臨床血液
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48 巻, 8 号
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Picture in Clinical Hematology No.20
臨床研究
  • 松原 央, 小林 道弘, 由井 理洋, 加藤 格, 丹羽 明, 新井 真人, 宮崎 真紀, 水嶋 康浩, 梅田 雄嗣, 平松 英文, 渡邉 ...
    2007 年 48 巻 8 号 p. 605-610
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    小児造血幹細胞移植においてシクロスポリン(CsA) 3時間点滴静注法とC3モニタリングを行い,その体内動態とモニタリング法を検討した。症例は臍帯血移植5例と血縁者間同種骨髄移植1例の計6例。CsA 1.5 mg/kgを3時間点滴(1日2回)で移植前日より開始した。目標ピーク値(C3)が800∼1000 ng/mlとなるように投与量をコントロールした。血中CsA濃度は,点滴開始3時間後(C3)にピークを認め,12時間後(C12)には前値(C0)に回復していた。AUC0-12とC3値(r=0.90)に強い相関を認めた。急性GVHD grade IIの症例は2例あったが,1例は無治療で,1例はprednisoloneの短期投与で軽快した。その他,重篤な合併症は認めなかった。小児造血幹細胞移植において,CsA3時間点滴静注法にC3モニタリングを用いることで,適切な血中CsA濃度の調節が可能になると思われる。
  • 盛 暁生, 豊島 經康, 斉藤 誠, 入江 達朗, 森岡 正信
    2007 年 48 巻 8 号 p. 611-617
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    再生不良性貧血(aplastic anemia: AA)に対するantithymocyte globulin (ATG)療法の治療効果と治療効果予測因子を検討した。症例数は17例で,再投与を含め延べ24回のATG療法を施行した。年齢の中央値は66歳であり,観察期間の中央値は52ヵ月であった。24回の治療で,著効13, 有効2, やや有効2, 無効7であり,奏効率は70.8%であった。再発率は23.1%であり,ATG再治療の奏効率は57.1%であった。10年全生存率は66.7%, 10年無病生存率は50.7%であった。ATG療法の治療効果予測因子は,診断からATG療法開始までが短期間であること,治療前の網状赤血球数が高値であること,女性であること,の3点であった。2例でmonosomy 7染色体異常の出現を認め,1例は骨髄異形成症候群を,また1例は急性骨髄性白血病を発症した。ATG療法は高齢のAA患者に対しても行える治療法であり良好な成績が期待される。しかし一部にクローン性疾患が続発するため注意が必要である。
  • 臼杵 憲祐, 仲宗根 秀樹, 田岡 和城, 木田 理子, 壹岐 聖子, 浦部 晶夫
    2007 年 48 巻 8 号 p. 618-623
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    1997年から2005年に当科で23例の急性骨髄性白血病(AML)に対して自家造血幹細胞移植を施行した。3例が再発し,その他の4例(17%)において染色体異常を自家移植後に認めた。これらの4例の原疾患はAML1/MTG8あるいはCBFβ/MYH11融合遺伝子を有するAMLであり,移植後に染色体異常が検出された際の骨髄細胞のRT-PCRではこれらの融合遺伝子のmRNAは検出されなかった。骨髄に異形成を認めず,血算および末梢血像に異常を認めなかった。染色体異常は,自家移植12∼48ヶ月後に出現し,染色体異常検出後の観察期間中央値51ヶ月(30∼72ヶ月)で,4例のうち3例では染色体異常は消失し,残りの1例では染色体異常を呈する細胞は減少した。自家造血幹細胞移植後の二次性白血病/骨髄異形成症候群や再発と関連しない染色体異常について,これまでの報告をまとめて文献的考察を加えた。
  • 森 政樹, 室井 一男, 松山 智洋, 岡 智子, 小野 葉子, 山本 千鶴, 上澤 光世, 岡部 寛, 松 春子, 多々良 礼音, 菊池 ...
    2007 年 48 巻 8 号 p. 624-631
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    ステロイド抵抗性の難治性GVHDに対するmycophenolate mofetil (MMF)の有効性を自験例13例で検討した。男性10, 女性3。疾患はAML 5, ALL 2, CML-AP 2, T-LBL 2, ATL 1, PTCL 1。ドナーは母親3, 同胞4, 非血縁6で10例が40歳以上。血清学的にHLA一致7, 一座不一致4, 二座不一致2。移植はTBI/L-PAM 3, TBI/CY±AraC 5, Bu/CY 2, Flu/Bu/TBI 3でPBSCT 5, BMT 7, CBT 1。GVHD予防はFK506/MTX±ATG 9, CSA/MTX 4。MMFは1.0 g (4), 2.0 g (8), 3 g (1)を投与し,11例で改善。副作用は血球減少2, CMV抗原血症5, 出血性膀胱炎2, 帯状疱疹3で非再発死亡なし。MMFはステロイド抵抗性GVHDに有効かつ安全と考えた。
症例報告
  • 近藤 誠司, 谷本 一樹, 岡村 精一
    2007 年 48 巻 8 号 p. 632-636
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    患者は69歳,女性。平成18年1月顔面紅潮と頚部リンパ節腫脹を主訴に来院。関節リウマチの治療としてmethotrexate (MTX), sulfasalazine (SSA), prednisoloneが投与されていたが,食欲不振のためMTX, SSAは来院の1週間前より中止されていた。平成18年1月に血球異常が検出され,血液内科を受診した時の末梢血白血球数は30100/μlで形質細胞を32.5%, また骨髄にも形質細胞を25.7%認めた。初診時には形質細胞性白血病を疑ったが,免疫電気泳動ではポリクローナルな高γ-グロブリン血症を認め,また骨髄の形質細胞の表面形質はCD38, CD19陽性,CD56陰性で正常形質細胞の表面形質と同様であった。末梢血および骨髄に認められた形質細胞の増加は一過性で約3週間の経過で消失した。一過性の形質細胞の増加の誘因としてMTX, SSAが疑われた。
  • 藤田 晴之, 戸上 勝仁, 森 美奈子, 橋本 尚子, 永井 謙一, 永井 雄也, 田端 淑恵, 倉田 雅之, 松下 章子, 前田 明則, ...
    2007 年 48 巻 8 号 p. 637-641
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    症例は急性前骨髄球性白血病の60才男性。完全寛解後,微小残存病変(MRD)が残存。亜ヒ酸投与後にMRDが陰性化したので,自家末梢血幹細胞移植(auto PBSCT)を施行。前処置はbusulfan+melphalanで,血球回復は3系統とも良好。Day 21をピークに血小板数が減少し,1万以下となった。Day 31の骨髄所見,網状血小板17%, PA-IgG 48.5から,自己免疫性血小板減少症と診断。直接クームス反応陽性であったが溶血所見は認めなかった。Day 40よりprednisoloneを10 mg内服開始し,40 mgまで増量したが無効。γ-グロブリン大量療法(IVIg)も無効。Day 80からazathioprine 50 mg投与開始。Day 91以降,血小板数は増加した。auto PBSCT後の自己免疫性血小板減少症に対しPSL, IVIG, 脾摘などが有効との報告が散見されるが,azathioprineが奏効した報告例はない。
  • 中村 裕一, 佐藤 泰隆, 伊藤 善啓, 前田 智也, 高橋 直樹, 川井 信孝, 陣内 逸郎, 別所 正美, 木下 俊介, 山元 敏正
    2007 年 48 巻 8 号 p. 642-646
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    症例は60歳男性。両下肢の筋力低下,感覚障害のため入院。IgG-λ型M蛋白,骨髄中の形質細胞の軽度増加,血清VEGFの増加より,POEMS症候群と診断。末梢神経障害は進行性であったため,末梢血幹細胞採取後,melphalan 200 mg/m2を前処置として,自己末梢血幹細胞移植(auto-PBSCT)を施行。すみやかに生着が得られ,神経症状も徐々に回復した。移植後,発症時にみられていたM蛋白は消失したが,一過性にIgG-κ型M蛋白が出現した。
    近年,POEMS症候群に対するauto-PBSCT併用大量化学療法の有効性が報告されているが,本例では先行化学療法は行わず,ただちに同療法を行い良好な結果が得られた。今後,本症に対する同療法の適応やプロトコールの確立が望まれる。また,多発性骨髄腫に対するauto-PBSCT後,一過性のオリゴクローナルな免疫グロブリン血症の出現があることが知られているが,本例で移植後にみられたM蛋白もこれと同様の免疫系の再構築に伴うものと思われた。
  • 中橋 寛隆, 橋本 陽子, 山根 有人, 入沢 寛之, 横濱 章彦, 斉藤 貴之, 半田 寛, 松島 孝文, 塚本 憲史, 唐沢 正光, 村 ...
    2007 年 48 巻 8 号 p. 647-651
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    症例は72歳女性。検診で白血球増多を指摘され当科を受診した。理学的には脾臓もリンパ節も触知しなかった。白血球数は10900/μlでリンパ球が84.5%を占め,ヘモグロビン10.4 g/dl, 血小板数15.1万/μlであった。末梢血塗抹標本でhairy cell様リンパ球が増加し,位相差・電子顕微鏡にて毛髪状の突起を多数認めた。表面マーカーはIgG+, CD5- CD10- CD11c+ CD19+ CD20+ CD23- CD25-およびCD103-であった。血清免疫グロブリンはIgGおよびIgMが多クローン性に増加していた(それぞれ2620 mg/dlおよび840 mg/dl)。免疫グロブリン軽鎖の発現には偏りを認めず,免疫グロブリンVH伝子再構成は多クローン性のパターンを示した。患者は非喫煙者であり,HLA-DR4を表現し3番染色体の異常を示さなかった。本例における以上の所見はHairy B-cell lymphoproliferative disorder (HBLD)の特徴と一致する一方,欧米で報告されたPersistent polyclonal B-cell lymphocytosis (PPBL)とはいくつかの点で異なる。以上より,本例をHBLDと診断した。
  • 小林 千春, 田邊 寿一, 青木 摩耶子, 鈴木 里絵子, 浅井 弘明, 栗田 雅史, 村田 興, 毛利 博
    2007 年 48 巻 8 号 p. 652-658
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    症例は82歳,男性。貧血の精査目的にて入院となった。血清総蛋白8.6 g/dl,γグロブリン分画に43.1%のM蛋白成分を認めた。免疫グロブリン定量ではIgG 4298 mg/dlと増加し,免疫電気泳動にてIgG-κ型M蛋白を認め,Bence Jones蛋白陽性であった。骨髄では形質細胞が36.9%あり,すべての形質細胞にアウエル小体類似針状結晶様封入体を認めた。この結晶様封入体は,酸フォスファターゼ染色強陽性,CD138陽性,IgG-κ陽性を示した。電顕では,棒状,菱形,直角の大小さまざまな形態を呈し,比較的均質で高稠密な周期性の縦縞の線維状構造を示し,辺縁の外側にはリボソームが付着し,粗面小胞体の中に認められた。免疫グロブリンと関連する構造物が,なんらかの輸送障害や分泌異常を生じ,過剰に蓄積濃縮された結果,結晶封入体を形成したものと思われた。
  • 三原 圭一朗, 木戸 みき, 中十 奈苗, 福本 祥子, 松本 涼子, 瀧原 義宏, 木村 昭郎
    2007 年 48 巻 8 号 p. 659-663
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル 認証あり
    症例は69歳,男性。来院時末梢血に芽球を27.0%認め,細胞表面抗原解析では骨髄系抗原であるCD13が67.3%, 巨核球系抗原であるCD41が24.8%, ペルオキシダーゼ染色陽性などから,巨核球に一部分化した分画を有する骨髄芽球と考えられた。発病約2年前に白血球数,血小板数の増多を指摘され,isolated i (17q)染色体異常を有し,bcr-abl mRNA陰性,肝脾腫の存在,好酸球・好塩基球の増加,細胞の異形成などから,慢性骨髄増殖性疾患/骨髄異形成症候群からの白血化と考えられた。診断時CD34陽性芽球におけるBMI-1陽性率は25.8%であり,白血病細胞はanthracyclineを含む抗癌剤に対し部分的に反応を示し,病勢のコントロールが可能であった。ところが,発病後約半年でCD34陽性芽球のBMI-1陽性率が高値(83.1%)となり,白血病細胞は抗癌剤に不応となった。本症例では白血病細胞のBMI-1の発現は臨床症状,細胞の増殖速度,さらに抗癌剤耐性と良く相関しており,BMI-1の発現が病期および予後を示唆する分子マーカーの一つである可能性が示された。
短報
  • 井筒 挙策, 安部 康信, 乙成 淳, 立川 義倫, 大塚 理恵, 崔 日承, 牟田 耕一郎, 高〓 涼一
    2007 年 48 巻 8 号 p. 664-666
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/09/01
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    Human herpesvirus 6 (HHV-6) reactivates in immunocompromised patients, and HHV-6 encephalitis has often been reported as a complication of transplantation. We describe a 37-year-old woman with the acute type of adult T-cell leukemia/lymphoma who developed HHV-6 encephalitis before chemotherapy. The patient's main symptoms were disorientation and short-term memory loss. Magnetic resonance imaging of the brain showed a bilateral T2 prolongation within the temporal lobes, and HHV-6 DNA was detected in the cerebrospinal fluid (CSF). After treatment with ganciclovir, HHV-6 DNA disappeared from the CSF and the patient's symptoms gradually improved. HHV-6 encephalitis should be listed as a differential diagnosis of encephalopathy developing in immunocompromised patients.
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