臨床血液
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44 巻, 5 号
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第44回総会
シンポジウム2.標準的治療のない血液疾患—治療の新たな可能性(I)—
教育講演
総説
症例
  • 田端 淑恵, 大野 辰治, 塘 賢二郎, 日下 輝俊, 波田 重英, 水本 孝, 古川 裕夫
    2003 年 44 巻 5 号 p. 313-317
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は61歳,男性。2000年10月CMLと診断。初診時Ph染色体[20/20], FISH 93.5%, IFNα/HU投与6カ月にてPh染色体[0/20], FISH 9.7%とmajor cytogenetic responseが得られたが,2カ月後に移行期に進展した。しかし,mini-ICE療法にて第2慢性期へ導入し得るとともにPh染色体陰性[0/20]でFISH 5.8%, PCR 2.7×102 copies/μg RNAの末梢血幹細胞を採取し得た。その後IFNα投与を再開したが,約2カ月後には急性転化を来した。IDR/ara-Cにて寛解に至らず,BU/CYによる前処置の後,自己末梢血幹細胞移植を施行したところ,第3慢性期への導入に成功。移植後後療法としてimatinibを投与し,13カ月たった現在もPh染色体[0/20], FISH 0.0%, PCR <102 copies/μg RNAと経過良好である。
  • 佐藤 範英, 高山 信之, 木崎 昌弘, 池田 康夫, 岡本 真一郎
    2003 年 44 巻 5 号 p. 318-322
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は45歳男性。2001年3月に骨髄異形成症候群(RAEB)と診断された。同年5月に左下肢蜂窩織炎を発症し入院となった。末梢血検査で,汎血球減少と,幼弱な顆粒球系細胞の出現を認めた。骨髄検査上,芽球比率の増加(11.2%)と,7番染色体長腕の部分欠失を含む複雑な核型異常を認めた。入院後より,多飲多尿が出現し,中枢性尿崩症と診断した。DDAVPの使用により,尿量は正常化し,同年11月に,TBI+Ara-Cを前処置として,非血縁者間同種骨髄移植を施行した。移植後も症状の再燃は認められず,DDAVPを中止し得た。白血病や骨髄異形成症候群の比較的稀な合併症として,中枢性尿崩症が報告されているが,尿崩症発症の機序は解明されていない。本例では,骨髄移植後にDDAVPを中止し得たことより,下垂体への白血病細胞浸潤が原因であった可能性が推測された。
  • 福田 智子, 木村 文昭, 渡辺 洋一, 吉野 正, 木村 郁郎
    2003 年 44 巻 5 号 p. 323-327
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    今日,組織や臓器における鉄過剰状態が,組織障害や癌化につながる可能性のあることに注目が集まっている。従来溶接工肺において,鉄貪食肺胞および肺間質マクロフアージの増加は肺内貯蔵鉄増加を,また血清フエリチンの高値は体内貯蔵鉄増加を示すとされてきた。われわれは肺に過剰の鉄が沈着した患者に対して鉄摂取制限療法を併用した瀉血療法を施行し,肺および体内貯蔵鉄のコントロールが可能であった症例を経験したので報告する。対象は2年間のアーク溶接の職歴を有する26歳の男性。胸部CTにてびまん性の肺野濃度上昇を認め,TBLBによって鉄を貪食した肺胞および肺間質マクロフアージを確認した。200 ml×15回の瀉血療法と1日8mgの鉄摂取制限療法を施行した。治療開始,約7カ月後に施行したTBLB標本上の鉄貪食肺胞および肺間質マクロフアージの減少から肺内鉄量の減少が,また,血清フエリチンの有意な低下から体内貯蔵鉄の減少が確認された。
  • 矢ヶ崎 英晃, 犬飼 岳史, 宇野 佳奈子, 赤羽 弘資, 根本 篤, 高橋 和也, 佐藤 広樹, 合井 久美子, 毛利 成昭, 高野 邦夫 ...
    2003 年 44 巻 5 号 p. 328-333
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    14歳,女児。全身倦怠感と頸部リンパ節腫脹を主訴に入院した。入院時II度の甲状腺腫を認め,WBC 2,430/μl(好中球9.0%),Hb 11.1 g/dl, Plt 5.1×104l, 骨髄の低形成像を認め特発性再生不良性貧血と診断した。また甲状腺自己抗体価が高値で,頸部CT上甲状腺左葉に腫瘍を認め,生検で慢性甲状腺炎と甲状腺乳頭癌と診断した。甲状腺左葉拡大切除術及び頸部リンパ節郭清術を施行後,汎血球減少が進行したため,cyclosporin A (CyA)とanti-thymocyte globulinを併用した免疫抑制療法を開始したところ,三血球系の回復を得るとともに甲状腺自己抗体価が急激に低下した。本症例はCyA依存性再生不良性貧血で高頻度に認められるHLA-DR2 (DRB 1*1501)と,慢性甲状腺炎で高頻度に認められるDR8 (DRB 1*0802)を保有しており,自己免疫的機序を基盤として合併したと考えられた。
  • 平山 泰生, 坂牧 純夫, 高柳 典弘, 辻 靖, 佐川 保, 千葉 大樹, 前田 征洋, 松永 卓也, 加藤 淳二, 新津 洋司郎
    2003 年 44 巻 5 号 p. 334-338
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は68歳女性。平成14年2月,Ph染色体陽性急性リンパ性白血病(ALL)と診断された。日本成人白血病治療グループのプロトコール(JALSG) ALL '97初回寛解導入療法で完全寛解(CR)に導入されず,院内倫理委員会の承認および患者への十分なインフォームドコンセントの後Imatinib mesylate (STI 571) 400 mg/day連日投与を開始した。10日間の内服でCRに導入され,その後Imatinib併用地固め療法3コースにてRT-PCRでもbcr-abl mRNAが陰性化した。その後Imatinib投与は2週投与2週休薬とし,地固め化学療法は全9コースを施行して退院となり外来維持療法を施行中である。発症より10カ月経過後の現在もRT-PCRで陰性が維持されている。合併症として,体液貯留,胸水が認められたが,利尿剤投与でコントロール可能であった。Ph陽性ALLは化学療法のみでRT-PCR法におけるbcr-ablが陰性化するのは稀である。Imatinibと化学療法の併用はPh陽性ALLに対し期待できる治療であると考えられた。
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