臨床血液
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43 巻, 1 号
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第43回総会
招請講演2
臨床研究
  • 村瀬 卓平, 冨田 有三, 中村 栄男
    2002 年 43 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    Intravascular large B-cell lymphoma (IVL)の中で,Asian variant of IVL (AIVL)は血球貪食症候群により特徴付けられる。臨床的には,汎血球減少症,肝脾腫を呈し,腫瘤形成を認めることは稀である。Classical IVLの特徴である皮膚,神経症状に乏しく,生前診断は困難である。1990年以降,論文化された本邦のIVL 67例につき,AIVLの臨床的診断基準に合致する45例[Asian (A)群:平均年齢66歳;男性比62%]と,同基準に合致しない22例[Classical (C)群:65歳;73%]に分け,両群の病態を比較検討した。AIVLの組織学的診断基準の一つ,血球貪食像について記載のあった症例はA群に限られていた。骨髄浸潤,発熱,高ビリルリン血症,LDHおよびCRP高値はA群に有意に多かった。神経学的異常はC群に高頻度であった。皮膚病変はC群に限られていた。IVLはAIVL(A群)とclassical IVL(C群)の2つの臨床的亜群に大別されることが明らかとなった。
症例
  • 松橋 佳子, 田坂 大象, 上原 英輔, 末光 一三, 田村 敬博, 桑島 実, 永井 雅巳
    2002 年 43 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    患者は50歳,女性。平成7年8月,血小板減少および溶血性貧血にてEvans症候群と診断。ステロイドパルス療法にて血小板数の回復を認めるも,ステロイド漸減中2回再燃し,ステロイド増量,漸減を反復。平成10年1月に再燃し,脾摘を施行した。その後のステロイドパルス療法後漸減療法にて良好な経過が得られた。ステロイド維持療法中の平成11年2月より,発熱・下痢・腹痛・嘔吐・体重減少をきたした。低補体血症,免疫複合体陽性,胸腹水,水腎症,膀胱壁肥厚を認め,膀胱鏡検査では間質性膀胱炎の所見から,ループス膀胱炎の合併と診断。膀胱組織生検では,間質の浮腫と血管の周囲に軽度の炎症細胞浸潤を認めた。ステロイドパルス療法後漸減療法を施行,補体の改善とともに臨床症状も改善。Evans症候群の経過中にループス膀胱炎が発症した例は稀なため報告する。
  • 加藤 裕一, 鈴木 啓二朗, 秋葉 次郎, 田嶋 克史, 林 朋博, 加藤 丈夫, 吉野 真人
    2002 年 43 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    腸間膜静脈血栓症(MVT)は腸管虚血の原因の一つであるが,その頻度は非常に低い。われわれは,非Hodgkinリンパ腫および赤芽球癆に合併した上腸間膜静脈血栓症例を経験した。ともにアンチトロンビン欠損症などの過凝固状態をもたらす異常は認めなかった。前者では,化学療法直後の発症であることより,抗癌剤による血管内皮障害とB型慢性肝炎の悪化による門脈圧亢進がMVTの発症に関与したと推測される。また後者では,長期間のステロイド製剤の内服による過凝固状態が誘因としてあげられる。MVTの症状は,間歇的な腹痛や腹部膨満感,まれに血性下痢などの非特異的な腹部症状が主体で病初期には看過されることが多い。幸い予後は比較的良好であるが,これは早期発見と適切な外科的処置を行うことが前提となる。臨床的に腸間膜静脈血栓症が疑われた場合,可及的早期に腹部CT等で血栓の有無を確認し,患部の外科的切除と抗凝固療法の開始を行うことが肝要である。
  • 佐野 秀樹, 菊田 敦, 伊藤 正樹, 根本 健二, 北條 洋, 大戸 斉
    2002 年 43 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は9歳,男児。急性リンパ性白血病治療後の二次性慢性骨髄性白血病に対し1998年12月にHLA一致同胞より同種骨髄移植を施行した。急性GVHDはGrade IIで,移植5カ月後より慢性GVHDがみられた。移植9カ月後に呼吸困難が出現し,methylprednisolone (m-PSL)とtacrolimusの投与をおこなったが,呼吸困難が増悪し,移植1年後に肺生検で閉塞性細気管支炎(BO)と診断した。腎機能障害にてtacrolimusの継続が困難となったため,抗胸腺細胞グロブリン(ATG)+m-PSL療法を施行した。経過中にmajor BCR/ABL mRNAが一時陽性化したが,重篤な合併症はみられなかった。現在,呼吸困難は消失し,呼吸機能検査でもV50/V25の低下とpeakflowの増加がみられており,本療法は治療抵抗性の骨髄移植後BOに有効であると思われた。
  • 松永 卓也, 藤見 章仁, 高平 尚季, 宮島 治也, 照井 健, 古川 勝久, 坂牧 純夫, 平山 泰生, 長井 忠則, 小山 隆三, 新 ...
    2002 年 43 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は25歳,初産婦。周産期科の妊婦定期検診(妊娠16週)にて,正球性正色素性貧血(ヘモグロビン6.7 g/dl)を初めて指摘された。当科へ入院後,サイトメガロウイルス(CMV)の初感染を契機に発症した混合型自己免疫性溶血性貧血と診断した。プレドニゾロン内服による治療を開始したところ,赤血球自己抗体価とサイトメガロウイルス抗体価の低下を認めるとともに,貧血も改善し健児を出産した。これまでCMVの初感染による混合型AIHAの報告はなく,示唆に富む症例と考えられた。
  • 柳屋 憲充, 高橋 直人, 中永 士師明, 久米 正晃, 中鉢 明彦, 三浦 偉久男
    2002 年 43 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は68歳,男性。発熱,黄疸があり入院した。肝脾腫,腹腔内リンパ節の腫脹,骨髄浸潤あり,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断された。血球貪食症候群(Lymphoma-associated hemophagocytic syndrome: LAHS)を合併し,PSは4で,肝性昏睡II度であった。閉塞性黄疸と重度の肝不全,腎機能低下があり,化学療法は困難と判断し,肝・腎機能の改善とHPSによる高サイトカイン血症の是正を目的とし血漿交換と持続血液透析濾過の併用療法を施行した。同時にVEPA療法と肝門部リンパ節への放射線療法(計34 Gy)施行し,肝機能は正常化し,CT上も病変は消失し寛解となった。ELISA法でTNF-α, IL-6, IL-8を測定し,血漿交換後に血中濃度の低下を確認した。重症のLAHSにおいても血液浄化療法を併用することで悪性リンパ腫の確診が得られ,化学療法を施行できることが示された。
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