臨床血液
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45 巻, 11 号
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第46回総会
教育講演6
教育講演10
総説
臨床研究
  • 斎藤 宏, 前田 秀明
    2004 年 45 巻 11 号 p. 1177-1180
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    消化管出血により発症した鉄欠乏性貧血の患者に鉄剤を静注して治療後,血清フェリチンを追跡測定し,その指数関数的減少曲線から貯蔵鉄減少率(SID)を求め,出血量を測定する新しい方法を紹介した。SIDの測定法:血清フェリチンのデータを片対数グラフに記録し,治療開始日Sから血清フェリチンが減少して12μg/lになる日Eまでの日数Dを決める。注射鉄総量をT mg, S日とE日のHbの差ΔHbの鉄量をR mgとしてSIDを次式SID=(T-R)/Dで算出した。吸収も出血以外のロスもSIDへの影響は無視可能であり,血清フェリチン減少曲線は指数関数的直線性を示したのでSIDは出血ロスのみを示すと考えた。次式,V=(鉄のロス)/(平均Hb中の鉄量)を用いて消化管出血量29ml/dayを算出した。既報の慢性出血性鉄欠乏性貧血治療後の12例でもSIDを測定できたのでこの方法は他の慢性出血量の定量に利用できる。
  • 棚井 千春, 壹岐 聖子, 中原 史雄, 飯島 喜美子, 臼杵 憲祐, 桑名 正隆, 浦部 晶夫
    2004 年 45 巻 11 号 p. 1181-1186
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    75歳女性。突然,止血困難な鼻出血,口腔内出血,全身皮下出血が出現。前医にて血小板数の著明な減少を指摘され,当科紹介となった。入院時plt 1.2×104lと低値,PAIgGが軽度高値を示した。骨髄は低形成髄,巨核球数は正常範囲内であった。末梢血中のIgG抗GP IIb/IIIa抗体産生B細胞数と,血漿中のIgG抗GP IIb/IIIa抗体の著増を認め,ITPと診断した。PSL, 脾摘,他の各種治療を試みるも反応を認めず難治性であった為,抗CD20モノクローナル抗体rituximab 375mg/m2/回を計4回投与した。投与2回目より血小板増加が認められた。4回投与終了2週間後に血小板数はピーク(15.0×104l)に達し,その後8週間効果が持続した。IgG抗GP IIb/IIIa抗体産生B細胞数及びIgG抗GP IIb/IIIa抗体は,治療後血小板増加時には減少した。難治性ITPに対しrituximab投与が有効であった貴重な症例と考えられた。
  • 比留間 潔, 奥山 美樹, 大坂 顯通, 笠井 正晴, 幸道 秀樹, 高本 滋, 半田 誠, 藤井 寿一, 武藤 良知, 森 眞由美, 清水 ...
    2004 年 45 巻 11 号 p. 1187-1192
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    9医療機関を対象に,血小板輸血に関する実態調査を行った。対象となった症例は303例,全輸血回数1864回,総輸血量24455単位であった。基礎疾患は化学療法を伴う血液疾患59.7%, 化学療法を伴わない血液疾患15.5%, 造血幹細胞移植例18.5%, その他2.0%であった。血小板輸血前の患者血小板値(トリガー値)は77.1%でしか測定されていなかった。全平均トリガー値は2.2×104lであり,施設間差(最低1.3×104l, 最高3.2×104l)が認められた。厚生労働省基準のトリガー値2×104l以下が満たされていた輸血は全体の55.3%であった。1回の輸血量は10単位を主体とする施設と,15単位以上を主体とする施設に分かれたが,後者で患者あたりの総輸血量は多い傾向が認められた。血小板トリガー値を2×104l以下を遵守し,1回輸血量を10単位以下にすることで,血小板製剤を節減できる可能性が示された。
症例
  • 朴 永東, 濱田 匡章, 樋口 万緑, 岸本 朋子, 稲垣 二郎, 西口 将之, 下山 弘展, 中島 充, 中川 温子, 吉岡 章
    2004 年 45 巻 11 号 p. 1193-1197
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は13歳の男子。11歳時にanaplastic large cell lymphoma (ALCL)を発症し,化学療法で治療されたが再発した。anaplastic lymphoma kinase (ALK)が陰性の再発症例であり,根治には造血幹細胞移植が必要と考え,HLA一致の兄から同種末梢血幹細胞移植を施行した。移植後11カ月時に慢性graft-versus-host disease (GVHD)の再燃に伴ってネフローゼ症候群を発症した。腎生検の結果,膜性腎症と診断した。可溶性IL-2受容体と抗核抗体が病勢を反映しており,慢性GVHDに関連する何らかの免疫機序が膜性腎症の発症に寄与しているものと考えられた。
  • 本多 聖子, 伊藤 良和, 井口 具隆, 岡部 聖一, 指田 吾郎, 宮澤 啓介, 木村 之彦, 大屋敷 一馬
    2004 年 45 巻 11 号 p. 1198-1202
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は31歳,女性。2000年に他院にて再生不良性貧血(AA)と診断され,HLA一致同胞なくATG(ウマ),CsA, G-CSFの併用療法を施行し,その後当院紹介となった。当院初診時骨髄細胞の染色体異常なし。赤血球,顆粒球にCD59·CD55陰性血球を認め,HLA DR 1501は認めなかった。その後,副腎皮質ステロイドパルス療法を施行したが,輸血頻度が増加したため2003年5月に入院。血液学的に重症であり,骨髄は低形成で異形成なくdel(13q)(7/21 cells)を認めた。再度ATG(ウサギ),CsA, G-CSF併用療法試行し,以後も骨髄でdel(13q)(12/22 cells)を認めている。本例は免疫抑制剤投与後にdel(13q)が出現し免疫抑制剤再投与後も継続的に出現しているが,過去の報告ではdel(13q)出現時期にかかわらず治療反応性は良好とされる。今後症例のさらなる蓄積が必要と思われる。
  • 佐藤 一也, 森 政樹, 目黒 明子, 三好 拓児, 永井 正, 室井 一男, 小松 則夫, 小澤 敬也
    2004 年 45 巻 11 号 p. 1203-1207
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は16歳男性。白血病の疑いにて当科に入院したが,骨髄標本では一部にリンパ芽球の集塊を認めるのみで全体が壊死組織で占められていた。入院5カ月前より右膝関節痛を自覚しており,膝関節MRIでは大腿骨遠位端周囲に造影効果を伴う低信号域を認め,広範な骨髄壊死の所見であった。急性リンパ性白血病(ALL)と診断し化学療法にて寛解導入したところ,寛解時骨髄標本では壊死組織の消失と造血の回復を認め,膝関節痛も消失した。非血縁者間骨髄移植を施行し,26カ月間寛解を維持している。移植後に施行した膝関節MRIでは壊死組織は脂肪髄化し,その変化は可逆性であった。骨髄壊死は稀な病態であるが,本例は原疾患である白血病の治療により壊死の改善を認め,その経過を追跡できたため報告する。
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