赤芽球系細胞の分化経路を明らかにし,細胞表面抗原を用いてその系統特異的前駆細胞を単離することは,貧血・骨髄異形成症候群・真性多血症をはじめとする赤血球関連疾患の病態解明,治療法開発のために非常に重要なステップである。CD105 (endoglin)はマウス骨髄より赤芽球系統特異的前駆細胞(erythroid progenitor, EP)を純化する際に鍵となる分子であった。ヒト造血システムにおいても,CD71とCD105を追加したマルチカラーFACSにより,骨髄中のEPが単離可能であった。分化抗原(lineage)陰性CD34
+CD38
+IL-3Rα
-CD45RA
-の表面形質で定義される古典的MEPはCD105とCD71の発現パターンにより3つの亜分画に分類された。CD71
-CD105
-MEPおよびCD71
+CD105
-MEPは,少なくとも
in vitroの解析においてMegakaryocyteとerythrocyte両者への分化能を保持しているが,後者のlineage outputはerythrocyteへ著明な偏りを示した。注目すべきはCD71
+CD105
+MEPで,その分化能は完全にerythrocyteへ限定されておりmegakaryocyteのread-outを全く認めなかった。これらの結果からCD71
+CD105
-MEPをヒトerythroid-biased MEP (E-MEP), CD71
+CD105
+MEPをヒトEPとして同定した。この新しい知見により真にbi-potentなMEPは,古典的MEPのうちCD105陰性集団にのみ存在することになり,その表面形質はLineage
-CD105
-CD34
+CD38
+IL-3Rα
-CD45RA
-と再定義された。さらなる層別化が可能となったMEP分画は,赤芽球系分化機構の解明や赤血球関連疾患の治療標的候補探索に際し,極めて有用なツールとなる可能性を有している。
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