臨床血液
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42 巻, 11 号
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総説
症例
  • 手塚 徹, 杉田 完爾, 佐藤 広樹, 宇野 佳奈子, 山川 直子, 合井 久美子, 犬飼 岳史, 中澤 眞平
    2001 年 42 巻 11 号 p. 1096-1100
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/07/28
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    Human parvovirus B19 (HPV-B19)は溶血性貧血を有する患者に感染すると無形成発作を引き起こすことが知られているが,健常者に感染して造血障害を来すことはきわめてまれである。われわれはHPV-B19感染症による一過性の骨髄異形成(myelodysplasia)が疑われた健康小児例を経験したので報告する。症例は鼻出血を主訴に入院した5歳男児で,貧血(Hb: 8.4 g/dl)と軽度の白血球減少(3,000/μl)に加え末梢血液検査で著明な血小板減少症(1,000/μl)を示した。骨髄検査では3系統のmyelodysplastic changeを認めたが,芽球,巨大前赤芽球,巨核球の増多は認めなかった。赤血球輸血と血小板輸血で経過を観察したところ,汎血球減少症とmyelodysplastic changeの所見は自然に回復した。HPV-B19の血清学的検査で,特異的IgG抗体の有意な変動が認められ,HPV-B19感染症による一過性のmyelodysplasiaが疑われた。
  • 荻野 淳, 川勝 千桂子, 平澤 晃, 佐藤 忠嗣, 河村 俊治, 西川 哲男, 若林 芳久
    2001 年 42 巻 11 号 p. 1101-1104
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/07/28
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    症例は43歳,男性。著明な肉眼的血尿および尿閉で当院泌尿器科を受診し,凝血塊による膀胱タンポナーデのため同科に1999年8月20日入院。保存的治療で血尿は自然軽快した。腹部CT・エコー・MRIで両側の腎に充実性腫瘤が認められ,腎動脈造影で乏血管性腫瘤と診断された。超音波ガイド下経皮的針生検で非Hodgkinリンパ腫と診断され,内科に転科。ほかの部位には明らかなリンパ腫病変は認められず,NHL (diffuse mixed, B cell type, CSIIA)と診断した。THP-COP療法で腫瘍は著明に縮小し,現在も寛解を維持している。本症例は著明な血尿による膀胱タンポナーデで発症し,化学療法が奏効した点で貴重な症例と考え報告する。
  • 野吾 和宏, 伊藤 満, 島田 秀人
    2001 年 42 巻 11 号 p. 1105-1110
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/07/28
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    急性リンパ性白血病第一寛解期の54歳女性に,HLA-A抗原1座不適合の姉より未処理骨髄を移植した。前処置はcyclophosphamide+TBI, GVHD予防はtacrolimus+短期MTXを用いた。移植後第36病日にgrade I皮膚GVHDが生じたが自然消退した。第61病日より発熱を伴い急速に増大する頸部リンパ節腫脹が生じた。生検にてLCA, L26, LMP-1陽性の異型性を有するリンパ系細胞の増殖を認め,EBV-LPDと診断した。Tacrolimusの中止後,ドナーリンパ球(CD3陽性細胞として1×106/kg)輸注(DLI)により寛解を得た。本症例は,HLA1座不適合以外に,重症GVHDやそれに伴う強力な免疫抑制療法,ATGの使用といった危険因子のない血縁者間同種骨髄移植後にもEBV-LPDを発症しうること,また1座不適合移植であっても,免疫抑制療法の軽減およびDLIが有効な治療となりうることを示した点で示唆に富むと考えられた。
  • 安井 昌博, 岡村 隆行, 坂田 尚己, 井上 雅美, 八木 啓子, 吉本 寿美, 馬渕 理, 佐野 光仁, 河 敬世
    2001 年 42 巻 11 号 p. 1111-1116
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/07/28
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    多剤併用化学療法に抵抗性となった慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)の2例に,HLA2座(A, B)不一致の父親からCD34陽性細胞を採取し同種幹細胞移植を行った。1例目は化学療法にまったく不応,臨床症状および検査所見の増悪時期の移植で,生着はみたもののday 18でVODを発症しday 26に死亡した。2例目は化学療法が部分的に有効で全身状態が良好な時期の移植であった。移植後,グラム陽性球菌(Streptococcus viridans)による感染症で悩まされたが,現在移植後23カ月寛解を維持している。CAEBVは致死的疾患であり全身状態が良好な時期に移植を行うことが根治を目指すうえで重要である。造血幹細胞移植が必要であるがHLA適合ドナーのいない患者にはCD34陽性細胞移植は有用な方法であると考えられた。
  • 村山 圭, 渋谷 温, 石井 佐織, 佐々木 望
    2001 年 42 巻 11 号 p. 1117-1121
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/07/28
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    小児では慢性骨髄性白血病(CML)の発生頻度は少なくpriapism(持続勃起症)に遭遇することは稀である。今回priapismを主訴に来院しCMLと診断し,内陰部動脈塞栓術を施行した小児例を報告する。症例は14歳,男児。1999年10月より腹部膨満感と発熱が出現。11月8日より4日間勃起が持続したため入院となった。末梢血液像はWBC 510,000/μl, Hb 6.5 g/dl, Plt 640,000/μl。骨髄系細胞は過形成を呈し,染色体分析でもPh1陽性のためCMLと診断。Priapismに対して瀉血やウロキナーゼ投与を試みるも無効だった。血管造影にて陰嚢部分からの静脈還流を認めたため,内陰部動脈塞栓術を施行した。これにより壊死に陥ることなく勃起は改善した。現時点で性機能の回復は得られていない。内陰部動脈塞栓術はCMLに伴うpriapismの治療の一つとして有効と考えられた。
  • 曽田 学, 臼杵 憲祐, 足立 裕子, 風間 啓至, 壹岐 聖子, 浦部 晶夫
    2001 年 42 巻 11 号 p. 1122-1127
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/07/28
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    症例は18歳,女性。1999年10月16日に貧血のため当院に入院した。入院時検査所見はHb 3.8 g/dl, Ht 11.1%, Ret 2,200/μl, WBC 3,500/μl, Plt 38.5×104lであり,骨髄は正形成で(NCC 20.0×104l), Mgk 144/μl, 赤芽球が著減しており,赤芽球癆と診断した。10月20日からステロイドパルス療法を施行したが反応なく,11月1日よりシクロスポリン(CyA) 400∼450 mgの投与を開始した。しかしCyA投与にも反応なく12月1日からCyA 450 mgとPSL 60 mgに加えて抗胸腺細胞グロブリン(Antithymocyte globulin: ATG) 800 mg/日,5日間投与を開始した。ATG投与開始第7日目には網赤血球が増加し始め,20日目には32.6×104lと最高値に達した。第13日目にはHbも増加し始め,第27日目には8.5 g/dlにまで回復し12月27日退院となった。2000年12月14日現在,Hb 11.9 g/dlと経過良好である。難治性赤芽球癆に対しATG療法が有効であった詳細な報告としては本邦第1例目の報告である。
  • 川内 喜代隆, 小笠原 寿恵, 安山 雅子, 大川 真一郎, 相羽 元彦
    2001 年 42 巻 11 号 p. 1128-1133
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/07/28
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    症例は65歳,男性。1997年9月背部痛と腎機能障害を主訴に当科入院。IgDλ型M蛋白と骨髄に骨髄腫細胞の浸潤を認めIgD型多発性骨髄腫と診断し,DMVM-IFN療法にて部分寛解となった。1998年12月再発しVAD療法にて再び部分寛解となったが,1999年12月左睾丸腫瘤が出現,摘出術施行し骨髄腫の睾丸浸潤と診断された。その後,胸水,縦隔腫瘤がみられ胸腔穿刺検査で骨髄腫の浸潤を認めた。また,脊髄腫瘤と右睾丸腫瘤も出現しVAD療法等の化学療法を行うも無効で2000年6月死亡した。睾丸への腫瘤形成を伴うIgD骨髄腫の報告は稀であり,切除睾丸の病理組織で形質細胞の浸潤と一見大型リンパ腫様の細胞浸潤を伴っており両者の免疫染色の動態が異なるなど興味ある所見を呈した。
  • 川上 恵基, 渡辺 泰行, 門間 文彦, 野村 英毅
    2001 年 42 巻 11 号 p. 1134-1138
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/07/28
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    反応性濾胞が著明であったangioimmunoblastic T-cell lymphoma(以下AITL)の48歳男性を報告した。本疾患に特徴的な発熱,体重減少,皮疹,全身性リンパ節腫脹,クームステスト陽性,多クローン性高ガンマグロブリン血症がみられた。組織学的には,AITLには特異なことに濾胞構造は保存され,むしろ過形成傾向であった。淡明細胞はみられなかった。Tingible-body macrophagesが濾胞内に増加していた。濾胞間にはUCHL-1陽性の免疫芽球様細胞と血管の増生が認められた。T細胞受容体β鎖のクローナルな再構成が認められた。これらの所見より反応性濾胞を伴うAITLと診断した。6コースのCHOP療法で寛解となり診断後約2年となる現在も無病生存中。
短報
  • 山崎 悦子, 原野 浩, 藤沢 信, 小林 昭一, 小川 浩司, 石ヶ坪 良明
    2001 年 42 巻 11 号 p. 1139-1141
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/07/28
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    We report a Japanese family with Sebastian platelet syndrome. Twenty-one thrombocytopenic patients exhibited giant platelets and inclusion bodies in their granulocytes. They were thought to be related because they bore the same surname and lived within a localized area. None of them had additional clinical findings peculiar to Fechtner syndrome. Ultrastructural studies of the granulocytes were performed on four patients. The inclusion bodies in the granulocytes were different from those found in May-Hegglin anomaly, and consisted of ribosome clusters and rough endoplasmic reticula.
  • 金田 衣代, 小島 研介, 品川 克至, 石丸 文彦, 池田 和真, 新谷 憲治, 原田 実根
    2001 年 42 巻 11 号 p. 1142-1144
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/07/28
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    A 40-year-old man was admitted to our hospital because of a tendency to bleed. A diagnosis of idiopathic thrombocytopenic purpura was made, and oral prednisolone (1 mg/kg/day) was adminstered immediately. Three days after admission, hemorrhagic skin rashes highly suggestive of varicella appeared. The oral prednisolone was discontinued, and intravenous γ-globulin (400 mg/kg/day for 3 days) and aciclovir (750 mg/day for 7 days) were started. The platelet count increased to 254,000/μl over the next five days, and the skin rashes associated with varicella subsided within a week. We suggest that, in a minority of patients with varicella zoster infection, thrombocytopenia can precede the typical skin rashes, so a search for possible underlying viral infection should be made, and if necessary, immediate treatment started.
  • 福田 晃子, 原 武志, 鶴見 寿, 森脇 久隆
    2001 年 42 巻 11 号 p. 1145-1147
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/07/28
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    A 47-year-old man was admitted to our hospital with subcutaneous nodules on the bilateral lower legs and disseminated intravascular coagulation (DIC). Peripheral blood examination revealed leukocytosis with an increase of mature eosinophils, thrombocytopenia and abnormal coagulation. Bone marrow aspiration revealed an increased eosinophil count, and a diagnosis of hypereosinophilic syndrome (HES) was made. Prednisolone (PSL) therapy was not effective. Subsequent methylPSL pulse therapy followed by PSL brought about a transient improvement of the HES and DIC, but after reduction of the PSL, the HES worsened. After addition of cyclosporin A to the PSL, however, the HES improved and did not worsen.
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