臨床血液
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53 巻, 11 号
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Picture in Clinical Hematology No.57
臨床研究
  • 納富 誠司郎, 梅田 雄嗣, 松原 央, 大封 智雄, 加藤 格, 平松 英文, 渡邉 健一郎, 平家 俊男, 足立 壯一
    2012 年 53 巻 11 号 p. 1891-1897
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/20
    ジャーナル 認証あり
    小児造血幹細胞移植の急性GVHD予防において,シクロスポリン(CsA)は広く使用されているが,その至適投与法は確立していない。当科でGVHD予防にCsAを用いた造血幹細胞移植を施行した26症例のうち,24時間持続静注法を用いた8例と3時間点滴静注1日2回法を用いた18例について,血中濃度の変動,有害事象の発生頻度,Grade II~IVの急性GVHDおよび慢性GVHDの発症頻度を比較した。3時間投与群では大半の症例でAUCと相関の高いC3値を目標レベルに維持することができ,重度の有害事象は発生しなかった。Grade II~IVの急性GVHDや慢性GVHDの発症率は両群で有意差を認めなかった。C3値モニタリングを用いたCsA3時間点滴静注法では安全かつ簡便な血中濃度管理が可能であり,小児造血幹細胞移植における急性GVHD予防法として有用であると考えられた。
  • ―九州・山口小児がん研究グループKYCCSG NHL-89, 96―
    深野 玲司, 住江 愛子, 松崎 彰信, 稲田 浩子, 永利 義久, 石井 榮一, 中山 秀樹, 川上 清, 盛武 浩, 柳井 文男, 糸長 ...
    2012 年 53 巻 11 号 p. 1898-1905
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/20
    ジャーナル 認証あり
    KYCCSGでは1989年から小児NHLに対して継続する二つの治療研究NHL-89, NHL-96を施行した。当時,小児NHLはdiffuse large cell lymphoma (DLC), lymphoblastic lymphoma (LBL), small non-cleaved lymphomaの組織型に分類されており,本研究ではDLC, LBLを対象とした。NHL-89に42例(DLC: 15例,LBL: 27例),NHL-96に34例(DLC: 8例,LBL: 26例)が登録された。DLCにはMTX大量投与を含む寛解導入療法後に,MTX中等量投与を反復した。LBLにはPSL, VCR, CPM, ADR (THP-ADR)による寛解導入療法後に強化療法,頭蓋照射を含むCNS再発予防を行い,維持療法はPSL, VCR, CPM, 6-MPなどによる多剤でのブロック治療とした。全体の5年EFSはNHL-89が76.2±6.6%,NHL-96が67.7±8.0%であり,過去の治療研究NHL-858と比較して成績の向上に成功した。
症例報告
  • 田端 淑恵, 倉田 雅之, 竹田 淳恵, 船山 由樹, 山内 寛彦, 青木 一成, 加藤 愛子, 小野 祐一郎, 有馬 浩史, 瀧内 曜子, ...
    2012 年 53 巻 11 号 p. 1906-1910
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/20
    ジャーナル 認証あり
    症例は73歳の女性。2005年1月に多発性骨髄腫(IgG-κ型),Durie-Salmon病期Iと診断。2007年5月に血清IgGが4,850 mg/dlに上昇し,病期もIIIAに進展したのでVAD (vincristine, adriamycin, dexamethasone)療法を3コース施行。minor responseであったので,同年10月よりサルベージ療法としてmelphalanとcyclophosphamideの併用点滴療法を施行。3コース後にIgG値は2,830 mgに低下した。2008年3月,4コース目の入院時,軽度の黄疸とALPの上昇を認めた。約1ヶ月後,下肢の浮腫,著明な出血傾向と肝機能障害を発症した。5月中旬には肝性昏睡となり脳内出血で死亡。剖検では肝臓がALアミロイドでほぼ置き換わっており,これによる肝不全と考えられた。今後の早期診断・治療の重要性を考え,ここに報告する。
  • 清水 郁夫, 武田 航, 桐原 健彦, 佐藤 慶二郎, 藤川 祐子, 植木 俊充, 住 昌彦, 上野 真由美, 市川 直明, 小林 光, 渡 ...
    2012 年 53 巻 11 号 p. 1911-1915
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/20
    ジャーナル 認証あり
    67歳女性。2006年5月から右鼠径腫瘤を自覚し,CTで右鼠径から総腸骨動脈周囲に病変を認め18F-FDG-PETでは同部に集積を認めた。生検の結果Langerhans細胞肉腫と診断された。免疫染色ではMIB1 index 30%を認めた。軟部肉腫に対して有用性が報告されているdoxorubicin, ifosfamide, mesna (AIM)療法による化学療法5コースを施行し,残存病変に対し放射線照射を追加した。2008年に頸部再発をきたしたが追加照射を行い,現在に至るまで4年間寛解を維持している。本疾患はまれであり標準的治療レジメンはいまだ確立されておらず,AIM療法は選択肢として考慮しうるものと考えられた。
  • 岬 沙耶香, 迫田 寛人, 博多 紗綾, 重松 三知夫, 星田 義彦
    2012 年 53 巻 11 号 p. 1916-1920
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/20
    ジャーナル 認証あり
    症例は81歳,男性。8年前より原発性マクログロブリン血症にて通院加療を受けていた。経過中,気胸,房室ブロックを合併,当初は原病との関連性は疑われなかった。診断3年8ヶ月後に左乳糜胸水貯留を認めた。1年前から貧血,食思不振,倦怠感が強く入院するも,次第に原病が悪化し真菌症の合併により永眠された。剖検では左側乳糜胸水1,300mlに加え,IgM+, κ+のリンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)細胞が全身に浸潤していた。特に心臓では刺激伝導系を含む心内膜下,心筋内等に浸潤がみられた。生前の気胸併発時の肺切除標本を再検討したところ,リンパ管の不規則形の拡張,増生と伴にLPL細胞浸潤が確認された。
    原発性マクログロブリン血症と乳糜胸水との合併例の報告は,過去6例のみと稀である。さらに本例は,臨床経過から腫瘍とは関連がないと考えられていた所見が,剖検により原病の浸潤に起因する可能性が示された教訓的な症例である。
  • 井上 盛浩, 井脇 康宣, 華 見, 萩原 政夫
    2012 年 53 巻 11 号 p. 1921-1925
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/20
    ジャーナル 認証あり
    66歳女性。検診の胸部単純X線写真で右肺門部異常陰影を指摘され,胸部CTでは右肺S3領域に腫瘤性変化を認めた。気管支鏡下経気管支肺生検が施行され肺MALTリンパ腫と病理診断された。全身検索で右肺腫瘤以外に病変を認めず,Stage1AEの病期診断で経過観察とされた。しかし,9ヶ月後のPET/CTでSUVmax値の上昇を伴う右肺結節陰影増大および右肺門部リンパ節への軽度集積を認めたため,増悪進展傾向と判断して右上葉切除術および右肺門リンパ節廓清術が施行された。病理組織では原発巣・リンパ節ともに肺MALTリンパ腫と肺結核の並存が認められた。MALTリンパ腫発症には慢性炎症との関連が知られているが,本症例では肺結核が発症に関与したものと推測される。
  • 高橋 寛吉, 康 勝好, 安井 直子, 森 麻希子, 秋山 康介, 関 正史, 加藤 元博, 鍵本 聖一, 大石 勉, 花田 良二
    2012 年 53 巻 11 号 p. 1926-1931
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/20
    ジャーナル 認証あり
    免疫不全症の家族歴を有する15歳女児。原因不明の免疫不全症でフォロー中であった。9歳時に突然の黄疸を認め原因不明の劇症肝炎と診断し,1か月後に父からの生体肝移植を施行した。肝移植から5年後より汎血球減少が出現した。移植後より継続していたprednisolone・tacrolimsの増量および顆粒球コロニー刺激因子を投与したが,改善は得られなかった。骨髄生検にて再生不良性貧血と診断し,肝移植から6年後にfludarabine, cyclophosphamide, anti-thymocyte globulin, 低線量の全身放射線照射を用いてHLA一致同胞からの骨髄移植を行った。生着と同時に皮膚急性移植片対宿主病および肝障害を認めた。臓器障害は進行し,移植から30日後に敗血症を併発して死亡されたが,骨髄は生着を得ていた。肝移植後に造血幹細胞移植を施行した症例は稀であり,経過を文献的考察とともに報告する。
  • 高橋 憲幸, 川上 貴子, 佐藤 裕子, 小野田 正志, 簡野 美弥子, 三井 哲夫, 早坂 清
    2012 年 53 巻 11 号 p. 1932-1936
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/20
    ジャーナル 認証あり
    症例は6歳男児。FLT3-ITD陽性急性単芽球性白血病(AMoL)と診断,日本小児白血病リンパ腫研究グループAML-05寛解導入で寛解に至らなかった。救済療法でも寛解に至らず,骨髄回復期にsorafenibを200 mg/日で開始,300 mg/日に増量,10日後寛解を得た。29日間内服後,HLA 2座不一致骨髄移植を施行。移植後71日目に骨髄再発,150mg/日を隔日投与で再開,部分寛解を得た。ドナーリンパ球輸注を行うも,245日目に芽球が増加。化療とsorafenibで芽球は減少,2回目の移植を行ったが,移植後合併症で永眠した。sorafenibは多剤併用化学療法に対し抵抗性のAMoL症例で有効であった。今後の症例の蓄積が必要である。
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