臨床血液
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56 巻, 12 号
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Picture in Clinical Hematology
第75回日本血液学会学術集会
学会奨励賞受賞論文
  • 柴 徳生
    2015 年 56 巻 12 号 p. 2419-2425
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/29
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    次世代シーケンサーの登場により,成人急性骨髄性白血病(AML)では,2000年代後半に米国を中心に網羅的に遺伝子解析がなされ,DNMT3A, TET2, IDH1/2などの予後に影響を及ぼす遺伝子変異が多数同定されるなど,主要なゲノム異常が明らかにされている。一方,小児AMLではこれらの異常はまれであり,また,これまでに全ゲノム,全エクソン解析に関するまとまった報告はない。今回,小児AML 19例で全エクソン解析を行い,計80個,1例あたり平均4.2個の遺伝子変異を同定し,既知のFLT3, CEBPA, KIT, NRAS, CBL, WT1などに加え,BCORL1やコヒーシン関連遺伝子(SMC3, RAD21)の変異を新たに同定した。しかし,複数症例に共通する新規の遺伝子変異は同定されず,改めて小児AMLの複雑性が明らかとなり,成人AMLとは遺伝学的背景が異なっているものと考えられた。
  • 山下 真幸, 仁田 英里子, 須田 年生
    2015 年 56 巻 12 号 p. 2426-2433
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/29
    ジャーナル 認証あり
    静止期にある造血幹細胞はストレスによって失われにくい反面,DNA修復エラーによる遺伝子変異をきたしやすい。しかし造血幹細胞が変異の蓄積を防ぐ仕組みは明らかでない。造血幹細胞はアポトーシス抑制性Bcl-2を高発現し細胞死を防いでいるが,DNA損傷下ではp53を活性化し積極的にアポトーシスシグナルを誘導する。筆者らはp53のアポトーシス促進分子Aspp1が造血幹細胞に高発現し,p53と協調して造血幹細胞プールの健全性維持に貢献することを明らかにした。本稿では造血幹細胞におけるアポトーシス制御とp53の役割について概説したのち,Aspp1がp53と協調して造血幹細胞の自己複製,DNA損傷および腫瘍化を制御する仕組みを紹介する。
  • 才田 聡
    2015 年 56 巻 12 号 p. 2434-2440
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/29
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    ダウン症候群児はGATA1の遺伝子異常により,新生児期に約10%で一過性骨髄異常増殖症(TAM)を発症し,うち約20%がのちに急性白血病(ML-DS)を発症する。我々は異種移植によりTAMモデルマウスを作製し,白血病進展機序の解明を試みた。患者TAM細胞をNOGマウスに移植し,11例中3例の検体で生着を確認した。生着した症例について2次移植を施行したところ,生着した3例のうち1例で継代移植が可能であり,マウス内TAM由来細胞において,初発TAM患者検体には見られなかったDNAコピー数異常やGATA1遺伝子異常が観察され,これらの異常を有するクローンが,もともとのTAM患者検体の中にマイナークローンとして存在していることを証明した。また本症例は後に実際にML-DSを発症した。本モデルの解析により,白血病発生の初期段階に起こるクローン選択が,白血病進展において重要である可能性が示唆された。
症例報告
  • 石埼 卓馬, 三井 健揮, 内山 由理, 小川 孔幸, 小磯 博美, 滝沢 牧子, 横濱 章彦, 斉藤 貴之, 半田 寛, 塚本 憲史, 村 ...
    2015 年 56 巻 12 号 p. 2441-2446
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/29
    ジャーナル 認証あり
    症例は80歳男性。歩行障害,物忘れで発症,頭部MRIと髄液排除試験で正常圧水頭症が疑われたが,髄液の細胞診とフローサイトメトリーの所見からB細胞性リンパ腫と診断した。頭部・脊髄MRIでは脊髄の腹側,背側表面に造影効果を認め,軟髄膜原発悪性リンパ腫(PLML)と診断。Methotrexate (MTX)髄注開始後,髄液所見,健忘症状,歩行障害は改善し,造影MRIの髄膜病変は消失した。3か月後に左顔面神経麻痺症状で再発したが,rituximab投与とMTX髄注で神経症状は消失した。その後造影MRIで脊柱管内に腫瘤性病変を認めたが,3か月ごとのMTX髄注のみで発症後4年間,神経症状なく経過している。PLMLは診断が困難で非常に稀な疾患であるが,定期的な髄注が病勢進行の抑制に有効であった。
  • 長坂 伊左男, 三井 健揮, 石埼 卓馬, 小磯 博美, 横濱 章彦, 齋藤 貴之, 平戸 純子, 五十嵐 忠彦, 小島 勝, 塚本 憲史, ...
    2015 年 56 巻 12 号 p. 2447-2451
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/29
    ジャーナル 認証あり
    精巣原発悪性リンパ腫は非ホジキンリンパ腫の1~2%, 全精巣腫瘍の5~9%を占める稀な疾患である。限局期であっても高率に再発し,他部位と比較して予後不良である。我々はCHOP療法3コースのみでCRとなり,16年間の長期寛解後に再発し,再発時のクローンが初発時と同一クローンであると考えられた精巣原発びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)症例を報告する。49歳時に右精巣の腫瘤を認め,高位精巣摘除術を施行されDLBCL(病期IAE)と診断された。CHOP療法を3コース行い完全寛解となった。65歳時,左精巣に腫瘤を自覚したため当院を再診。高位精巣摘除術を行い再びDLBCLと診断された。腫瘍細胞の免疫グロブリン可変領域遺伝子(IgHV)を調べたところ,初発時および再発時の双方でVH3-21が検出され,同一クローンからの再発と考えられた。
  • 大中 貴史, 北川 智也, 森 美奈子, 米澤 昭仁, 今田 和典
    2015 年 56 巻 12 号 p. 2452-2455
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/29
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    症例は45歳男性。2009年9月に発症したKIT陽性t(8;21)急性骨髄性白血病。初回寛解導入療法に不応もcytarabine大量療法による寛解導入を達成。しかし,分子生物学的再発を認めたため,骨髄破壊的前処置の後HLA完全一致同胞から同種骨髄移植を実施した。慢性GVHDの治療経過中の移植後1年経過時に難治性痔瘻が出現。大腸内視鏡検査より,同種骨髄移植後慢性期におけるクローン病様消化管病変と診断した。クローン病に準じ,栄養療法実施したが改善は得られず,cyclosporineの再増量を行うも効果は認めなかった。Infliximabを投与したところ,消化管病変および痔瘻は速やかに改善し,以後無治療で3年間再燃を認めていない。消化管慢性GVHDに対するinfliximab投与の有用性を示した報告は乏しいが,同種移植後慢性期においてクローン病様病態を呈した場合,早期のinfliximab投与の有用性が示唆された。
  • 濱口 孝太, 橋本 亜香利, 藤見 章仁, 蟹沢 祐司, 柴田 敬典, 中嶋 千紗, 早坂 尚貴, 山田 尚太, 奥田 敏徳, 南 伸弥, ...
    2015 年 56 巻 12 号 p. 2456-2461
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/29
    ジャーナル 認証あり
    症例は86歳,男性。左顎下部,左鼠径部,左大腿前面のリンパ節腫大を指摘され,リンパ節生検にてLangerhans cell sarcoma (LCS)と診断した。また,正球性正色素性貧血を認め,骨髄検査では,芽球の増加と異形成を認めなかったが,G-Band法で20番染色体長腕欠失を認めた。以上より,LCSとidiopathic cytopenia of undetermined significance (ICUS)の併存と診断した。超高齢であることからTHP-COP療法を選択した。6コース施行後に部分寛解が得られ,その後11ヶ月間再燃を認めなかった。一方,ICUSはTHP-COP療法終了11ヶ月後にacute myeloid leukemia (AML)へ進展した。AMLに対する積極的治療は施行せず,発症1ヶ月後に永眠した。LCSは,極めて稀な高悪性度樹状細胞性腫瘍であり,これまで67例が報告されているのみである。一部の症例で,他の造血器腫瘍の併発が報告されているが,LCS治療後にICUSからAMLへ進展した症例の報告はこれまでにない。貴重な症例と考え報告する。
  • 増田 亜希子, 常名 政弘, 本田 晃, 佐藤 優実子, 黒川 峰夫, 矢冨 裕
    2015 年 56 巻 12 号 p. 2462-2466
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/29
    ジャーナル 認証あり
    症例は64歳男性。末梢血赤芽球出現とフェリチン異常高値の精査目的に受診した。明らかな血球減少は認めなかったが,末梢血で好中球偽ペルゲル核異常,巨大血小板,フェリチン高値(1,405 ng/ml)を認め,精査目的で骨髄検査を施行した。骨髄では三系統に異形成を認めたが,血球減少は骨髄異形成症候群の診断基準を満たさず,特発性血球異形成(idiopathic dysplasia of undetermined/uncertain significance, IDUS)と診断した。本症例はSF3B1変異陽性であり,骨髄異形成症候群の前段階にあると推察される。IDUSの一部の症例は骨髄系腫瘍への移行が報告されており,慎重な経過観察が必要と考えられる。血球減少が軽度であっても,末梢血の形態学的異形成やフェリチン異常高値を認め,骨髄不全症候群が強く疑われる場合は,骨髄検査による精査が望ましいと考えられた。
  • 栗本 美和, 永田 明久, 関口 直宏, 能登 俊, 竹迫 直樹
    2015 年 56 巻 12 号 p. 2467-2471
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/29
    ジャーナル 認証あり
    症例は90歳,女性。白血球増多を指摘され当科紹介となった。骨髄検査で,芽球から成熟好中球まで各分化段階の顆粒球系細胞を認め,染色体分析でt(9;22)(q34;q11.2)を認めたため,慢性期慢性骨髄性白血病(CML), ハイリスク群(Sokal score 1.5)と診断した。イマチニブ400 mg/日で開始したが,消化器症状が強く不耐容と判断し,ニロチニブ400 mg/日に変更した。その後800 mg/日に増量し細胞遺伝学的完全奏効に到達したが,QTc延長,心不全を発症した。ニロチニブを中止し,心不全治療の回復後,ダサチニブ50 mg/日に変更したところ明らかな非血液毒性を認めることなく深い分子遺伝学的奏効を得た。ハイリスク群のイマチニブ不耐容例においても,個々の症例に応じて薬剤を選択かつ投与量を調節し,適切な支持療法を行うことで,深い分子遺伝学的奏効が得られることが示唆された。
  • 佐々木 裕哉, 米澤 昭仁, 木下 善博, 北川 智也, 森 美奈子, 大中 貴史, 今田 和典
    2015 年 56 巻 12 号 p. 2472-2476
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/29
    ジャーナル 認証あり
    症例は66歳の男性。鼻閉の精査目的に当院受診。鼻腔内腫瘍生検でextranodal natural killer/T-cell lymphoma, nasal type (ENKL)と診断された。骨髄生検,18F-FDG PET/CTの結果,鼻腔,副鼻腔,両側頚部リンパ節への浸潤が認められた。67% dose DeVIC療法とinvolved field radiation therapyを併用し治療した。CTにて腫瘍の縮小を確認したが,治療終了から1か月後に会陰部の違和感を訴えたため,超音波検査で左精巣上体の腫張が判明した。生検の結果はENKLの左精巣上体浸潤であった。また,生検後に傾眠傾向となり腰椎穿刺を施行しENKLの中枢神経浸潤と診断された。治療終了後早期の浸潤であり初診時から中枢神経浸潤を伴う進行期症例であった可能性がある。ステージングの一環として腰椎穿刺による中枢神経浸潤の評価が重要であると考えられた。
  • 廣島 由紀, 貝梅 紘子, 桐原 健彦, 武田 航, 栗原 太郎, 佐藤 慶二郎, 清水 郁夫, 植木 俊充, 住 昌彦, 上野 真由美, ...
    2015 年 56 巻 12 号 p. 2477-2482
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/29
    ジャーナル 認証あり
    初診時24歳女性。2002年けいれん発作にて救急搬送。脳・脊髄Magnetic resonance imaging (MRI)にて髄膜に沿った不均一な造影所見および脊髄内に造影される結節を認めた。髄液中にCD2+ cytoplasmic CD3+ CD7+ CD13+ CD15- CD30+の大型異型細胞の出現あり。中枢神経系以外に病変はなく中枢神経原発未分化大細胞型リンパ腫と診断された。髄注化学療法併用methotrexate (MTX)/ procarbazine (PCZ)/ vincristine (VCR)療法(MPV療法)5コース後,cytarabine (AraC)大量2コース施行。初回寛解達成。2003年頭痛出現,髄液検査にて初診時と同様の異型細胞を認め中枢神経系第一再発と診断され,自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法を施行した。しかしながら2004年髄液中に異型細胞が再出現し中枢神経系第二再発と診断された。MPV療法5コースを施行し,続いて全脳全脊髄照射36Gyを行った。以後中枢神経においては寛解を維持していたが2009年右乳房に2cmの腫瘤出現,生検にてALK陽性未分化大細胞型リンパ腫第三再発が診断された。cyclophosphamide/adriamycin/vincristine/predonine (CHOP)療法6コース+局所照射にて完全寛解達成。現在に至るまで再発なく経過している。
  • 大八木 秀明, 久米 正晃, 篠原 良徳, 高橋 さつき, 齊藤 昌宏, 洞口 正志, 榎本 好恭, 斉藤 研, 平山 克, 高橋 直人
    2015 年 56 巻 12 号 p. 2483-2487
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/29
    ジャーナル 認証あり
    症例は58歳の女性。左側腹部痛を主訴に受診し,CT検査にて巨大脾腫瘤と門脈脾静脈塞栓を認めたため入院した。LDHとsIL-2レセプターの高値から非ホジキンリンパ腫が疑われたものの,生検可能な表在リンパ節腫脹はなく,説明と同意を得た後に,侵襲性の低い門脈腫瘍塞栓経皮経肝針生検を施行した。病理組織学的にB細胞性リンパ腫の診断が得られ,R-CHOP療法6コース施行後に完全寛解を得た。さらに脾摘術を施行し,腫瘍の残存がないことを確認した。肝細胞がんなどに比べ,非ホジキンリンパ腫に門脈腫瘍塞栓を合併することは極めて稀であるが,B細胞性リンパ腫はリツキシマブ併用化学療法により良好な予後が期待されるため,門脈腫瘍塞栓をきたす可能性のある疾患として鑑別すべきである。また門脈腫瘍塞栓に対して施行した超音波ガイド下経皮経肝針生検は病理学的診断確定に有用であると考えられた。
地方会
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