臨床血液
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48 巻, 3 号
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Picture in Clinical Hematology
第68回日本血液学会・第48回日本臨床血液学会合同総会
学会シンポジウム3
学会シンポジウム4
臨床研究
  • 山崎 悦子, 竹村 佐千哉, 坂本 洋, 萬代 秀樹, 光岡 英之, 板東 邦秋, 石ヶ坪 良明
    2007 年 48 巻 3 号 p. 200-203
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    多発性骨髄腫(multiple myeloma; MM)では腫瘍性椎体骨折による腰背部痛のコントロールが困難となることが多い。椎体骨折に対し経皮的椎体形成術(percutaneous vertebroplasty: PVP)を行ったので報告する。対象は男性4名,女性1名で,年齢58 (45∼68)歳,PVPを行った椎体は計11椎体であった。施術前のperformance status (PS)は3; 2例,4; 3例であり,全例が床上生活であった。施術後,痛みは著明に改善し,PSは1∼2程度まで改善,化学療法後早期の退院が可能であった。術後に2例で発熱を認めたが1例は肺炎によるもので,その他大きな合併症は認めなかった。PVPは比較的安全に行うことが可能で,疼痛コントロールに有効であり,MMに伴う椎体骨折によりPSの低下した患者には考慮すべき治療法のひとつと考えられた。
  • 梅田 雄嗣, 吉田 真, 鈴木 信寛, 遠藤 幹也, 佐藤 篤, 堀 浩樹, 磯貝 光治, 松本 公一, 原 純一, 長谷川 大一郎, 橋井 ...
    2007 年 48 巻 3 号 p. 204-211
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    2002年4月から2005年3月の間にJACLS ALL-02プロトコールを施行した急性リンパ性白血病症例における中枢神経系(CNS)合併症について検討した。登録症例541例のうち,有害事象報告されたGrade 3または4のCNS合併症は15例で,10歳以上の症例が7例を占めていた。15例に17回のCNS合併症の報告があり,その内訳は有症状白質脳症5例,けいれん5例,脳血管障害3例,意識障害2例,高血圧性脳症,reversible posterior leukoencephalopathy syndrome (RPLS)各1例であった。CNS合併症はinducton therapy中と早期治療相の最後に集中して認められた。発症後大半の症例で治療の一部を変更または中止することで14例では神経学的および画像所見は改善し,初回寛解を維持している。白質脳症の1例のみが画像所見が残存し,CNS単独再発を来した。今後は非照射治療でのCNS合併症の発症リスク因子の検討や発症後の明確な治療指針の設定が必要と考えられた。
症例報告
  • 三木 浩和, 桑山 泰治, 原 朋子, 尾崎 敬治, 金崎 淑子, 吉田 智則, 新谷 保実, 宮 恵子, 後藤 哲也
    2007 年 48 巻 3 号 p. 212-216
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    症例は48歳男性。中学生時から腸閉塞のため小腸切除を繰り返し,短腸症候群をきたしていた。2003年より在宅中心静脈栄養を開始。2005年12月に全身倦怠・歩行障害をきたし,近医を受診。胸部不快感・徐脈などを認め,精査加療目的で当院に救急搬送された。来院時,るいそうは著明で,四肢筋力低下を認めた。末梢血では汎血球減少を認め,ビタミンB12, 葉酸は基準範囲内であったが,銅3 μg/dl, セルロプラスミン3 mg/dlと低下していた。骨髄所見は正形成で,幼若顆粒球系の細胞質内に空胞を認めたが,芽球の増加や異形成はなかった。以上から銅欠乏症と診断し,微量元素製剤の投与を開始した。以後汎血球減少は改善し,心電図は正常洞調律となり,上下肢の筋力も回復した。本例は銅欠乏による汎血球減少に加え,徐脈・神経学的異常など多彩な臨床症状を呈した稀少な症例と考えられた。
  • 黒田 裕行, 松永 卓也, 坂牧 純夫, 小池 和彦, 照井 健, 根田 寛, 石谷 邦彦, 信岡 純, 佐藤 睦美, 木田 雅也, 渡辺 ...
    2007 年 48 巻 3 号 p. 217-222
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    症例は49歳,男性。発熱と頚部リンパ節腫脹を主訴に2005年9月27日に当院を初診した。好中球および血小板数が増加しており,骨髄では顆粒球系細胞および巨核球数の増加を認めた。血清granulocyte-colony stimulating factor (G-CSF)およびinterleukin-6 (IL-6)濃度は上昇していた。鼠径部リンパ節生検でT-cell rich B-cell lymphomaと診断し,rituximab併用CHOP療法を施行した。同療法3コース目にはPRとなり,血清G-CSFおよびIL-6濃度は正常範囲まで低下し,好中球および血小板数は正常値に復した。さらに4コース終了時にはCRが得られた。本症例ではリンパ腫の病勢に平行して好中球および血小板数が変動した。以上より,リンパ腫が顆粒球系および巨核球系の造血を促進させた可能性が示唆された。
  • 梶原 良介, 後藤 裕明, 横須賀 とも子, 柳町 昌克, 黒木 文子, 藤井 久紀, 高橋 浩之, 横田 俊平
    2007 年 48 巻 3 号 p. 223-228
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    当科において白血病に対する化学療法後の骨髄抑制期に急性虫垂炎を発症した3例の臨床経過について報告する。症例は10∼12才の女児1例,男児2例で疾患はALL 1例,AML 2例であった。全例に発熱,CRPの上昇を伴う腹痛が見られたが,腹膜刺激症状ははっきりとは認められなかった。全例腹部CTにて虫垂炎との臨床診断を得て,外科的切除を行った。周術期に抗菌薬,抗真菌薬,G-CSFなどの支持療法を十分行うことで手術合併症を起こさず,全例で術後速やかに原病に対する治療を再開できた。病理学的には病変部にリンパ球主体の浸潤が認められ,好中球はほとんど認められなかった。骨髄抑制期に腹痛を認めた場合には虫垂炎を念頭におき,造影CTを早期に行うことが有用であると考えられる。また,虫垂炎で穿孔をきたした場合の死亡率は高いとされており,支持療法を十分行った上で早期に外科的切除を施行すべきである。
  • 太田 忠信, 古川 佳央, 青山 泰孝, 久村 岳央, 麥谷 安津子, 中前 博久, 高 起良, 山根 孝久, 日野 雅之
    2007 年 48 巻 3 号 p. 229-234
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    シェーグレン症候群(SS)の中には,リンパ節腫脹の状態から悪性リンパ腫に進展する症例がある。いわゆるMikulicz病はSSの一亜型とみなす考え方が一般的であり,今回Mikulicz病にmulticentric Castleman disease (MCD)様病態を呈した症例を経験した。症例は,73歳,男性。両側涙腺,両側顎下腺,両頚部,両鼠径部のリンパ節腫脹し,血清IgG 6530 mg/dl (polyclonal)と高値を示し入院。左顎下腺生検では高度な線維化を伴う慢性唾液腺炎像を示し,左頚部リンパ節生検では悪性所見なく,成熟リンパ球と形質細胞の浸潤を認めた。プレドニゾロン20 mg/日内服開始にて3週後には体表リンパ節は縮小し,血液データも正常化し著効した。本例では顎下腺やリンパ節への形質細胞や成熟リンパ球の浸潤を認めたが,血清IL-6の増加はなく,従来考えられているMCDとは違った成因によるものが存在することが示唆され,境界領域の病変を考える上で重要と考えられ報告した。
  • 松原 康策, 仁紙 宏之, 針谷 秀和, 田中 孝之, 由良 和夫, 野崎 英夫, 岩田 あや, 深谷 隆
    2007 年 48 巻 3 号 p. 235-239
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    症例は初診時5歳の男児。2ヵ月続く出血斑を主訴に受診し,特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と診断された。2年に亘り,大量免疫グロブリン療法(IVIG), プレドニゾロン(PSL)内服,デキサメサゾンパルス療法,セファランチン内服,間欠的IVIGを順次実施するも,いずれも効果は一過性または無効であった。7歳で脾臓摘出するが効果は3ヵ月で消失し,その後間欠的IVIGを試みたが無効であった。脾摘1年後に,シクロスポリン(CsA)(2.5 mg/kg/日)/PSL(0.8 mg/kg/日)/アザチオプリン(AZA)(1.7 mg/kg/日)の併用治療を開始した。同治療に対する反応は良好でPSL, AZAを各々6ヶ月,12ヶ月に漸減中止したが,血小板数は5万/μl以上に維持できた。更に,2年後にCsAを中止したが,中止後10ヵ月以上に亘り寛解を維持している。併用治療期間中に副作用を認めなかった。本症例は,慢性ITPにCsAを中心とした併用治療を実施した我が国で初めての小児例である。同治療は,脾摘無効例の小児慢性ITPに試みてよい治療と考えられた。
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