臨床血液
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51 巻, 3 号
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Picture in Clinical Hematology No.42
臨床研究
  • 萩原 將太郎, 望月 朋美, 近藤 美紀, 森 文子, 福田 隆浩
    2010 年 51 巻 3 号 p. 167-173
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/02
    ジャーナル 認証あり
    造血幹細胞移植数の増加と移植技術の進歩とともに晩期合併症のマネジメントの必要性も増している。我が国における造血幹細胞移植患者の長期フォローアップについて全国の移植施設に対して質問紙を用いた郵送による調査を施行した。194施設中100施設から回答を得た。移植後患者一人当たり診療時間中央値12.5分,移植患者に特化した外来枠を設けている施設5%。慢性GVHDについてNIH consensus development projectの基準を診断に用いている施設は11%, 長期フォローの診療にマニュアルを作成している施設は1%であった。構造的問題として医師・専従の看護師など人材の不足,診療プロセスの問題点では日本のガイドラインの充実や人材養成・教育の必要性などがあげられた。移植後の患者QOLの向上には,長期フォローのための基盤整備と人材育成・資源配分が必要と考えられた。
  • 倉橋 信悟, 鈴木 弘太郎, 澤本 晶代, 足立 達哉, 岩崎 年宏, 鈴木 一心, 杉本 匠, 成松 宏人, 早川 文彦, 杉浦 勇
    2010 年 51 巻 3 号 p. 174-180
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/02
    ジャーナル 認証あり
    若年者多発性骨髄腫の標準治療は自己末梢血幹細胞移植併用大量化学療法(以下,自家移植)とされるが,一部に予後不良の患者(ハイリスク群)が存在する。自施設で自家移植を行った症例にて,染色体所見によるハイリスク群を解析した。対象は2000年8月から2007年6月に自家移植を行った32例である。G染色法にて,染色体異常(CA)を27.6%, 低二倍体を17.2%, 13番染色体の欠失(Gd13)を19.4%に認め,FISH法にて17p欠失(Fd17p)を12.5%, t(4;14)を9.4%に認めた。CA, 低二倍体,Gd13, t(4;14)を有すると,その他の患者に比べ,3年生存率が各々42.9 vs. 95.2% (p=0.0072), 25.0 vs. 91.5% (p=0.0056), 40.0 vs. 91.8% (p=0.0245), 0 vs. 89.3% (p<.0001)と有意に不良であった。Fd17pを含め,これらの1因子以上を有する患者をハイリスク群とすると,全生存期間と無増悪生存期間は何れも中央値23.9 vs. 106.1ヶ月(p=0.0011), 13.5 vs. 25.6ヶ月(p=0.0095)と不良であった。単施設の少数例での検討であるが,染色体所見にて自家移植後の予後不良群を定義することができた。
  • 星野 匠臣, 田原 研一, 宮脇 恒太, 初見 菜穂子, 高田 覚, 宮脇 修一, 佐倉 徹
    2010 年 51 巻 3 号 p. 181-188
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/02
    ジャーナル 認証あり
    当施設でdasatinibを投与した,イマチニブ(IM)抵抗性または不耐容の慢性骨髄性白血病(CML) 5例及びフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL) 2例の計7症例について検討した。CML慢性期3例及びPh+ALL 2例ではmajor molecular responseが得られたが,移行期(AP)及び急性転化期(BC) 2例では得られなかった。血液毒性についてはgrade3以上の汎血球減少を4例に認め,AP及びBCの2例で減量・休薬を要した。非血液毒性については胸水貯留1例とサイトメガロウイルス(CMV)腸炎2例を認めた。IMとの交差不耐容例はなかった。また3例でlarge granular lymphocyteが増加し,いずれの症例も良好な治療効果が持続している一方,うち2例で胸水貯留とCMV腸炎をそれぞれ合併した。dasatinibには特有の作用機序や毒性があり,注意を要する。
  • 縣 宗彦, 鮫島 勇一, 小田 哲朗, 近藤 年昭, 石山 みどり, 安並 毅, 風間 啓至, 岡村 隆光, 吉永 健太郎, 志関 雅幸, ...
    2010 年 51 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/02
    ジャーナル 認証あり
    再発・難治性あるいは初発例であるが高齢や合併症のために化学療法が施行困難と考えられる多発性骨髄腫患者40例(初発例14例,再発・難治例26例)にthalidomide (THAL)による治療を行い,治療効果発現時期の検討および奏効に影響を及ぼす因子の解析を行った。治療成績はcomplete response 2.5%, partial response 50.0%, minimal response 25.0%, no change 12.5%, progressive disease 10.0%であった。THALの有効性の判定は投与4週間後で可能と考えられた。THALの効果と有意な関連性があった因子は,dexamethasone併用例,初発例,L鎖がκ型であった。THAL有効例では無増悪生存期間が有意に延長すること,L鎖がλ型に比べてκ型の方が無増悪生存期間,全生存期間ともに優れていることが示された。高頻度に発現した副作用は,しびれ(47.5%), 便秘(32.5%), 皮疹(30.0%)であり,THAL投与前にvincristineの治療歴があるとしびれが高頻度に生ずることが明らかとなった。
症例報告
  • 吉武 久美子, 萩原 由貴, 田苗 健, 高橋 直樹, 郡 美佳, 田丸 淳一, 別所 正美, 新津 望
    2010 年 51 巻 3 号 p. 196-200
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/02
    ジャーナル 認証あり
    症例は35歳,男性。15歳時,Marfan症候群と診断。2007年6月咽頭部違和感が出現し,近医にて左扁桃腫脹を指摘された。徐々に左扁桃の増大が認められたため扁桃部の生検を施行し,CD5陽性CD10陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL; 胚中心型)と診断した。PET-CTにて左咽頭扁桃と左上内深頸部リンパ節に集積が認められ,臨床病期II A, 国際予後指標は低中リスクと診断した。R-CHOP療法を8コース施行し,完全奏効となり,現在も奏功を維持している。CD5陽性DLBCLはDLBCLの約5∼10%で,CD5陽性CD10陽性DLBCLはその中の約5%と少ない。また,リンパ腫とMarfan症候群の合併例の報告は少ない。Marfan症候群はTGF-β受容体の変異があり,リンパ腫でもTGF-β受容体の異常があるとの報告があるので,両者の間に何らかの関係があると考えられた。
  • 納富 誠司郎, 加藤 格, 大封 智雄, 才田 聡, 森嶋 達也, 松原 央, 梅田 雄嗣, 渡邉 健一郎, 丸屋 悦子, 佐治 博夫, 中 ...
    2010 年 51 巻 3 号 p. 201-206
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/02
    ジャーナル 認証あり
    4歳の骨髄移植後急性リンパ性白血病再発に対し,寛解導入療法中に血球貪食症候群(HPS)を発症し,その後の骨髄非破壊的臍帯血移植(RI-CBT)後早期にHPSが再燃した症例を経験した。血清学的full match, アリルレベル2 locus mismatchの臍帯血をドナーとし,前処置はfludarabineとmelphalan, 4Gyの全身放射線照射を行った。GVHD予防はpredonisoloneとcyclosporineを使用した。発熱,フェリチンの上昇からday20に骨髄穿刺を行い,HPSの再燃と診断した。活性化マクロファージのキメリズム解析結果は,2ndドナー由来であった。ステロイド,大量ガンマグロブリン,VP-16投与後に生着し,再移植後1年以上が経過し寛解を維持している。小児領域での増加が考えられるRI-CBT後早期の合併症として,HPSに注意が必要である。
  • 鈴木 一史, 仲里 朝周, 眞田 幸尚, 三原 愛, 立川 夏夫, 倉井 華子, 吉村 幸浩, 林 宏行, 吉田 幸子, 柿本 綱之
    2010 年 51 巻 3 号 p. 207-212
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/02
    ジャーナル 認証あり
    症例は38歳,男性。不明熱精査にて他院を受診しHIV感染症と診断。発熱,右顔面神経麻痺を主訴に当院受診。Gaシンチで右下腹部に集積を認め,腹部CTおよび下部消化管内視鏡検査では上行結腸に腫瘤性病変を認めた。同部位の生険にてBurkittリンパ腫(BL)と診断。HAART開始後より顔面神経麻痺は改善し,CD4が31/μlと著明な低値であったためHAART併用下でdose-adjusted EPOCH療法を開始。同治療2コースで病変は縮小したがdose-intensityを高める目的でhyper-CVAD療法に変更した。計6コースで終了とし現在もCRを維持している。HAART普及後DLBCLの治療成績は飛躍的に向上したのに対しBLは依然として予後不良である。本症例はAIDS関連BLに対してHAART併用下でhyper-CVAD療法が著効した貴重な症例と考えられ若干の文献的考察を加えて報告する。
短報
  • 三村 尚也, 小島 広成, 辻村 秀樹, 伊勢 美樹子, 酒井 力, 深井 健一, 横須賀 收, 熊谷 匡也
    2010 年 51 巻 3 号 p. 213-215
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/02
    ジャーナル 認証あり
    Reactivation of hepatitis B virus (HBV) has been recognized as one of the most serious complications in patients receiving chemotherapy with rituximab. From October 2007 to December 2008, rituximab was administered to 123 B-cell lymphoma patients in our institute. Four patients with positive hepatitis B surface antigen (HBsAg) received preemptive entecavir, and none of them developed HBV reactivation. For 26 patients whose hepatitis B surface antibody (HBsAb) and/or hepatitis B core antibody (HBcAb) were positive, HBV-DNA was monitored for one year after completion of chemotherapy. During this period, HBV reactivation was observed in two patients. Hepatitis was prevented in one patient by the administration of entecavir at the time HBV-DNA turns positive. Another developed de novo hepatitis B due to failure of monitoring. Preemptive entecavir for HBsAg positive patients and HBV-DNA monitoring for HBsAb and/or HBcAb positive patients seem to be effective.
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