51歳女性。7年前に左浸潤性乳管がん・腋窩リンパ節転移・肝転移と診断され,アンスラサイクリンとタキサンベースの化学療法に続き,リュープロレリンおよび抗エストロゲン製剤による内分泌療法を施行。1年半前に骨転移による疼痛のため頚椎へ定位照射施行,5ヶ月前に放射性同位元素内用剤
89Srを投与した。その後徐々に汎血球減少が進行し,やがて輸血依存となったため当科紹介。骨髄液の鏡検では重度低形成のため確定診断に至らなかったが,
PML-RARA FISHが陽性となり,急性前骨髄球性白血病(APL)と診断した。全トランスレチノイン酸を投与し,約3週間で造血が回復し,顆粒球の分化が見られるようになった。経過を通じて播種性血管内凝固や分化症候群は見られなかった。これまで
89Sr投与後に発症したAPLは報告されておらず,本症例は発症経過も非典型的であり,治療関連白血病の診断治療にはその特殊性を考慮した診療が求められると考えられた。
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