症例は39歳(症例1)と57歳(症例2)の女性で,急性リンパ芽球性白血病,濾胞性リンパ腫に対し,同種骨髄移植を受けた。移植片対宿主病の治療あるいは予防のためにtacrolimusが経口で投与されていた。移植後17ヶ月(症例1)と2ヶ月(症例2)に血清ナトリウムが123.5 mEq/
l, 125.6 mEq/
lまで低下した。Tacrolimusの血中濃度トラフ値は10 ng/m
l前後であった。1日尿中ナトリウム排泄量は186.8 mEq/日,375.7 mEq/日と著明に増加していた。Tacrolimusによるナトリウム喪失性腎症と診断し,tacrolimusを減量し,両例共に血清ナトリウムは正常化した。Tacrolimusによるナトリウム喪失性腎症は腎移植後の報告は少数ながらあるが,同種造血幹細胞移植後の報告はこれまでにない。同種造血幹細胞移植患者においてもtacrolimusの副作用の一つとして広く認識される必要がある。
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