)(p11)を,またBCL-6遺伝子再構成を認めた。術前診断および染色体分析が行いえた症例は少ないため,本邦既報告例の文献的考察を加えて報告する。
  • 村松 理子, 臼杵 憲祐, 伊豆津 宏二, 山口 祐子, 壹岐 聖子, 古山 和道, 近藤 雅雄, 浦部 晶夫
    1999 年 40 巻 7 号 p. 593-598
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は20歳の男性で,Hb 9.3 g/dl, MCV 82.0 fl, MCHC 29.5 g/dlと小球性低色素性貧血を認めた。末梢血に二相性赤血球を認め,骨髄赤芽球中に環状鉄芽球を29.5%認めた。また,組織の鉄沈着の傾向が認められた。明白な貧血の家族歴があり,X染色体連鎖鉄芽球性貧血と診断した。骨髄赤芽球におけるδ-アミノレブリン酸合成酵素の活性低下を認めたが遺伝子変異は検出されなかった。ビタミンB6経口投与と鉄除去療法により現在経過は良好である。
  • 矢田 健一郎, 和田 秀穂, 杉原 尚, 山田 治, 大槻 剛巳, 中澤 直三, 谷脇 雅史, 赤坂 尚司, 大野 仁嗣, 八幡 義人
    1999 年 40 巻 7 号 p. 599-605
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は16歳男性。著しい白血球増加(388,000/ml)を呈したB細胞性急性リンパ性白血病で,治療抵抗性を示し全経過13カ月で死亡した。腫瘍細胞はt(3;15)(q27;q2?2)を有しており,このような染色体相互転座はこれまで報告が無く,また染色体3q27領域はB細胞性腫瘍に関連が深いbcl-6遺伝子局在部位に相当することから遺伝子異常の解析を行った。しかしながら,転座部位3q27, 15q2に局在するbcl-6を含む7つの遺伝子の再構成は認められず,bcl-6およびsmrp, dvl3, tpm1遺伝子の相対的強発現が検出されるのみであった。本転座に伴ってどのような遺伝子異常がもたらされたかという点に関しては,残念ながら検討しえた範囲では示唆するような所見は得られなかったが,未報告の染色体異常とbcl-6発現,CD19, 20の陽性亜群等,腫瘍細胞のheterogeneity, あるいは治療抵抗性を示したこととの関連を示唆する端緒となる所見が得られたと考えられ,報告する。
短報
  • 山路 聡, 金森 平和, 田中 政嗣, 三嶋 亜紀, 小原沢 英之, 藤田 浩之, 藤沢 信, 村田 興, 松崎 道男, 毛利 博, 石ヶ坪 ...
    1999 年 40 巻 7 号 p. 606-609
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    A 22-year-old woman was admitted with purpura. Acute promyelocytic leukemia (APL) with disseminated intravascular coagulation (DIC) was diagnosed. On the 17th day after treatment with all-trans retinoic acid (ATRA), left subdural hematoma developed. Although coagulation abnormalities were still observed, emergency surgery was perfomed. Acute epidural hematoma was confirmed by computed tomographic scan after the operation. A second operation for drainage was successful. Post-operative intracranial hematoma may be caused by rapid decompression induced by surgery, but DIC could also be involved. This case underscored the need for careful consideration of the indications for surgical treatment of such DIC patients, with close follow-up monitoring for the postoperative development of neurological symptoms.
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