臨床血液
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48 巻, 6 号
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Picture in Clinical Hematology No.18
第68回日本血液学会・第48回日本臨床血液学会合同総会
合同シンポジウム5
症例報告
  • 小笠原 壽恵, 木村 綾子, 安山 雅子, 大塚 邦明, 相羽 元彦, 川内 喜代隆
    2007 年 48 巻 6 号 p. 485-490
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    直腸原発のdiffuse large B-cell lymphoma (DLBCL)で発症したMTX関連リンパ増殖性疾患(MTX-associated lymphoproliferative disorders: MTX-LPD)を報告する。症例は71歳の男性。20数年来の慢性関節リウマチの罹患歴があり,メソトレキセート(MTX)とプレドニゾロンの投与を受けていた。2004年8月,直腸に易出血性の潰瘍病変を呈し入院。出血は高度でありMTXを中止後,化学療法として減量したCHOP療法を施行したが,敗血症性ショックを合併し1コースで中止,対症療法のみで経過観察とした。その後DLBCLは消退し2年以上経た現在も寛解を維持しており,MTXの中止がリンパ腫消退に有効であったと推定された。本例は,リンパ腫細胞の免疫グロブリン重鎖遺伝子再構成を認めEBVゲノムを腫瘍細胞の核内に検出したことから,MTXによる免疫抑制下で活性化したEBVがB細胞のモノクローナルな増殖に寄与したと考えられた。
  • 宮島 雄二, 小川 昭正, 久野 邦義, 戸田 興介, 鈴木 啓介, 三矢 昭治
    2007 年 48 巻 6 号 p. 491-494
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    小児急性リンパ性白血病の治療後に唾液腺mucoepidermoid carcinomaを発症した1例を報告した。13歳時にT細胞性急性リンパ性白血病と診断され,初期治療として化学療法と頭蓋放射線照射18 Gyを受けた。24歳時に右耳下腺のmucoepidermoid carcinomaを発症した。放射線照射が二次がん発症の最も可能性のある要因と考えられた。文献上14例中11例が初期治療として放射線照射を受けていたが,3例は非照射例であった。小児白血病治療後の二次がんとして唾液腺腫瘍の頻度は高くはないが,無痛性の唾液腺腫脹を認めた場合には,二次がんの可能性を含めて鑑別が必要である。
  • 柳町 昌克, 後藤 裕明, 横須賀 とも子, 梶原 良介, 黒木 文子, 伊藤 秀一, 横田 俊平
    2007 年 48 巻 6 号 p. 495-500
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    4歳の家族性血球貪食症候群(FHL)に対し,フルダラビンを用いた骨髄非破壊的前処置を用いた臍帯血移植を施行したが,移植後早期にFHLの再活性化を生じ,その後生着不全を来たした症例を経験した。骨髄非破壊的前処置で根絶できなかった残存宿主リンパ球がFHLの再活性化に寄与した可能性を考え,再移植は,宿主のリンパ球根絶を目的にATGを含めた骨髄破壊的前処置を選択した。また,生着不全予防として臍帯血は細胞数が十分あるもので,HLAのDNA型がHVG方向に6/6一致のものを選択した。再移植では,軽度のFHLの再活性化を生じたが,移植片の生着とNK細胞活性の改善を得た。FHLに対する造血幹細胞移植の前処置を考える上で示唆に富む症例であり,また,十分な移植細胞数を確保できる小児の臍帯血移植では,DNA型まで含めた臍帯血の選択が生着不全予防に重要であると考えられた。
  • 樋口 雅一, 大崎 浩一, 山野 裕二郎
    2007 年 48 巻 6 号 p. 501-504
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    症例は,81歳女性。1999年Evans症候群を発症し,プレドニゾロンで軽快した。2005年5月胸腺腫を合併した赤芽球癆(PRCA)と診断し,胸腺腫摘出術を施行したが,貧血は進行した。網赤血球は減少し骨髄赤芽球低形成であったが,直接・間接Coombs試験は陽性でハプトグロビンが低下しており,自己免疫性溶血性貧血(AIHA)が再発しPRCAに併発していた。シクロスポリンとプレドニゾロンの併用療法によって貧血は改善した。胸腺腫摘出後,PRCAにAIHAを併発した症例は,これまでに1例が報告されているのみである。本例の胸腺腫にも,免疫自己寛容を維持しているFoxP3陽性の制御性T細胞が存在しており,胸腺腫摘出によってこれらの細胞が除かれ,自己免疫が活性化しAIHAが再発したという機序が可能性の一つとして考えられた。
  • 入内島 裕乃, 小川 孔幸, 星野 匠臣, 吉田 孝友, 佐藤 賢, 高木 均, 外山 耕太郎, 塚本 憲史, 神保 貴宏
    2007 年 48 巻 6 号 p. 505-509
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    症例は68歳女性。著明な腹水と肝腫大で発症し,来院時好酸球増加を認めた。当初臨床所見からBudd-Chiari症候群(BCS)を疑ったが,主要静脈の閉塞はなく否定された。細胞遺伝学的検査により好酸球のclonalityが証明され,慢性好酸球性白血病Chronic eosinophilic leukaemia (CEL)と診断。肝生検にて類洞の拡張と同部位への好酸球の浸潤,門脈域に線維化を伴う好酸球浸潤,胆管障害が認められ,CELの肝浸潤が証明された。骨髄増殖性疾患(MPD)とBCSの関連性は一般的であるが,CELにおける肝浸潤の病理学的形態はこれまでに報告が乏しく,またBCS様に発症する例は稀であり今後も症例の蓄積が望まれる。
  • 田村 秀人, 緒方 清行, 近藤 麻加, 脇田 知也, 稲見 光春, 水木 太郎, 兵働 英也, 塩井 由美子, 中村 恭子, 三井 啓吾, ...
    2007 年 48 巻 6 号 p. 510-513
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    小腸原発非ホジキンリンパ腫(NHL)は比較的稀であり,診断に苦慮したり,出血・腸管穿孔などの合併症を見ることも多い。最近行われる様になったダブルバルーン内視鏡(double balloon endoscopy, DBE)は,小腸病変の観察・生検の他,止血や閉塞部の拡張などの治療も可能である。本論文では,当科で経験した4例の小腸原発NHLを報告する。2例はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫,2例は濾胞性リンパ腫で,3例は女性であった。それらの症例で,診断,手術適応の決定(出血病変の評価),閉塞部位の拡張操作にDBEを用い,臨床的に極めて有用であった。化学療法を施行した3例は,いずれも完全寛解中である。さらに症例を蓄積し,小腸NHLの病態や最適な治療法などに関する知見を深める必要がある。
  • 清水 啓明, 斉藤 貴之, 大崎 洋平, 山根 有人, 合田 史, 入澤 寛之, 横濱 章彦, 内海 英貴, 半田 寛, 松島 孝文, 塚本 ...
    2007 年 48 巻 6 号 p. 514-517
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    症例は74才男性。1991年微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)発症。プレドニン10 mg/day内服継続し寛解を維持していた。2005年12月上旬右下腿の浮腫出現し近医受診。1日尿蛋白6.1 g/dayとMCNSの再燃を認めたため入院治療開始。入院後1週間で急激な貧血の進行と腎機能の悪化(Hb 4.4 g/dl, Cr 2.0 mg/dl)を認めたため,胸腹部CT施行したところ左後腹膜及び腸腰筋内に血腫を認めた。この時APTT 90.0 sec。易出血性,凝固異常の精査加療目的に当院入院となる。入院時,F VIII activity 1%以下,F VIII inhibitor 19 BU/ml。後天性血友病Aと診断しプレドニン1 mg/kg (60 mg)開始した。治療は後天性血友病A, MCNS両疾患に奏功し,治療開始後6週間で1日尿蛋白0.204 g/dayまで改善,F VIII inhibitorも消失した。ネフローゼ症候群に合併した後天性血友病の症例は稀であり,貴重であると思われた。
  • 荒木 直子, 瀧本 理修, 藤見 章仁, 村瀬 和幸, 荒木 啓伸, Naoki TAKAHIRA, 松永 卓也, 照井 健, 古川 勝久, ...
    2007 年 48 巻 6 号 p. 518-523
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    症例は,67歳女性。血小板減少と脾腫を指摘され,平成4年に当科紹介となった。骨髄穿刺はdry tapで,末梢血の染色体分析でt (12;17) (q24;q11)の異常を認め,他の造血器悪性腫瘍が否定されたことから原発性骨髄線維症の診断で保存的治療となった。平成10年11月,末梢血白血球数および幼弱球の増加があり当科再入院。末梢血染色体分析ではt (12;17) (q24;q11)は認めず,全細胞にt (9;22) (q34;q11)の染色体異常を認めた。慢性骨髄性白血病と診断し,IFN療法,Hydroxyureaの経口投与で効果がみられず,平成13年12月よりImatinib mesylateの投与を開始した。FISH法にて47%存在したPh陽性細胞は,平成15年4月までに7%まで低下した。しかし,末梢血液所見および脾腫は一時改善するも再増悪したため再度染色体分析を施行したところ,初診時と同様のt (12;17) (q24;q11)を23/24細胞に認めた。t (12;17) (q24;q11)を伴う原発性骨髄線維症の経過中にPh陽性細胞が出現し,Imatinibの投与によりPh陽性細胞が減少する一方で,再びt (12;17) (q24;q11)を持つクローンが顕在化したと考えられ,興味深い症例と思われた。文献的考察を加えて報告する。
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