臨床血液
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50 巻, 1 号
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Picture in Clinical Hematology No.33
臨床研究
  • 藥師神 公和, 岡村 篤夫, 小野 香奈子, 川野 裕子, 川野 宏樹, 船越 洋平, 川森 有里子, 西川 真一郎, 皆川 健太郎, 定 ...
    2009 年 50 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/18
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    類洞閉塞症候群(SOS)は放射線や化学療法による肝内細静脈や類洞の内皮細胞障害に起因する致死的合併症の一つであるが,未だ治療法は確立されていない。
    デフィブロタイド(DF)は抗血栓,虚血,炎症作用,血栓溶解作用をもち,血管内皮細胞に特異的に結合し,全身的な抗凝固作用がないという特徴を有する。今回我々は造血幹細胞移植後に類洞閉塞症候群と診断した8例に対してDFを用いた治療を行い,その有効性と副作用について検討した。8例中3例に寛解が得られ,有効例では効果は1週間以内に現れ,肝機能改善のみならず利尿薬に対する反応性の回復と腎機能改善を認めた。経過中,呼吸不全を合併した5例は全例救命することができず,重篤化する前に治療を開始すべきであると考えられた。明らかにDFに起因する副作用は認めず,安全に投与が可能であった。移植後SOSに対しDFは一定の有効性が期待されることから,臨床試験として検証すべきである。
  • 相佐 好伸, 森 毅彦, 清水 隆之, 塚田 唯子, 加藤 淳, 鈴木 重明, 鈴木 則宏, 池田 康夫, 岡本 真一郎
    2009 年 50 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/18
    ジャーナル 認証あり
    可逆性白質脳症(PRES)は移植片対宿主病(GVHD)の予防に用いられるカルシニューリン阻害剤の重要な副作用の一つである。我々は,PRESの臨床像,発症の危険因子,および予後を明らかにすることを目的として,当院で同種造血幹細胞移植を施行した342症例のうち,PRESを発症した12症例を後方視的に解析した。PRES発症時期の中央値は移植後17日,初発症状は高血圧が最も多く,次いで頭痛,視覚異常であった。これらの症状に続いて9例は全身性痙攣を発症した。病変は後頭葉以外に,前頭葉,側頭葉,頭頂葉,基底核,脳幹にも認められた。危険因子としては,血清クレアチニン値の2倍以上の上昇のみが有意であった。PRES発症例ではgrade II以上の急性GVHDが有意に高頻度に発症し(88.9% vs. 48.7%; P<0.001), その多くがGVHDに関連した死亡に至った。PRES発症例の2年全生存率は,非発症群と比較して有意に低下した(16.7% vs. 72.4%; P<0.001)。PRESに対する早期の積極的な治療と発症時のGVHD予防法の確立が今後の課題であると考えられた。
症例報告
  • 西澤 正俊, 平山 文也, 松山 宣樹, 多田 浩平, 金子 仁臣, 渡邊 光正, 三浦 康生, 通堂 満
    2009 年 50 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/18
    ジャーナル 認証あり
    我々は患者,輸血製剤の双方に抗白血球抗体が陽性であったTransufusion-related acute lung injury (TRALI)を経験したのでここに報告する。症例は41歳女性。急性骨髄性白血病(M2)の寛解導入療法開始後15日目,赤血球MAP製剤(RC-M·A·P)にてTRALIを発症した。気管内挿管を施行し,陽圧呼吸管理を開始,ステロイドパルス療法による治療を行ったが,輸血3日後に死亡した。患者血清中に抗HLA class I抗体と抗HLA class II抗体が検出された。さらに,新しく開発された特異度の高い蛍光抗体法により,ドナー血清中に抗好中球抗体が証明された。これらの抗白血球抗体により,免疫学的機序にてTRALIが発症した可能性が示唆された。
  • 白井 慎一, 橋野 聡, 守田 玲菜, 小野澤 真弘, 川村 孝仁, 加畑 馨, 近藤 健, 今村 雅寛, 浅香 正博
    2009 年 50 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/18
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    30歳男性。上腹部痛,黒色便あり,近医で十二指腸潰瘍,肝障害を認め入院となった。第5病日に発熱と上半身の紅斑が出現した。肝生検で巨細胞性肝炎の像であり,ウイルス肝炎を疑い,第20病日よりインターフェロンαを開始された。総ビリルビン22.3 mg/dlまで上昇したが,その後軽減傾向となった。入院3週後に皮疹,発熱は軽快したが,5週後に再度発熱と全身性紅斑が出現,8週後に皮疹は再度軽快した。その後,異型リンパ球出現,リンパ球減少,ガンマグロブリン低値を認め,当科紹介入院となった。当科入院時径1 cmほどの表在リンパ節を多数認めたが,解熱傾向となり,リンパ節腫脹も徐々に縮小していった。病態が薬剤性過敏症症候群(DIHS)に類似していることからヒトヘルペスウイルス(HHV)-6型の抗体価測定を行ったところ,前医で160倍だったHHV-6 IgGは当科で2,560倍に上昇していた。DIHSに類似した臨床経過であったが,本症例では原因となるような薬剤投与歴はなかった。
  • 杉山 暁子, 中林 容子, 近藤 学, 富永 貴元, 篠原 健次
    2009 年 50 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/18
    ジャーナル 認証あり
    68歳,女性が貧血,胸水貯留,骨痛,を主訴として来院した。血清IgA, λ型の単クローン性の増加を認めた。骨髄像では未熟な大型の形質細胞の著明な増加を認め,CD38 gatingによるflow cytometryでは分化度は中間型であった。染色体検査では,数の異常,t(8;22)(q24;q11.2)を含む複雑な異常を認め,FISHではc-MYCの3'下流に切断を認めた。Variant typeの相互転座を伴う多発性骨髄腫と診断した。骨髄は低形成のため,dexamethasoneの静注とthalidomide経口の併用療法を行い,血液学的寛解に導入した。
  • 伊勢 美樹子, 酒井 力, 熊谷 匡也
    2009 年 50 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/18
    ジャーナル 認証あり
    症例は62歳男性。末梢血リンパ球増多と貧血,巨大脾腫にて当科を紹介された。末梢血と骨髄でリンパ形質細胞の増殖を認め,血清IgM 1,150 mg/dl, IgM-κ型M蛋白陽性であり,原発性マクログロブリン血症(WM)と診断した。sIL-2R 14,300 U/ml, β2MG 6.2 mg/lと高値であった。腫瘍量が多く進行も急速なため,aggressive lymphomaに準じてCHOP療法を開始したところ,3コースで貧血が改善し,IgM値が半減するなど,著効を認めた。4コース目からリツキシマブを併用して計8コース行い,骨髄中腫瘍細胞は消失し,脾臓は正常大となり,免疫固定法でもM蛋白が検出されなくなり,完全奏効(CR)が得られた。治療終了後1年が経過した現在もCRを維持している。WMに対しては,近年,各種薬剤の併用療法が試みられ治療成績が向上しているが,CRに至ることは少なく,貴重な症例である。
  • 江中 牧子, 萩原 真紀, 酒井 リカ, 大島 理加, 伊藤 仁美, 本橋 賢治, 丸田 壱郎, 石ヶ坪 良明, 金森 平和
    2009 年 50 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/18
    ジャーナル 認証あり
    同種造血幹細胞移植後に気胸・気腫病変(air-leak syndrome, ALS)を合併した5症例を報告する。基礎疾患は急性骨髄性白血病2例,急性リンパ性白血病1例,骨髄異形成症候群1例,慢性骨髄性白血病1例で,全例が血縁ドナーからの移植であったが,2例はHLA不一致ドナーからであった。全例に移植前処置として全身照射が用いられていた。ALSに先行していずれも遅発性非感染性肺合併症(late-onset noninfectious pulmonary complications, LONIPC)を有していた。肺合併症の診断からALS発症までの期間は10∼360日(中央値20日)で,4例は慢性GVHDまたはLONIPCに対してステロイド剤が使用されていた。5例中3例は呼吸不全で死亡し,生存2例中1例は在宅酸素療法を必要とした。LONIPC発症後のALSは稀であるが,呼吸管理に難渋する場合もあり注意を要する合併症と考えられた。
  • 門間 文彦, 上野 聡, 山口 素子, 俵 功, 宮崎 香奈, 西井 一浩, 中瀬 一則, 片山 直之
    2009 年 50 巻 1 号 p. 44-48
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/18
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    症例は49歳女性。急激な右頬部腫脹と発熱を主訴に来院した。病変は右眼窩を中心に広範に存在し,右眼窩底組織生検により鼻NK/T細胞リンパ腫と診断された。急速に進行する肝障害が出現したため,etoposide (ETP)/dexamethasone (DMS)で治療を開始したところ,肝障害と顔面腫脹は速やかに改善した。ETP/DMS等による化学療法5コースに加え,第1コースday 8より病変部照射(計50 Gy)を同時併用し部分寛解を得た。第6コースにL-asparaginase (8,400 IU/day, day 1-7)を併用し重篤な有害事象なく治療を終了した。診断後56か月現在,無病生存中である。全身状態不良で合併症を有し通常量の化学療法が行えない症例においても,放射線治療と毒性を抑えた化学療法を行うことで良好な病勢コントロールが得られる可能性が示唆された。
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