症例は初診時5歳の男児。2ヵ月続く出血斑を主訴に受診し,特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と診断された。2年に亘り,大量免疫グロブリン療法(IVIG), プレドニゾロン(PSL)内服,デキサメサゾンパルス療法,セファランチン内服,間欠的IVIGを順次実施するも,いずれも効果は一過性または無効であった。7歳で脾臓摘出するが効果は3ヵ月で消失し,その後間欠的IVIGを試みたが無効であった。脾摘1年後に,シクロスポリン(CsA)(2.5 mg/kg/日)/PSL(0.8 mg/kg/日)/アザチオプリン(AZA)(1.7 mg/kg/日)の併用治療を開始した。同治療に対する反応は良好でPSL, AZAを各々6ヶ月,12ヶ月に漸減中止したが,血小板数は5万/μ
l以上に維持できた。更に,2年後にCsAを中止したが,中止後10ヵ月以上に亘り寛解を維持している。併用治療期間中に副作用を認めなかった。本症例は,慢性ITPにCsAを中心とした併用治療を実施した我が国で初めての小児例である。同治療は,脾摘無効例の小児慢性ITPに試みてよい治療と考えられた。
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