臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
57 巻, 12 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
Picture in Clinical Hematology
臨床研究
  • 河野 一郎, 松元 加奈, 次郎丸 高志, 陳之内 文昭, 仙波 雄一郎, 杉尾 健志, 坂本 佳治, 齋藤 統之, 吉田 周郎, 平安山 ...
    2016 年 57 巻 12 号 p. 2475-2480
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル 認証あり

    イトラコナゾール内用液(ITCZ-OS)の内服による血液悪性腫瘍患者の深在性真菌症発症の抑制を前方視的に検証した。対象は当院で治療を行った16歳以上の血液悪性腫瘍患者36例。ITCZ-OS 200mg/日(分2)内服を行い,目標トラフ血中濃度を350ng/mlとした。目標トラフ血中濃度に未到達例はITCZ-OSを増量した。ITCZ-OS 200mg/日での目標トラフ血中濃度の到達率は63.9%。観察期間中の深在性真菌症の発症率は,EORTC/MSG2008の診断基準でPossibleが2症例(5.6%)。有害事象は2例(5.6%)。結果よりITCZ-OSの内服で目標トラフ血中濃度を設定して増量したが重篤な有害事象を認めず深在性真菌症の発症を十分に抑制できた。しかし,トラフ血中濃度は予測が困難で,確実な深在性真菌症の抑制にはトラフ血中濃度を測定することが必要であると考えられた。

  • 妹尾 寧, 吉岡 康介, 海渡 智史, 黒澤 修兵, 原田 介斗, 山本 圭太, 日野 裕太郎, 阪口 正洋, 池川 俊太郎, 渡邊 大介, ...
    2016 年 57 巻 12 号 p. 2481-2489
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル 認証あり

    2009年4月から2015年7月までに当院において,定量PCRにてmajor BCR-ABLのトランスクリプトレベルが測定感度以下(undetectable molecular response, undetectable MR)の慢性骨髄性白血病(CML)の慢性期(CP)の16名がチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)を中止した。中止されたTKIはイマチニブ(IMA)8例,ニロチニブ(NIL)2例,ダサチニブ(DSA)5例,ボスチニブ(BOS)1例で,中止の理由はTKI中止の臨床試験に参加が9例,副作用が2例,残り5例が経済的理由であった。16例のundetectable MRの維持期間の中央値は1,932日(822~4,068)で,TKI中止後の観察期間の中央値は551日(154~2,446)であった。%ISで0.1以上(major molecular response, MMR喪失)または2回連続で0.01以上(undetectable MR喪失)の場合にmolecular relapseとすると,16例中8例(50%)でmolecular relapseがTKI中止後119日(28~171)でみとめられた。このうち,MMRの喪失が認められた6例ではTKI(IMA 2例,DSA 4例)が再投与された。TKIの再投与後4例が中央値115日(35~141)で再度undetectable MRを達成したが,2例ではMMR達成のみにとどまった。一方,IMAを中止した1例およびBOSを中止した1例では,それぞれ中止後154日および147日に2回連続してundetectable MRの喪失がみられたが,MMRは継続的に維持しておりTKI再投与せず継続観察中である。

症例報告
  • 永井 友基, 安藤 佐知子, 本田 奈々瀬, 野口 寛子, 前森 雅世, 林 敏昭, 酒井 基
    2016 年 57 巻 12 号 p. 2490-2495
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル 認証あり

    TAFRO症候群は,原因不明の血小板減少,全身浮腫,発熱,骨髄線維症,肝脾腫,リンパ節腫大,腎機能障害など多彩な症状を示す全身性炎症性疾患である。TAFRO症候群において肝生検にて胆管炎を認めた症例は報告されていない。今回我々は56歳男性の胆管炎を伴うTAFRO症候群を経験した。突然発症の腹痛および発熱を主訴に来院し,入院後に急激にALPの上昇,全身浮腫,胸腹水貯留,血小板減少,臓器腫大,腎不全を合併した。リンパ節生検・骨髄生検などからTAFRO症候群と診断した。また肝生検にて胆管炎の所見を認めた。ステロイドパルス療法,tocilizumabの投与を行い,一時的に症状の改善を認めたが,tocilizumab投与継続中に再燃を認めたためrituximabの投与を行ったところ症状は改善した。TAFRO症候群ではこれまでALPの上昇,腹痛を伴う症例が報告されていたが,その原因は不明である。本症例では肝生検にて胆管炎の所見を認め,TAFRO症候群の病態に胆管炎が関与する可能性が示唆された。

  • 佐藤 雄紀, 住 昌彦, 植木 俊充, 貝梅 紘子, 桐原 健彦, 武田 航, 栗原 太郎, 佐藤 慶二郎, 廣島 由紀, 徳竹 康二郎, ...
    2016 年 57 巻 12 号 p. 2496-2501
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル 認証あり

    消化管はpost-transplant lymphoproliferative disorder(PTLD)の節外病変として一般的だがその臨床像の検討は不十分である。短期間で病変が形成され内視鏡検査の重要性を示す消化管原発PTLDを2例経験し報告する。1例目は60歳男性。急性骨髄性白血病第一寛解期に臍帯血移植を施行し,d84に嘔気・嘔吐を認めd90の内視鏡検査では明らかな異常なかったが,d99の再検査で胃に中心部潰瘍を伴う隆起性病変を認め生検でPTLDと診断された。2例目は36歳男性。急性骨髄性白血病第二寛解期で臍帯血移植を施行し,d309に咽頭痛・嘔気を認めd312の内視鏡検査では十二指腸に多発性のびらん・小潰瘍を認め生検でPTLDと診断された。d322には増大して中心部潰瘍を伴う隆起や2型進行がん様の腫瘍病変を認めた。2例とも免疫抑制減量とrituximab投与が奏効し寛解となった。

  • 初瀬 真弓, 大平 英美子, 淵田 真一, 岡野 晃, 村頭 智, 島崎 千尋
    2016 年 57 巻 12 号 p. 2502-2506
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル 認証あり

    症例は64歳,男性。多発性骨髄腫(BJP-κ型)の再発例に対してlenalidomide(LEN)15 mgとdexamethasoneを投与したところ,4日目に右眼瞼の浮腫が出現した。LENの休薬で眼瞼の浮腫は軽快したがLENを減量し再開したところ,再度4日目に眼瞼の浮腫が出現した。浮腫はLENの投与と一致し,性状よりQuincke浮腫と診断した。休薬後,LENを減量し眼瞼浮腫がないことを確認し,徐々に増量した。眼瞼浮腫の再燃はなかったが,好酸球および好塩基球比率の増加とCRPの上昇を認めた。3コース目のLEN投与中に肺野にスリガラス影を認め,LENによる薬剤性過敏性肺炎が疑われた。LENの中止とprednisoloneの投与でスリガラス影は改善した。IMiDsであるLENの免疫賦活作用によりQuincke浮腫,CRPの上昇と好酸球,好塩基球の増加,薬剤性過敏性肺炎が経時的に認められた。

  • 安藤 純, 増田 安土, 飯塚 和秀, 落合 友則, 高久 智生, 大澤 俊也, 嶋田 英子, 渡辺 嘉久, 小松 則夫, 大坂 顯通
    2016 年 57 巻 12 号 p. 2507-2511
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル 認証あり

    十二指腸がんで紹介された77歳の男性。内視鏡的粘膜切除術後に穿孔し,出血性ショック,腹膜炎,播種性血管内凝固を合併し,赤血球製剤,新鮮凍結血漿(FFP),アルブミン製剤,免疫グロブリン製剤等を治療に使用した。その後,血小板減少症に対し濃厚血小板の輸血を開始した直後に,蕁麻疹,血圧低下,呼吸困難が出現し,アナフィラキシー・ショックを発症した。輸血副作用の精査を行い,患者血清のハプトグロビン(Hp)値は検出限界以下,抗Hp抗体陽性,遺伝子解析の結果より先天性Hp欠損症と診断した。その後の輸血療法は,洗浄血小板製剤を使用することで副作用を認めなかった。Hp欠損症の患者に対してFFPを輸血する場合には,Hp欠損症ドナー由来のFFPを使用することが可能である。血小板製剤に関しては,洗浄血小板製剤を使用する必要があるが,輸血部門が設置されていない医療機関では,あらかじめ血液センターと協議しておく必要がある。

  • 安達 正晃
    2016 年 57 巻 12 号 p. 2512-2516
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル 認証あり

    症例は46歳女性。生来健康であったが,2週間ほど前から易疲労感と息切れが出現し,40°C台の発熱とともに著明な倦怠感と立ちくらみを自覚したため来院した。直接・間接クームズテスト陽性,間接ビリルビン上昇,ハプトグロビン低下などの検査所見から,自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia, AIHA)と診断した。プレドニゾロン(1mg/kg)内服およびステロイドパルス療法を施行するも,貧血が遷延したため骨髄穿刺を施行した。網赤血球数が低値であり,著明な赤芽球系細胞の減少と巨大赤芽球を認め,他の血球系には異形成がないことから赤芽球癆(pure red cell aplasia, PRCA)の合併と診断した。発熱のエピソードやパルボウイルスB19 IgM抗体が陽性であることから後天性PRCAが特発性AIHAと同時期に発症した可能性も考えられ,網赤血球数の回復後に高値B19 DNA(109コピー/ml)が検出されたことから,パルボウイルス感染の遷延化が病態の修飾に関与した可能性がある。

特集:血液疾患における遺伝子変異―最新の知見―
  • 猪口 孝一
    2016 年 57 巻 12 号 p. 2517-2518
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル 認証あり
  • 吉里 哲一, 牧島 秀樹
    2016 年 57 巻 12 号 p. 2519-2525
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル 認証あり

    後天性骨髄不全症候群は,主に再生不良性貧血・発作性夜間血色素尿症・骨髄異形成症候群の三疾患により構成される。腫瘍性疾患である骨髄異形成症候群はもとより,非腫瘍性疾患である再生不良性貧血・発作性夜間血色素尿症にもクローン性造血がしばしば認められるが,骨髄不全症候群,特に再生不良性貧血におけるクローン性造血の意義に関しては不明な点が多い。近年の次世代シーケンス技術を用いた遺伝子解析が実施され,これら三疾患における多様なクローン構造が明らかになってきている。また,健常人においても加齢に伴い変異が蓄積することが解明されている。本稿では,骨髄不全症候群における遺伝子変異の最新の知見について,健常人における遺伝子変異も交えて概説する。

  • 荒木 真理人, 森下 総司, 小松 則夫
    2016 年 57 巻 12 号 p. 2526-2534
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,フィラデルフィア染色体陰性の骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms, MPN)の発症に関与すると考えられる遺伝子変異や遺伝的背景について,最新の知見を紹介し,これらの遺伝学的要因のMPN発症における役割を概説する。これまでに,MPNに特異的なJAK2CALRMPL遺伝子変異については,サイトカイン受容体の恒常的な活性化を引き起こしていることが示されている。また,他の造血器腫瘍と共通して見いだされる遺伝子変異については,疾患特異的な遺伝子変異と共役することで腫瘍化の促進や,病型の決定に働いていることが明らかになってきている。一方で,これらの遺伝子変異の一部が,健常な高齢者でも見いだされることから,MPNの発症メカニズムはまだ完全に解明されていない。今後は,MPN発症に関与する遺伝的要因を含めた,より詳細な解析により,MPN発症メカニズムの全貌が解明されることを期待したい。

  • 山口 博樹
    2016 年 57 巻 12 号 p. 2535-2542
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル 認証あり

    急性骨髄性白血病(AML)は様々な染色体異常・遺伝子異常がその発症に関与していると考えられるheterogeneousな疾患である。近年次世代シークエンサーの登場によって多くのAMLに関与をする遺伝子変異が発見された。DNMT3Aなどのエピジェネティック制御遺伝子変異が造血幹細胞と同様の多機能性を有する前白血病細胞に認められることや,AMLの再発には初発時やその経過中に発生した複数のクローンが関与していることも明らかになった。現在はこれらの遺伝子変異を用いてAMLの治療成績を向上させるための様々な試みがなされている。予後因子に関しては,従来の染色体異常にFlt3ITD,NPM1変異,CEBPA変異を加えた予後分類が提唱され,Flt3阻害薬やIDH阻害薬など遺伝子変異をターゲットとした分子標的薬の開発も進んでいる。本稿ではAMLにおける遺伝子変異に関して近年の知見に関して概説を行う。

  • 牧島 秀樹, 小川 誠司
    2016 年 57 巻 12 号 p. 2543-2553
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル 認証あり

    近年における,次世代シークエンサー技術の急激な進歩により,骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes, MDS)において高頻度に体細胞変異を起こす遺伝子は,ほとんどが明らかとなっている。さらに,それらドライバー遺伝子の変異がMDSの病因・病態にどう関わっているかについて,次々と新しい知見が得られている。そこで本報の前半で,これまでに報告されてきたMDSのドライバー遺伝子について,頻度や機能に関する網羅的な解説をした。続いて,染色体異常に関連する遺伝子変異として,7番染色体・5番染色体上の遺伝子について,最近最もホットで重要なトピックである,CSNK1A1変異を含めて述べた。最も変異の頻度が高いRNAスプライス因子の変異に関しては,最近複数の施設より報告が相次いでいる。最後に,それらの変異が原因で起こるスプライシングの異常について,まとめて概説した。

  • 千葉 滋
    2016 年 57 巻 12 号 p. 2554-2563
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル 認証あり

    がんのゲノム情報は,2009年頃から次世代シークエンサーの利用によって急速に蓄積した。悪性リンパ腫も例外ではない。非ホジキンリンパ腫の主体をなす成熟B細胞リンパ腫では,B細胞受容体経路やToll-like受容体経路およびその下流のNF-κB経路など免疫特有のシグナル経路,NOTCHシグナル経路などの,細胞内シグナル経路の分子,あるいは,ヒストン修飾やDNA障害反応などに関わる分子に,高頻度の変異が認められる。成熟T/NK細胞リンパ腫では,T細胞受容体経路およびその下流のNF-κB経路,DNAメチル化制御分子,JAK-STAT経路の分子に変異が集積している。これらの多くは複数の疾患に認められる一方,それぞれの変異の頻度は疾患によって異なり,特徴的な変異プロファイルを示している。このような知見の蓄積は,病態の理解だけでなく,新たな分子標的治療薬開発にとって,非常に重要な基盤になる。

地方会
Introduce My Article
Erratum
feedback
Top