臨床血液
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47 巻, 12 号
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Picture in Clinical Hematology
総説
臨床研究
  • ―アンケート調査結果より―
    加藤 栄史, 半田 誠, 高本 滋
    2006 年 47 巻 12 号 p. 1514-1520
    発行日: 2006/12/30
    公開日: 2008/03/14
    ジャーナル 認証あり
    血小板輸血に関する実態調査を行い, 全体を申込日と輸血日との間隔により分類し, 輸血当日の平均血小板値 (当日値) と使用基準値との比較を行った。その結果, 間隔0日即ち当日申込群での当日値は再生不良性貧血, 骨髄異形成症候群 (A群) で1.41×104l と基準値 (0.5~1.0×104l 未満) より高値であったが, 化学療法群 (B群), 造血幹細胞移植群 (C群) では各々2.08×104l, 2.1×104l と概ね基準値 (2.0×104l 未満) に近い値であった。一方, 間隔1日・2日での当日値はA群2.56×104l, B群3.15×104l, C群2.59×104l と3群とも高値であった。これは申込日から輸血日に至る血小板減少率を過大評価した結果, 申込日の血小板値が相対的に高くなっている事が主因と考えられた。このため血小板減少率の算定結果を基に間隔1日における申込参考値の設定を試みた。その結果, 申込参考値はA群1.0~1.5×104l 未満, B群3.0×104l 未満, C群3.0×104l 未満と算定された。この申込参考値の設定により予約制に伴う血小板減少率の過大評価を是正できる可能性があり, 血小板製剤の適正使用につながることが期待される。
  • ―日本血液学会・日本臨床血液学会アンケート調査に基づく「ボルテゾミブ肺障害調査委員会」よりのレポート―
    後藤 明彦, 大屋敷 一馬, 押味 和夫, 薄井 紀子, 堀田 知光, 壇 和夫, 池田 康夫
    2006 年 47 巻 12 号 p. 1521-1527
    発行日: 2006/12/30
    公開日: 2008/03/14
    ジャーナル 認証あり
    再発・難治性多発性骨髄腫に有効なプロテアソーム阻害剤, ボルテゾミブに関連した重症肺障害が最近日本から報告された。現在日本ではボルテゾミブは認可されておらず, 患者の希望に基づいて担当医師が個人輸入して使用していることより, 日本血液学会と日本臨床血液学会では代議員・評議員に緊急アンケートを送り, その実態調査を行った。この結果, 個人輸入ボルテゾミブで治療を受けた再発・難治性多発性骨髄腫46症例についての臨床データが得られた。7例 (15.2%) にボルテゾミブ治療に関連した肺障害がみられ, うち3例は呼吸障害により死亡していた。7例の肺障害症例のうち6例は何らかの造血幹細胞移植 (SCT) 施行例であり, 肺障害なしの39例中14症例と比較して有意差を認め (p=0.033, Fisher検定), 多変量解析でもSCT施行歴が危険因子である可能性 (p=0.042, odds ratio=13.140) が示唆された他, ボルテゾミブ投与時に副腎皮質ステロイドを併用した症例では肺障害のリスクが減少する点 (p=0.024, odds ratio=0.055) が独立因子として抽出された。この結果はアンケートに基づく比較的少数例の解析であり, 肺障害発生の正確な頻度や致死率は不明であるため, 正式認可後, 使用症例のデータの蓄積が重要である。また, ボルテゾミブ治療に際しては重症肺障害の可能性に十分配慮する必要があると思われる。
    なお, 当論文は日本血液学会および日本臨床血液学会編集部の許可を得た, International Journal of Hematology (vol. 84, p406~412, 2006) 発表の論文と同一内容の日本語版である。
症例報告
  • 洪 鉉寿, 青山 泰孝, 山村 亮介, 太田 忠信, 麥谷 安津子, 山根 孝久, 日野 雅之, 松本 雅則, 藤村 吉博
    2006 年 47 巻 12 号 p. 1528-1532
    発行日: 2006/12/30
    公開日: 2008/03/14
    ジャーナル 認証あり
    症例は57歳の男性。一過性意識消失に伴う交通事故により搬送されたが, 血小板減少, 貧血, 黄疸を認め入院となった。入院後に進行性精神神経症状, 溶血性貧血, 血小板減少, 腎機能障害, 発熱を認めTTPと診断された。治療前のADAMTS13活性は測定限界以下であり, そのインヒビターも検出された。度重なる血漿交換およびステロイドパルス療法を施行するも改善を認めなかったため, rituximabの投与を行ったところ, 精神神経症状の消失, 血小板増加, 貧血の改善を認めた。以降, 無治療で経過観察しているが1年以上再発を認めず, ADAMTS13活性は正常化しインヒビターも陰性化している。TTPに対して血漿交換が標準的治療になっているが, 血漿交換に不応性あるいは再燃を繰り返す難治性TTPにおいてrituximabは有効な治療法であるものと考えられる。
  • 吉見 昭秀, 田岡 和城, 仲宗根 秀樹, 飯島 喜美子, 木田 理子, 壹岐 聖子, 浦部 晶夫, 臼杵 憲祐
    2006 年 47 巻 12 号 p. 1533-1538
    発行日: 2006/12/30
    公開日: 2008/03/14
    ジャーナル 認証あり
    上矢状静脈洞血栓症 (SSST) は経口避妊薬投与後の凝固障害, DIC, 静脈洞周囲の感染, 腫瘍の圧迫・浸潤, 先天性プロテインC・S欠損症などで発症が報告されているが, 血液腫瘍に伴う発症やL-アスパラギナーゼ (L-Asp) 投与後の発症の報告は稀である。我々は成人急性リンパ性白血病 (ALL) の寛解導入療法中にSSSTを併発した症例を経験した。症例は25歳男性, 左顔面神経麻痺にて発症した。骨髄穿刺, および腰椎穿刺にてT-ALL, CNS浸潤と診断し, 1-AdVPによる寛解導入療法, 髄注を開始したところ, day29に全身痙攣が出現し, 画像検査にてSSSTと診断した。血液疾患患者において (1) リンパ系腫瘍 (特にALL), (2) L-Asp投与, (3) CNS浸潤, (4) 髄注の4点はSSST発症の危険因子である可能性があり, 神経症状出現時にはCNS浸潤や脳出血に加えてSSSTも稀ながら念頭に置く必要がある。
  • 康 秀男, 山根 孝久, 中根 孝彦, 武岡 康信, 坂本 恵利奈, 金島 広, 中前 美佳, 中前 博久, 高 起良, 望月 邦三, 林 ...
    2006 年 47 巻 12 号 p. 1539-1543
    発行日: 2006/12/30
    公開日: 2008/03/14
    ジャーナル 認証あり
    骨髄異形成症候群 (18歳女性) に対し, 平成17年5月25日に臍帯血移植を行った。前処置治療は全身放射線照射, cytarabineおよびcyclophosphamide併用療法を施行, 急性GVHD予防にはcyclosporine A (CsA) と短期methotrexateを用いた。移植後第30病日に好中球生着, 第45病日に急性GVHD II度を発症したためステロイド投与を開始した。第68病日に意識消失, 血圧上昇, 左上下肢麻痺出現後, 全身性痙攣を発症した。頭部CTでは右基底核にmass effect, MRIでは両側基底核, 両側後頭葉に高信号が認められ, 腫瘍あるいは感染病変が疑われた。しかしapparent diffusion coefficient (ADC) map, 髄液検査の検討により血管性浮腫によるmass effectが疑われ, 非典型的CsA脳症を考えた。CsAの中止後, 速やかに症状, 画像所見ともに改善した。本症例はmass effectを伴った稀なatypical reversible posterior leukoencephalopathy syndromeであり, その診断にはMRIによるADC mapが有用であった。
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