臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
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43 巻, 11 号
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総説
臨床研究
  • 三輪 啓志, 名倉 英一, 清水 一之, 仁田 正和, 市川 篤, 大野 稔人, 木下 朝博, 柴田 寿彦, 佐尾 浩, 村瀬 卓平, 竹山 ...
    2002 年 43 巻 11 号 p. 982-987
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    多発性骨髄腫18症例に対してdoxorubicin, melphalan, dexamethasoneから成る新たな化学療法,DAD療法を施行した。本治療法の目的は治療後のM蛋白最低値を十分に低いレベルに減少させ,plateau phase(以下PP)に到達する症例の増加,生存の延長につながるかにつき検討することであった。治療効果は非分泌型1例を除いた17例全例に部分寛解(奏効率100%)が得られ,17例中9例(52.9%)がPPに到達した。17例中10例(58.8%)に十分な治療後のM蛋白最低値(IgG<2,000 mg/dl, IgA<1,000 mg/dl, BJP=0 g/dl/day)が得られた。このうち6例がPPを得たが,最低値非到達症例のPPを得た割合(3/7)より有意ではなかった。17例の生存期間中央値(37.6カ月)は,以前われわれのグループが施行した化学療法VMCP(22.5カ月),MMPP(23.5カ月)による成績に比べ有意に延長したが,MMCP(29.5カ月)とは有意差を認めなかった。
症例
  • 澤田 道夫, 山田 俊樹, 鶴見 寿, 森脇 久隆
    2002 年 43 巻 11 号 p. 988-992
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は24歳,男性。発熱,鼻閉感を主訴に来院。左鼻腔に腫瘍を認め,生検ではCD45RO, CD56, MIB-1, EBER陽性の異型リンパ球の増殖を認めた。骨髄中に血球貪食像を認め,血球貪食症候群合併nasal NK cell lymphoma, 臨床病期IVBと診断した。CHOP療法開始直後よりtumor lysis syndromeを来し,多臓器不全(MOF)に陥った。集中治療により一時的に全身状態軽快したが,2週間後にはlymphoma悪化,ステロイドパルス療法を含むsalvage療法を行ったが治療直後よりMOF悪化,死亡した。剖検所見では肝脾,骨髄,リンパ節に腫瘍組織はほとんど認めず,壊死組織,線維結合織に置き換わっており,直接死因は広範な肝壊死であった。経過を通し可溶性インターロイキン2受容体,インターフェロンγ,インターロイキン18などの各種炎症性サイトカインが高値であり,これらが広範な組織障害に影響していると思われた。
  • 竹井 和大, 堀越 昶, 細川 芳文, 澤田 滋正, 堀江 孝至
    2002 年 43 巻 11 号 p. 993-997
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    今回われわれは,慢性リンパ性白血病(CLL)にネフローゼ症候群を合併し,fludarabineを使用したところCLLおよびネフローゼ症候群双方ともに寛解となった症例を経験した。症例は82歳,男性。CLL診断後1年間は無治療で経過観察されていたが,平成13年1月,低蛋白血症,蛋白尿および顔面,四肢の浮腫が出現し,次第に増悪していった。CLLのネフローゼ症候群合併と診断し,同年3月当院入院,CLLの治療薬としてfludarabine 13 mg/m2を4日間投与したところ,CLLは寛解し,さらにネフローゼ症候群も認められなくなった。我々の検索した限りでは,fludarabine投与がCLLに著効し,その合併症であったネフローゼ症候群も寛解を示したという報告は本邦では初めてである。fludarabineは,CLLのみならず,ネフローゼ症候群のようなCLLの合併症に対しても有効であると考えられる。
  • 藤見 章仁, 松永 卓也, 大西 利佳, 竹本 尚文, 田中 育太, 秋山 剛英, 佐藤 勉, 森井 一裕, 照井 健, 古川 勝久, 加藤 ...
    2002 年 43 巻 11 号 p. 998-1003
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は63歳,女性。発熱,腹痛,下痢を自覚し近医を受診した。好中球減少を認めたため,絶食と抗生剤およびG-CSFの投与により治療された。一度は軽快したが,G-CSFの投与中止により好中球減少が再燃し,腸炎を反復したため,精査加療の目的で当科へ紹介入院となった。当科に入院後,顆粒球免疫蛍光法と顆粒球凝集法により抗好中球抗体が陽性と判定され,特発性自己免疫性好中球減少症と診断した。G-CSFの投与に引き続いて,プレドニゾロンを投与することで好中球数の持続的な増加を認め,抗好中球抗体も消失した。
  • 山崎 理絵, 高山 信之, 浜埜 康晴, 森 毅彦, 岡本 真一郎, 池田 康夫
    2002 年 43 巻 11 号 p. 1004-1008
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は50歳男性。歯肉腫脹と腹部膨満感を主訴に他院を受診した。骨髄に68.2%の空胞を有するリンパ芽球を認め,急性リンパ性白血病(ALL)-L3と診断された。染色体検査では正常核型を示した。化学療法(ALL-BFM86 protcol)により完全寛解が得られた。その後寛解を維持していたが,3年3カ月後に右扁桃腫大が出現,その生検の組織像と染色体検査にて(8;14)転座を認めたことから,Burkitt's lymphomaと診断された。骨髄を含めた全身検索の結果,病変は扁桃に限局していることが確認された。扁桃のc-mycの再構成バンドのパターンが初診時骨髄のそれと一致し,同一クローンによる再発と診断された。ALL-BFM86 protcolにより再寛解が得られた。その後局所への放射線照射に続いて自家末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法を施行し,移植後2年8カ月完全寛解を維持している。
  • 早川 仁, 小浜 浩介, 太良 光利
    2002 年 43 巻 11 号 p. 1009-1013
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は55歳,男性。1997年12月,左側胸部痛,前腕痛にて当科を受診され,血清のIgG-λ型M蛋白と尿中Bence Jones蛋白,後縦隔腫瘍を指摘された。骨髄は過形成で形質細胞が73.6%を占めており,IgG-λ型多発性骨髄腫と診断した。後縦隔腫瘍に関しては,病理組織学的に確認していないが骨髄腫の髄外病変と考えられた。VAD療法,MP療法,インターフェロン療法と共に後縦隔への放射線照射を併用し,後縦隔病変も含め血液学的に寛解状態となった。1年9カ月後馬尾神経と大脳実質内へ再発を認め,髄液中には多数の形質細胞とIgG-λ型M蛋白が出現していたが,骨髄像,血清IgG値等,中枢神経以外に再発を認めなかった。本症例は,治療開始前に髄腔内に直接浸潤していた腫瘍細胞が増殖し,1年9カ月後に症状を呈したものと考えられた。治療法の進歩に伴い,その効果は期待できるが,薬剤の移行しにくい中枢神経系に病変を有する骨髄腫の症例が増加することが予想され注意が必要である。
  • 永澤 恵理子, 安部 康信, 松島 孝充, 崔 日承, 立川 義倫, 西村 純二, 稲葉 頌一, 名和田 新, 牟田 耕一郎
    2002 年 43 巻 11 号 p. 1014-1019
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は51歳,女性。47歳時に濾胞性リンパ腫(stage IV A)と診断された。化学療法・放射線療法を繰り返すも腫瘍が再増大したため,fludarabineと低線量全身放射線照射(2 Gy)という骨髄非破壊的前処置を用い,同種末梢血幹細胞移植を施行した。移植後の血球減少は軽度であり輸血を必要としなかった。末梢血キメリズム解析の結果,12カ月間という長期にわたり,T細胞混合キメラ(20%前後がレシピエント由来)が持続しているが,CT上有意なリンパ節腫大は消失し,II度の急性GVHD (graft versus host disease)がみられた。通常,移植後はドナー型完全キメラを達成することによりGVM (graft versus malignancy)効果やGVHDが得られると考えられているが,本症例はT細胞混合キメラが長期持続している状態でGVHDやGVM効果がみられたという点において興味深い。
短報
  • 鶴見 茂治, 中村 裕一, 田所 治朗, 新井 幸宏, 斉藤 憲治, 古澤 新平, 三谷 絹子
    2002 年 43 巻 11 号 p. 1020-1022
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
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    A 29-year-old woman was diagnosed as having pure red cell aplasia (PRCA) in 1983. Her serum and IgG inhibited erythroid colony formation of bone marrow cells from a normal individual, suggesting antibody-mediated suppression of erythropoiesis. She was first successfully treated with corticosteroids, azathiopurine and cyclophosphamide. However, she relapsed in 1995 and her anemia became refractory to immunosuppressive therapy. In 1998, she developed systemic lymph node enlargement and was diagnosed as having B-cell small lymphocytic lymphoma. Combination chemotherapy resulted in regression of the lesion, but failed to improve the anemia. In this patient's case, we can speculate that B cells producing autoantibodies against erythroid cells have undergone transformation, or alternatively that the immunosuppressive state caused by the PRCA therapy promoted generation of a neoplastic B cell clone.
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