症例は31歳,男性。1996年に生体腎移植を受け,免疫抑制剤を内服中であった。2005年に嚥下時の違和感を自覚するようになり,精査にて左口蓋扁桃腫大と縦隔腫瘤を指摘された。左口蓋扁桃の生検では異型リンパ球のmonotonousな増殖を認め,post-transplant lymphoproliferative disorders (PTLD)が疑われた。免疫抑制剤の減量を行った効果はみられず,両側頚部リンパ節腫脹も出現した。再度施行した頚部リンパ節生検では,TdT, CD3, CD5, CD7, CD10, CD34陽性の未熟な異型細胞のびまん性の増殖を認め,T細胞受容体再構成を認めた。EBERは陰性であった。これらの結果からmonomorphic T細胞性PTLDと診断した。その後,各種の化学療法を行ったが効果はみられず,PTLDは白血化した。L-asparaginase, vincristine, dexamethasoneからなる化学療法(LVD 療法)を開始したところ,腫瘍融解症候群を伴い2コース後には完全寛解となった。T細胞性PTLDはB細胞性PTLDと比べて発症頻度は低いが,化学療法に抵抗性と報告されている。本症例の経過からL-asparaginaseを含む化学療法がT細胞性PTLDの予後を改善する可能性を示唆していると考えられた。
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