臨床血液
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40 巻, 8 号
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総説
臨床研究
  • 佐尾 浩, 北折 健次郎, 加藤 千明, 足立 達也, 山西 宏明, 森島 泰雄
    1999 年 40 巻 8 号 p. 630-638
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    当院において施行された,白血病に対する非血縁者間骨髄移植のうち1年以上生存した25例の現状に関し検討した。25例中,その後4例が死亡した。死因は再発2例,閉塞性細気管支炎1例,肝不全1例であった。21例の生存例中移植時年齢が30歳未満の14例中慢性GVHDの合併は2例のみであるのに対し,30歳以上の症例11例中7例に慢性GVHDの合併がみられた。30歳未満の慢性GVHD合併例には,Karnofsky score (KS)の低下がみられた症例はなかったのに対し,30歳以上の慢性GVHD合併例7例のうち1例をのぞいて,KSの低下がみられ,30歳以上の慢性GVHD合併患者への対処が重要と考えられた。末梢血T/NK細胞分画の検討ではCD4陽性細胞,特にCD4 * CD45RA陽性細胞の低下が特徴であり,移植後2年を経過しても健常人のレベルまで回復しておらず,さらに検討をつづける必要がある。
  • 下村 順子, 鶴見 寿, 澤田 道夫, 山田 俊樹, 原 武志, 福野 賢二, 後藤 英子, 森脇 久隆
    1999 年 40 巻 8 号 p. 639-645
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    近年,非Hodgkinリンパ腫(NHL)の腫瘍マーカーとして注目されているsIL-2Rにつき,臨床的意義を検討した。対象は,NHL 87例(未治療65例),その他各種疾患36例,計720検体である。sIL-2RはELISA法により測定した。NHLにおけるsIL-2Rは,未治療で210∼31, 197 U/ml(平均4,017 U/ml),CS I·IIに比してCS III·IVで高かった。治療前sIL-2Rが8,000 U/ml以上の症例と未満の症例の2年生存率は12.3%, 76.0% (p<0.01)であり,前者で予後不良であった。年齢,臨床病期,LDH, PS, 節外病変数にsIL-2RとCRPを加えて多変量解析を行うとsIL-2RとLDHが有意な予後因子となった。寛解にある症例のsIL-2Rの95%信頼区間上限は2,014 U/mlであった。寛解時には,sIL-2Rが2,000 U/ml程度でも必ずしも再発を示唆するものではなく,注意深い経過観察が必要となると思われた。sIL-2Rは活動期NHLにおいて病勢を良好に反映し,予後因子の一つとしても,有用な可能性があると思われた。
症例
  • 片山 俊夫, 増岡 秀一, 西脇 嘉一, 小笠原 洋治, 大坪 寛子, 小林 正之
    1999 年 40 巻 8 号 p. 646-651
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は60歳の女性。眩暈,息切れ,出血傾向,腹痛を主訴に1993年2月当院受診。肝脾腫はなく下肢にLivedo Reticularisを認めた。検査所見では汎血球減少,血液像にてtear drop cellおよびleukoerythroblastosisを認めた。骨髄穿刺はdry tapで骨髄生検により原発性骨髄線維症(PMF)と診断した。また抗核抗体陽性でBFP(+), 抗カルジオリピン抗体陽性より抗リン脂質抗体症候群(APS)と診断。その後凝固第XIII因子低下や血小板数低下のため,抜歯後止血困難となった。その後も出血と血栓症状を繰り返し,腸間膜動脈血栓症,敗血症を合併し死亡した。PMFにおいて抗核抗体陽性などの免疫異常は高頻度であるが,重篤で多彩な血栓症状を呈したAPSの報告例は稀である。出血傾向と血栓傾向に対し,治療に苦慮したPMFの1例を経験したので報告する。
  • 坊垣 曉之, 能登谷 京, 向井 正也, 河野 通史
    1999 年 40 巻 8 号 p. 652-657
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は27歳女性,妊娠20週。頭痛・嘔気・全身倦怠感を主訴に近医を受診した。乳房腫瘤を認め,検査所見にて白血球増加・貧血・血小板減少,頭部MRIにて両側に凸レンズ状の低吸収域を認めたことから当科入院となった。骨髄穿刺で芽球の増加(89.1%, ペルオキシダーゼ染色(-))を認め,CD2, CD4, CD5, CD7, CD34, CD38, CD71陽性であり染色体異常を認めた。以上より,乳房浸潤を伴う妊娠合併の急性リンパ性白血病(FAB分類L2 (T-cell type))と診断した。Japan Adult Leukemia Study Group (JALSG)のプロトコールにて加療し,寛解導入後に帝王切開を施行し母児ともに良好な経過を示している。妊娠中期以降であれば,妊娠を継続しながら寛解導入した上で分娩を行うことも選択肢の一つと考えられた。
  • 矢部 博樹, 新里 偉咲, 橋本 公夫
    1999 年 40 巻 8 号 p. 658-662
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    15歳,女性。発熱,下痢,右下腹部痛を主訴に平成9年11月5日受診。エコー,CTで腸間膜リンパ節腫大認め精査目的で入院。エルシニア腸炎疑い抗生剤を投与されるも38度以上の高熱持続。検査成績:WBC 1800/μl, LDH 550 IU/l, エルシニア抗体陰性,Ferritin 720 ng/ml, IFN-γ 264 pg/ml, IL-6 9.74 pg/ml, sIL-2R 781 U/ml, 骨髄穿刺で組織球様細胞の増加と貪食像を散見。感染性の血球貪食症候群やリンパ腫などが疑われ21日開腹し虫垂および腸間膜リンパ節を切除。病理学的に組織球性壊死性リンパ節炎と診断。虫垂には反応性リンパ装置の腫大がみられたのみで感染巣や悪性像なし。術後解熱傾向が見られ12月3日退院したが,15日から高熱,右下腹部痛とともに右頚部リンパ節腫大がみられステロイド投与,以後再燃なく経過良好である。本症が腸間膜リンパ節で発症することはきわめて稀である。また,IFN-γが著増し血球貪食像を伴いHPSと本症との関連が強く示唆された。
  • 大蔵 仙子, 日野 雅之, 西木 さおり, 河野 謙一郎, 長谷川 太郎, 中前 博久, 太田 健介, 山根 孝久, 田窪 孝行, 巽 典之
    1999 年 40 巻 8 号 p. 663-666
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は25歳女性。1993年褐色尿のため当院に入院。溶血性貧血,血小板減少,腎機能障害と破砕赤血球の出現を認め,溶血性尿毒症症候群と診断し,ステロイドと利尿剤投与で軽快した。その後,特に問題なく経過していたが,1998年,再び黒褐色尿のため当科に入院。溶血性貧血,血小板減少,腎機能障害と破砕赤血球の出現を認め,溶血性尿毒症症候群の再発と診断し,血漿輸注と血漿交換を施行し軽快した。どちらの場合も発症直前,感冒薬を服用していたことから,内服内容を調べたところ,プラノプロフェンのみ共通して服用していた。特に今回は,プラノプロフェン服用後6時間で発病していた。以上より,本症例は抗炎症剤であるプラノプロフェンによって誘発された薬剤性溶血性尿毒症症候群で,偶然に同一薬剤が再投与され,再発した,非常に貴重な症例と考えられた。
  • 工藤 寿子, 伊藤 雅文, 掘部 敬三, 岩瀬 勝彦, 小島 勢二
    1999 年 40 巻 8 号 p. 667-672
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は8カ月男児。顔色不良を指摘され,入院。入院時検査所見は赤血球数156×104l, Hb 3.5 g/dl, 平均赤血球容積66 flと高度な小球性低色素性貧血を認めたが,網状赤血球は0.5 ‰と低く,血清鉄は433 μg/dlで膵外分泌不全は認めなかった。骨髄所見は赤芽球の過形成がみられ,環状鉄芽球を18%に認めた。電顕所見では赤芽球のミトコンドリア内に鉄顆粒の沈着を認めた。以上より鉄芽球性貧血と診断し,ピリドキシン(50 mg/日)内服投与を開始したところ,網状赤血球は4日後には97 ‰と上昇し,貧血の改善もみられた。ピリドキシンの内服は2カ月間で中止したが,以後1年以上寛解を維持している。先天性鉄芽球性貧血は比較的稀な疾患であり男児に多くX-染色体連鎖性劣性遺伝と考えられている。近年,その原因のひとつとしてδ-アミノレブリン酸合成酵素遺伝子の点突然変異が発見されており,本症例でも同遺伝子のexon 5に点突然変異が認められた。乳児から幼児期は,摂取鉄量の不足により鉄欠乏性貧血が多くみられるが,鉄芽球性貧血も小児の低色素性貧血の鑑別診断の一つとして考慮すべきと思われる。
  • 松本 裕子, 森 政樹, 金井 信行, 高徳 正昭, 和泉 透, 室井 一男, 今川 重彦, 小松 則夫, 畠 清彦, 坂田 洋一, 斎藤 ...
    1999 年 40 巻 8 号 p. 673-677
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    突然の不正性器大量出血にて来院した20歳女性。重度の貧血と血小板減少を認め,搬送中に突然心肺停止状態となり,緊急輸血,蘇生を試みたが反応なく,死亡した。剖検時,末血の破砕赤血球,溶血所見,多臓器血栓病変の存在より血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と診断したが,病理組織所見,血清学的診断により,全身性エリテマトーデス(SLE)に罹患していたことが判明した。TTPとSLEとの合併例の報告が近年増えているが,その病態およびSLEからのTTPの発症の機序は明らかではない。本症例ではSLEに伴う血管内皮障害からTTPが惹起され,更に月経が重なったことで出血過多となり激症型の経過をたどったものと考えた。また,抗カルジオリピン抗体陽性,リンパ濾胞での血球貪食像など特異な自己免疫現象を確認し,これらも臨床経過に関与した可能性が示唆された。
  • 神野 正敏, 中村 忍, 魚谷 知佳, 寺崎 靖, 池野 恒久, 奥村 廣和, 又野 禎也, 服部 憲尚, 経田 克則, 澤崎 愛子, 近藤 ...
    1999 年 40 巻 8 号 p. 678-684
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    胸膜に原発する悪性リンパ腫は,ほとんどが慢性膿胸後に発生する。今回,慢性膿胸を伴わない胸膜原発非Hodgkinリンパ腫を経験したので報告する。症例は63歳,女性で結核の既往はない。住民検診にて右胸水を指摘され入院した。肝,脾,表在性リンパ節は触知せず,胸部X-P, CTにて右大量胸水と胸膜に腫瘤を認めた。胸膜針生検でDiffuse large B-cell non-Hodgkin's lymphomaと診断され,臨床病期はIE期であった。胸水中にはリンパ腫細胞は証明されず,抗酸菌検査は陰性であった。末梢血,胸水浮遊リンパ球でhuman herpes virus 8 (HHV-8) DNAが検出された。胸膜腫瘤生検組織のEB virus encoded small RNAs (EBERs), HHV-8 DNAはともに陰性であった。化学療法にて一旦完全寛解となったが,約8カ月後に再発し,サルベージ治療を継続中である。慢性膿胸やカポジ肉腫を先行せず,大量胸水を伴い胸膜に原発した非Hodgkinリンパ腫は稀である。
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