臨床血液
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56 巻, 8 号
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Picture in Clinical Hematology
特集:MPN 診―up-to-date 2015―
  • 桐戸 敬太
    2015 年 56 巻 8 号 p. 937-938
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
  • ―ランドマーク的臨床試験を中心に―
    山口 博樹
    2015 年 56 巻 8 号 p. 939-948
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    慢性骨髄増殖性腫瘍(cMPN)である真性赤血球増加症の約90%, 本態性血小板血症や原発性骨髄線維症(PMF)の約半数にJAK2V617F変異が発見された。その後JAK2 exon 12 deletion, MPLW515L/K, CALR遺伝子変異などが次々と発見されたことでcMPNの分子生物学的病態が急速に解明されつつある。こうした分子生物学的病態の解明によってこれまで造血幹細胞移植以外に有効な治療法がなかったPMFに対してJAK2阻害薬が開発され新たな治療薬として期待されている。またこれらの遺伝子変異を検索することによってcMPNの診断が明確化され,正確に診断をされた多数症例を対象とした大規模臨床試験がいくつも行われている。本稿ではcMPNに対して行われたランドマーク的臨床試験の中でも本邦の実地診療に役に立つ情報を中心に概説をする。
  • 枝廣 陽子
    2015 年 56 巻 8 号 p. 949-955
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    フィラデルフィア染色体陰性骨髄増殖性腫瘍(MPN)は,2005年にJAK2V617F変異が発見されて以後,MPL変異,JAK2 exon12変異,2013年のCALR変異の発見によって,大部分の患者で遺伝子変異が明らかとなった。一方,病態の機序については,新たに同定されたCALR変異もJAK2変異やMPL変異と同様にJAK2-STAT5経路を活性化しているが,その詳細な機序は未だ解明されていない。しかし,これらの変異の発見により,MPNの診断や治療法は大きな変貌を遂げた。CALR変異を有する本態性血小板血症の患者は血栓症を併発しにくいことや,CALR変異を有する原発性骨髄線維症の患者は生存期間が長いことなど,遺伝子変異ごとの臨床的特徴も明らかにされてきている。MPNの診断にはこれらの遺伝子変異の検索が必須となると考えられるが,これらをいかに実地診療に応用できるかも重要な課題となるであろう。
  • 伊藤 雅文
    2015 年 56 巻 8 号 p. 956-962
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    MPNは特異的遺伝子の発見により,遺伝子異常のタイプによる分類が診断の重要な位置を占めており,診断アルゴリズムも遺伝子異常を中心に組み立てられる。骨髄病理の観点からは,MPNには共通して顆粒球過形成,成熟巨核球増多が見られる。また,進行期には線維化,芽球転化が生じ,予後を規定する因子である。病理組織学的には,特定の遺伝子異常に共通する組織パターンが見られ,cellularity, 赤芽球血島形成の有無,巨核球形態,巨核球増殖パターンなどにより,遺伝子異常の推測が可能である。特徴的組織像を中心に,MPN病理診断から遺伝子異常への診断アルゴリズムについて総説する。
  • 三森 徹, 桐戸 敬太
    2015 年 56 巻 8 号 p. 963-971
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    Myeloproliferative neoplasm (MPN)バリアントはMPNの中でも比較的稀なCNLやMDS/MPNなどを包括した呼称である。MPNバリアントに含まれる疾患はいずれも稀であり,その診断も血球数や細胞形態に頼らざるを得ないのが現状である。一方,最近になり,CSF3R変異やSETBP1変異などが見出され,診断基準の見直しや新たな治療のターゲットとしても期待されている。本稿では,これらの知見も踏まえた上で,増加している血液細胞に着目してMPNバリアントへのアプローチについて考えてみたい。
  • 亀田 拓郎, 幣 光太郎, 久冨木 庸子
    2015 年 56 巻 8 号 p. 972-980
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    骨髄増殖性腫瘍は血栓塞栓症・出血を高頻度に合併する。その1次予防が重要であるのは言うまでもないが,時折遭遇する特殊な臨床状況,すなわち内臓静脈などの静脈血栓塞栓症・出血への対応や周術期・妊娠時の管理も重要である。1次予防については,低リスクET患者であっても,新規に報告されているリスク因子である心血管リスクやJAK2V617F変異を有する場合には,予防の対象に含めることが提唱されている。また特殊な臨床状況の管理については,どの時期にどの薬剤を用いて治療・予防を行っていくかについて,詳細なexpert consensusが作成されている。本邦でもこれらの知見を踏まえた診療が望まれる。
第76回日本血液学会学術集会
Symposium 2
  • 半田 寛
    2015 年 56 巻 8 号 p. 981-988
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    近年がんにおいて,蛋白をコードする遺伝子だけではなく,エピジェネティクスの異常が注目されている。エピジェネティクスにはDNAメチル化,ヒストンアセチル化,メチル化や,micro RNA (miRNA)が含まれている。miRNAは蛋白をコードしない19~25塩基の長さしかない小さなRNAで,mRNAの分解や蛋白への翻訳を抑制することによって,遺伝子発現を制御する。MMにおいては,特定のmiRNA発現が著明に低下,miRNAの標的である抗アポトーシス遺伝子や細胞周期遺伝子,DNAメチル化酵素は著明に増加し,miRNAと標的遺伝子の間には負の相関が認められた。miR-34 family自体もメチル化され,その発現がエピジェネティックに制御されていることも判明した。miRNAと他のエピジェネティクスはネットワークを造りMMの進行に関与していると考えられ,MMのmiRNA発現検討は重要課題である。
  • 高松 博幸
    2015 年 56 巻 8 号 p. 989-996
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    近年のプロテアゾームインヒビターや免疫調節薬などの新規薬剤開発や造血細胞移植技術の進歩によって,高感度な検出系を用いても微小残存病変(MRD)が検出できない極めて深い完全寛解状態が達成できる骨髄腫症例の存在が報告されるようになった。そのような深い完全寛解が達成された場合には,長期間にわたる寛解状態が維持され,一部の患者では治癒に至る可能性が示唆されている。最近,次世代シークエンサー(NGS)をPCR法と組み合わせることで,MRDを検出する新規の検査法が発表された。この検査法では,症例特異的PCRプライマーの設計が不要なために,MRDを安価かつ迅速に10-6レベルまで検出できるとされている。NGSによる自家移植片MRD陰性(MRDNGS(-))11症例と,ASO-PCRによる自家移植片MRD陰性(MRDASO(-))かつMRDNGS(+)12症例とをPFSに関して比較した。その結果,ASO-PCR陰性であってもNGS陽性の症例では早期に再発がみられたため(P=0.027), NGSでMRDが陰性となる極めて深い寛解が長期生存には必要であることが示唆された。
  • 安倍 正博, 三木 浩和, 中村 信元
    2015 年 56 巻 8 号 p. 997-1004
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    新規薬が臨床応用され骨髄腫の治療成績が向上しているが,骨破壊病変は依然として生活の質(QoL)の低下の最も多い原因である。初回化学療法を受ける症候性骨髄腫患者すべてに骨病変の有無にかかわらずゾレドロン酸の点滴静注を反復することが骨病変の進行防止と予後の改善の点から推奨されている。デノスマブはゾレドロン酸と同等の治療効果を発揮する。デノスマブは即効性で皮下投与という利便性があり,腎機能にも影響を与えにくいが,低カルシウム血症を来しやすく,ゾレドロン酸と同程度に顎骨壊死の発生がみられる。ゾレドロン酸は骨に長期間蓄積するが,デノスマブは骨への蓄積性がない。したがって,長期投与後の骨質への影響などに両者の違いがある可能性がある。また,治療奏効後の強力な骨吸収抑制薬継続投与の有用性および新規薬との併用下での骨病変治療薬の至適な投与開始時期,投与方法や投与期間,予後に及ぼす影響が今後の検討課題である。
  • ―症候性骨髄腫へのリスク因子を中心に―
    高松 泰, 牟田 毅
    2015 年 56 巻 8 号 p. 1005-1010
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    日本人のくすぶり型骨髄腫(SMM)の患者数および症候性骨髄腫へ進行するリスク因子を調べる目的で,後方視的研究を行った。中間解析の時点で207症例が登録された。年齢は中央値69歳(27~90歳)で,男性97例/女性110例,IgG型168例/IgA型30例/BJ型9例であった。5年間で53%の患者が症候性骨髄腫へ進行した。従来の報告と同様に血中M蛋白が3 g/dl以上,骨髄中の形質細胞割合が10%以上,血清遊離軽鎖(FLC)比>8または<0.125の3因子をもつ患者は進行リスクが高く,3年以内に55%が症候性骨髄腫へ進行した。また血清M蛋白の増加率が進行するまでの期間に逆相関し,2 mg/dl/日以上の速度で血清M蛋白が増加する患者は5年以内に100%が症候性骨髄腫へ進行した。血清M蛋白の増加率はSMMが症候性骨髄腫へ進行するリスクを層別化する因子になり得ると考えられた。
Symposium 6
  • 岩間 厚志
    2015 年 56 巻 8 号 p. 1011-1015
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    造血幹細胞の体外増幅の試みが盛んに行われている。これまでのサイトカインや蛋白製剤を主流とした増幅法に加えて,造血幹細胞の機能分子を標的とした低分子化合物が次々と開発され,造血幹細胞増幅の可能性が広がりつつある。ヒト造血幹細胞の純化法の改良や,免疫不全マウスを用いたヒト造血幹細胞の長期骨髄再構築能の評価系の進歩なども,このような研究の流れを加速させている。体外で増幅あるいは操作した造血幹細胞を用いた移植の臨床試験も盛んに行われるようになり,良好な成果が得られつつある。
  • 大津 真
    2015 年 56 巻 8 号 p. 1016-1024
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    近年,造血幹細胞を標的とする遺伝子治療の成功例の報告が増えている。標的はいずれも重篤な単一遺伝子病であり,患者は造血/免疫細胞に原因遺伝子の正常な発現を欠くことで発症する。遺伝子治療は,これを造血幹細胞に正常遺伝子の発現を補完することで治癒せしめることを目的として行われる治療法である。しかしながら実施例の増加とともに,標的疾患ごとの有効性,安全性の面での違いが明らかとなっており,遺伝子導入法を含めた治療プロトコールのさらなる至適化が必要とされている。人工多能性幹細胞(iPS細胞)は,単一遺伝病を細胞レベルで再現するツールとして有用であることから,これらの遺伝子治療における至適化研究に適している。今後,疾患特異的iPS細胞の研究ツールとしての活用が一般化し,他の実験的アプローチと協働することで,遺伝病に対する遺伝子治療のさらなる改良につながることが期待される。
  • 卜部 匡司
    2015 年 56 巻 8 号 p. 1025-1031
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    iPS細胞,間葉性幹細胞などの分裂増殖する細胞の遺伝子操作は挿入変異発がんを生じないことが必須である。非病原性のアデノ随伴ウイルスが第19番染色体のAAVS1領域に特異的に組み込まれる性質を利用し,任意のDNAを同部位に組み込ませる方法は発がんの可能性は極めて低く,導入部位AAVS1も安全な場所とされている。AAVゲノムのITRもしくはp5 promoter配列を導入したいDNAにつなぎRep発現プラスミドと共に細胞に導入するとドナープラスミドがAAVS1に挿入される。AAVS1に限定されるが,100 kb以上の大きなDNAも挿入でき,比較的簡単にシステムを構築できるこの方法の現況を紹介したい。
Symposium 8
  • 島田 和之
    2015 年 56 巻 8 号 p. 1032-1037
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVLBCL)は全身諸臓器の細小血管内に腫瘍細胞が増殖する特異な節外性リンパ腫の一型である。悪性リンパ腫の一般的な特徴であるリンパ節腫脹を欠き,臨床症状が発熱やLDH上昇などの非特異的なものに留まるため,疾患認知度が向上した現在においてもしばしばその診断は困難である。近年のFDG-PET/CTによる病変の検出やランダム皮膚生検の普及により,従来よりも正診率が向上していることが期待されている。治療面においては,抗CD20抗体医薬による治療成績の向上と高い中枢神経再発リスクが示唆され,更なる治療成績の向上を図るべく,臨床第II相試験による治療開発が進行している。従来,十分量の腫瘍細胞を得ることが難しく,生物学的な病態研究が困難であったが,免疫不全マウスを用いた異種移植モデルにより病態研究が進みつつある。本稿ではIVLBCLに対する現状認識と将来展望について概説する。
  • ―分子基盤に基づく治療戦略―
    宮﨑 香奈
    2015 年 56 巻 8 号 p. 1038-1044
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma, DLBCL)の免疫組織化学的サブグループの一つであるCD5+ DLBCLは,診断時年齢中央値は67歳と高齢者に多く,予後不良因子を高率に有し,rituximab導入後も予後不良である。予後不良性の最大の原因として,rituximab導入後も中枢神経系再発/増悪割合が診断後2年時点で13%と高いことが挙げられ,その浸潤部位は80%の症例で脳実質内である。BCL2蛋白の陽性率は90%と高く,cyclin D2蛋白も98%と高い割合を示す。また自験例の解析ではP糖蛋白の陽性率が59%と高い。遺伝子発現プロファイリングの結果,CD5+ DLBCLではほとんどの症例がactivated B cell-like (ABC) DLBCLに分類され,このことは免疫組織化学的所見,Array CGHの解析結果と一致する。現在CD5+ DLBCLに特化した初回治療法を開発するため,従来のR-CHOP療法に改良を加えたdose-adjusted EPOCH-R療法と中枢神経系浸潤予防として大量methotrexate療法を組み合わせた治療法の多施設共同第II相試験がわが国で進行中である。
Symposium 10
  • 小川原 陽子, 北林 一生
    2015 年 56 巻 8 号 p. 1045-1052
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)の変異はAMLやグリオーマを始め,様々ながんで生じている。野生型IDHはα-KGという代謝物を産生しているが,変異型IDHは新たな機能を獲得してα-KGから2-HGというがん代謝物を産生するようになる。2-HGはTETやヒストン脱メチル化酵素等の様々な二原子酸素添加酵素を阻害することによりがん化に寄与している。そして2-HGは正常な細胞には不要であるために,変異型IDHに対する阻害剤は副作用のない抗がん剤となることが期待されている。我々のグループは変異型IDH依存的にAMLを発症するモデルマウスを作成し,このマウスからloxp配列を用いて変異型IDHを除去することによる影響を調べた。その結果,白血病幹細胞性が失われてマウスの生存期間が著しく伸びることが明らかになった。この結果は,変異型IDHは治療標的にふさわしい因子であることを強く示唆している。
  • 坂田(柳元) 麻実子
    2015 年 56 巻 8 号 p. 1053-1058
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    昨今のシークエンス解析技術の進歩により,末梢性T細胞リンパ腫(peripheral T-cell lymphoma, PTCL)においてエピゲノムあるいは代謝経路に遺伝子変異が同定された。なかでも,濾胞性ヘルパーT細胞(follicular helper T cell, TFH)の特徴を呈するPTCLにおいて,これらの変異は高頻度にみられる。また,これらの異常の多くは骨髄系腫瘍にもみられることからから,エピゲノムあるいは代謝経路の異常は,多様な造血器腫瘍を発症させる根源的な異常であると考えられる。これらの異常により腫瘍を発症するメカニズムについては,骨髄系腫瘍において主として解析されており,PTCLにおける解析は現時点では限られている。我々はTET2遺伝子発現低下マウスを解析することにより,TET2変異によるPTCLの発症機序の一つを明らかにした。
  • 今野 雅允, 浜部 敦史, 土岐 祐一郎, 森 正樹, 石井 秀始
    2015 年 56 巻 8 号 p. 1059-1063
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    がん細胞も正常細胞の派生であると大きくは捉えられるが,その代謝は大きく異なっていることが指摘されている。その1つがWarbarg効果である。このような嫌気性解糖と固形がんの悪性度の根源とも言えるがん転移現象との関わりは十分には解明されてない。本研究では,生化学的なアプローチによりWarbarg効果の鍵酵素とがん転移との関連性につき,若干の知見を得たので最近の報告を踏まえて概説する。
臨床研究
  • 皆内 康一郎, 嶋 香菜子, 橋口 淳一, 荒 隆英, 安本 篤史, 藤野 賢治, 小原 雅人, 中田 匡信, 太田 秀一, 今井 陽俊, ...
    2015 年 56 巻 8 号 p. 1064-1068
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    Bortezomib (BTZ)使用後に血清alkaline phosphatase値(ALP)上昇を来す症例が認められるが,BTZ使用後のALP上昇と奏効率の関係は不明である。【対象と方法】2007年10月から2012年10月まで当院でBTZを含む治療薬にて加療された多発性骨髄腫30例を対象とし,治療開始後早期のALP上昇の有無と治療反応性について後方視的に評価した。【結果】治療開始後21日目,42日目の時点でALP上昇が認められた群は認められなかった群に比べて有意にvery good partial response (VGPR)以上の奏効率が得られており(各々p=0.0297, p=0.0159),42日目の時点でALP上昇が認められなかった群では全例がVGPR未満の反応であった。【結語】治療開始後早期のALP上昇はBTZによる治療反応性を予測する指標となり得る。
  • 塚田 信弘, 池田 昌弘, 新垣 清登, 宮崎 寛至, 飯塚 聡介, 吉識 由実子, 阿部 有, 鈴木 憲史
    2015 年 56 巻 8 号 p. 1069-1075
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    当センターにおいて29例の移植適応未治療多発性骨髄腫に対しCyBorD療法(Cyclophosphamide 300 mg/m2内服,Bortezomib 1.3 mg/m2静注または皮下注,Dexamethasone 40 mg内服,1, 8, 15, 22日目)を行った。1サイクル目に進行した1例を除き,中央値4(2~6)サイクルが行われた。グレード4の好中球減少を2例に認めたが,グレード2以上の血小板減少は認めなかった。グレード3以上の非血液毒性は帯状疱疹(2例)のみであった。CyBorD療法後の奏効は,≥PR 72%, ≥VGPR 52%, ≥CR 21%, sCR 21%であった。27例で幹細胞採取が行われ,17例が治療開始から12ヶ月以内に自家末梢血幹細胞移植を受けた。自家移植後は≥CRの奏効が59%まで改善した。CyBorD療法は安全かつ有効な寛解導入療法と考えられた。
症例報告
  • 坂口 春奈, 宮崎 香奈, 戸野 泰孝, 藤枝 敦史, 中森 良樹, 水谷 実, 関根 隆夫, 柴崎 哲典, 岡 宏次, 加藤 公, 門間 ...
    2015 年 56 巻 8 号 p. 1076-1081
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    36歳,女性。200X年2月,左足底に腫瘤が出現し,左足底皮下腫瘤生検で節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型(extranodal NK/T-cell lymphoma, nasal type: ENKL)と診断された。病変は足底皮下組織に限局しており,同部に対する放射線治療を含むRT-2/3DeVIC療法を施行し完全奏効(complete response, CR)を得た。翌年3月のPET/CTにて右鼻腔の粘膜肥厚部にFDGの異常集積を認め,生検によりENKL再発と診断された。病変は鼻腔に限局していたため,鼻腔病変に対する放射線治療を含むRT-2/3DeVIC療法を行い,再度CRを得た。次いで同種造血幹細胞移植を行い,診断後5年3か月,移植後4年現在で無病生存中である。本例では同種移植後に長期間の無病生存を得ており,同種移植は若年者再発ENKLでの治癒指向性治療として有望である可能性が示唆された。初発時に鼻以外の病変を認めたENKLでは,経過中に鼻に病変が出現する可能性があるため,鼻およびその周辺の注意深い観察が必要である。
  • 小笠原 洋治, 町島 智人, 島田 貴, 鷹橋 浩幸, 福永 真治, 溝呂木 ふみ, 土橋 史明, 薄井 紀子, 相羽 惠介
    2015 年 56 巻 8 号 p. 1082-1088
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    Primary effusion lymphoma (PEL)は,体腔液中で増殖する大細胞型B細胞リンパ腫で,多くはAIDS患者に発症し,その特異な発育様式にはhuman herpesvirus-8 (HHV-8)が関与するとされている。一方,PELと診断されていた患者の中に,表面抗原など多くの相違点を認めるHHV-8陰性例が存在し,近年HHV8-unrelated PEL-like lymphomaとして区別されているが,非常に稀な疾患であり,未だ不明な点も多い。今回我々は,HIV非感染高齢者に発症したHHV8-unrelated PEL-like lymphomaを経験し,貴重な症例と考え報告する。症例は89歳女性。全身倦怠感・呼吸困難を主訴に受診。左側胸水貯留を認め,胸水細胞診により大細胞型B細胞性リンパ腫と診断された。リンパ腫細胞はCD19/20/79a/10/38/7/BCL2/BCL6陽性,CD3/5/30/sIg/MUM1陰性で,免疫グロブリンの遺伝子再構成を認めた。また,t(8;14)(q24;q32)を含む複雑な染色体異常が認められ,HHV-8およびEpstein-Barr virusは検出されなかった。低用量etoposide内服治療により胸水は減少し呼吸困難も軽快したが,7ヶ月後に再増悪した。Rituximabの併用により一時改善を認めたが,リンパ腫の悪化により診断から13ヶ月後に死亡した。
  • 横山 明弘, 細田 亮, 白石 淳一, 山本 隆介, 米田 美栄, 大橋 晃太, 岡部 崇志, 籠尾 壽哉, 朴 載源, 上野 博則, 矢野 ...
    2015 年 56 巻 8 号 p. 1089-1095
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/05
    ジャーナル 認証あり
    56歳男性。2007年7月,IgA-κ型多発性骨髄腫と診断された。VAD療法3コース後に自家末梢血幹細胞移植を行いvery good partial responseの奏効が得られた。2010年2月,M蛋白増加と第3/4腰椎に形質細胞腫を認め,放射線照射を行った。その後bortezomib, lenalidomide, thalidomideを導入したが,いずれも不応となった。2011年11月閉塞性黄疸が出現し,画像検査で下部胆管周囲と両側腎臓に腫瘤性病変を認めた。右腎腫瘤の生検で形質細胞腫の診断が得られた。総胆管腫瘍に放射線照射を行い黄疸は改善したが,その後の治療の甲斐なく永眠された。剖検所見は,腹腔内に多発髄外病変を認め,総胆管周囲も同様であった。骨髄腫細胞はCD138が陰性化していた(CD138 shedding)。髄外病変による閉塞性黄疸を来した38例の報告をまとめ,CD138陰性化に関する文献的考察を加え報告する。
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