臨床血液
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41 巻, 4 号
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第41回総会
教育講演1
教育講演2
教育講演3
教育講演9
シンポジウム5
慢性骨髄性白血病
―分子理論からみた治療戦略―
臨床研究
  • (I) 受診全83例の臨床像について
    都築 基弘, 井野 晶夫, 長谷川 明生, 宮崎 仁, 小島 博嗣, 丸山 文夫, 岡本 昌隆, 松井 俊和, 江崎 幸治, 平野 正美
    2000 年 41 巻 4 号 p. 296-302
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    1984年8月から1998年1月までに受診した高齢者(60歳以上)AML全83例の特質を明らかにするために同時期に受診した若・壮年者(15∼59歳)114例と臨床像および検査所見の比較検討を行った。高齢者AMLは,白血病細胞側の特徴としてはMDS先行AMLが多く,de novo AMLのFAB分類ではM3が少なく,M0, M1の多い傾向がみられた。染色体検査では予後不良とされる5番,7番染色体の異常が多くみられ,予後良好な15;17転座,8;21転座,16逆位は少なかった。また白血病芽球のミエロペルオキシダーゼ陽性率50%未満の症例が多くみられた。宿主側の特徴としては,検査所見では末梢血芽球比率,総蛋白低値,フィブリノーゲン,クレアチニン高値を示した。performance status 3および4の症例が約40%を占めており,診断時肝障害,心疾患,明らかな感染巣を有する症例が多くみられた。高齢者AMLは若・壮年者に比し多くの予後不良因子をもつ集団であることが示された。
  • (II) 受診全83例の治療と予後について
    井野 晶夫, 都築 基弘, 長谷川 明生, 宮崎 仁, 小島 博嗣, 丸山 文夫, 岡本 昌隆, 松井 俊和, 江崎 幸治, 平野 正美
    2000 年 41 巻 4 号 p. 303-309
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    1984年8月から1998年1月までに受診した60歳以上の高齢者AML全83例(年齢中央値71歳)について,治療とその成績をretrospectiveに検討した。治療の行われた78例では36%に完全寛解(CR)が得られ,全生存期間中央値は227日であった。予後因子の解析ではCR導入効果,生存期間のいずれについても5番,7番染色体の異常のほか,導入療法でのdaunorubicin (DNR)投与量120 mg/m2/course未満(cytarabine少量療法の有無に関係なく)が不良因子として挙げられた。導入療法でDNRが120 mg/m2/course以上(中央値176)投与された群は全体の41%に過ぎないが,ほかの治療群と比べCR率は56%と有意に高く,生存期間中央値も389日と有意に延長していた。低年齢でperformance statusの良好な,選択された高齢者AML症例に対しては強力化学療法が有効であることが示唆された。
  • 北林 淳, 廣川 誠, 堀内 高広, 川端 良成, 三浦 亮, 佐久山 雅文, 仁村 隆, 新津 秀孝
    2000 年 41 巻 4 号 p. 310-315
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    当科で施行した同種造血幹細胞移植60例における肺合併症(間質性肺炎,閉塞性障害を合併した肺疾患)について検討した。間質性肺炎は12例にみられ,特発性間質性肺炎7例,CMV肺炎2例,カリニ肺炎1例,HSV肺炎1例,HHV-6肺炎1例であった。CMV肺炎2例,カリニ肺炎1例,HHV-6肺炎は死亡。遅発性間質性肺炎を合併した2例は,原因としてHSV, HHV-6の関与が疑われ,原因診断のため気管支肺胞洗浄液からのウイルスDNAの検出が有用と考えられた。閉塞性障害を合併した肺疾患と診断されたものは4例で,全例に慢性GVHDの合併がみられ,遅発性間質性肺炎の先行がみられた。3例は呼吸不全のため死亡。2例において非定型抗酸菌が検出された。閉塞性障害を合併した肺疾患の原因として慢性GVHDがあり,治療として慢性GVHDに対する治療が重要である。また,呼吸不全悪化の要因として非定型抗酸菌感染の関与が推定された。
  • 宮嶋 剛, 伊藤 武善, 下島 ひろみ, 八田 善弘, 沢田 海彦, 堀江 孝至
    2000 年 41 巻 4 号 p. 316-321
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    造血幹細胞移植後の造血機能の回復を知るために,顆粒球の量的および質的動態を反映する顆粒球エラスターゼ(GE)を,移植後,経時的に測定し,GEと血球の回復状況の比較,造血因子や移植幹細胞が異なる条件下でのGEの変動を検討した。移植後,GEは同種移植で3.0日,自己移植では2.3日,末梢白血球より早期に上昇し,末梢血白血球が増加する以前に顆粒球産出が開始されている事が示された。また,幼若網状赤血球や単球よりGEの回復が先行する事から,移植後の造血機能評価としてGEがもっとも鋭敏と考えられた。G-CSF投与群とM-CSF投与群とで移植後のGE回復日数に差を認めず,両群の顆粒球刺激効果には差がないと判断された。移植後のGEの変動では,末梢血幹細胞移植は骨髄移植と比較し有意にGEの最低値が高く,末梢血幹細胞移植時の持続的な顆粒球産出が推測された。GE測定は白血球回復を敏感に捕え,また顆粒球増殖の全体像を反映する事から,移植前処置の骨髄抑制の指標やサイトカインによる顆粒球産出の評価に応用できると考えられた。
  • 遠藤 知之, 澤田 賢一, 藤本 勝也, 山本 聡, 高島 英典, 長谷山 美仁, 西尾 充史, 小泉 和輝, 小池 隆夫
    2000 年 41 巻 4 号 p. 322-328
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    HBs抗体陽性例からHBVの再活性化によるB型肝炎の発症は,同種骨髄移植などにおいては報告されているが,自家末梢血幹細胞移植(APBSCT)後の頻度やrisk factorを検討した報告はこれまでない。当科においてAPBSCTを施行した47例中3例が移植後B型肝炎を発症した。3例はいずれも多発性骨髄腫の症例で,移植前HBs抗体陽性であった。輸血からの感染は否定的であり,その他の原因も否定できることから,潜伏していたHBVの再活性化が原因と考えられた。この3例をB型肝炎を発症しなかった移植前HBs抗体陽性例(21例)を対照として比較すると,移植前のHBs抗体価が低い傾向にあり,移植後のステロイドの使用量は有意に多かったが,移植前のHBc抗体価や移植後の輸血量には差がなかった。APBSCT前にHBs抗体が陽性であっても,免疫能の低下によるHBVの再活性化によるB型肝炎の合併に留意する必要がある。
症例
  • 佐藤 伸二, 斎藤 保, 秋葉 次郎, 加藤 裕一, 鈴木 啓二郎, 吉野 真人, 田嶋 克史, 林 朋博, 加藤 丈夫
    2000 年 41 巻 4 号 p. 329-333
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    39歳の男性が腹満感を主訴に来院した。腹部には大量の腹水を認め,その腹水中に多数のリンパ系細胞をみた。細胞は塗抹標本でFAB-L3, クロット標本でsmall noncleaved cellリンパ腫の形態を示し,表面形質はCD10, CD19, CD20, CD38, CD45, HLA-DR, IgMが陽性で,細胞内にはIgMとc-mycが染出された。遺伝子解析では,サザンブロットでIgHとc-myc遺伝子にクローナルな再構成を認め,これらの結果からBurkittリンパ腫と診断した。一方,身体所見,全身CT, Gaシンチなどでほかに腫瘤病変を見出さず,いわゆるprimary lymphomatous effusionと考えられた。MTX, CPM, VCR, ADM, VP16, DEXを含む強力な化学療法で速やかに寛解が得られ,その後,寛解強化維持の目的で自家PBSCTを追加した。治療終了後1年の現在,再発なく経過している。
  • 川上 恵一郎, 清崎 雅宣, 天谷 洋, 中牧 剛, 日野 研一郎, 友安 茂
    2000 年 41 巻 4 号 p. 334-340
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は54歳,女性。慢性骨髄性白血病慢性期と診断され,4年後に急性転化をきたした。芽球はペルオキシダーゼ陰性,TdT陽性で,表面マーカーはCD7, HLA-DRが高値で,CD2, CD5, CD10も弱陽性ながら発現を認め,リンパ球系の形質をわずかに有した未分化芽球性の急性転化と診断した。インターフェロンαを20日間投与したが無効のため,VP療法(ビンクリスチン2 mg/週,プレドニソロン30 mg/日)に変更した。VP療法第1週終了後,右前胸部に可動性を有する小指頭大の皮下腫瘤が出現した。腫瘤はペルオキシダーゼ陽性,TdT陰性の芽球で占められており,表面マーカーはCD13, CD33が陽性であった。本例は全身性の未分化芽球性急性転化治療経過中に,局所性の骨髄芽球性急性転化を合併した1種のmixed blast crisisで,貴重な症例と考えられた。
  • 北林 淳, 小松田 敦, 三浦 亮, 山口 昭彦, 高津 洋, 藤田 清貴
    2000 年 41 巻 4 号 p. 341-346
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    70歳男性,顔面,下肢の浮腫を訴え,当院受診した。蛋白尿,低蛋白血症を認め,ネフローゼ症候群と診断。腎生検を施行し,糸球体にメサンギウム領域の拡大,結節性病変が認められた。免疫染色で免疫グロブリンκ鎖の沈着を認めたことからlight chain deposition diseaseと診断した。血清および尿中に微量のκ型Bence Jones protein (BJP)を認め,Western blottingでκ型BJPは,2-mercaptoethanol処理前で分子量約66,000, 処理後で約33,000と通常のBJPと比較し高分子であることが確認された。骨髄では異型性のあるplasma cellを認め,免疫染色でκ鎖が陽性であった。骨髄単核球融解溶液のWestern blottingでも分子量約33,000のκ型BJPを認め,異型性のあるplasma cellがこのBJPを産生していると考えられた。本症例のBJPは通常より高分子であり,構造異常が示唆され,組織に沈着しやすい原因と考えられた。
  • 高井 和江, 真田 雅好
    2000 年 41 巻 4 号 p. 347-353
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は72歳女性。1996年10月重症再生不良性貧血と診断し,蛋白同化ステロイド,cyclosporin Aで治療したが効果みられず,大量の血小板および赤血球輸血を必要とした。1997年9月ATG療法を施行したが汎血球減少が進行し,1998年5月MDS (RAEB)への移行と診断した。染色体分析でmonosomy 7を12/20細胞に認めたが,次第に汎血球減少は改善し,8月より輸血不要となった。12月急性骨髄性白血病(FAB-M6)へ移行,monosomy 7 100%であったが,Hb 13.2 g/dlまで改善した。しかし1999年5月急激な芽球の増加あり,FAB-M4への移行と診断し,少量Ara-C, aclarubicinなどで治療したがコントロール困難で8月死亡した。本例は免疫抑制療法後monosomy 7を伴うMDS (RAEB)へ移行するとともに輸血非依存性となった重症再不貧で,再不貧と低形成性MDSとの関連を示唆するとともに,異常クローンによる造血機能の改善を示す興味ある症例と思われる。
短報
  • 田中 由香, 小松 弘幸, 石井 一慶, 中村 文彦, 林 孝昌, 沢田 仁, 大野 陽一郎, 今中 孝信
    2000 年 41 巻 4 号 p. 354-357
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    It has been shown that arsenic trioxide (As2O3) may induce hematologic remissions in patients with acute promyelocytic leukemia (APL) refractory to all-trans retinoic acid (ATRA). We reported on a patient with ATRA and drug-resistant APL that was successfully treated with As2O3. The patient had been given a diagnosis of typical APL and was treated with ATRA and chemotherapy for 12 months. He achieved complete remission (CR), but leukemia relapsed with 43% APL cells in the bone marrow in the 16th month of treatment. ATRA and cytarabine plus daunorubicin were administered; however, the APL cells in the bone marrow increased to 97.2%. As2O3 was initiated intravenously, and bone marrow showed a decrease of APL cells (6.7%) and a partial differentiation after 9 days. The patient received idarubicin (IDA) and steroid pulse because of the development of ATRA-like syndrome, and achieved CR 37 days after the initiation of As2O3. He received an additional 2 courses of As2O3 with IDA, and is in CR. These results demonstrated the therapeutic efficacy of As2O3 in treating ATRA and drug-resistant APL.
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