臨床血液
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61 巻, 11 号
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Picture in Clinical Hematology
臨床研究
  • 小倉 瑞生, 塚田 信弘, 余語 孝夫, 梨本 淳一郎, 宇藤 唯, 佐藤 広太, 宮崎 寛至, 吉識 由実子, 阿部 有, 岡塚 貴世志, ...
    2020 年 61 巻 11 号 p. 1563-1569
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル 認証あり

    近年,plerixaforを利用した自家末梢血幹細胞採取が増加している。本剤は高額な薬剤であるが,費用対効果については十分に検討されていない。我々は2013年12月から2018年11月の5年間に末梢血幹細胞採取を行った203例のうちG-CSF単剤群,G-CSF+シクロフォスファミド群,G-CSF+plerixafor群の3群について解析し,plerixaforによる幹細胞採取の効率を検討した。Plerixafor群ではほかの2群と比較して有意に採取費用が高かったものの,CD34陽性細胞2.0×106/kgあたりの採取費用に換算すると差は縮小した。1日あたりの採取CD34陽性細胞数はplerixafor群で有意に多かった(中央値2.90×106/kg vs 2.13×106/kg vs 4.63×106/kg, P<0.01)。Plerixaforは高額だが有効であると考えられた。

  • 橋本 由徳, 細田 利奈, 小村 裕美, 田中 孝幸
    2020 年 61 巻 11 号 p. 1570-1576
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル 認証あり

    中心静脈カテーテル(CVC)挿入は,血液疾患患者にとって必要不可欠な医療手技である。近年,CVC挿入において末梢挿入式中心静脈カテーテル(PICC)が普及しつつあるが,血液疾患患者において,どちらの上腕が挿入に適しているか十分に検討されていない。我々は,血液疾患患者を対象としてPICCの挿入側によるカテーテル関連合併症の発症頻度を後方視的に解析した。316例の患者に対して計809件のPICCを挿入した。右上腕挿入が515件(63.7%),左上腕挿入が294件(36.3%)であった。挿入群間の直接比較において,両群で挿入時の年齢以外,患者背景に明らかな違いを認めなかった。またPICC抜去理由においても両群で有意差を認めず,カテーテル関連血流感染症の発症は両群で同様かつ低率であった。PICCの挿入側の選択に当たっては,両側の上腕の血管をエコーで確認し,穿刺に適していると思われる側,条件が同等であれば患者が挿入を希望する側を考慮してもよいと考えられる。

症例報告
  • 加島 江美子, 杉本 由香, 名藤 佑真, 伊野 和子, 俵 功, 桝屋 正浩, 片山 直之
    2020 年 61 巻 11 号 p. 1577-1583
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル 認証あり

    濾胞性リンパ腫の既往がある53歳男性。下咽頭がんの化学放射線療法中に汎血球減少が出現した。骨髄検査で芽球が32%存在し,赤芽球,巨核球系の異形成を認めた。染色体分染法でt(15;17)を含まない複雑核型を認めたが,metaphase FISH法でcryptic PML/RARAが15番染色体上に検出され,治療関連急性前骨髄球性白血病(t-APL)と診断した。All-trans retinoic acid(ATRA)とarsenic trioxide(ATO)による治療で分子学的完全寛解に到達したが,下咽頭がん肺転移の増悪のため,維持療法は施行しなかった。ATO終了8ヶ月後にt-APLが再発し,染色体分染法ではdel(5q)とmonosomy 7が検出された。ATRAによる再寛解導入療法は無効であった。本症例はcryptic PML/RARAを伴うt-APLの特徴を考察する上で貴重な症例と考えられ,報告する。

  • 五十嵐 哲祥, 石黒 一也, 高木 芳武, 藤野 通宏, 辻崎 正幸
    2020 年 61 巻 11 号 p. 1584-1589
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル 認証あり

    74歳男性。帯状疱疹のため当院を受診した際,CTで右胸部腫瘤と腋窩リンパ節腫大,多発肺結節を指摘された。胸部腫瘤および腋窩リンパ節生検でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)と診断された。肺病変は気管支鏡下生検で二次性アミロイドーシスと診断され,唾液腺生検でSjögren症候群(SjS)の診断に至った。以上からSjS合併乳腺原発DLBCL,Stage IIEと診断した。R-THP-COP療法6コースと髄腔内化学療法および放射線照射を行い,完全寛解となった。乳腺原発リンパ腫は乳腺腫瘍全体の0.5~1%,節外性リンパ腫の1~2%とまれな疾患であるが,大多数は女性例であり,男性例は自験例を含めて17例の報告に留まる。女性化乳房やホルモン療法を伴う例が9例を占めるが,SjSとの合併例の報告はない。自己免疫疾患と悪性リンパ腫の進展においても興味深い症例と考えられる。

  • 一色 雄裕, 吉澤 有紀, 飯村 百萌, 福田 匡芳, 鈴木 幸恵, 佐藤 祐二, 長澤 俊郎
    2020 年 61 巻 11 号 p. 1590-1594
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル 認証あり

    症例は47歳男性。汎血球減少と左前腕腫脹を契機に急性前骨髄球性白血病(APL)と診断し,all trans retinoic acid(ATRA)を用いた寛解導入療法により完全寛解となり,地固め療法を完遂した。治療後3ヶ月頃より左耳閉感が出現し,左外耳道に腫瘤性病変を認めた。当初は炎症細胞浸潤を認めるのみであったが,さらに3ヶ月後の再生検にてMPO陽性,CD68陽性の顆粒球浸潤を認め,PML/RARα 4.9×105 copies/µgRNAであったことからAPLの局所再発と診断した。その2週間後の骨髄検査にて骨髄芽球および前骨髄球の増加を認め,骨髄再発と診断した。ATRAとarsenic trioxideを用いた再寛解導入療法により再度完全寛解に至り,自己末梢血幹細胞移植を施行し,現在完全寛解を維持している。本症例では外耳道病変による再発が骨髄再発に先行しており,外耳道の非特異的な白血病再発様式にも留意する必要があると考えられる。

  • 池田 博, 小船 雅義, 長島 加奈, 藤田 千紗, 後藤 亜香利, 堀口 拓人, 菊地 尚平, 村瀬 和幸, 高田 弘一, 井山 諭, 加 ...
    2020 年 61 巻 11 号 p. 1595-1599
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル 認証あり

    57歳日本人男性。発熱および頸部リンパ節腫脹で近医受診した。リンパ節生検の術前スクリーニングで,HIV(human immunodeficiency virus)抗体陽性を指摘され当科紹介受診となった。末梢血検査でHIV-RNA高値であったためHIV感染症と確定診断した。外来でART(anti-retroviral therapy)を導入した。しかしながら,1週間後に高熱および腎機能障害のため入院となった。感染症状と考えてセフトリアキソンおよびミカファンギンを開始した。入院後10日目に心肺停止状態となり,救命救急処置を行うも蘇生できずに死亡された。病理解剖肉眼所見で広範な動脈血栓および大小多数の多発脾腫瘍が指摘された。病理組織でEBウイルス陽性DLBCLと診断された。ART療法中に血栓症を発症したHIV陽性DLBCLは貴重な症例と考えられ報告する。

  • 中村 彰秀, 山口 智弘, 伊藤 竜吾, 川上 恵基
    2020 年 61 巻 11 号 p. 1600-1604
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル 認証あり

    59歳女性。貧血,嘔気および倦怠感で近医を受診し,多発性骨髄腫が疑われ当院紹介となった。各種検査より,primary plasma cell leukemia(pPCL)と診断した。大量dexamethasone療法に引き続き,CyBorD療法(cyclophosphamide,bortezomib,dexamethasone),KRd療法(carfilzomib,lenalidomide,dexamethasone)を行った。治療効果としては部分奏効相当であったが末梢神経障害を認めたため,DRd療法(daratumumab,lenalidomide,dexamethasone)に変更した。DRd療法15コース後の骨髄検査では,微小残存病変の陰性化を確認できた。Proteasome inhibitorを含む多剤併用レジメンからDRd療法へと連続的に化学療法を施行し良好な病勢コントロールと治療忍容性を両立できたことは今後のPCL治療を考察する上で貴重な症例と考えられる。

  • 大屋 周期, 山崎 嘉孝, 中村 剛之, 森重 聡, 山口 真紀, 青山 一利, 関 律子, 毛利 文彦, 大崎 浩一, 内藤 嘉紀, 大島 ...
    2020 年 61 巻 11 号 p. 1605-1610
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル 認証あり

    多中心性キャッスルマン病は,リンパ節病理像によって特徴づけられるリンパ増殖性疾患でIL-6高値を特徴としている。症例は17歳の日本人男性,発熱,頭痛,倦怠感,体重減少を伴っていたが,血圧は正常であった。臍下部に可動性良好な腫瘤を触知し,血液検査所見は小球性貧血,低アルブミン血症,IL-6高値,sIL-2R高値,VEGF高値を示した。造影CT検査で55 mm大の骨盤内腫瘤と腸間膜周囲のリンパ節腫大を認め,多中心性キャッスルマン病を疑い骨盤内腫瘍を摘出した。術後,血圧が緩徐に上昇し可逆性後頭葉白質脳症による痙攣を発症した。高血圧の精査で,術前の血中ノルアドレナリン,ノルメタネフリン高値が判明し,摘出標本でIL-6およびクロモグラニンAが陽性であることから,IL-6産生パラガングリオーマと診断した。多中心性キャッスルマン病に類似した発熱,貧血などを来す病態の鑑別診断として,血圧上昇を伴わない症例でもIL-6産生褐色細胞腫・パラガングリオーマを考慮する必要がある。

  • 堀北 風花, 橋口 淳一, 永嶋 貴博
    2020 年 61 巻 11 号 p. 1611-1615
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル 認証あり

    69歳男性。汎血球減少を契機にBJP-λ型多発性骨髄腫と診断され,様々な化学療法を施行したがいずれも不耐容,効果不十分だった。その後daratumumab併用療法を開始し,stable diseaseを維持中に下血した。下部消化管内視鏡検査を施行後に発熱と意識障害を認めた。脳脊髄液検査でListeria monocytogenes髄膜炎と診断し計3週間の抗菌薬治療を行い軽快した。Listeria monocytogenesに対する免疫において活性化マクロファージが重要な役割を担っており,CD38モノクローナル抗体であるdaratumumabは骨髄腫細胞に発現するCD38に結合し抗骨髄腫効果を有するが,活性化マクロファージのCD38にも結合することで,Listeria感染のリスクを高める可能性がある。Daratumumabの使用中にはListeria感染に注意する必要がある。

  • 酒井 康平, 松村 卓郎, 濵田 梨紗子, 富永 貴元, 高橋 徹
    2020 年 61 巻 11 号 p. 1616-1619
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル 認証あり

    症例は64歳女性。再発濾胞性リンパ腫に対してGB療法(obinutuzumab(OBZ),bendamustine)が施行されたが,1コース目から血小板輸血を要する血小板減少症が観察された。2コース目以降はbendamustineを減量するも同様の血小板減少を繰り返した。4コース後に完全寛解を得てOBZ単剤による維持療法に移行したが,維持療法においても同様に血小板減少を認めた。OBZ投与後の血小板数の経時的変化を観察すると,OBZ投与終了1時間後には血小板数は減少し始め,6時間後に半減,投与4日後頃に最低値となり,投与10日後頃から徐々に回復した。OBZ投与に伴う血小板減少症はしばしばみられる合併症であるが,投与後24時間までに起こる急性血小板減少症は稀である。しかし,本例のように投与後きわめて短時間に血小板減少が進行する場合もあり,臨床医家においては留意して治療に取り組む必要がある。

  • 大原 慎, 井手 史朗, 内田 智之, 井上 盛浩, 華 見, 萩原 政夫
    2020 年 61 巻 11 号 p. 1620-1624
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル 認証あり

    症例は57歳日本人男性。めまいを主訴に受診され,採血で汎血球減少症を認め,骨髄穿刺で増多した形質細胞の細胞質に針状結晶封入体を認めた。Fanconi症候群を合併した多発性骨髄腫(MM)と診断されボルテゾミブ,レナリドミドないしサリドマイドによる加療中に突然の原因不明の上腹部痛から死亡に至った。病理解剖にて肝・腎・骨髄のマクロファージ内に針状結晶封入体を認め,light chain deposition diseaseにより多臓器障害を起こしていることが示唆された。MMにおいて針状の封入結晶体を認め,LCDDを引き起こす頻度は極めてまれであり,報告する。

短報
  • 熊谷 拓磨, 土岐 典子, 小林 武, 山田 倫, 比島 恒和, 安達 弘人, 小沼 亮介, 藤田 昌宏, 和田 敦司, 岸田 侑也, 小西 ...
    2020 年 61 巻 11 号 p. 1625-1627
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル 認証あり

    Vacuolar myelopathy (VM) is known to be a neurological complication in patients with acquired immunodeficiency syndrome (AIDS). In autopsy-based studies, VM was reported in approximately 20-50% of patients with AIDS. It manifests in various says, mainly presenting as a painless spastic paraparesis with a sensory ataxia. We present a rare case of VM after bone marrow transplantation (BMT) in a patient without AIDS. A 50-year-old man developed weakness in the lower legs, leg muscle atrophy, and difficulty in walking 86 days after BMT. The patient died from septic shock on day 309. The autopsy revealed intralamellar vacuolation in the spinal white matter, which was compatible with VM.

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