臨床血液
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44 巻, 11 号
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臨床研究
  • —単一施設における7例の検討—
    竹内 誠, 吉田 功, 高橋 清
    2003 年 44 巻 11 号 p. 1069-1073
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    ATRA治療後再発急性前骨髄球性白血病(APL) 7例(初回再発5例,2回目再発2例)に対し,新レチノイド,Am-80 6mg/m2連日内服投与による再寛解導入を行い(3例は経過中白血球増加のため化学療法を併用した),全例に完全寛解を得た。寛解に至る期間は36-56日(中央値52日)。副作用は高脂血症,皮膚病変等がみられたが投与中止に至るものはなかった。寛解後は3例に同種骨髄移植が行われ,4例は化学療法による地固め療法のみが行われた。移植施行3例中2例がそれぞれ9.7カ月,28.3カ月無再発生存中(1例は呼吸器合併症併発)で,化学療法群も4例中2例がそれぞれ84.7カ月,90.1カ月の長期に渡って無再発生存中である。ATRA再発APLのAm-80による再寛解率は高く,寛解後の予後も良好である。
症例
  • 正木 康史, 董 凌莉, 下山 久美子, 河南 崇典, 福島 俊洋, 川端 浩, 小川 法良, 和野 雅治, 廣瀬 優子, 菅井 進
    2003 年 44 巻 11 号 p. 1074-1079
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    濾胞性リンパ腫の結節が,濃く染まる中心と淡く染まるcuffを有する,非定型的な‘Reverse’ variantが報告されている。今回われわれは濾胞性リンパ腫の‘Reverse’ variantと診断された症例を経験したので報告する。症例は65歳の男性。多発性リンパ節腫大,微熱,盗汗,体重減少,乾性咳嗽,前胸部圧迫感などで受診したが,近医では組織を直接ホルマリン固定し全て病理へ廻したため詳しい検索がなされず反応性リンパ節腫脹とされた。当院で再度リンパ節生検を行い,表面マーカー解析と染色体分析よりCD10, CD19, CD20, HLA-DR, IgM/D-κ陽性でt(14;18)(q32;q21)を有する濾胞性リンパ腫‘Reverse’ variantと診断した。PCRによるクロナリティ解析では,IgHだけでなく,TCRγでも一部に再構成バンドがあり,B細胞のみならずT細胞にもモノクローナルな増殖が認められた。
  • 望月 康弘, 村本 信吾
    2003 年 44 巻 11 号 p. 1080-1084
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は15歳,男性。骨髄異形成症候群,不応性貧血の診断を得た。汎血球減少の進行と出血傾向による生活制限のため,同種造血幹細胞移植を検討したが,同胞及び非血縁にHLA適合ドナーが見あたらなかったため,HLA-Aおよび-DRの2座不一致母親から未処理同種末梢血幹細胞移植を行った。移植前処置はCPA, BUS, Fluで行い,GVHD予防はFK 506と短期MTXを併用した。Day 18には生着が確認され,day 29には完全キメラが確認された。Grade IIの急性GVHDを認めたものの,ステロイド投与にて速やかに改善し,以後移植後26カ月まで順調な経過を得ている。2座不一致でありながら良好な経過が得られた原因として,母児間マイクロキメリズムによる免疫寛容と血縁間でのマイナー組織適合性抗原の良好な適合性が関与していると推測される。
  • 大橋 一輝, 御子柴 路朗, 田中 裕次, 奥山 美樹, 比留間 潔, 秋山 秀樹, 坂巻 壽
    2003 年 44 巻 11 号 p. 1085-1089
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例はMDS overt leukemiaの32歳女性患者。非寛解期に同胞間骨髄移植を施行したが,再発・拒絶のため約3カ月後に再度同一ドナーから末梢血幹細胞移植を施行した。しかし,再移植2カ月後に汎血球減少・芽球の増加を認め再再発の診断となった。GVL効果を期待し免疫抑制剤を急激に中止した後に血球減少が進行,発熱と肝障害および皮疹が出現した。これらに対しdexamethasoneを投与したところ,汎血球減少の改善と芽球の減少を認め血液学的寛解状態となった。その後ドナーリンパ球輸注を施行し,現在まで約2年間寛解状態を維持している。
  • 土岐 典子, 斉藤 泰之, 初見 菜穂子, 入沢 寛之, 佐倉 徹, 宮脇 修一
    2003 年 44 巻 11 号 p. 1090-1094
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は急性骨髄性白血病(AML, M2)の36歳男性で,2回の寛解導入療法(IDR+araC, araC大量療法)にても非寛解であった。2回目の寛解導入療法後,meningeal leukemiaを発症したが,薬剤の髄腔内投与(araC, MTX, PSL)により白血病細胞は消失した。再発予防のため週2回の髄腔内投与を継続しつつ,3回目の寛解導入療法(araC大量療法)を実施した。3回目の治療開始後37日目(MTX髄注総量135mg)に異常行動,見当識障害が出現し,39日目には昏睡となった。CTでは白質全体に低吸収域と脳浮腫が認められ,白質脳症と診断し,Glyceol, mPSL投与を行った。以後徐々に意識レベルは改善し,53日目には脳浮腫も消失した。90日目に自力歩行が可能となり,現在は血液所見も寛解で正常に生活している。
  • 秋山 暢, 大竹 浩之, 大和田 啓, 梶原 耕一, 羽山 弥亨, 郡 美佳, 平 美也子, 新津 望, 堀江 良一, 東原 正明
    2003 年 44 巻 11 号 p. 1095-1100
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は,51歳女性。16年前より混合結合組織病にて加療されていた。1999年9月,下腹部痛が出現。精査の結果,回腸末端部粘膜へのCD4陽性異型T細胞のびまん性浸潤による腸壁肥厚と潰瘍が認められた。血清抗HTLV-I抗体陽性より,成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)のリンパ腫型と診断した。VEPA-M療法などの化学療法にて部分寛解となり,治療を継続していた。2000年7月,左下肢の弛緩性麻痺と感覚障害,膀胱直腸障害が出現し,歩行不能となった。MRCTにてTh7を中心にT2強調で高信号の病変が認められ,髄液中に花弁様細胞がみられた。ATLLの胸髄浸潤と診断した。Methotrexate, prednisoloneの髄腔内投与,dexamethasoneの全身投与と30 Gyの局所放射線照射を行い,左下肢麻痺は軽快し,リハビリテーションにより歩行可能となった。
  • 石田 宏之, 森 佳奈子, 吉原 隆夫, 新 倫子, 森本 哲, 今宿 晋作
    2003 年 44 巻 11 号 p. 1101-1106
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は11歳の男児。ALLの骨髄再発のため第二寛解期に臍帯血移植を行ったが生着不全に至った。初回移植後36日目に,母子間マイクロキメリズムが証明されたHLA-A, -DRB1の2抗原不一致の母親から,非T細胞除去骨髄移植を再施行した。前処置は,melphalanとfludarabine, GVHD予防にはtacrolimusとmethotrexateを用いた。生着は,好中球(>500/μl), 網状赤血球(>1%), 血小板(>50,000/μl), それぞれ第10, 17, 18日目と速やかであった。消化管と肝に軽度の治療関連毒性,皮膚にstage 2の急性GVHD (grade I)を認めたが,他に重篤な合併症は認めなかった。移植後6カ月経過したが,慢性GVHDもなく無病生存中である。生着不全後早期の再移植であっても,HLA-A, -B, -DRB1抗原のうち2抗原不一致でマイクロキメリズム陽性の母親から,比較的安全に母子間非T細胞除去骨髄移植を行うことができる可能性が示された。
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