約6年間,慢性骨髄性白血病(CML)にて加療を受けている61歳の女性が原因不明の発熱を繰り返すようになり,精査を目的に入院した。骨髄所見は正形成骨髄で芽球の増加はなく,Ph
1染色体以外の付加的染色体異常もなくCMLは慢性期と考えられた。骨髄生検像にて非特異的炎症像が認められ,胸部のX線写真およびCT写真にても間質性肺炎像が認められた。胃液および骨髄穿刺液培養から多数の
Mycobacterium avium complex (MAC)が検出され,播種性非定型抗酸菌症を併発したと診断した。rifampicin, ethambutol, clarithromycin, ciprofloxacin等の投与により抗酸菌は一時培養陰性化し,発熱も改善した。しかしその後再燃し,多臓器不全にて死亡した。播種性非定型抗酸菌症の合併は造血器疾患の予後を不良にするため,早期診断と早期治療が重要と考えられる。しかし,非定型抗酸菌を起因菌と同定することは困難な場合も多く,それが治療開始の遅れの原因となる。原因不明の発熱を認めた時には非定型抗酸菌症の合併も考慮に入れて,骨髄液を含む各種検体の培養を積極的におこなうことが重要と考えられた。
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