再発・難治性多発性骨髄腫に有効なプロテアソーム阻害剤, ボルテゾミブに関連した重症肺障害が最近日本から報告された。現在日本ではボルテゾミブは認可されておらず, 患者の希望に基づいて担当医師が個人輸入して使用していることより, 日本血液学会と日本臨床血液学会では代議員・評議員に緊急アンケートを送り, その実態調査を行った。この結果, 個人輸入ボルテゾミブで治療を受けた再発・難治性多発性骨髄腫46症例についての臨床データが得られた。7例 (15.2%) にボルテゾミブ治療に関連した肺障害がみられ, うち3例は呼吸障害により死亡していた。7例の肺障害症例のうち6例は何らかの造血幹細胞移植 (SCT) 施行例であり, 肺障害なしの39例中14症例と比較して有意差を認め (p=0.033, Fisher検定), 多変量解析でもSCT施行歴が危険因子である可能性 (p=0.042, odds ratio=13.140) が示唆された他, ボルテゾミブ投与時に副腎皮質ステロイドを併用した症例では肺障害のリスクが減少する点 (p=0.024, odds ratio=0.055) が独立因子として抽出された。この結果はアンケートに基づく比較的少数例の解析であり, 肺障害発生の正確な頻度や致死率は不明であるため, 正式認可後, 使用症例のデータの蓄積が重要である。また, ボルテゾミブ治療に際しては重症肺障害の可能性に十分配慮する必要があると思われる。
なお, 当論文は日本血液学会および日本臨床血液学会編集部の許可を得た, International Journal of Hematology (vol. 84, p406~412, 2006) 発表の論文と同一内容の日本語版である。
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