臨床血液
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57 巻, 3 号
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Picture in Clinical Hematology
特集:臨床血液学 ―最新情報と今後の展望2016(リンパ系疾患)―
  • 鈴木 律朗
    2016 年 57 巻 3 号 p. 229
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
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  • 早川 文彦
    2016 年 57 巻 3 号 p. 230-237
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
    ジャーナル 認証あり
    成人ALLは小児ALLに比べ治療成績の改善が乏しいと言われてきた。しかし,2000年代以降,思春期・若年成人世代に対して小児プロトコールによる治療が導入され,大幅な治療成績の改善が示された。現在は小児プロトコールのコンセプトを取り入れ,成人全体に施行可能な形に用量調節した小児型プロトコールで成人ALL全体の治療成績を上げる試みがなされている。また,成人ALLにおける代表的な予後不良群であるPh陽性ALLに対しては,イマチニブ併用化学療法が画期的な治療成績の改善をもたらし,現在はさらに強力なチロシンキナーゼ阻害剤であるダサチニブ併用化学療法によりさらなる治療成績の改善が試みられている。本稿ではこうした最新のALL治療の動向を紹介し,今後の展望について考える。
  • 青木 定夫
    2016 年 57 巻 3 号 p. 238-248
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
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    慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia, CLL)の治療は,新薬の開発によって大きな転換期を迎えている。代表的な新規薬剤に,B-cell receptor (BCR)シグナル伝達阻害薬がある。そのうちBruton's tyrosine kinase (BTK)を阻害するibrutinib (IBR)とClass I phosphatidylinositol 3-kinases p110δ isoform (PI3Kδ)を阻害するidelalisib (IDL)の開発が進んでいる。これらは,経口薬で予後不良因子の17p-欠失を有する例にも有効で,難治および初発CLLの治療で期待できる。そのほかの作用機序としてBCL-2を阻害するABT-199は,経口でCLL細胞の死を誘導する薬剤で,再発難治例で高い有用性が示されている。新規抗CD20抗体のobinutuzumabは,単独でもアルキル化剤との併用でも,再発難治CLLに効果を示し,従来の抗体薬と比較して高い有効性が示されている。しかし日本の現状では,新規薬剤を自由に使える環境は整っておらず,drug lagの解消が望まれる。
  • 加藤 春美, 木下 朝博
    2016 年 57 巻 3 号 p. 249-259
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
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    悪性リンパ腫には多様な組織型が含まれており,各病型によって病因・病態・臨床経過が異なる。今世紀に入り,革新的な研究手法の発展によって悪性リンパ腫の分子病態に対する理解は飛躍的に深まってきている。次世代シークエンサーによる網羅的解析によって,疾患特異的な遺伝子異常,エピゲノム変化やがん化に関わるシグナル経路が解明され,治療標的となる分子の同定,創薬研究開発によって悪性リンパ腫の治療戦略は大きな変遷をとげつつある。疾患の分子病態および各薬剤の特徴を踏まえた治療の最適化およびバイオマーカーなどを用いた個別化治療によって,今後さらにリンパ腫の治療体系の整備が進むことが期待される。
  • 安倍 正博, 三木 浩和, 中村 信元
    2016 年 57 巻 3 号 p. 260-269
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
    ジャーナル 認証あり
    新規薬の登場により多発性骨髄腫の治療成績が向上し,生存期間の延長の代替指標としてより深い完全奏効が治療目標とされるようになっている。骨髄腫は腫瘍細胞側の因子,患者側の因子などにおいて極めて多様な状態を呈すが,プロテアソーム阻害薬と免疫調節薬(IMiDs)を治療薬のバックボーンとした,より多くの患者に有効な治療手段(one-size-fits-all)による寛解導入療法,そしてその後の地固め・維持という治療の流れができつつある。高リスクくすぶり型骨髄腫に対する新規薬による治療のメリットが明らかとなり,治療を開始すべき高リスクくすぶり型骨髄腫を抽出するmyeloma-defining biomarkerが示されている。再発・難治骨髄腫に対する治療戦略の確立が喫緊の臨床課題であるが,新規機序の分子標的薬や免疫療法の臨床応用が進められており,今後骨髄腫に対する治療戦略が大きく変遷すると思われる。
特集:臨床血液学 ―最新情報と今後の展望2016(造血幹細胞移植)―
  • 豊嶋 崇徳
    2016 年 57 巻 3 号 p. 270
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
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  • 高梨 美乃子
    2016 年 57 巻 3 号 p. 271-277
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
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    非血縁者間造血幹細胞移植を支える骨髄バンクと臍帯血バンクは,移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律により,国の責任のもと,骨髄・末梢血幹細胞あっせん事業者,臍帯血供給事業者および造血幹細胞提供支援機関により整備されることになった。骨髄バンクには,日本骨髄バンクによるドナー募集,日本赤十字社による受付,HLA検査,情報管理,HLA適合検索,日本骨髄バンクによる患者登録,ドナーコーディネート等の業務分担がある。臍帯血バンクは,臍帯血採取施設と臍帯血バンク,臍帯血公開登録・検索システムにより成る。法律制定後の体制においては,骨髄バンクドナー登録者またはHLA適合検索対象者目標数の設定,臍帯血公開登録目標数の設定,その背景の患者動態解析が必要である。骨髄バンクには若年者のドナー登録推進,コーディネート期間短縮,臍帯血バンクには臍帯血採取施設の組織化,国際化の推進が課題である。
  • 山本 久史
    2016 年 57 巻 3 号 p. 278-287
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
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    HLA一致血縁者の代替ドナーとして,臍帯血移植(cord blood transplantation, CBT)が広く実施されるようになった。迅速性に優れ,かつHLA2抗原不一致まで移植が可能という特性から,より多くの患者さんに同種移植の恩恵をもたらしてきた。高い生着不全率が最大の課題であったが,その発症機序が徐々に解明され,生着不全は克服されつつある。近年においては,HLA一致非血縁骨髄移植と匹敵する成績が得られるようになり,さらに高齢者や非寛解症例などの“ハイリスク”症例においても優れた成績が示されつつある。本稿ではこれまでにわかってきたCBTの問題点や,その克服に向けたアプローチ,またCBTの新たな展開について概説する。
  • 藤本 勝也, 杉田 純一, 豊嶋 崇徳
    2016 年 57 巻 3 号 p. 288-297
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
    ジャーナル 認証あり
    血縁者間HLA半合致(ハプロ)移植は,ほぼ全ての患者でドナーが得られるので,HLA一致同胞が得られず,HLA一致非血縁者ドナーを待てない患者の代替療法として注目されてきた。その成功のキーはドナーT細胞除去であり,CD34陽性細胞純化法,抗胸腺細胞グロブリン(ATG)を含む移植前処置法に加え,最近の移植後シクロホスファミド(PTCY)法という3つのプラットフォームの開発により,世界的に急増している。T細胞除去効率が高いとGVHD抑制効果は高いが,日和見感染が問題となり,抗ウイルス対策の向上が喫緊の課題となっている。ATG法やPTCY法はT細胞除去効率が低いため,薬物によるGVHD予防の併用が必要であるが,感染症リスクは低く,実用的であり,ハプロ移植の主流となっている。現在ハプロ移植の成績はHLA一致ドナーからの移植成績に匹敵するようになり,造血幹細胞移植の新たなブレークスルーとなりつつある。
  • ―最新の話題―
    緒方 正男
    2016 年 57 巻 3 号 p. 298-306
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
    ジャーナル 認証あり
    Human herpesvirus 6 (HHV-6)は突発性発疹の原因ウイルスとして知られている。初感染の後に潜伏感染を保ち,免疫抑制などにより再活性化を来す。同種造血細胞移植ではHHV-6の再活性化は骨髄生着の時期に約半数の患者に観察され,脳炎,骨髄抑制,肺炎,肝炎,せん妄,GVHD増悪など様々な合併症との関連が報告されている。なかでもHHV-6脳炎はHHV-6が原因として関係していることが確定的な合併症と認識されてきた。しかしその病態は不明であり,対処や予防法は確立していない。脳炎以外の合併症についてはHHV-6が本当に原因であるのかさえ明らかではない。造血細胞移植治療におけるHHV-6の病原性と意義は現在も強調する意見および懐疑的な意見がみられ,議論の対象となる。本総説では移植後のHHV-6関連疾患について,よく聞かれる疑問に答えるかたちで最新の話題を示していく。
特集:臨床血液学 ―最新情報と今後の展望2016(血小板・凝固・線溶系疾患)―
  • 森下 英理子
    2016 年 57 巻 3 号 p. 307
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
    ジャーナル 認証あり
  • 鈴木 大助, 江藤 浩之
    2016 年 57 巻 3 号 p. 308-314
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
    ジャーナル 認証あり
    血小板輸血は,現代医療において外傷や外科的手術,あるいは血液疾患の治療において重要である。本邦における輸血製剤は善意の献血に依存しており,特に特定のHLA/HPA一致血小板輸血のためのドナー確保ならびにドナー負担は大きな課題となっている。加えて,益々ドナー確保が困難になる状況とiPS細胞の登場が統合した結果として,iPS細胞技術による血小板製剤というアイデアが生まれた。血小板は細胞核が無いため放射線照射が可能なことから,iPS細胞を用いた移植細胞療法の臨床応用において懸念される,安全性の面で大きなアドバンテージを有する。開発は現在も進行しているが,最大の課題は実験室レベルでの成果を産業化に結びつけるための大量培養や血小板分離濃縮技術の工業化ラインの構築である。小規模での一過性製造でない,真の一貫した製造ラインの構築が望まれている。
  • 小嶋 哲人
    2016 年 57 巻 3 号 p. 315-321
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
    ジャーナル 認証あり
    止血血栓形成に関わる血液凝固関連因子や制御因子の先天的な異常により血栓症を発症する疾患群は先天性血栓性素因と呼ばれる。先天性血栓性素因に伴う血栓症は,主に静脈血栓症(深部静脈血栓症と肺塞栓症合わせて静脈血栓塞栓症)として発症し,再発しやすいこと,ときに腸間膜静脈や上矢状静脈洞など非典型的部位での発症,50歳以下の比較的若年者での発症,しばしは家族内発症を認めることなどの特徴がある。先天性血栓性素因の原因には様々な凝固関連遺伝子の異常が報告されているが,アンチトロンビン,プロテインC,プロテインSなどの生理的凝固阻止因子の遺伝子異常による先天性血栓性素因は日本人にも数多く報告されている。また,未だ原因不明の遺伝性血栓症も存在し,最近我々は通常では出血傾向となるプロトロンビン異常症で逆に血栓症の原因となる遺伝子異常を同定し,新しい血栓性素因・アンチトロンビンレジスタンスとして報告した。
  • 宮田 茂樹, 前田 琢磨
    2016 年 57 巻 3 号 p. 322-332
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
    ジャーナル 認証あり
    ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)では,ヘパリン投与で誘導される血小板活性化能を持つHIT抗体が主因となり,血栓塞栓症を高率に発症する。普及している免疫測定法は,特異度が低く偽陽性が多いため,過剰診断を招き患者予後を増悪させ得る。血小板活性化能を測定する機能的測定法が,過剰診断を防ぐために重要である。HITの病態解明が急速に進み,以下の免疫学的特異性が示された。ヘパリン初回投与患者でも,二次免疫応答のように,HIT IgGが投与開始後4日目から産生される。ヘパリン再投与の際のanamnestic responseを欠く。二次免疫応答と異なり比較的早くHIT抗体は消失する。これら特異性を理解した適切なHIT診断が治療上重要である。臨床的にHIT疑った時点で,直ちに抗トロンビン剤投与を開始する。HIT抗体が陰性化した患者では,人工心肺が必要な手術における一時的なヘパリンの再投与が可能であるとの認識も重要となる。
  • 浦野 哲盟, 鈴木 優子
    2016 年 57 巻 3 号 p. 333-339
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
    ジャーナル 認証あり
    近年発展著しいイメージング手法が線溶研究にも用いられるようになり,その活性発現に血小板や血管内皮細胞が積極的に関わる時空間的な制御機構の詳細が明らかになってきた。血小板は活性化に伴いpolyphosphateや線溶系のインヒビターを放出し,血小板周囲の線溶活性発現を阻害したりフィブリン線維を溶解抵抗性に変化させる一方,線溶活性発現の起点となることも示された。血管内皮細胞の高い線溶活性発現機構の詳細と,線溶活性発現抑制に関わる機構も明らかになった。これらの線溶の制御機構が炎症反応等により修飾される機構とともに紹介する。またこれらの知見を基盤に開発が進んでいる線溶系因子を標的とした新たな薬剤に関しても概説する。
臨床研究
  • 安藤 弥生, 半下石 明, 斎賀 真言, 遅塚 明貴, 木田 理子, 臼杵 憲祐
    2016 年 57 巻 3 号 p. 340-345
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
    ジャーナル 認証あり
    慢性骨髄性白血病chronic myeloid leukemia (CML)の治療薬であるチロシンキナーゼ阻害薬tyrosine kinase inhibitor (TKI)の長期的安全性についてはよく知られていない。そこで,当院でのCML患者50例の治療歴と腎機能を解析した。その結果,観察期間中央値63ヶ月でTKI開始後に29%の患者がchronic kidney disease (CKD)を発症した。糸球体濾過量(GFR)の低下は緩徐であったが,TKI開始後の最初の2年間の低下率が大きかった。CKDの発症は40歳以上かつ開始時のGFR値が低い患者に多かった。さらに,患者背景として,高血圧と脂質異常を併発している場合は,CKDの発症率が高かった。これらの基礎疾患を有しているCML患者は,TKI投与時には腎機能を慎重に観察しながら使用する必要があると考える。
  • 大隅 朋生, 森 鉄也, 塩田 曜子, 清谷 知賀子, 寺島 慶太, 加藤 元博, 富澤 大輔, 大木 健太郎, 清河 信敬, 岩淵 英人, ...
    2016 年 57 巻 3 号 p. 346-352
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
    ジャーナル 認証あり
    小児B-NHLに対する標準治療としてFAB/LMB96治療(LMB型治療)があるが,国内におけるまとまった報告はない。当センターの13例の経験を報告する。男/女児:8/5例,年齢中央値:7.5歳,BL/DLBCL: 9/4例,病期I/II/III/IV/B-ALL: 3/4/2/1/3例,CNS浸潤:3例。入院期間中央値はGroup B(9例)で約3か月,Group C(4例)で約7か月。全例で規定の時期に寛解が得られ,無再発生存中(観察期間中央値2.3年)。毒性については発症頻度を含めてFAB96/LMB試験の報告と類似していた。Group Cの寛解導入療法後には高度の口腔粘膜障害を全例に,強化療法中に3件の敗血症を認めた。Group Cの8 g/m2の大量メトトレキサート投与は3 g, 5 g/m2と同様の支持療法で対応可能だった。LMB型治療は日本人小児に対する国内の医療環境において安全に実施し得ると考えられた。
症例報告
  • 佐藤 昌靖, 辻村 秀樹, 杉山 孝弘, 丸山 聡, 山田 修平, 小野 敬子, 王 暁斐, 菅原 武明, 伊勢 美樹子, 伊丹 真紀子, ...
    2016 年 57 巻 3 号 p. 353-358
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
    ジャーナル 認証あり
    消化管原発の濾胞性リンパ腫(FL)は,主に十二指腸で偶然発見される事が多い。節性FLと同様にindolentな経過をたどり,症状がなければ無治療観察も可能とされている。今回我々は内視鏡所見で潰瘍性病変を認め,大量出血を来した小腸原発FLを3例経験したので報告する。症例は,68歳男性,63歳女性,54歳男性の3例。いずれも大量下血のため救急搬送され,輸血を受けた。上部・下部消化管に出血源はなく,小腸内視鏡で小腸に潰瘍性病変が認められ,病理学的にFLと診断された。Lugano分類はそれぞれstage I, II-1, II-1であった。2例はrituximab単独療法で寛解を得た。1例は服用していた抗血小板薬を中止し,経過観察中である。近年,内視鏡技術の進歩により小腸病変の診断が可能となった。小腸原発FLの内視鏡所見は白色顆粒状病変が特徴的であるが,今回のように潰瘍性変化を伴う病変が一部にあり,注意を要する。今後は,小腸内視鏡の適応範囲,および標準治療の確立が課題である。
  • 大原 慎, 萩原 政夫, 華 見, 井上 盛浩, 内田 智之, 吉長 恒明, 矢崎 正英, 関島 良樹, 亀谷 富由樹
    2016 年 57 巻 3 号 p. 359-363
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
    ジャーナル 認証あり
    症例は85歳,男性。11年前に原発性マクログロブリン血症と診断され,cyclophosphamide内服での加療歴があった。今回健診で貧血を指摘され,原病の増悪と判断され入院,RCD (rituximab, cyclophosphamide, dexamethasone)療法が開始された。一方,入院時の採血でPT, APTT値延長を認め,精査の結果第X因子欠乏合併と診断された。治療効果が得られないまま,第154病日に自宅で急変し永眠された。病理組織所見やアミロイド蛋白のシークエンス解析により,ALアミロイドーシス合併が判明した。原発性マクログロブリン血症にALアミロイドーシスを合併し,さらに第X因子欠乏を伴って再燃した例は稀であり報告する。
  • 内藤 千晶, 小川 孔幸, 柳澤 邦雄, 石埼 卓馬, 三原 正大, 半田 寛, 石西 綾美, 早川 正樹, 松本 雅則, 野島 美久
    2016 年 57 巻 3 号 p. 364-368
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
    ジャーナル 認証あり
    後天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)はADAMTS13を阻害する自己抗体により惹起される重篤な疾患である。発症直後に迅速かつ十分な血漿交換(PEX)を施行しなければ致死的な経過をたどる。我々は,TTPの急性期に詳細な病勢モニタリングを行い,かつPEX施行回数を極力抑制し得たことにより,inhibitor boostingも生じずに良好な転帰をたどれた症例を経験したので報告する。72歳の男性。腹部動脈瘤切迫破裂で人工血管置換術を施行された。周術期に高度血小板減少(最低値0.6万/μl)あり,血小板輸血を受けた。その後,急激に進行する意識障害と多発脳梗塞を認め,当科転院。深昏睡でICU管理とし,経過からTTPと判断してPEXとステロイドパルスを開始した。ADAMTS13活性<0.5%, インヒビター1.0 BU/mlよりTTPと確定診断。PEX 5日間連続施行後に血小板の正常化を確認したのでPEXは中止し,PSLを継続した。第2病日には意識レベル改善,第10病日にはインヒビターが消失した。以降,PSLを漸減したが,再燃なく,全身状態も安定した。
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