臨床血液
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52 巻, 1 号
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臨床研究
  • 高崎 啓孝, 沼田 歩, 立花 崇孝, 田中 正嗣, 丸田 壱郎, 石ヶ坪 良明, 金森 平和
    2011 年 52 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル 認証あり
    寛解期急性白血病に対する同種造血幹細胞移植後の早期リンパ球回復と予後との関連について検討した。対象は2000年1月から2008年11月までに同種移植を行った急性白血病79例(AML: 48例,ALL: 31例)。移植後30日のリンパ球数(LC30)の中央値は465/μl (10∼2640)であった。LC30低値(400/μl未満)と高値(400/μl以上)の比較では,5年生存率は有意にLC30高値群で良好であった(81.6%対52.6%, p=0.014)。しかし,5年累積再発率,累積非再発死亡率は二群間で差を認めなかった。多変量解析ではLC30低値(HR, 2.44; 95% CI, 1.02∼5.88; p=0.046)とgrade II以上の急性GVHD (HR, 2.41; 95% CI, 0.99∼5.90; p=0.053)が予後不良に関与していたが,LC30は非再発死亡および再発に影響しなかった。今回の結果から,LC30は移植患者における予後因子の一つとなる可能性が示唆された。
症例報告
  • 牛木 真理子, 小池 道明, 秋山 俊洋, 渡邉 慧, 子安 洋輝, 三橋 大樹, 岡和田 祥子, 山崎 晋, 渡邉 敬夫, 祖父江 省吾, ...
    2011 年 52 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル 認証あり
    60歳男性。大動脈弓部人工血管置換術施行後7か月で腸瘻造設を施行したところ創部の止血困難がみられた。腹直筋血腫,骨盤内血腫を合併した。APTTの延長(65.9sec)と第VIII因子活性1%未満,第VIII因子インヒビター19.5BU/mlが認められて,後天性血友病と診断した。著しい血色素の低下が認められ,活性化第VII因子製剤9.6mgを25回投与とステロイドパルス療法を施行した。一般に手術後に後天性血友病を併発することは,手術直後または3か月以内であるが,本例は術後7か月に出現し,特記すべき症例と考えられた。
  • 福田 匡芳, 横山 泰久, 鎌田 勇平, 田岡 謙一, 鈴川 和己, 千葉 滋
    2011 年 52 巻 1 号 p. 14-17
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル 認証あり
    自己免疫性溶血性貧血(AIHA)と特発性間質性肺炎(IIP)の稀な合併例を経験したので報告する。症例は60歳男性。2009年1月にIIPと診断,3月に在宅酸素療法導入目的で入院した際に貧血を認めた。LDHおよび間接優位のビリルビン上昇,ハプトグロビン低下,直接・間接Coombs試験陽性,脾腫の存在などからAIHAと診断した。全身性エリテマトーデスや他の膠原病の診断基準は満たさず,AIHAとIIPとの合併例と結論した。プレドニゾロン内服によりAIHA, IIP共に改善を認め,プレドニゾロンを7.5 mgまで減量後も悪化はない。両疾患の合併の報告は稀でありその機序も不明である。今後の症例の蓄積が必要である。
  • 田代 晴子, 梅沢 幸一, 代田 道彦, 岡 陽子, 白崎 良輔, 西 竜一, 田口 彰典, 秋山 暢, 川杉 和夫, 綾部 琢哉, 白藤 ...
    2011 年 52 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル 認証あり
    症例は35歳女性。第1子妊娠中の検診で汎血球減少を指摘,妊娠26週で急性骨髄性白血病の診断を得た。27週2日で選択的帝王切開により1,066gの極低出生体重児を出産,1週間後よりidarubicin, cytarabineによる寛解導入療法を施行し,2度の寛解導入療法で寛解が得られた。児も新生児慢性肺疾患と未熟児貧血の合併があったが69日間の人工呼吸器管理ののち抜管し順調に生育している。2nd trimester以降の急性白血病では母体への化学療法の施行が胎児への催奇形性のリスクを増加させないと報告されており,妊娠を継続したまま化学療法が行われることもあるが,死産や早産などのリスクから妊婦に対する化学療法の決定は個々の症例において慎重に検討される必要がある。児が胎外で生育可能な時期で母体の状況が許せば,先に帝王切開などで分娩をし,その後化学療法を開始することも選択肢の一つと考えられた。
  • 川崎 泰史, 中空 達樹, 鈴川 宗弘, 富永 貴元, 篠原 健次
    2011 年 52 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル 認証あり
    症例は67歳女性における急性白血病。幼弱な芽球は細胞質は顆粒を有せず,PO(-), ES(-), PAS(+)であった。フローサイトメトリーではCD7, CD10, CD19, CD13, CD34, HLA-DRが陽性であり,CD7とCD34, CD10とHLA-DR, CD19とCD13を共発現した。染色体検査では-7, t(9;22)(q34;q11.2)を,遺伝子検査ではminor BCR/ABL chimeric mRNA, IgH, TCRの再構成を認めた。これらの所見は多系統のマーカーを発現する芽球のクローナルな増殖を示唆した。発現するmarkerのlineage specificityの重点に議論は残るがlineage不明の急性白血病と診断した。鑑別診断としてはCML, B-ALLがあげられる。Ph1+ALLの治療を開始したが,当初の化学療法に対する血液学的反応性は不良で芽球は残存し,著明な血球減少症が出現した。次いでimatinib mesylateを投与したが心不全を発症し19病日に死亡した。
  • 宮島 雄二, 北瀬 悠麿, 水野 誠司, 堺 温哉, 松本 直通, 小川 昭正
    2011 年 52 巻 1 号 p. 28-31
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル 認証あり
    急性リンパ性白血病を合併したMarfan症候群の7歳男児を報告した。2歳時にMarfan症候群と診断され,遺伝子検査でFBN1の異常を認めている。7歳時に頸部リンパ節腫脹を主訴に来院し,T細胞性急性リンパ性白血病と診断された。化学療法に対する反応は良好で,心機能を含め化学療法による重篤な副作用はなかった。診断後34ヶ月経過し寛解生存中である。Marfan症候群に合併した白血病の報告は少なく,現在までに3例のみであった。Marfan症候群ではTGF-βシグナルの亢進が報告されているが,TGF-βは腫瘍抑制因子として働くため白血病の発症が少ない可能性が推察された。
  • 小林 謙一郎, 濱木 珠恵, 大和田 啓, 富山 順治, 佐久間 良子, 水田 陽子, 森山 昌彦, 山本 恵美, 秋谷 逸雄, 藤田 浩
    2011 年 52 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル 認証あり
    サルモネラ胃腸炎を契機に発見され,貧血症状が悪化した低力価寒冷凝集素症(cold aggultinin disease; CAD)を経験したので報告する。また,本例では遺伝性球状赤血球症(Hereditary spherocytosis; HS)の合併が疑われたが,eosin-5-maleimide binding test (EMA)などにより,その存在は否定された。さらに,本感染症がCADを悪化させる可能性を検討するために,採血管内の患者検体に対する菌接種実験を施行した。サルモネラ菌は健常者検体を溶血させることはなく,患者検体のみに寒冷凝集素価(cold aggultinin titer; CA)の増加を伴う溶血現象を確認することができた。
  • 高橋 寛行, 酒井 リカ, 服部 友歌子, 大島 理加, 萩原 真紀, 桑原 英幸, 石ヶ坪 良明, 藤澤 信
    2011 年 52 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル 認証あり
    症例は50歳男性。汎血球減少の精査目的で入院。骨髄検査では芽球38%, 前骨髄球20%, Faggot細胞陽性。染色体検査で46, XY, t(15;17)(q22;q12)[9]/46, XY, del(6)(q?), t(9;22)(q34;q11.2)[1]/46, XY[10], RT-PCR法でPML-RARA 5.2×104 copies/μgRNA, minor BCR-ABL 6.5×102 copies/μgRNAが検出された。急性前骨髄球性白血病としてall-trans retinoic acidで治療し,51日目に血液学的寛解に到達した。寛解時の染色体は46, XY[20]であり,PML-RARA 2.4×102 copies/μgRNA, minor BCR-ABLは検出感度以下であった。本例のt(15;17)とt(9;22)は別クローン由来と考えられ,転座に対応するキメラ遺伝子も証明された。同様の報告はこれまでなく,貴重な症例と考える。
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