中枢神経原発悪性リンパ腫(PCNSL)は稀な疾患であり,進行が早く予後不良である。今回我々は,PCNSL患者6例に大量メトトレキサート療法を主としrituximabを併用した化学療法を施行したのでその治療成績を解析した。年齢中央値は71歳(範囲,54~75歳),PSは3以上が4例であり,組織型は全例がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫であった。治療効果では,全例に奏効(完全奏効5例,部分奏効1例)が得られた。経過中に1例が肺血栓塞栓症,1例に敗血症および急性精巣上体炎の合併症を併発したが,いずれも治療により軽快し管理可能であった。観察期間中央値は28.8ヶ月(範囲,13.4~65.5ヶ月),治療開始から62.2ヶ月後に再発した1人を除いて全例再燃なく生存中であり,rituximabを併用した治療法が期待された。今後も,高齢者を含むPCNSLに対するさらなる治療法の確立が望まれる。
症例は66歳女性。2014年3月に再生不良性貧血stage 5と診断。Antithymocyte globulinとcyclosporineを含む免疫抑制療法に治療抵抗性であり,2015年6月に骨髄非破壊的前処置を用いた臍帯血移植を施行した。移植片対宿主病(GVHD)予防にはtacrolimus(TAC)とmycophenolate mofetilを用いたが,移植後も慢性GVHDを併発していたため,TACとprednisoloneの内服を継続していた。移植から1年2ヶ月後に運動失調が出現して左小脳半球に発症した脳梗塞と診断。その後も症状は悪化して,MRI(T2)において病変は中脳まで拡大。髄液検査で細胞数と生化学所見は正常であったが,PCR検査にてJCウイルス(JCV)を検出。JCVによる進行性多巣性白質脳症(PML)と診断後,メフロキンの内服治療を開始した。治療開始から3ヶ月後に症状の進行は治まり,6ヶ月後に髄液JCVの陰性化を認めてMRIにおける病変の拡大は停止した。本例は重症再生不良性貧血に対して免疫抑制療法に続いて臍帯血移植を施行した後に小脳で発症した希少なPMLの症例であり,ここに報告する。
非ダウン症患児に発症する急性巨核芽球性白血病(non-DS AMKL)は予後不良とされており,近年ではキメラ遺伝子と予後の相関が報告されている。今回non-DS AMKL 10例で,キメラ遺伝子と臨床的転機の関係を検討した。キメラ遺伝子は,初発時の検体を用いて既報の3種類の有無を調べた。対象症例10例のうち,RBM15-MKL1が2例,CBFA2T3-GLIS2が4例,NUP98-KDM5Aが1例から検出された。RBM15-MKL1が検出された2例は化学療法のみで寛解を維持していたが,RBM15-MKL1が検出されなかった残りの8例に関しては全例で造血幹細胞移植を行っており,特にCBFA2T3-GLIS2が検出された4例中3例は非寛解で移植を行い2例で死亡していた。Non-DS AMKLはキメラ遺伝子により予後が異なり,今後の治療層別化や新規薬剤開発の必要性が考えられた。
症例は64歳男性。突然の心窩部痛と左前胸部痛が出現し救急外来を受診した。血小板数が121.7万/µlと著増していた。Computed tomography(CT)で両側副腎腫大と周囲結合織濃度の上昇を認め,magnetic resonance imaging(MRI)の拡散強調画像で高信号を示し副腎梗塞と診断した。骨髄検査から本態性血小板血症と診断した。JAK2 V617F遺伝子変異陽性であった。その後も副腎梗塞を繰り返し,大動脈壁在血栓,脾梗塞を発症した。aspirin内服に加え,hydroxyureaとanagrelideによる細胞減療法を行ったが冠動脈狭窄による心不全を発症したためprasugrelの内服を追加した。両側副腎梗塞は本態性血小板血症の血栓イベントとしては極めて稀である。CTやMRIで診断可能であるが,急性冠症候群や腸管虚血などの除外が必要であった。本例は強い動脈血栓傾向を示し抗血小板薬2剤を併用投与したが,その有効性や安全性についてはさらなる検討が必要である。
【症例】31歳,女性。X年6月に妊娠。8月2日に前胸部腫瘤を自覚。呼吸困難が出現し,当院へ搬送。CTで縦隔腫瘍と気道圧迫を認め,緊急入院。CTガイド下針生検を施行し,縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫と診断。8月18日(妊娠11週4日)にステロイドパルス(プレドニゾロン(PSL);1 g 3日間)を施行し,呼吸症状は一時的に改善したが,再増悪した。8月22日にVCP(ビンクリスチン(VCR)+シクロフォスファミド(CPM)+PSL)を施行し,呼吸症状は改善した。9月2日にR-CHOP(リツキシマブ+CPM+ドキソルビシン+VCR+PSL)を開始し,計8コース施行。翌年2月4日に出産。児は妊娠35週6日,1,664 gと早産低出生体重児だったが,その他に異常を認めず。3月1日のPET-CTで完全奏効を確認した。【考察】ステロイドパルスとVCPを先行し,その後にR-CHOPを施行することで完全奏効と健児出産を達成した。1st trimesterでの治療導入において有用な手法と考えられた。
高リスク骨髄異形成症候群の57歳男性に臍帯血移植を施行。Day(D)14に急性graft-versus-host diseaseを発症したためステロイド投与開始し,漸減中のD75にめまいが出現。大脳,小脳,脳幹に多発性脳出血を認め,出血が増大傾向となりD91に脳生検施行。CD3+成熟リンパ球の小血管周囲への集簇,リンパ球とマクロファージの血管壁内浸潤を認め中枢神経系血管炎(central nervous system vasculitis, CNSV)と診断。大量ステロイド療法を施行後脳出血の進行は停止したが,D113に嚥下障害が出現し,D128に脳浮腫で死亡。追加検査で脳生検試料中にトキソプラズマDNAおよびその急増虫体が検出されたことより,本症例のCNSV発症の原因としてトキソプラズマの関与が示唆された。稀少疾患のCNSVは急激な経過を辿り,移植後の致死的中枢神経系合併症としての認識が必要であり,トキソプラズマ症を含めその原因解明が予後の改善に重要である。
症例は63歳女性。乳腺原発びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)の初回再発に対し,リツキサン併用EHSAP変法4コース目目的で当院入院となった。第20病日から血球貪食症候群を発症。末梢血中のサイトメガロウィルス(CMV)DNAのPCRが陽性であったため,CMV関連と判断し,ホスカルネット(FCN)治療量を開始。全身状態・造血能は速やかに改善し,1週間でFCN終了とした。その10日後,見当識障害が突然出現し,急激に悪化した。髄液検査でリンパ球優位の白血球増加とCMV PCRで高コピー数を認め,CMV髄膜脳炎と診断した。FCNとガンシクロビル(GCV)の併用療法を開始し,意識障害は徐々に改善した。CMVのDNAシークエンスの結果,FCN耐性を示す変異は確認されず,GCVを1週間で中止した。髄液PCR陰性化の確認までFCNを継続した。CMV髄膜脳炎は,造血器腫瘍の非移植例では稀であるが,重篤化しやすく致死率も高い。リンパ系腫瘍に対する化学療法中の意識障害の鑑別に挙げることが肝要である。
We managed a patient with acute myeloid leukemia (AML) who showed refractory ascites that developed in late-phase cord blood transplantation (CBT). The ascites obverted 5 months after CBT. The liver was atrophic, and serum hyaluronic acid was elevated at the onset, suggesting fibrotic changes in the liver. The ascites were transiently improved by cell-free and concentrated ascites reinfusion therapy (CART) and corticosteroid administration; however, the patient died from anasarca and recurrent AML 378 d after CBT. The etiology of the ascites is not well understood; therefore, additional studies on similar patients should be explored for proper management.
A 48-year-old Filipino woman underwent umbilical cord blood stem cell transplantation for Philadelphia chromosome-positive acute lymphoblastic leukemia under non-remission status. Left aqueous humor puncture was performed owing to the development of left eye pain and exacerbation of anterior eye chamber inflammation 72 days after the transplantation; this revealed the relapse of leukemia in the anterior chamber. Subsequently, the patient tested positive for peripheral blood minimal residual disease. Therefore, doctors should take note that anterior chamber disease may appear as a non-typical relapse of leukemia.
A 71-year-old man diagnosed with IgG-κ type multiple myeloma 11 years ago was treated with low doses of pomalidomide (POM, 1 mg/daily) and dexamethasone (20 mg/week) as the third-line of salvage regimen. The treatment was terminated 4 days later owing to the appearance of a severe skin rash, which had also occurred after previous treatment with lenalidomide. After 2 months, POM was readministered via an outpatient desensitization protocol under prednisolone administration. During five cycles of POM-treatment, no severe skin rash appeared, and partial remission was obtained even though the final POM dose was as low as 1 mg/day.