臨床血液
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41 巻, 8 号
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臨床研究
  • 藤井 浩, 植田 豊, 中川 均
    2000 年 41 巻 8 号 p. 621-627
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    自家末梢血幹細胞移植(PBSCT)施行後6カ月以上経過観察された109例(急性骨髄性白血病18例,急性リンパ性白血病7例,非Hodgkinリンパ腫52例,Hodgkin病5例,多発性骨髄腫16例,慢性骨髄性白血病1例,骨髄異形成症候群3例,固形腫瘍7例)において,二次性固形癌の発生頻度の検討を行った。移植後14∼43カ月で,4例に二次性固形癌の発生が見られた(肺の大細胞癌,直腸の腺癌,肝臓の胆管細胞癌,口腔底の扁平上皮癌と胆嚢の腺癌)。基礎疾患別では非Hodgkinリンパ腫52例中3例に,多発性骨髄腫16例中1例に見られた。年齢別では,移植時の年齢が50歳台であった31例中1例に,60歳台であった31例中3例に二次性固形癌が発生した。二次性固形癌の累積発生率はKaplan-Meier法で算定すると,8年間で8%であった。auto-PBSCTでは移植後の二次性固形腫瘍の発生率が高く,特に60歳以上の症例では注意して経過観察する必要がある。
症例
  • 松井 利充, 井之上 竜一, 梶本 和義, 為金 現, 岡村 篤夫, 片山 義雄, 下山 学, 千原 和夫, 斎藤 あつ子, 辻 正義
    2000 年 41 巻 8 号 p. 628-634
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は40歳,男性。輸血1カ月後に,発熱と黄疸をきたし近医に入院。溶血性貧血の診断にて副腎皮質ホルモンの投与を受けた。大量投与時は軽快するも漸減にて再発を繰り返すため,原因精査のため,99年5月本院に転院となる。末梢血塗抹標本にて赤血球内への原虫の寄生が見つかり,遺伝子診断の結果Babesia microtiと診断された。塩酸キニーネとクリンダマイシン2週間の投与により原虫血症は速やかに改善したが,PCR法にて原虫の残存が確認されたため,アトバクトンの追加投与を行い退院した。退院1カ月後より,原虫血症そして発熱性溶血の再燃が認められ,再度塩酸キニーネとクリンダマイシンの長期継続投与を行い寛解となる。本例は無症候性キャリアーからの輸血により感染した,本邦第1例のバーベシア症である。病因診断前よりのステロイド投与は溶血を軽減したが,特異抗体(IgG)の産生を抑制し,治癒が遷延したと考えられる。
  • 谷川 元昭, 玉木 茂久, 藤枝 敦史, 宮下 博之, 田中 匡介, 市岡 希典, 谷口 正益, 辻 幸太, 宮西 永樹
    2000 年 41 巻 8 号 p. 635-640
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は52歳,女性。1997年4月腰痛,臀部痛を訴え,同年9月には貧血,高Ca血症,腎障害を認め,IgAλ型骨髄腫(stage IIIA)と診断された。同年11月より,VMMD-IFN療法を施行,M蛋白の改善,腰痛,臀部痛の軽減を認めた。2回目のVMMD-IFN療法後,有効と評価し経過観察するも,1998年4月腰痛が悪化し,同年7月転倒,左大腿骨骨折を認め再入院した。M蛋白は低下するも,高熱,高Ca血症,腎障害,LDHの上昇,貧血,血小板減少を認め,骨髄像では,染色体異常を伴った異型性の強い大型の骨髄腫細胞(CD19-, CD38+, CD56+)を30%認めた。3回目VMMD療法を施行後,一時的に病状は改善するも,再度悪化し,頭部および顔面,骨盤内に髄外腫瘤を認め,VAD療法を施行するも,効果なく再燃後約2カ月で死亡した。本例は,末期に劇症型多発性骨髄腫に移行した比較的稀有な一例であった。
  • 寺崎 靖, 近藤 恭夫, 魚谷 知佳, 神野 正敏, 山崎 雅英, 奥村 廣和, 中村 忍, 中尾 眞二
    2000 年 41 巻 8 号 p. 641-647
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    夫婦1: 74歳女性,左腋窩リンパ節生検にてdiffuse large B-cell lymphoma (DLBL)と診断された。約6カ月後に79歳の夫が右下顎リンパ節生検にてDLBLと診断された。妻は部分寛解となったが再燃し死亡,夫は寛解に至らず腎不全にて死亡した。夫婦2: 86歳男性,左腋窩リンパ節生検を施行され,DLBLと診断された。約4年後に86歳の妻が左腋窩リンパ節生検にてDLBLと診断された。化学療法を施行,夫は完全寛解となり生存中であり,妻は部分寛解となったが再燃し死亡した。われわれの症例では,EBウイルスやHTLV-Iが発症に関与しているという可能性は考えにくく,また環境因子の関与も確認されなかった。ほかの未知の因子の存在が夫婦間のリンパ腫の発症に関連している可能性もあるのではないかと思われた。
  • 佐藤 勉, 古川 勝久, 平山 泰生, 佐藤 康史, 信岡 純, 栗林 景晶, 井山 諭, 高田 弘一, 萩原 誠也, 高橋 祥, 加藤 淳 ...
    2000 年 41 巻 8 号 p. 648-652
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例はsystemic lupus erythematosus (SLE)に罹患している48歳の女性。clomipramine hydrochlorideの内服を開始した後に正球性正色素性貧血が出現した。網状赤血球は低値で,骨髄穿刺は選択的な赤芽球低形成を呈したため,pure red cell aplasia (PRCA)と診断した。貧血は同薬剤の中止によって改善した。いくつかの薬剤がPRCAの原因として知られているが,clomipramine hydrochlorideの報告はない。また,SLEを基礎疾患に有していたことは,薬剤性PRCAの発症機序として免疫異常を示唆していると考え報告する。
  • 町井 理江子, 武藤 章弘, 岡野 裕, 秋月 正史, 勝俣 康史
    2000 年 41 巻 8 号 p. 653-657
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は73歳,男性。急激に発症した背部痛と下肢の麻痺で入院した。胸椎のガドリニウム造影MRIで第4∼6胸椎レベルで右後方から脊髄を圧排する硬膜外脊髄腫瘤と第5∼6胸椎体の増強像を認めた。速やかに椎弓切除術が施行されたが,麻痺は改善しなかった。生検像では,細胞質のわずかな未分化な非特異的円形細胞の集塊がみられ,抗ミエロペルオキシダーゼ抗体に陽性反応を示し,顆粒球肉腫と診断した。2カ月後,前胸壁に転移と思われる顆粒球肉腫が出現した。両腫瘤に対し放射線療法を施行したところ腫瘍は縮小した。しかし,経過中に敗血性ショックで死亡した。顆粒球肉腫の多くは骨髄性白血病や骨髄増殖性疾患の経過中にみられ,本例のような骨髄病変を認めない「非白血病性」の顆粒球肉腫(“nonleukemic” granulocytic sarcoma)は稀で,これまでに8例の症例報告がみられるにすぎない。
  • 坂井 晃, 片山 雄太, 水野 晶子, 蔵本 憲, 瀧本 泰生, 藤元 貴啓, 佐々木 なおみ, 木村 昭郎
    2000 年 41 巻 8 号 p. 658-663
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は72歳,女性。特発性血小板減少性紫斑病と自己免疫性肝炎に対し約3年間プレドニンおよびイムランを投与し軽快したが,血清中にIgG-κ型のM蛋白を認めた。骨髄中には形質細胞の増加はなく,小腸と大腸に腫瘤を認めた。病理組織学的にIgGおよびκ陽性のMALTリンパ腫と診断し,THP-COP療法を施行したところ腫瘍の縮小とともに血清中IgG値も正常化した。以上より血清中のIgG-κ型M蛋白はMALTリンパ腫由来と考えられ,その原因に免疫抑制剤の投与も疑われた。
  • 五明 広志, 村山 徹, 幸福 淳子, 水野 石一, 梶本 和義, 小泉 民雄, 井本 しおん
    2000 年 41 巻 8 号 p. 664-670
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は51歳,男性。1997年5月,血小板減少(0.4×104l), 出血傾向にて入院となった。骨髄像はやや低形成で巨核球は減少し,micromegakaryocyte, 低分葉巨核球等の形態異常を認め,MDS, RA (refractory thrombocytopenia; RTC)と診断した。染色体分析では,分析された20細胞全てに46, XY, t(5;7)(q31;q22)を認めた。血小板輸血等で経過観察していたが,1998年11月頃より末梢血中白血球,単球数が増加し,同年12月には単球数は3,000/μlを越え,慢性骨髄単球性白血病(CMML)へ移行した。白血球数の増加とほぼ平行して顔面の有痛性紅斑,眼内炎等,頭頚部領域にさまざまな炎症像を呈した。また,治療目的でIFNαを投与したところ,逆に白血球数,単球数は著増した。5q31を含む染色体異常が,IFNα投与後の白血球,単球数の増加と関係している可能性が疑われた。RTCからCMMLへの移行例は稀であり,本症例の病態と遺伝子異常との関連を解析することが重要と思われた。
  • 初瀬 真弓, 岡野 晃, 岡本 昭夫, 志村 和穂, 高橋 良一, 平位 秀世, 芦原 英司, 稲葉 亨, 藤田 直久, 島崎 千尋, 中川 ...
    2000 年 41 巻 8 号 p. 671-675
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は21歳,男性。1997年3月慢性骨髄性白血病(CML)と診断された。IFN療法が行われたが,1998年12月に付加的染色体異常(+8)が出現し,細胞遺伝学的に移行期と考えられた。ドナーが得られず,自家末梢血幹細胞移植(auto-PBSCT)を計画した。1999年1月mini-ICE療法(IDR, AraC, ETP)にG-CSFを併用し,計12×106/kgのCD34陽性細胞を採取した。PBSC中のPhはFISHで1%であった。3月にBU+CYの前処置後,5×106/kgのCD34陽性細胞を移植し,血球回復は好中球>500/μl, 血小板>5万/μlがそれぞれ20日,38日であった。移植1カ月後の骨髄染色体分析は,すべて46XYでFISHでは2.6%であったが,6カ月後の骨髄では47XY, Ph+8(4/20)が出現した。IFN抵抗性CMLにおいて,mini-ICEによりFISHレベルでPh陰性の幹細胞を採取し安全にauto-PBSCTを行えた。ドナーのない症例,IFN抵抗例においてauto-PBSCTは治療選択肢の一つとなる可能性が示唆された。
  • 山口 光子, 長田 薫, 浜口 裕之
    2000 年 41 巻 8 号 p. 676-680
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は19歳,女性。倦怠感,紫斑,頭痛を主訴に当科初診。血液検査にて溶血性貧血,血小板減少,クームス試験陰性,破砕赤血球を多数認めたため,発熱,腎障害,神経症状は欠いたがTTPと診断した。ステロイド,アスピリン,ジピリダモールを投与しつつ,新鮮凍結血漿輸注にて一旦改善したが,輸注漸減に伴い悪化した。血漿交換を隔日施行中であったが意識障害,腎障害も出現したため,連日の血漿交換,ビンクリスチン投与,ステロイドパルスを行い,諸症状,検査値とも一時的に改善した。しかし血漿交換の漸減による再燃をくり返したためシクロスポリンを併用した。それでも血漿輸注を漸減できなかったため脾摘を行った。術後一過性に増悪したが血漿輸注のみで回復,その後血漿輸注を中止しても再燃せず,寛解に至った。シクロスポリンと脾摘で寛解が維持されており,難治性TTPに自己免疫が関与していることを示唆する症例と考えられた。
  • 遠藤 知之, 澤田 賢一, 藤本 勝也, 山本 聡, 高島 英典, 長谷山 美仁, 西尾 充史, 小泉 和輝, 小池 隆夫
    2000 年 41 巻 8 号 p. 681-686
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    凍結細胞からのCD34+細胞純化は,凝集塊の形成による回収率の低下などのため,臨床応用されている報告例は少ない。われわれは,悪性リンパ腫の一例に,凍結細胞からCD34+細胞の純化を行い自家末梢血CD34+細胞選択移植を施行した。症例は49歳,女性。NHL (follicular mixed, B cell, stageIVA)の診断で,化学療法7コース後にPBSCを採取し凍結保存した。しかし採取細胞の検索にてIgH遺伝子再構成を認めたため,大量化学療法による前処置後に,凍結保存していたPBSCからCD34+細胞の純化を行い移植した(CD34+細胞数=1.97×106/kg, CD34陽性率=72.2%, CD34+細胞回収率=65.0%)。移植に伴う重篤な副作用は認められなかった。また,移植後11日目に顆粒球数>500/μl, 21日目に血小板数>50,000/μlとなり凍結細胞からの純化移植においても通常のPBSCTと比べ生着の遅延はなかった。
短報
  • 蟹沢 祐司, 川西 奈々恵, 久居 弘幸, 荒谷 英二, 秋山 剛英, 高張 大亮
    2000 年 41 巻 8 号 p. 687-689
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
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    A 54-year-old man was referred to our hospital because of petechiae and pancytopenia. Bone marrow aspiration showed a normocellular marrow with 92.4% promyelocytes. PML/RARα mRNA was detected by reverse transcription polymerase chain reaction. On the basis of the above data, a diagnosis of acute promyelocytic leukemia (APL) was made, and treatment with all-trans retinoic acid (ATRA) at a dose of 60 mg/day was begun. Fourteen days after the start of treatment, the patient developed paralytic ileus, accompanied by hyperleukocytosis, high fever, renal dysfunction and elevation of the serum FDP level. There was no evidence of infection. At this time, retinoic acid syndrome was suspected, and therefore steroid pulse therapy was started, which led to an improvement of the symptoms within four days. This case suggests that ATRA may have an adverse effect on the small intestine, causing paralytic ileus.
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