臨床血液
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53 巻, 2 号
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特集:臨床血液学今後の展望(2012年版)—リンパ系疾患—
特集:臨床血液学今後の展望(2012年版)—血小板・凝固・線溶系疾患—
総説
症例報告
  • 五十嵐 哲祥, 林 敏昭, 安井 寛, 池田 博, 高橋 徹, 石田 禎夫, 篠村 恭久
    2012 年 53 巻 2 号 p. 215-218
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/10
    ジャーナル 認証あり
    同種造血幹細胞移植後に再発した慢性骨髄性白血病(CML)に対し,imatinib mesylate (IM)を投与し免疫抑制剤を中止したところ,副作用のためIM投与を約2か月で中止したにもかかわらず分子遺伝学的完全寛解が持続している症例を報告する。症例は30歳女性。2008年5月に左側腹部違和感を主訴に近医を受診し,脾腫とフィラデルフィア染色体を認め,CML(移行期)と診断された。IMの内服を開始し,同胞とHLAが一致したため当院を紹介され,同年10月に同種末梢血幹細胞移植が行われた。急性GVHDを認めずに分子遺伝学的完全寛解が得られたが,6か月後に血液学的再発をきたしたため,IM投与を再開し免疫抑制剤を減量・中止した。骨髄抑制のためIM投与を2か月で中止したが,その後もFISH検査によるbcr-abl陽性率は低下を続け,移植1年後には分子遺伝学的完全寛解が確認された。IM中止から2年以上経過した現在まで再発を認めていない。同種造血幹細胞移植後に再発したCMLに対しIMを投与することにより腫瘍量が減少し移植片対白血病効果が顕在化した可能性が考えられた。
  • 塚田 唯子, 服部 豊, 中島 秀明, 横山 健次, 村田 満, 清水 長子, 近藤 直美, 岡本 真一郎
    2012 年 53 巻 2 号 p. 219-223
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/10
    ジャーナル 認証あり
    症例は61歳女性。2001年に多発性骨髄腫(multiple myeloma, MM)と診断され,アルキル化剤を含む併用化学療法・thalidomideによる治療後,2003年にmelphalanを前処置とした自家造血幹細胞移植を施行された。M蛋白の残存を認め,同年7月より2005年11月までthalidomideが投与された。その後部分寛解が維持された。2008年10月に汎血球減少が出現,骨髄検査にて急性B細胞性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia, ALL)と診断。免疫グロブリン遺伝子再構成によるclonality解析で,MMとALLは異なる細胞起源と推測された。MMに対する自家移植後にALLを発症した症例は極めて稀であり,発症機序の解明とともに今後の症例の蓄積が必要と考えられた。
  • 島田 恒幸, 前田 智也, 石川 真穂, 岡村 大輔, 伊藤 善啓, 脇本 直樹, 中村 裕一, 川井 信孝, 猪野 裕英, 陣内 逸郎, ...
    2012 年 53 巻 2 号 p. 224-228
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/10
    ジャーナル 認証あり
    37歳女性。2008年4月汎血球減少症を呈し再生不良性貧血stage 2と診断。染色体は正常核型,PNHタイプ血球およびHLA-DR15は陽性。輸血非依存状態(stage 3)へ移行したため,診断翌月よりシクロスポリン投与を開始,4ヶ月後に輸血非依存となった。その3ヶ月後重症型潰瘍性大腸炎を併発し再び輸血依存状態となった。メサラジン,ステロイドパルス療法にて潰瘍性大腸炎は軽快するも輸血依存性は継続。診断11ヶ月後より抗ヒト胸腺ウマ免疫グロブリン製剤(ATG)+シクロスポリン療法を開始。6ヶ月の治療効果判定はNon response (NR)で7モノソミー(-7)を有する骨髄異形成症候群(RCMD)へ移行。診断から23ヶ月後にHLA一致同胞から骨髄移植を施行。移植35日で生着その後Complete response (CR)となった。移植後潰瘍性大腸炎に対しメサラジン投与は不要となり再燃は認めていない。再生不良性貧血と潰瘍性大腸炎発症の関連は不明であるが,本例はHLA-DR15陽性,PNH血球陽性であり,免疫病態が両疾患に関連している可能性がある。骨髄移植により両疾患ともに軽快したこともこのことを示唆すると考える。
  • 早瀬 英子, 黒澤 光俊, 米積 昌克, 鈴木 左知子
    2012 年 53 巻 2 号 p. 229-234
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/10
    ジャーナル 認証あり
    症例は76歳,女性。2009年9月より不正性器出血,帯下が出現し,近医で膣に径5 cm大の腫瘤を指摘された。当院に紹介され,生検でDiffuse large B-cell lymphoma (DLBCL)と診断された。CT, MRI及びFDG-PETでは膀胱浸潤を伴う膣腫瘤以外にリンパ腫病変を認めず,膣原発リンパ腫と診断した。化学療法及び放射線療法にて完全奏効となったが,2か月後に中枢神経系に再発した。膣原発リンパ腫57例の検討では,組織型はDLBCLが多く,臨床病期は限局期が大半を占め,化学療法と放射線療法を組み合わせて治療している例が多く,治療奏効率は高かった。中枢神経系に再発した症例は過去2例報告されているが,本症例では膣のリンパ腫病変が膀胱に浸潤していたことが中枢神経系再発の一因と考えられた。
  • 岡田 恵子, 堀野 朝子, 山崎 夏維, 田中 千賀, 藤崎 弘之, 大杉 夕子, 原 純一
    2012 年 53 巻 2 号 p. 235-239
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/10
    ジャーナル 認証あり
    症例は,家族性血球貪食リンパ組織球症に対して非血縁臍帯血移植を行った1歳女児。移植後24日目に移植関連微小血管障害(TMA)と診断した。Tacrolimusを中止したがTMAは進行し,移植後25日目からリコンビナントトロンボモジュリン(rTM)を開始した。腎不全を合併していたため,添付文書に従い130IU/kgに減量して投与したが効果は得られず,27日目からrTMを通常量である380IU/kgで投与したところ,翌日にTMAの進行がとまった。移植後109日目までrTMの長期投与を行いつつ全身状態の改善を図り,移植後1年6ヶ月現在無病生存中である。rTMの副作用として重篤な消化管出血と膀胱出血があり,出血症状を見ながら投与を中断・スキップするなど投与法に工夫を要した。本症例においては,rTMを腎不全時でも通常量を用いることでTMAに対する効果を得た。今後,TMAに対するrTMの有用性については症例の積み重ねが必要である。
  • 斉藤 誠, 若狭 健太郎, 盛 暁生, 入江 達朗, 田中 雅則, 森岡 正信, 家子 正裕
    2012 年 53 巻 2 号 p. 240-245
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/10
    ジャーナル 認証あり
    後天性血友病Aの3例を経験し,その臨床病態を検討したので報告する。3例とも高齢(79歳,77歳,68歳)の男性で,皮下出血とAPTTの延長,貧血を認めたため,紹介入院となり,第VIII因子活性の低下(0.9~3.1%), 第VIII因子インヒビターの存在(57.1~173BU/ml)により後天性血友病Aと診断した。症例1と症例2は活性型第VII因子製剤の投与により止血を行い,症例1はプレドニゾロン(PSL)単剤で,症例2はPSLに途中,シクロホスファミドを併用し,それぞれ第VIII因子インヒビターは消失した。症例3は週1回,5サイクルのリツキシマブ(RTX)投与により第VIII因子インヒビターは3.5BU/mlまで低下(後日,消失を確認),この間,特に止血剤を用いることなく止血に成功し,肝細胞癌を治療するため前医に再転院となった。後天性血友病Aは第VIII因子に対するインヒビターが原因とされ,その制御のため第一にPSLが選択されることが多いが,症例によってはRTXも試されて良い治療薬と考えられた。
  • 谷川 宗, 桜中 晴康, 鄭 子文, 岡田 洋一, 滝本 雅文
    2012 年 53 巻 2 号 p. 246-251
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/10
    ジャーナル 認証あり
    症例は71歳男性。2005年から血球減少と腎障害で通院。2009年10月より右耳介下部に暗紫色の皮下腫瘤が出現し増大。皮膚生検で,真皮から皮下にかけて異型細胞が増生し,免疫染色ではCD123+, CD56+, TdT+, CD4+, CD7+, CD3-, CD20-, CD79a-, CD10-, CD68-, CD163-, myeloperoxidase (MPO)-, naphtol-ASD-chloroacetate (ASD-Ch) esterase-でありblastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm (BPDCN)と診断した。骨髄はrefractory cytopenia with multilineage dysplasia (RCMD)の所見で,病変は皮膚に限局。2010年1月よりABVD療法開始。1クール後皮下腫瘍は消失。その後,脳梗塞と間質性肺炎を合併。休薬減量しながら投与を続け,寛解を持続。BPDCNは稀で予後不良であり,長期寛解持続には造血幹細胞移植が必要とされる。本症例は高齢で腎障害があり移植できず,ホジキンリンパ腫の標準治療であるABVD療法を施行し,1年9ヶ月以上寛解を持続している。現在まで本疾患にABVD療法を用いた報告はないが,移植のできない症例には試みる価値のある治療と思われる。
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