臨床血液
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53 巻, 3 号
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Picture in Clinical Hematology No.52 〔訂正版〕
第72回日本血液学会学術集会
学会奨励賞受賞論文
臨床研究
  • 横田 昌, 浦崎 裕二, 中村 裕一, 別所 正美
    2012 年 53 巻 3 号 p. 303-309
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/10
    ジャーナル 認証あり
    立川相互病院にてmonoclonal gammopathy of undetermined significance (MGUS)と診断された114症例を対象として,多発性骨髄腫(multiple myeloma; MM)および類縁疾患への進展を後方視的に解析した。MGUS診断時の年齢中央値は68歳3ヶ月,観察期間の中央値は9年5ヶ月,計1,170人年であった。MMあるいは類縁疾患へ進展したのは114例のうち13例(11%)であり,進展までの中央値は9年6ヶ月,年齢中央値は78歳8ヶ月であった。累積危険率は,5年,10年,15年,20年でそれぞれ3.0%, 9.0%, 11.4%, 32.1%であった。本邦におけるMGUSにおいてもMMおよび類縁疾患への進展の危険率は欧米での報告と同様であり,前がん状態として注意深い観察が必要であることが確認された。
  • 朝長 万左男, 鎌江 伊三夫
    2012 年 53 巻 3 号 p. 310-317
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/10
    ジャーナル 認証あり
    本分析は,骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes; MDS)患者に対するazacitidine (AZA)の費用対効果を評価することを目的として実施した。本分析では,高リスクMDS患者の予後に関するマルコフモデルを構築し,支持療法(best supportive care; BSC)のみを行うBSC療法を比較対象として,高リスクMDS患者にAZAを投与した場合の費用対効果を評価した。費用は直接医療費を評価対象とした。効果指標は質調整生存年(quality-adjusted life years; QALY)を用いた。AZAの費用対効果の評価は1 QALYあたりの追加費用を表す増分費用対効果比によって行った。すなわち,AZA療法の増分費用は183万円,AZA療法の増分効果は0.353 QALYと算出され,AZA療法のBSC療法に対する増分費用対効果比は1 QALYあたり約518万円と算定された。この増分費用対効果比は一般に許容される限界値を下回っているため,わが国でのAZA治療の費用対効果は良好であると結論された。
  • 中邑 伸幸, 森 毅彦, 加藤 淳, 相佐 好伸, 仲里 朝周, 茂松 直之, 岡本 真一郎
    2012 年 53 巻 3 号 p. 318-322
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/10
    ジャーナル 認証あり
    高齢者に対する同種造血幹細胞移植に関するこれまでの報告では多岐にわたるreduced-intensity conditioningが用いられている。本研究では当院における50歳以上の高齢者骨髄性造血器腫瘍に対するフルダラビン125mg/m2), メルファラン(140mg/m2), 全身放射線照射(8Gy)を前処置とした同種造血幹細胞移植の安全性と有用性を後方視的に解析した。対象は10例,年齢中央値は56.5歳,疾患は急性骨髄性白血病,進行期骨髄異形成症候群,二次性骨髄線維症。幹細胞源は同胞骨髄4例,非血縁者骨髄6例であった。全生存率,無病生存率は共に40.0% (95% CI: 10.6~69.4%)であり,死因は再発,真菌感染症,二次がんがそれぞれ2例ずつであった。本前処置による移植では原疾患の再発は少ないものの,毒性が強く移植関連死が多くなる可能性があり,高齢者骨髄系造血器疾患に対する前処置としてはintensityの減弱などによるさらなる改良が必要である。
  • 上村 智彦, 鄭 湧, 平安山 英穂, 竹中 克斗, 伊藤 能清, 大野 裕樹, 衛藤 徹也, 宮本 敏浩, 赤司 浩一
    2012 年 53 巻 3 号 p. 323-328
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/10
    ジャーナル 認証あり
    同種造血幹細胞移植(末梢血4例,骨髄3例,臍帯血1例)を施行した原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis, PMF) 8例を後方視的に解析した。年齢中央値は48 (43~64)歳,移植時のDupriez分類は,highおよびIntermediateが7例だった。3例を骨髄破壊的,5例を減量前処置で施行した。移植片は全例で生着,好中球500/μl以上に20日,PLT 2万/μl以上に35日を要した。移植後100日以内の移植関連死亡は認められず,敗血症と移植後遅発性肺障害で2例が死亡した。急性GVHDは4例,慢性GVHDは6例で観察された。移植後の観察期間中央値は43 (6~127)ヶ月,3年予測全生存率75%だった。移植後に5例中4例は輸血依存から離脱,骨髄生検を施行し得た7例中6例で骨髄線維化の改善が認められた。PMFに対する同種造血幹細胞移植の有用性が示唆された。
  • 橋本 陽子, 横濱 章彦, 斉藤 明生, 中橋 寛隆, 外山 耕太郎, 三井 健揮, 小磯 博美, 斉藤 貴之, 半田 寛, 内海 英貴, ...
    2012 年 53 巻 3 号 p. 329-336
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/10
    ジャーナル 認証あり
    【背景・目的】群馬県内で診断された初発非ホジキンリンパ腫の実態調査を後方視的に行った。【対象と方法】群馬県内4施設の主に血液内科に2001年1月から2006年12月に入院した初発悪性リンパ腫726例について病型,臨床像,治療内容,予後を解析した。また,Diffuse large B-cell lymphoma (DLBCL)については,リツキシマブ登場前後での治療成績を比較した。【結果】679例が非ホジキンリンパ腫(B細胞性603例,T・NK細胞性76例),ホジキンリンパ腫47例であり,DLBCLが376例と最多であった。DLBCL症例のうちR-CHOP群(212例)とCHOP群(126例)では3年生存率73.5% vs 61.7% (p=0.010), 3年無増悪生存率65.1% vs 45.8% (p<0.001)と,リツキシマブ併用群で有意に予後の改善が見られた。【結語】今回の検討ではDLBCLが半数以上を占め,リツキシマブ使用により有意に予後の改善がみられた。
症例報告
  • 福田 正基, 西村 良成, 荒木 来太, 黒田 梨絵, 馬瀬 新太郎, 中川 裕康, 刀祢 裕美, 前馬 秀昭, 和田 泰三, 笠原 善仁, ...
    2012 年 53 巻 3 号 p. 337-341
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/10
    ジャーナル 認証あり
    EBV関連血球貪食症候群(EBV-HLH)は,EBVのCD8+T細胞への感染とクローン性増殖を特徴とする疾患である。EBV-HLHにおいてEBVに感染したCD8+T細胞はCD5の発現が陰性となり,この変化がEBV-HLHと他の重症EBV関連疾患の鑑別の上で有用であることを我々は報告してきた。今回,5歳女児のEBV-HLH患者においてEBV感染細胞がCD8+T細胞中のCD5-HLA-DR+を示す細胞群であると同定でき,この細胞群の経時的な増減は病勢を反映するものであった。EBV-HLHは,軽症例から強力な化学療法や造血幹細胞移植を必要とする重症例まで多様である。EBV感染細胞群をフローサイトメトリー法で簡便に同定し,その増減を経時的に評価していくことは,EBV-HLHの適切な治療方法を決定する上で今後重要になってくると思われた。
  • 浜崎 由起子, 松岡 亮仁, 脇 正人, 川上 公宏
    2012 年 53 巻 3 号 p. 342-346
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/10
    ジャーナル 認証あり
    症例は22歳女性,発熱と意識障害にて発症した後天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)に対して血漿交換とステロイド治療を開始したが,効果は乏しく経過中に右片麻痺が出現し,MRI画像で広範囲の左脳梗塞を,MR血管撮影にて左中大脳動脈主幹部の狭窄をそれぞれ認めた。治療抵抗性と判断し,第14病日よりrituximab 375 mg/m2を1週間毎,4回投与した。血小板数の回復と破砕赤血球の正常化,意識障害,右片麻痺の改善が得られ,梗塞巣も縮小した。TTPの神経症状は小動脈から毛細血管レベルの血小板血栓に伴い,通常CTやMRIなどで検出されないが,重症例では病変が出現することがある。治療抵抗性のみならず,本例の様に画像検査で脳血管障害を発症している場合は,迅速な改善効果が期待されるrituximabの使用を検討する意義がある。
  • 井田 桃里, 橋本 誠雄, 矢野 敏雄, 佐藤 直子, 小池 正
    2012 年 53 巻 3 号 p. 347-351
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/10
    ジャーナル 認証あり
    急性骨髄単球性白血病の54歳男性。骨髄像にてFAB分類のAML-M4Eoと診断した。リアルタイムPCR法でCBFβ/MYH11陽性であったが,骨髄染色体G分染法の結果よりdel(7q)が先行しinv(16)を付加異常として獲得したと考えられた。寛解導入療法1コースで完全寛解に至り,以後完全寛解を維持している。染色体核型は急性骨髄性白血病の予後因子として重要視されている。del(7q)は染色体核型による予後別分類では中間群,もしくは不良群に分類されている。一方inv(16)/t(16;16)は良好群に位置付けられている。ときにinv(16)/t(16;16)陽性de novo AMLに付加染色体異常としてdel(7q)が出現することが報告されており,そのような症例の予後は良好であるとされているが,本例のようにdel(7q)陽性AMLにinv(16)が付加的に加わった報告は稀であり,かかる症例の予後は明らかにされていない。染色体異常の出現と予後を考える上で貴重な症例と考え報告する。
  • 市原 弘善, 康 史朗, 青山 泰孝, 久村 岳央, 太田 忠信, 古川 佳央, 寺田 芳樹, 山根 孝久, 日野 雅之, 麥谷 安津子
    2012 年 53 巻 3 号 p. 352-356
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/10
    ジャーナル 認証あり
    症例は62歳,男性。近医にてC型慢性肝炎の診断のもとInterferon-β (IFN-β)で治療が開始された。治療開始後29ヶ月2週目にWBC 2,300/μl, Hb 7.2g/dl, PLT 4.7×104l, と汎血球減少を認めIFNを中止。しかし,その後も汎血球減少は進行,LDH 4,898IU/lと急激な上昇を認め,当科紹介入院となった。精査の結果,悪性貧血と診断,ビタミンB12投与により速やかな改善が得られた。ウイルス性肝炎に対してIFN治療が広く行われている。それに伴って様々な副作用が報告されているが,悪性貧血合併報告は稀である。IFN加療中に貧血を合併した場合,悪性貧血を鑑別する必要があると考えられ報告する。
  • 關谷 暁子, 森下 英理子, 丸山 慶子, 朝倉 英策, 中尾 眞二, 大竹 茂樹
    2012 年 53 巻 3 号 p. 357-360
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/10
    ジャーナル 認証あり
    先天性第VII因子(FVII)欠乏症は,血中FVII活性値と出血の重症度が必ずしも一致しない凝固異常症であるため,止血管理は個々の症例の臨床症状に応じて行われる。今回,凝固因子活性測定に用いるプロトロンビン試薬の違いにより,活性値に乖離を認めた先天性FVII欠乏症を経験した。発端者は出血の既往のない82歳女性。ウサギ脳由来組織因子(TF)を用いたFVII活性値とヒト胎盤由来TFを用いたFVII活性値が,それぞれ1.4%, 32%と乖離を示した。遺伝子解析の結果,1アミノ酸置換Arg304Gln (R304Q)を伴うミスセンス変異G 10828 A (FVII Padua)が同定された。R304Qはホモ接合体であっても臨床的には無症状で,FVII補充療法などを必要としないことが多い。ウサギ脳TFを用いた測定系でプロトロンビン時間延長ないしFVII活性の低下を認めた場合,R304Q変異の存在を考慮し,他の動物種由来のTFを用いた再検を行うことにより,不必要なFVII補充療法を回避できる可能性が示唆された。
  • 田村 真一, 石田 宏之, 藤木 敦, 吉原 隆夫, 近藤 統, 井上 雅美, 河 敬世, 川端 健二, 今村 俊彦
    2012 年 53 巻 3 号 p. 361-366
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/10
    ジャーナル 認証あり
    症例は,慢性活動性Epstein-Barrウイルス感染症に対してHLA-DR 2アリル不一致の非血縁ドナーより骨髄移植を施行した22歳男性。移植10か月後,respiratory syncytialウイルス感染後に蛋白漏出性胃腸症を発症した。病理学的に結腸表層上皮と腺周囲へのT細胞の浸潤,腺窩のアポトーシス小体を確認し,再燃型急性graft-versus-host disease (GVHD)と診断した。Methylprednisolone (mPSL) 10mg/kgを2日間投与したところ,消化器症状は改善したがステロイド関連の強いうつ状態と急性膵炎を認めた。mPSLを減量しinfliximab(5mg/kg, 計3回)を投与したところ,消化管GVHDは増悪することなく,急速にうつ状態と膵炎も改善した。Tumor necrosis factor (TNF)-αはGVHDだけでなく,うつや急性膵炎発症との関わりが報告されている。本症例では抗TNF-α療法によりGVHDを増悪させることなくステロイドの減量が可能となり,うつ状態や膵炎に対しても有効であった。
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