臨床血液
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57 巻, 5 号
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Picture in Clinical Hematology
第77回日本血液学会学術集会
Presidential Symposium
JSH-ASH Joint Symposium
  • 内田 直之
    2016 年 57 巻 5 号 p. 531-536
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル 認証あり
    日本の臍帯血移植(CBT)実施件数は,年間1,200件を超え,2015年には累積実施件数12,853件に到達し,全世界のCBTの約1/3が実施されている。欧米人より体格が小柄であることや,保険制度の違いで費用が欧米より安いことが,日本でのCBT件数増加の理由として挙げられるが,近年のCBT特有の問題点の克服が,さらなる増加に寄与している。高い生着不全率へのドナー特異的な抗HLA抗体や,血球貪食症候群の影響が明らかとなった。CBT後早期に細菌感染症やHHV-6脳炎が,骨髄・末梢血と比べて高頻度であることも明らかとなり適切な対策の開発が進んでいる。CBT後の再発頻度は他の幹細胞源と変わらないことも明らかとなってきた。最近の国内のレジストリーデータの解析でも,CBTは既に他の幹細胞源と遜色ない成績となっており,今後さらなる発展が期待される。
Symposium 6
  • 李 政樹
    2016 年 57 巻 5 号 p. 537-545
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル 認証あり
    プロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブは,初発および再発難治の多発性骨髄腫の治療において幅広く使用されているものの,その作用機序はまだ十分に解明されていない。作用機序の詳細を明らかにすることは,新規薬剤の至的な投与法の確立や,薬剤の獲得耐性を明らかにし克服するためにも必要不可欠である。ボルテゾミブの骨髄腫細胞に対する作用機序のなかでは,プロテアソーム阻害による小胞体ストレス誘導およびその応答機構が,骨髄腫細胞の細胞死に深く関与している。最新の研究では,上記応答機構の中で,小胞体ストレス関連アポトーシスに関与する因子であるATF遺伝子群および小胞体関連分解に関わるXBP-1遺伝子の発現レベルがボルテゾミブ治療の感受性に関与することが報告されている。さらに,これらの因子はボルテゾミブ耐性との関連も注目されており,プロテアソーム阻害剤の作用機序および耐性機序は徐々に明らかになりつつある。
  • 古川 雄祐, 菊池 次郎
    2016 年 57 巻 5 号 p. 546-555
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル 認証あり
    多発性骨髄腫においては骨髄間質細胞との接着によって抗がん剤耐性が誘導されるが,そのメカニズムについては不明の点が多い。本研究においては接着耐性獲得のエピジェネティク制御機構の解明を試みた。間質細胞との接着によって抗がん剤耐性が獲得される際にhistone H3-lysine 27 (H3-K27)のトリメチル化が特異的に抑制されることがわかった。そこでH3-K27メチル化酵素EZH2をsiRNAまたは特異的阻害剤で抑制すると薬剤耐性が誘導された。ストローマ細胞との接着によりIGF-1受容体-PI3K-Akt経路を介してEZH2のserine-21がリン酸化され,メチル化活性を失うことで抗がん剤抵抗性が獲得される。その際のエフェクター分子として,抗アポトーシス分子Bcl-2・接着分子・サイトカイン(IGF-1, TGF-β)・ABCトランスポーター・HIF-1αなどが考えられた。以上の結果は,多発性骨髄腫の接着耐性におけるエピジェネティック機構を明らかにした初めての報告である。IGF-1受容体-PI3K-Akt経路の阻害剤は接着耐性の解除に有効と考えられる。
  • 伊藤 拓水, 安藤 秀樹, 半田 宏
    2016 年 57 巻 5 号 p. 556-562
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル 認証あり
    免疫調節薬(immunomodulatory drugs, IMiDs)は米国セルジーン社が開発した新たなタイプの抗がん剤・抗炎症薬であり,サリドマイドおよびその誘導体である。現在,IMiDsであるレナリドミドやポマリドミドは多発性骨髄腫や他の血液がんなどの難病に優れた効果を発揮することが判明しており,世界中の医師および医薬学研究者が注目している。しかし,IMiDsの作用機構は長い間不明であった。ところが,2010年に我々が大本であるサリドマイドの標的因子(ターゲット)としてcereblon (CRBN)を発見したことが発端になり,その理解は飛躍的に進んだ。現在では,CRBNはIMiDsに共通したターゲットとしてのコンセンサスを得るに至っている。本稿では,IMiDsのターゲットであるCRBNがどのように発見され,どのように作用機構が解明されたかについてわかり易く紹介していきたい。
  • 得平 道英
    2016 年 57 巻 5 号 p. 563-574
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル 認証あり
    多発性骨髄腫は骨髄の形質細胞における腫瘍性増殖を病態とし,高齢者に好発し,骨融解や腎不全,易感染を呈する疾患である。プロテアソーム阻害剤や免疫調節薬などの登場により予後は改善したが,依然として臨床経過に伴い,次第に薬剤耐性を示し難治性となる。耐性の克服に向けて,薬剤感受性の亢進・補完,維持,回復,および交差耐性を示さない新規薬剤の開発などの戦略が求められている。MMの薬剤耐性には,骨髄微小環境,遺伝子異常,刺激伝達系異常などが深く関与している。これらの知見を基に現在様々な作用機序を有する薬剤が開発され,さらなる深い寛解と予後の改善が期待されている。また同時に,10年以上にわたる生存期間を有する患者も増加している現状からも,MMを慢性疾患と捉え,様々な患者層を念頭にtotal therapyとしての治療戦略を層別化しながら考える時代も到来している。
第76回日本血液学会学術集会
学会奨励賞受賞論文
  • 青木 智広
    2016 年 57 巻 5 号 p. 575-584
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル 認証あり
    縦隔原発大細胞型B細胞性リンパ腫(PMBL)の標準治療は未確立である。我々は,本邦のPMBL患者の治療法別の治療成績と予後因子を明らかにするために,多施設共同後方視的研究を行い,345例の初発PMBL患者の解析を行った。初回化学療法として最も多く選択されていたのはR-CHOP療法(N=187)であった。R-CHOP療法の後に,地固め放射線療法を受けていない患者(N=123)の予後因子を解析すると,IPI高値と胸水・心嚢水の貯留が,全生存率(OS)に対する予後不良因子として抽出された[IPI: hazard ratio (HR), 4.23; 95% confidence interval (CI), 1.48~12.13; P=0.007; effusion: HR, 4.93; 95% CI, 1.37~17.69; P=0.015]。これらの予後因子を組み合わせると,どちらの予後不良因子ももたない患者は,全体の約半数を占めており,地固めRTなしでも,4年無増悪生存率87%, 4年OS95%と非常に良好な成績を示した。これらの予後因子は,Validation Studyで確認される必要はあるが,患者のリスクに応じた治療選択をすることにより,初発PMBL患者に最適な治療を提供できる可能性が示唆された。
  • 森 康雄, 赤司 浩一, Irving L. WEISSMAN
    2016 年 57 巻 5 号 p. 585-591
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル 認証あり
    赤芽球系細胞の分化経路を明らかにし,細胞表面抗原を用いてその系統特異的前駆細胞を単離することは,貧血・骨髄異形成症候群・真性多血症をはじめとする赤血球関連疾患の病態解明,治療法開発のために非常に重要なステップである。CD105 (endoglin)はマウス骨髄より赤芽球系統特異的前駆細胞(erythroid progenitor, EP)を純化する際に鍵となる分子であった。ヒト造血システムにおいても,CD71とCD105を追加したマルチカラーFACSにより,骨髄中のEPが単離可能であった。分化抗原(lineage)陰性CD34+CD38+IL-3Rα-CD45RA-の表面形質で定義される古典的MEPはCD105とCD71の発現パターンにより3つの亜分画に分類された。CD71-CD105-MEPおよびCD71+CD105-MEPは,少なくともin vitroの解析においてMegakaryocyteとerythrocyte両者への分化能を保持しているが,後者のlineage outputはerythrocyteへ著明な偏りを示した。注目すべきはCD71+CD105+MEPで,その分化能は完全にerythrocyteへ限定されておりmegakaryocyteのread-outを全く認めなかった。これらの結果からCD71+CD105-MEPをヒトerythroid-biased MEP (E-MEP), CD71+CD105+MEPをヒトEPとして同定した。この新しい知見により真にbi-potentなMEPは,古典的MEPのうちCD105陰性集団にのみ存在することになり,その表面形質はLineage-CD105-CD34+CD38+IL-3Rα-CD45RA-と再定義された。さらなる層別化が可能となったMEP分画は,赤芽球系分化機構の解明や赤血球関連疾患の治療標的候補探索に際し,極めて有用なツールとなる可能性を有している。
臨床研究
  • 北川 順一, 柴田 悠平, 松本 拓郎, 中村 信彦, 中村 博, 二宮 空暢, 南谷 泰仁, 原 武志, 鶴見 寿
    2016 年 57 巻 5 号 p. 592-596
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル 認証あり
    当院において,多発性骨髄腫患者に対してデノスマブを使用した11例についてその有効性と安全性を検討した。年齢中央値は69歳(範囲54~76)。男性7例,女性4例。7例が初発時寛解導入療法に合せて開始され,4例はゾレドロン酸から切り替えられた。投与回数の中央値は15回(範囲1~27)。経過中,骨関連事象を発症した症例はみられなかった。全例でデノスマブの投与後血清カルシウム値は低下し,カルシウム製剤の予防がなされていなかった3例ではGrade 1の低下を認めた。9例において初回投与後に最低値を示した。顎骨壊死を疑い2例で投与を中止したが,その内の1例は結局,上顎がんであった。骨関連事象を発症した例は認めなかった。低カルシウム血症は初回投与後にみられやすく,投与開始時からの予防が重要であると考えられた。顎骨壊死には注意を要し,疑われた時は生検も考慮することが望ましいと考えられた。
症例報告
  • 寺村 由希, 亀田 和明, 諫田 淳也, 後明 晃由美, 早川 仁, 赤星 祐, 小宮 佑介, 原田 尚憲, 鵜飼 知嵩, 石原 優子, 河 ...
    2016 年 57 巻 5 号 p. 597-601
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル 認証あり
    症例は62歳女性。CD5+びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断し,R-CHOP療法を開始した。初診時の髄液検査は異常なし。R-CHOP療法3コース目開始11日目から徐々に頭痛,意識障害が出現し,18日目に救急搬送となった。項部硬直を認め,髄液細胞数25/μl, 蛋白188mg/dlから髄膜炎として抗菌薬,抗ウイルス薬を使用したが改善なし。リンパ腫中枢浸潤を疑い再度髄液検査とMTX+DEXの髄注を施行し,一時的な解熱と意識の改善を認めた。髄液細胞診は陰性だった。入院12日目からR-MPV療法を開始したが意識状態は悪化し,入院20日目から経験的に抗結核薬を開始した。入院24日目に髄液培養で抗酸菌が発育(培養23日目)し,結核性髄膜炎と診断した。悪性リンパ腫の化学療法では細胞性免疫不全が進行し,結核のリスクが増す。結核性髄膜炎は診断が難しく,常に鑑別に挙げることが重要である。
  • 住谷 龍平, 森 敬子, 関本 悦子, 柴田 泰伸, 野田 利紀, 敷地 孝法, 山下 恭, 重清 俊雄, 尾崎 修治
    2016 年 57 巻 5 号 p. 602-607
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル 認証あり
    症例は75歳女性。2012年12月に左下腿浮腫が出現したため受診した。左下腹部に5 cm大の腫瘤を触知し,PET/CTにて気管分岐部,腹部大動脈周囲,左鼠径から左総腸骨領域にFDG集積を伴うリンパ節腫大を認めた。腸骨リンパ節生検にてびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma, DLBCL), stage IIIAと診断した。R-CHOP療法を開始し,計8コースを終了後,PET/CTで完全奏効と診断し経過観察していた。2014年4月に左下腹部から鼠径部にかけて,発赤と疼痛を伴う1 cm大までの水疱が7個出現した。帯状疱疹を疑い,valacyclovirにて加療したが軽快せず,水疱は増大傾向で結節状となった。病変部の皮膚生検を施行したところ大型Bリンパ球のびまん性浸潤を認め,帯状疱疹様の皮膚病変を呈したDLBCLの再発と診断した。造血器腫瘍には,帯状疱疹に類似の皮膚病変を呈する例が報告されており,病理学的な確定診断が重要であると考えられた。
  • 日野 裕太郎, 土岐 典子, 山本 圭太, 妹尾 寧, 笹島 悟史, 阪口 正洋, 服部 圭一朗, 海渡 智史, 黒澤 修兵, 原田 介斗, ...
    2016 年 57 巻 5 号 p. 608-612
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル 認証あり
    症例は,58歳女性。2004年に慢性骨髄性白血病(CML), 骨髄性急性転化(blast crisis, BC)と診断され,チロシンキナーゼ阻害剤投与後,分子遺伝学的寛解の状態で非血縁者間同種骨髄移植を施行された。経過良好であったが,2014年全身リンパ節腫脹と末梢血に芽球が認められ入院となった。精査の結果,CML骨髄性BC再発,全身リンパ節浸潤と診断した。診断後より,dasatinib単剤での治療を開始したが,胸水が出現したため,nilotinibに変更した。Nilotinibの開始から1ヶ月で末梢血の芽球は消失し,血球は正常範囲内に回復し,治療効果は細胞遺伝学的部分寛解となった。再発診断6ヶ月後に2回目の同種骨髄移植を施行した。CMLの同種造血幹細胞移植後の再発は急性骨髄性白血病と比較し,5年以上経過後の再発が多いことが報告されており,晩期再発の可能性を念頭にフォローする必要がある。
  • 内田 智之, 井上 盛浩, 華 見, 萩原 政夫
    2016 年 57 巻 5 号 p. 613-617
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル 認証あり
    63歳男性。健診で指摘された腎機能障害を契機に多発性骨髄腫Bence Jones-κ型と診断された。ボルテゾミブ含む化学療法を2コース施行するも血清遊離軽鎖の改善が得られず,血清クレアチニン値も12.55mg/dlと増悪したため血液透析が導入された。これに引き続き,レナリドミド・デキサメタゾン治療を施行したところ,血清遊離軽鎖の著明な改善とともにクレアチニン値も1.85mg/dlまで改善し,透析から離脱し得た。腎機能障害を有する多発性骨髄腫患者に対してボルテゾミブを含む化学療法により,速やかに腎機能の改善が得られることが多いが,一部で奏効が得られないケースもある。その場合,早期にレナリドミドへの切り替えも選択肢の1つであると考えられた。
  • 長﨑 譲慈, 青山 泰孝, 野本 陽太, 井戸 健太郎, 市原 弘善, 麥谷 安津子
    2016 年 57 巻 5 号 p. 618-623
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル 認証あり
    症例は59歳男性,2011年6月に慢性骨髄性白血病慢性期と診断し,dasatinib 100mg/dayで治療を開始した。治療前の検査では胸水貯留や右心負荷所見を認めなかった。2013年1月に軽度の左胸水が出現し,2014年5月には息切れ(New York Heart Association class III)を認めた。心エコーで収縮期肺動脈推定圧80mmHg, スワンガンツカテーテル検査で平均肺動脈圧29mmHgであり,肺動脈性高血圧症と診断した。リウマチ因子,抗核抗体,dsDNA抗体,SCL70は陰性であり,造影CTでは肺塞栓症は否定的であった。Dasatinib関連肺高血圧症と診断し,診断後速やかにdasatinibを中止した。中止後1ヶ月及び1年の収縮期肺動脈推定圧は各々51mmHg, 40mmHgと肺動脈性高血圧症の改善を認めたことから,dasatinibに関連した肺動脈性高血圧症であると考えられた。本例はdasatinibの使用に伴い肺動脈性高血圧症を発症し,その中止により自然軽快を認めた症例であった。Dasatinibは肺動脈性高血圧症の原因となり得るため,投与中は継続した評価が必要と考えられる。
  • 松井 愼一郎, 竹田 勇輔, 一色 佑介, 山崎 敦子, 中尾 三四郎, 高石 浩司, 永尾 侑平, 長谷川 渚, 東ヶ崎 絵美, 清水 亮 ...
    2016 年 57 巻 5 号 p. 624-629
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル 認証あり
    症例は23歳女性。持続する発熱,息切れを主訴に受診。CTにて著明な心嚢水貯留,肝脾腫,軽度の頸部・縦隔リンパ節腫脹があり,EBV抗体価異常,血中EBV-DNA高値から,慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)と診断した。末梢血リンパ球におけるEBV感染細胞はCD4+T細胞であった。Prednisolone, etoposide, cyclosporineによる治療を開始し,熱型,心嚢水貯留は改善したが,血中EBV-DNAの改善を認めなかったため,フルダラビン,メルファランによる前処置後EBV未感染のHLA一致同胞ドナーより同種末梢血幹細胞移植を施行した。皮膚急性移植片対宿主病(grade 2)を発症したが移植後経過は順調であり,移植後98日目に末梢血EBV-DNAは陰性化し,全身状態良好で無病生存中である。CAEBVはT細胞やNK細胞にEBウイルスが持続感染して発症する予後不良な疾患であり,早期に適切な治療を行い,同種造血幹細胞移植を考慮することが必要である。CAEBVは心嚢水貯留を主症状として発症することもあり,注意すべき徴候であると考えられる。
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