臨床血液
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60 巻, 8 号
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総説
臨床研究
  • 大原 慎, 井手 史朗, 内田 智之, 井上 盛浩, 華 見, 萩原 政夫
    2019 年 60 巻 8 号 p. 897-902
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル 認証あり

    当院でアザシチジン(AZA)を投与した,芽球比率30%未満のAML,CMML,MDS全95症例に対し,血液学的改善(HI)達成時期と予後の関係につき解析した。AZA 9サイクル継続し原病増悪もしないがHIも得られないものをstable disease(SD),3サイクル以内にHIが得られたものをearly responder(ER),4から9サイクルまでにHIが得られたものをlate responder(LR),HIが得られず原病増悪や感染症などで9サイクル以内に治療を終了したものをdrop out(DO)と定義した。ER群はLR群,SD群と比し統計学的に有意に生存期間が短かった。ER群の中でHIを喪失した症例は,HIを維持できた症例と比較して有意に生存期間が短縮していた。なお10サイクルを超えてHIを達成した症例を3例認めた。たとえHIが得られなくても,現病増悪や重篤な合併症発生がなくSDを維持しているのであればAZAを継続するのが妥当と考える。

症例報告
  • 縄田 涼平, 杉山 暁子, 原田 圭輔, 篠原 健次, 湯尻 俊昭
    2019 年 60 巻 8 号 p. 903-909
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル 認証あり

    症例は78歳男性。Hb 9.6 g/dlの貧血およびIgM 3,577 mg/dlと異常値を認め当科受診。初診時の骨髄穿刺はdry tapであり,骨髄生検はCD20陽性リンパ形質細胞の増生が確認され,Waldenströmマクログロブリン血症と診断した。同時に骨髄線維化を呈し,血漿TGF-βの上昇が認められた。BR療法(bendamustine+rituximab併用化学療法)4コース施行し完全寛解を達成した。同時に骨髄線維化の改善を認め,血漿TGF-βの正常化を確認した。MYD88 L265P変異はダイレクトシークエンス法では同定できなかったが,高感度デジタルPCR法による解析によって変異を確認した。骨髄線維症を合併し検体中に十分な腫瘍量が得られない場合でも,高感度デジタルPCR法を用いることによりMYD88 L265P変異の検出が可能であることが示された。

  • 飯塚 弘子, 福田 泰隆, 森 洋輔, 岩尾 憲明, 小池 道明, 野口 雅章, 小松 則夫
    2019 年 60 巻 8 号 p. 910-914
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル 認証あり

    肝硬変合併慢性骨髄性白血病(CML)加療中の72歳女性。右前腕血性水疱と腹水貯留を認め,来院時ショックバイタルのため緊急入院とした。入院時血液培養で連鎖球菌陽性であり,劇症型溶血性連鎖球菌感染症(STSS)と診断した。右前腕の壊死性筋膜炎に対し外科的切除術を施行し,抗菌薬投与と全身管理を継続したが血性水疱は急速に全身皮膚軟部組織に波及し,菌の侵襲性増殖を阻止できず入院41時間後に永眠した。その後原因菌はB群溶連菌であることが判明した。白血病患者におけるSTSS合併の報告は稀であり,全例が致死的経過をたどっている。特に本症例ではチロシンキナーゼ阻害薬による好中球減少,肝硬変合併による好中球機能低下,高齢者CMLであることなど様々なリスク因子が重なったことが影響したと考えられた。今後はSTSSの病態解明と治療法確立により白血病患者においても救命可能になることが期待される。

  • 中尾 健介, 岡 諭, 内海 貴彦, 山田 聖子, 近藤 敏範, 通山 薫, 浅越 康助
    2019 年 60 巻 8 号 p. 915-919
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル 認証あり

    症例は83歳女性で労作時の倦怠感を主訴に前医受診し,末梢血液検査で幼若顆粒球と大球性貧血を認めたため当院紹介となった。骨髄検査では環状鉄芽球の増加を認めMDS-RS-SLDの診断とした。染色体検査ではtrisomy8を認めた。支持療法として赤血球輸血を行ったが,3血球系統の緩徐な増加がみられ,骨髄再検で巨核球系細胞の増加を確認しMDS/MPN-RS-Tの診断とした。なお,遺伝子変異解析ではCALR変異を認めた。以降hydroxycarbamideとanagrelideの投与で有害事象や合併症なく,良好な血球数コントロールを得ている。さらにMDS-RSにおいて高率にみられるSF3B1変異の有無を病態把握のため確認したところ陽性であった。本邦でMDS/MPNにCALR変異を認めた報告は検出されず,SF3B1変異を同時に検出する報告は極めて少ない。

  • 佐藤 淑, 田中 江里, 立花 崇孝, 深井 隆太, 神尾 直, 市場 晋吾, 佐藤 雅昭, 玉井 洋太郎
    2019 年 60 巻 8 号 p. 920-923
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル 認証あり

    症例は29歳男性。20歳時診断の急性骨髄性白血病。22歳時第2寛解期に非血縁者間同種骨髄移植を行い,移植1年2ヶ月後に慢性GVHDによる閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans, BO)を発症した。著明な2型呼吸不全へと進行し,在宅人工呼吸器管理を行い3年間継続したものの,呼吸不全が増悪したため,体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation, ECMO)を装着した。適合ドナーが出現するまで5ヶ月間ECMOによる集中治療管理を継続し,脳死両肺移植に至り成功した。BOは進行性で予後不良の難治性呼吸器疾患であるが,感染症や他臓器管理に留意しながら,時期を逸することなく,人工呼吸器やECMOのサポートを用いて肺移植に繋げることによって救命できる可能性があり,そのためには高度専門機関や他職種との連携が非常に重要である。

  • 杉崎 真人, 石埼 卓馬, 入内島 裕乃, 清水 啓明, 柳沢 邦雄, 小川 孔幸, 横濱 章彦, 斉藤 貴之, 塚本 憲史, 半田 寛
    2019 年 60 巻 8 号 p. 924-928
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル 認証あり

    症例は32歳女性。妊婦検診で自己免疫性溶血性貧血(AIHA)と診断された。無治療経過観察されていたが,妊娠40週に前期破水のために緊急帝王切開術を施行された。術翌日より溶血性貧血の増悪と頻脈により高拍出性心不全をきたし,頻脈の精査でBasedow病の診断に至った。甲状腺機能亢進と発熱・頻脈・心不全から甲状腺クリーゼと診断した。Thiamazoleとpotassium iodideにより甲状腺機能亢進症は改善し,それに伴い溶血性貧血と心不全も改善した。自己免疫性溶血性貧血は稀ながら甲状腺機能亢進症を合併し,甲状腺機能亢進によって溶血性貧血が増悪することがある。分娩が甲状腺クリーゼの誘因となることが知られており,妊婦に生じたAIHAでは甲状腺機能亢進に注意する必要性が示唆された。

短報
第80回日本血液学会学術集会
Symposium 1
  • 得平 道英, 木崎 昌弘
    2019 年 60 巻 8 号 p. 932-943
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル 認証あり

    メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(methotrexate-associated lymphoproliferative disorders, MTX-LPD)はWHO分類2017ではother iatrogenic immunodeficiency-associated lymphoproliferative disordersに属する病態であり,少量MTX投与下の自己免疫性疾患に出現する。日本人に好発し,約2/3の患者においてMTX中止後LPDが消退する。様々なLPD亜型の出現を認め,亜型によりLPD消退率,再燃・再発率,予後などが異なる。末梢血リンパ球絶対数(absolute lymphocyte count, ALC)のLPD発症,消退,再燃・再発への関与が示唆されている。その発症,臨床経過には極めて多岐にわたる因子が関与していると考えられ,その解析には注意を要する。

  • 河本 啓介, 三好 寛明, 瀬戸 加大, 木村 宏, 大島 孝一
    2019 年 60 巻 8 号 p. 944-952
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル 認証あり

    慢性活動性EBウイルス感染症(chronic active Epstein-Barr virus infection, CAEBV)は,Epstein-Barr virus(EBV)の再活性化(感染細胞の再増殖)による慢性持続性もしくは再発性の発熱やリンパ節腫脹,肝脾腫,皮疹などの伝染性単核球症様症状などを呈する疾患である。CAEBVの診断までに明確な免疫異常や既往歴などはなくその発症機序については現在も不明である。CAEBVはEBVに感染したT細胞もしくはNK細胞のclonal expansionによって血球貪食症候群や悪性リンパ腫などの致命的な疾患をきたす予後不良の疾患である。造血幹細胞移植がおこなわれなければ,CAEBVは予後不良の経過をたどる。このentitiyはほとんどが小児発症であるため改定2016WHO分類にはEBV-positive T-cell and NK-cell lymphoproliferative disease of childhoodのうちのchronic active EBV infection of T- and NK-cell type, systemic formとして収載されている。しかし同様の病態が成人にも発症することが知られるようになり,今回我々は成人発症CAEBV(adult-onset CAEBV)の臨床的特徴について多数例において検討した。その検討結果を報告するとともに,近年報告されているCAEBVを含むEBV-NK/T/LPDsにおける遺伝子異常などの結果を踏まえて成人発症のCAEBVの病態について概説する。

Symposium 10
  • 森 康雄
    2019 年 60 巻 8 号 p. 953-959
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル 認証あり

    移植片対宿主病(GvHD)は同種移植後の非再発死亡の原因としてもっとも頻度が高い。ステロイド不応例の予後は不良であるが,標準的な2次治療は確立していない。GvHDの病態形成に関わるサイトカインを阻害するこれまでの試みは,単一では十分な効果が得られていない。Jak1/2阻害薬であるruxolitinibはIFN-γ,IL-2,IL-6など複数のサイトカインを同時に抑制することが可能であり,近年の後方視的調査研究では,ステロイド抵抗性GvHDに対する高い奏効率および生存率の改善効果が示されている。一方で,ruxolitinib治療に伴う骨髄抑制や免疫抑制の有害事象が問題となる。さらに,治療中断に伴いGvHDの急性増悪をきたす「離脱症候群」の可能性も明らかとなってきた。本稿では骨髄線維症患者におけるruxolitinibによるGvHD治療の功罪について解説する。

  • 吉里 哲一
    2019 年 60 巻 8 号 p. 960-967
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル 認証あり

    骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes, MDS)は,造血不全・異形成に特徴付けられる不均一な疾患である。低リスク群では,慢性的な経過をとることが多い一方,高リスク群の予後は不良であり,造血幹細胞移植が唯一の根治的治療である。しかしながら,造血幹細胞移植は,移植関連死亡率も高く,適応は慎重に判断する必要がある。移植症例の予後改善のためには,移植前の正確な予後予測が肝要である。近年,MDSのゲノム異常に関する知見は目覚ましい進歩を遂げており,その全貌が明らかになりつつある。これらゲノム異常の移植症例における影響も評価されている。臨床情報が移植症例の予後の約70%を規定しているが,残りの30%をゲノム異常が規定しており,従来の臨床指標に加え,ゲノム情報も勘案し,予後予測することが今後有用になってくるであろう。

  • 藤 重夫
    2019 年 60 巻 8 号 p. 968-972
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル 認証あり

    成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)は難治性の血液悪性疾患の一つである。化学療法では長期的な予後は不良であり,同種造血幹細胞移植も移植適応年齢においては標準的に勧められる。しかし,ATLは化学療法に抵抗性であることも多い。化学療法抵抗性の状態でも同種移植が検討されるが,その予後は不良である。そのような場合の選択肢としてモガムリズマブが挙げられる。モガムリズマブは再発・難治性のATLにおいて一定の奏効率を期待できる重要な薬剤の一つである。しかし,モガムリズマブは制御性T細胞を除去する効果があることから,同種移植前に使用した場合にGVHDなどの合併症を増加させる可能性がある。本論文においては同種移植前のモガムリズマブに関する報告について我々の研究結果を中心に概説する。

Symposium 11
  • —全国疫学調査からみた診断と治療の現状—
    島崎 千尋
    2019 年 60 巻 8 号 p. 973-978
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル 認証あり

    全身性ALアミロイドーシスは,異常形質細胞より産生される単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)の軽鎖に由来するアミロイド蛋白が全身諸臓器に沈着し,臓器障害をきたす疾患である。本症は比較的稀な疾患であり,本邦における実態調査の報告はない。本稿では,厚労省難治性疾患等政策研究事業「アミロイドーシスに関する調査研究」班で行われた疫学調査結果をもとに本邦におけるALアミロイドーシスの診断と治療の現状について報告した。年間発症率は100万人あたり4.2で年齢中央値は65歳,男性優位で,障害臓器は腎が最も多く,次いで心,消化管,自律神経の順であった。免疫染色で確定診断された症例は53%のみであった。心アミロイドーシスでは進行期の症例が多く,早期診断の重要性が示唆された。また,治療としてbortezomibが多く使用されていた。

  • —分子病態の解明と治療の進歩—
    中世古 知昭
    2019 年 60 巻 8 号 p. 979-987
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル 認証あり

    POEMS症候群は多発神経炎,臓器腫大,内分泌障害,IGLV1-40またはIGLV1-44の2種類の生殖系列遺伝子から由来するλ型Mタンパク血症,皮膚病変,溢水,血清中血管内皮細胞増殖因子上昇を特徴とする稀な傍腫瘍症候群である。本症候群の分子病態を明らかにするために,我々は患者20名の骨髄形質細胞を分離して網羅的遺伝子解析を行った。一人あたり14.5個の遺伝子変異が同定されたが,多発性骨髄腫で高頻度にみられるドライバー変異は検出されなかった。RNAシーケンスの結果もあわせ,本症候群の骨髄形質細胞は多発性骨髄腫や意義不明のMタンパク血症とは異なる遺伝子・転写プロファイルを有することが明らかとなった。サリドマイドなどの新規薬剤と自家造血幹細胞移植による治療法が開発され,自家移植後の5年生存率は90%以上まで改善し,患者ADLも大幅に改善することが可能となった。しかし長期観察での再発防止が今後の課題である。

  • —Japanese perception—
    関口 直宏
    2019 年 60 巻 8 号 p. 988-997
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル 認証あり

    原発性マクログロブリン血症(WM)は稀少な低悪性度リンパ腫である。本稿では本邦から得られた知見を中心に解説する。疫学:2016年の日本血液学会疾患登録結果よりWM,リンパ形質細胞リンパ腫と診断された症例は229,125例(成熟リンパ系腫瘍の1.97%),年間発症数は2.8人/100万人であった。6番染色体長腕欠失(6q del): 6q delは代表的な染色体異常であり,かつ,予後不良因子でもある。我々は6q delを有するWMはIgM値が高値になること,また,B細胞受容体シグナル伝達経路とIL-21受容体シグナルが活性化していることがaggressiveな病態に寄与していることを報告した。治療戦略: WM治療の実臨床データからはrituximab(R)単剤,アルキル化剤レジメン(±R)が最も一般的な治療法であると考えられる。本邦における最適な治療戦略についても考察する。

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