臨床血液
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54 巻, 3 号
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Picture in Clinical Hematology
臨床研究
  • 前田 尚子, 濱島 崇, 山家 由子, 関水 匡大, 堀部 敬三
    2013 年 54 巻 3 号 p. 263-268
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/03
    ジャーナル 認証あり
    小児期に全身放射線照射(TBI)を含む前処置で造血幹細胞移植を受けた24例について,甲状腺触診と超音波検査を施行した。超音波検査で径1 cm以上の結節性病変を認めた例では,穿刺吸引細胞診を行った。腫瘤を触知した5例はいずれも径1 cm以上の結節性病変を認め,4例は腺腫様甲状腺腫,1例は甲状腺癌であった。腫瘤を触知しなかった19例の超音波検査所見は,結節性病変5例(腺腫様甲状腺腫1例を含む),嚢胞性病変6例,異常なし8例であった。結節性病変の有無と性,移植時年齢,移植後年数,原疾患,移植前処置,移植時病期,移植細胞,慢性GVHD, 性腺機能低下,甲状腺機能低下との間に有意な相関は見られなかった。放射線照射は二次性甲状腺癌のリスク因子であり,TBI施行例では定期的に甲状腺触診を行うとともに,超音波検査の組み入れを考慮することが必要であると考えられた。
症例報告
  • 水谷 実, 中森 良樹, 坂口 春奈, 景山 裕紀, 大矢 瑛子, 伊野 和子, 鈴木 圭, 関根 隆夫
    2013 年 54 巻 3 号 p. 269-272
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/03
    ジャーナル 認証あり
    症例は61歳女性。右顎下部腫瘤の生検とCT検査結果からびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)病期IIIAと診断された。初回CHOP療法の8日目に行った初回リツキシマブの投与中に,見当識障害,痙攣,意識障害,視覚障害,低ナトリウム血症,血圧上昇が認められた。MRI検査では後方優位の両大脳,両小脳にT2強調,FLAIR画像の高信号を認め,同部位での拡散強調画像では高信号なしの所見を認め,可逆性後頭葉白質脳症(reversible posterior leukoencephalopathy syndrome, RPLS)と診断した。また,低ナトリウム血症の原因は抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)であった。血清電解質と血圧の補正に伴い意識は回復し,痙攣出現から40時間後には全ての神経障害は回復した。以後RPLSの再燃なく7回のCHOP療法と7回のリツキシマブ投与を行った。RPLSはDLBCLに対する化学療法の稀な合併症だが,治療中に急性神経症状を呈した場合に考慮する必要がある。
  • 澤 大介, 西川 拓朗, 中島 健太郎, 守田 弘美, 伊藤 暢宏, 深野 玲司, 岡村 純, 稲垣 二郎
    2013 年 54 巻 3 号 p. 273-278
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/03
    ジャーナル 認証あり
    症例は生後3か月,7か月発症の乳児急性リンパ性白血病の男児2例。第1寛解期にbusulfan,etoposide,cyclophosphamideを前処置として非血縁者間臍帯血移植を行った。生着日は,それぞれday 17,day 15であり,急性GVHDは共に認めなかった。それぞれday 25,day 30に肺水腫を発症したが,体液コントロールにより改善した。しかし,その後それぞれday 37,day 59に呼吸障害を伴う肺水腫を再度発症した。発熱・咳嗽はなく,ステロイド治療を開始した。翌日には,呼吸状態は著しく改善し,以降は再燃もみられなかった。症状及び経過からはIdiopathic pneumonia syndrome (IPS)の範疇に入る疾患と考えたが,IPSの既知の概念での分類は困難であり,乳児白血病に対する臍帯血移植に関連した合併症である可能性も考えられた。
  • 成田 朋子, 粥川 哲, 吉田 嵩, 楠本 茂, 片岡 孝江
    2013 年 54 巻 3 号 p. 279-283
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/03
    ジャーナル 認証あり
    症例は45歳男性。慢性骨髄性白血病慢性期と診断されimatinib mesylate内服開始後3ヶ月でpartial cytogenetic response (PCyR)を達成した。その後2ヶ月程で,背部痛および末梢血に骨髄芽球を認め精査し,膵頭部に隣接する5 cm大の髄外腫瘤を認め,骨髄検査より慢性骨髄性白血病急性転化と診断した。bcr/abl遺伝子変異解析は陰性であり,dasatinib単独療法によりcomplete cytogenetic response (CCyR)に到達し,急性転化診断後2ヶ月で,姉をドナーとする同種末梢血幹細胞移植を行った。移植後24ヶ月現在,dasatinibの維持療法を継続中で,major molecular response (MMR)を維持している。
  • 和田 祥枝, 北詰 浩一, 鈴木 隆之, 藤田 彰, 清水 誠一郎
    2013 年 54 巻 3 号 p. 284-289
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/03
    ジャーナル 認証あり
    65歳男性。健康診断で白血球増多を指摘されて受診,白血球,LDH, sIL-2Rの軽度上昇を認めた。画像検索では明らかな所見なく,骨髄検査では核小体不明瞭な小型の異型リンパ球を多数認め,T細胞系の表面マーカー陽性,染色体検査は正常核型であった。以上よりT細胞前リンパ球性白血病(T-PLL) small cell variantと診断,経過観察となった。白血球増多を指摘されてから約34か月後,頸部リンパ節の急激な増大と,白血球,LDH, sIL-2Rの急速な上昇を認め,入院となった。骨髄穿刺および頸部リンパ節生検では,これまで検出できなかったinv(14)(q11;q32)を含む複雑な染色体異常を示し,画像上全身のリンパ節腫大と肝脾腫を認めた。入院4日目に脾臓破裂を合併し,経カテーテル動脈塞栓療法を行うも救命できなかった。本症例は,緩慢な経過ののち急激な悪化時にT-PLLに特徴的とされる染色体異常を認めた。またT-PLLの剖検症例は貴重と考えられ報告する。
  • 川島 一郎, 菖蒲 侑希, 山本 健夫, 濱中 聡至, 野崎 由美, 中嶌 圭, 三森 徹, 桐戸 敬太
    2013 年 54 巻 3 号 p. 290-294
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/03
    ジャーナル 認証あり
    MLL遺伝子再構成は白血病において比較的多く認められる遺伝子異常であり,そのパートナーとなる遺伝子の特性により,生じる白血病の形質が規定されている。このうち,MLLT3-MLLは主にAMLを引き起こすが,動物モデルではサイトカインなどの外的要因によりALLや混合形質性白血病を誘導することも示されている。今回,MLLT3-MLLを有し,髄外性白血病として発症した混合形質性白血病症例を経験した。症例は44歳女性。腫瘍細胞は骨髄性(CD13およびMPO)とB細胞性(CD19およびCD79a)の形質を有していた。髄外性白血病のほとんどはAMLの形質を示し,混合形質性白血病として発症した例は本例を含め4例が報告されるにすぎない。また,本症例においてMLLT3-MLLを有するにも関わらず,混合性形質を獲得した要因として,白血病細胞が髄外環境で増殖したことが関与しているのではないかと推察された。
  • 桐戸 敬太, 小松 則夫
    2013 年 54 巻 3 号 p. 295-299
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/03
    ジャーナル 認証あり
    ロミプロスチムはトロンボポエチン(TPO)受容体作動薬の一つであり,難治性の特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対する新たな治療薬として注目されているが,最近長期使用に伴うレチクリンおよびコラーゲン線維の発生が懸念されている。今回,国内第3相臨床試験/長期継続試験に登録した症例で,試験終了後に骨髄線維化が確認された症例を経験した。症例は64歳女性。難治性ITPと診断され,ロミプロスチムの臨床試験に参加した。長期継続試験にてロミプロスチム投与開始後116週目に,末梢血中に骨髄芽球を認めため,ロミプロスチムを中止した。118週目には,涙滴赤血球を認めたため骨髄生検を実施したところ,レチクリン線維とコラーゲン線維の増生が確認され,血小板数が0.4万まで急激に低下し肉眼的血尿も認めたため,減量して再開した。ロミプロスチム再開後約1年経過後に再度骨髄生検施行時には,レチクリンおよびコラーゲン線維増生の程度は減少していた。TPO受容体作動薬による骨髄線維化を示した実例は少ないうえに,可逆性と考えられているが,今後の一般臨床での使用にあたっては十分な注意が必要であると考えられた。
  • 山本 真梨子, 中舘 尚也, 井口 梅文, 益田 博司, 阪井 裕一, 石黒 精
    2013 年 54 巻 3 号 p. 300-304
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/03
    ジャーナル 認証あり
    遺伝子組み換え第IX因子製剤(rFIX)の持続輸注によって開頭術周術期管理を行った重症型血友病Bについて報告する。症例は1歳男児,頭蓋内出血で発症し,開頭血腫除去後からrFIX定期補充療法を行った。クモ膜嚢胞が増大し,rFIX持続輸注によるクモ膜嚢胞開窓術を施行した。FIX活性は,術中90%, 術後3日目以降70%を目標とし,rFIXの持続輸注を術後7日目以降まで続けた。手術の合併症は認めなかった。rFIXの薬物動態は半減期25時間,in vivo recovery 0.69 IU/dl/IU/kgであった。またrFIX溶解後のFIX活性は,室温で72時間まで95%以上を保っていた。本症例はrFIX持続輸注によって開頭術周術期管理を行った,本邦初めての小児例と思われる。適切な活性値を保つには,個々の薬物動態に基づいて維持投与量を調節することが重要である。
  • 児玉 祐一, 西村 美穂, 中島 健太郎, 伊藤 暢宏, 深野 玲司, 岡村 純, 稲垣 二郎
    2013 年 54 巻 3 号 p. 305-310
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/03
    ジャーナル 認証あり
    症例は急性骨髄性白血病と診断された3歳女児で,寛解導入不能のため臍帯血移植を施行した。臍帯血移植後14日目に,Chryseobacterium indologenesによる中心静脈カテーテル(CVカテ)関連血流感染症に罹患した。感受性の結果を考慮してciprofloxacinとminocyclineによる治療を行ったが奏功せず,移植後21日目にCVカテを抜去し解熱した。C. indologenesは自然環境に広く分布する環境常在菌であり,ヒトの感染症の起炎菌としては稀である。同菌による菌血症は,がんや糖尿病などの免疫不全を背景にもつ患者に多い。近年C. indologenesの抗菌薬に対する耐性化が進行しており,C. indologenesのバイオフィルムを形成しやすいという性質から,造血細胞移植患者の同菌によるCVカテ感染症で,抗菌薬の効果を得られないと判断したら時期を逃さずにCVカテを抜去すべきである。
  • 籠手田 聡子, 野村 桂, 橋口 道俊, 川口 城毅, 奥 英二郎, 大崎 浩一, 中村 剛之, 毛利 文彦, 今村 理恵, 関 律子, 長 ...
    2013 年 54 巻 3 号 p. 311-315
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/03
    ジャーナル 認証あり
    症例は62歳女性B細胞性急性リンパ性白血病。第一寛解期に,同種臍帯血移植を行ったが,生着不全となった。初回移植後56日目にHLA半合致の患者次女より同種末梢血幹細胞移植を行った。真菌感染予防のためボリコナゾールを投与した。day9に好中球500/mm3以上と順調な生着であった。day21より発熱し,S状結腸穿孔と肝占拠性病変を合併し,肝占拠性病変の経皮的生検で接合菌が検出された。day40に抗真菌剤をリポゾーム化アムホテリシンBに変更したが翌日に死亡した。接合菌は,Mucor indicusと同定された。検索範囲内でボリコナゾール投与中のブレイクスルー感染としてのMucor indicusによる接合菌症は,これまで報告されていない。HLA半合致移植後等の強い免疫抑制状態では,好中球回復後も投与されている抗真菌剤耐性の真菌感染症を考慮する必要がある。
短報
  • 小川 千登世, 真部 淳, 小原 明, 石黒 精
    2013 年 54 巻 3 号 p. 316-318
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/03
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    We investigated supportive therapy against coagulopathy associated with L-asparaginase treatment in patients with acute lymphoblastic leukemia who were enrolled in the Japanese Pediatric Leukemia/Lymphoma Study Group (JPLSG), Japan Adult Leukemia Study Group (JALSG), and foreign institutes. Fresh frozen plasma (FFP) was administered as a supplement in 46% patients in the JPLSG and 86% in the JALSG. The threshold level of FFP infusion was less than 100 mg/dl plasma fibrinogen in 70% of the JALSG and 20% of the JPLSG, while in another 20% of the JPLSG, FFP was administered when the fibrinogen level was less than 50 mg/dl. The preventive use of antithrombin products (AT) was prescribed in 93% of the JPLSG and 63% of the JALSG: The threshold level of AT supplementation was less than 70% of plasma antithrombin activity, which was similar in both groups. Most foreign institutes do not routinely use FFP or AT.
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