臨床血液
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59 巻, 12 号
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Picture in Clinical Hematology
症例報告
  • 渡邉 健, 吉藤 康太, 大川 龍之介, 戸塚 実, 三浦 修, 新井 文子
    2018 年 59 巻 12 号 p. 2555-2560
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/09
    ジャーナル 認証あり

    症例は24歳男性。T-ALL(acute lymphoblastic leukemia)に対してJapan Adult Leukemia Study Group(JALSG)ALL202-Uに沿った寛解導入療法中L-asparaginase(L-asp)6回目の投与後に重症高triglyceride(TG)血症(4,132 mg/dl)を認めた。リポ蛋白解析では膵炎発症リスクの少ないIV型高脂血症であった。L-aspによる薬剤性高TG血症と考え,L-asp投与を中止し,脂肪制限食にしたところ,速やかに改善した。膵炎,血栓症などの合併症は発症しなかった。再寛解導入時にもL-aspを投与し以降も安全に投与を継続できた。成人においてL-aspによる重症高TG血症を発症した症例報告はこれまで4例あり,いずれも再投与の記載はなく,本症例が成人における初の報告と考えられる。L-asp継続の安全性の評価のために同様の再投与症例の蓄積が必要と考えられた。

  • 田矢 祐規, 三ツ木 崇, 梶 大介, 石綿 一哉, 和氣 敦
    2018 年 59 巻 12 号 p. 2561-2566
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/09
    ジャーナル 認証あり

    症例1は57歳男性,C型肝硬変(Child-Pugh B)で肝細胞がん治療中にAPLを発症した。トレチノイン単剤で寛解導入療法を行ったところ分化症候群をきたしたが,ステロイド投与で改善して血液学的寛解を達成した。症例2は50歳男性,C型肝硬変(Child-Pugh B)で生体肝移植準備中にAPLを発症した。トレチノイン単剤で寛解導入療法を行ったところ分化症候群をきたしたが少量ステロイドとアルブミン投与で改善し,血液学的寛解を達成した。2症例ともSanzらのプロトコールに準じて通常量のトレチノインに加えて42~70%アンスラサイクリン投与量で3コース地固め療法を行った。現在維持療法を行っており,1年以上分子生物学的寛解を維持している。APL治療のキードラッグのトレチノインは肝障害に関して類似化合物の毒性から禁忌とされているが,肝硬変症でも肝酵素異常を含めた十分な肝機能評価の上で投与すれば使用可能な症例もある。

  • 助川 慎一郎, 坂田(柳元) 麻実子, 松岡 亮太, 百瀬 春佳, 清木 祐介, 野口 雅之, 中村 直哉, 渡辺 玲, 藤本 学, 横山 ...
    2018 年 59 巻 12 号 p. 2567-2573
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/09
    ジャーナル 認証あり

    芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)は皮膚病変を主体とし,しばしば骨髄病変,白血化を伴う稀な疾患である。形質細胞様樹状細胞の前駆細胞を正常カウンターパートとするが,造血幹細胞を起源とすることが報告されている。BPDCN症例の10~20%に慢性骨髄単球性白血病(CMML)を代表とする他の血液疾患を合併することが知られる。BPDCNおよびCMMLは,いずれもエピゲノム調節因子をコードする遺伝子の異常が高頻度にみられることが報告されている。CMMLに対しては,エピゲノム調節薬であるアザシチジン治療が行われているが,BPDCNに対するアザシチジン治療は少数例の症例報告がなされているのみである。本症例は67歳男性,皮疹で発症し,皮膚腫瘤生検および骨髄生検によりBPDCNと診断した。化学療法によりBPDCNは消失したが,CMMLを発症した。そこで,アザシチジン治療を行い,clinical benefitが得られた。しかしながら,皮疹と骨髄浸潤および椎体病変を認め,BPDCNの再燃と診断した。BPDCNおよびCMMLは,いずれもTET2変異を2種類ずつ認め,このうち1種類は両方の腫瘍に共通して認められた。本症例はBPDCNとCMMLを合併し,アザシチジンを投与した貴重な1例として報告する。

  • 梶邑 泰子, 田中 芳紀, 能野 翔太, 田中 真由美, 中邑 幸伸, 湯尻 俊昭, 松隈 聰, 永野 浩昭, 松隈 知恵, 高橋 一雅, ...
    2018 年 59 巻 12 号 p. 2574-2577
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/09
    ジャーナル 認証あり

    症例は30歳の初産婦。生来健康で妊婦検診でも異常は指摘されていなかった。妊娠16週に紫斑と血尿が出現し,著明な血小板減少(0.1万/µl未満)を認め当院に緊急搬送された。特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と診断しプレドニゾロン投与やHelicobacter pylori除菌療法を行ったが無反応であった。妊娠18週から免疫グロブリン(IVIg)大量療法を開始し血小板数は一時的に増加したが,妊娠経過に従いIVIgの反応性は低下し妊娠24週に無効化した。妊娠25週に脾摘を行ったところ,血小板数の増加は一時的であったが,IVIgに対する反応は改善が認められた。分娩まで計7回のIVIg大量療法を行い,妊娠34週に選択的帝王切開術で出産した。児も出生時に血小板減少を認めたが一過性であった。ステロイド,除菌療法,IVIg大量療法に不応性の妊娠合併ITPに対して脾摘は有効な治療戦略となり得る。

  • 河原 真大, 寺本 由加子, 浅井 愛, 永井 詩穂, 岩佐 磨佐紀, 藤城 綾, 西村 理恵, 南口 仁志, 辻 篤司, 木藤 克之, 安 ...
    2018 年 59 巻 12 号 p. 2578-2582
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/09
    ジャーナル 認証あり

    17歳,女性。意識障害で救急搬送され,脳内出血,白血球数233,800/l,芽球93%,播種性血管内凝固を認めた。骨髄検査で急性骨髄性白血病(AML, M2),t(7;11)(p15;p15)転座,キメラ遺伝子NUP98-HOXA9,FLT3-ITDを認めた。血腫除去術後,寛解導入療法を開始。スパイナルドレーンから髄液細胞数をモニターし,寛解導入療法終了後5日目と9日目に細胞数の増加を認めたので髄腔内化学療法(IT)を行い,中枢神経病変の制御と正常造血の回復を得た。高容量cytarabineを含む地固め療法で分子生物学的完全寛解を獲得後,HLA一座不一致同胞より骨髄破壊的前処置を用いた骨髄移植を施行し,発症後228日目に大きな後遺障害なく退院した。脳内出血を伴うAMLにおいて,中枢神経病変をどう管理するかは定まっていない。本例は,髄液細胞数モニタリングに基づいて適切なタイミングでITを行うことが,脳内出血後の中枢神経病変の制御に有用であることを示唆する。

  • 佐藤 淑, 神戸 栄美子, 玉井 洋太郎
    2018 年 59 巻 12 号 p. 2583-2587
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/09
    ジャーナル 認証あり

    急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia, AML)では中枢神経(central nervous system, CNS)浸潤を来すことがあるが,骨髄異形性症候群(myelodysplastic syndrome, MDS)のCNS浸潤は稀である。初診時に白血病細胞のCNS浸潤に関連して塞栓症を来したと考えられる若年性MDS例を経験した。症例は25歳男性,左上肢挙上困難のため来院され,MRIで右頭頂葉に急性期脳梗塞と周囲にびまん性浮腫上病変を来し,髄液中に白血病細胞を認めた。骨髄検査でMDS with excess blast 1のCNS浸潤と診断した。血液検査上,明らかな播種性血管内凝固症候群や血栓性素因は認めなかった。MDSに脳塞栓症を来した場合,CNS浸潤の合併にも留意する必要がある。

  • 幕内 陽介, 西本 光孝, 山本 圭一, 高橋 利幸, 久野 雅智, 中嶋 康博, 康 秀男, 中根 孝彦, 日野 雅之, 中前 博久
    2018 年 59 巻 12 号 p. 2588-2593
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/09
    ジャーナル 認証あり

    同種造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病(graft-versus-host disease, GVHD)に起因する中枢神経疾患は稀であり,その病態や治療法には不明な点が多い。我々は急性混合性白血病に対して移植後大量シクロフォスファミドを用いたHLA半合致同種末梢血幹細胞移植を行い,慢性GVHDに起因した脊髄長大病変を伴う再発性の急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis, ADEM)を合併した1症例を経験した。ステロイド治療に抵抗性を認めたがrituximabの投与が有効であった。我々が知る限り,脊髄長大病変というADEMにおいては非典型的な病変形成に慢性GVHDが寄与し,またこの病態に対してrituximabが有効であった報告は他にない。同種造血細胞移植後の慢性GVHD患者に生じた神経症状の鑑別としてADEMの可能性を考慮するべきと考えられる。

  • 長谷山 美仁, 武田 紫, 熊野 弘毅
    2018 年 59 巻 12 号 p. 2594-2599
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/09
    ジャーナル 認証あり

    80歳女性。発熱と下腿浮腫が出現し,近医を受診したところ著明な好酸球増多を指摘され当科紹介となった。フィラデルフィア染色体陽性で慢性骨髄性白血病の診断となった。イマチニブ投与で一旦細胞遺伝学的完全寛解となったが,開始後約28ヶ月で血液学的および細胞遺伝学的寛解の喪失を認めた。ニロチニブに変更し再度細胞遺伝学的完全寛解となったが約14ヶ月で疾患の進展を認めダサチニブに変更したが効果は一過性であり,原疾患のため永眠となった。増悪時は好中球増多が優位の通常の慢性骨髄性白血病のパターンであった。末梢血で好酸球割合が50%を超えた慢性骨髄性白血病は過去に6例報告があり,男性で触知可能な脾腫を持つ例が多く,非血液学的合併症として心臓障害や血管障害,胸水などを伴うという特徴があった。慢性骨髄性白血病は一般には好中球優位の白血球増多を示すが,稀に好酸球優位の増多を示し,慢性好酸球性白血病や特発性好酸球増多症と類似する一群があることに注意が必要である。

  • 和泉 真太郎, 木村 賢司, 竹田 勇輔, 塚本 祥吉, 山﨑 美貴, 三科 達三, 長井 友莉恵, 高石 浩司, 永尾 侑平, 大島 渚, ...
    2018 年 59 巻 12 号 p. 2600-2605
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/09
    ジャーナル 認証あり

    60歳男性。C型肝炎に対する定期採血で血清IgM高値(9,500 mg/dl),IgM-κ型M蛋白を認め当科受診した。全身CTで肺腫瘤,腹腔内リンパ節腫脹,両側腎周囲軟部陰影増大,膀胱壁肥厚を認め,FDG-PET/CTにて同部に異常集積を認めた。肺腫瘤生検にて中型リンパ球と形質細胞の増殖を認め,免疫染色にてCD138,IgM陽性,Ki-67低値,周囲リンパ球はCD20陽性,PAX-5陽性のB細胞であった。病変は粘膜を主体とし,IgH-MALT1陽性,IgH-Bcl2陰性,アリル特異的PCR法でMYD88 L265P変異は陰性であった。血清IgMが著明高値にて,当初Waldenströmマクログロブリン血症が鑑別上位と考えられたが,節外性濾胞辺縁帯粘膜関連リンパ組織型リンパ腫と最終診断した。血清IgM高値を伴う血液悪性腫瘍の鑑別診断におけるMYD88 L265P変異解析は鑑別診断の一助となる可能性が示唆された。

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