臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
61 巻, 9 号
選択された号の論文の55件中1~50を表示しています
第82回日本血液学会学術集会 教育講演特集号
研究倫理
1 (EL2-12F)
  • 江場 淳子
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1007-1012
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    2018年4月に臨床研究法が施行されて2年が経過した。法成立の背景には一連の研究不正があり,日本の臨床試験への信頼回復のために臨床研究法が成立した。未承認または適応外の医薬品等を用いる研究,企業等から研究資金の提供を受けて当該医薬品等の評価を行う研究が「特定臨床研究」と呼ばれ,特定臨床研究を実施する際には,1.臨床研究実施基準の遵守,2.認定臨床研究審査委員会(Certified Review Board, CRB)による審査,3.厚生労働大臣への実施計画の届出,4.企業から資金提供を受けて臨床研究を実施する場合には契約締結が必要となる。本稿では臨床研究法成立の背景から,どのような問題意識に基づいて新しい仕組みや手続きが必要になったのかを振り返り,臨床研究法と特定臨床研究について概説していく。

2 (EL2-12G)
  • 飯田 香緒里
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1013-1017
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    2013年,我が国の複数の大学において実施された高血圧治療薬に関する臨床研究論文が撤回されるという事例が生じた。当該事例を契機に,我が国の臨床研究の実施体制や研究倫理体制と並んで,利益相反管理体制の強化が要請された。そのような中,2017年4月に成立した臨床研究法では,臨床研究を実施する研究者に利益相反管理義務が課せられている。利益相反管理は,産学連携活動が社会,患者,被験者からの疑念や誤解が生じないよう予防・回避するという意義はもちろん,最先端の研究を守るという要素を多分に持つ。利益相反管理の必要性や目的を振り返りながら,研究の種別や論文投稿時に研究者に求められる利益相反管理の在り方を紹介していく。

臨床血液学の様々な課題
3 (EL1-2D)
  • —個々のTKIにおける合併リスクとそのマネジメントについて—
    高久 智生
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1018-1027
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    チロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor, TKI)により,多くの慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia, CML)患者で長期の予後が得られる一方,CMLの日常診療においては,TKI治療の長期化に伴う有害事象マネジメントの重要性が増している。なかでも心血管系有害事象(vascular adverse events, VAEs)は,患者の生命に直結する疾患が多く含まれていることから,個々の患者状況に応じたTKIの選択を行い,リスクのある患者においては予防的な治療介入も含め適切に対処していく必要がある。本稿においては,TKI治療患者におけるVAEsについて,現時点で明らかとなっているその病態,および本邦で投与可能な5種類のTKIにおける合併頻度,さらにはリスクマネジメントについて最新の知見を含め概説する。

4 (EL2-3F)
  • 東條 有伸, 小林 真之
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1028-1034
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は,CD1a/CD207細胞の集簇と炎症細胞浸潤を特徴とする稀少疾患である。1987年ヒスチオサイトーシスXからLCHに名称変更されたが,細胞系譜は骨髄系樹状細胞に近い。2010年,過半数の患者検体にBRAF-V600Eが検出され,その後,ほぼ全ての患者検体でERKのリン酸化が認められたため,LCHはMAPキナーゼ経路の活性化に起因する腫瘍と考えられ,Histiocyte Societyの2016年改訂分類では,炎症性骨髄腫瘍と定義された。国内外の臨床試験によって小児例の予後は改善されてきたが,成人例では十分なエビデンスのある治療法は未だ確立されていない。予後は比較的良好であるが,診断や治療の遅れは重篤な臓器障害やQOLの低下を招く可能性がある。本稿では,この稀少がんを理解いただくために,その病態生理と治療における最近の進歩を紹介する。

5 (EL2-12E)
  • 石田 也寸志
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1035-1047
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    造血器腫瘍長期生存例の年齢別・疾患別・治療年代別の晩期合併症の累積割合と累積数の変化を説明し,身体的晩期合併症から,代表として神経認知障害,心血管合併症,内分泌障害,筋骨格障害,免疫障害,生殖機能障害を取り上げた。長期生存例の生命予後に最も影響が大きい二次がんの特徴について解説し,移植後晩期合併症について,移植症例と非移植症例との比較を行った。また最近の長期フォローアップガイドラインの動向や入手方法について説明した。本教育講演の到達目標は,①造血器腫瘍疾患長期生存者の晩期合併症の主なものをあげ,リスク因子を列挙できる,②主な二次がんの特徴(発症頻度,発症までの期間)とリスク因子をあげることができる,③造血細胞移植後の晩期合併症の特徴をあげることができる,④長期フォローアップガイドラインの主なものを知っており,必要なときに活用できることである。

造血システム/造血幹細胞
6 (EL1-11D)
  • 横田 貴史
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1048-1057
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    リンパ球は自然免疫系・獲得免疫系両方において中心的な働きをする細胞であり,生涯を通じて造血幹細胞・前駆細胞の分化によって供給される。リンパ球造血を支える幹細胞・前駆細胞の発生と,リンパ球への運命決定に関する研究成果は,従来の教科書に記載されてきた理解に新たな概念を導入した。さらに近年,従来重点的に解析されてきた転写因子・サイトカインシグナルの役割に加え,それらを上流で調節するエピジェネティックな制御機構の解析が進んでいる。造血幹細胞からリンパ球への初期分化過程は,加齢や炎症などのストレスによる影響を受けやすく,高齢化社会の問題と関係して注目される。また,急性リンパ性白血病の病型分類の進歩から,ヒトにおけるリンパ球初期分化過程の精密な解析が重要となっている。本稿では,リンパ球の初期分化過程の制御機構に関して,伝統的な理解に最近の知見を交えて概説し,今後解決すべき問題について考える。

7 (EL2-5A)
  • —血液臨床の理解を深める臓器連関理論—
    片山 義雄
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1058-1063
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    進化過程を経て哺乳類が獲得した骨髄は,骨組織の内部に存在する。これまでの研究により,骨組織は骨髄造血システムと深い機能的連関をもつことが明らかとなっている。骨芽細胞系列は未分化造血細胞の微小環境を形成し,分化した造血細胞は骨代謝システムに必須の役割を担っている。骨組織や骨髄をそれぞれ独立した臓器とみなし,神経系やその他の臓器も含めた臓器連関のひずみに注目することで,血液臨床事象だけでなく体全体を説明していく新たな学問として,「骨髄学」を提唱する。

8 (EL2-5B)
  • 新井 文用
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1064-1070
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    造血幹細胞を体外で維持・増幅することは,移植治療や再生医療の進展に重要であり,多くの研究が行われている。我々は,染色体末端のテロメア構造の保護に働くシェルタリン複合体の構成因子Pot1a(POT1)が造血幹細胞の自己複製能の維持に働くことを見いだした。Pot1aは造血幹細胞のDNA損傷の抑制に加えて,活性酸素種の産生を抑制した。さらに,Pot1a/POT1を導入することにより,造血幹細胞を試験管内で維持できることが分かった。また,老化造血幹細胞にPot1aを導入したところ,骨髄再構築能と分化異常を回復できることができた。これらの結果から,Pot1a/POT1は造血幹細胞の未分化性維持に働くだけでなく,体外増幅や機能再生に応用できる可能性をもつ因子であることが示唆された。

赤血球系疾患
9 (EL1-2E)
  • 小原 直
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1071-1079
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    再生不良性貧血は,造血幹細胞が減少して,骨髄の低形成と汎血球減少を呈する症候群であり,T細胞を介した自己免疫疾患の可能性が有力である。免疫抑制療法は発症早期症例がより奏効率は高く,軽症例でも早期の治療開始が推奨されている。重症例では,造血幹細胞移植以外の治療ではATGとシクロスポリンによる免疫抑制療法が基本であるが,トロンボポエチン受容体作動薬の併用が有効であり,3系統の血球回復が期待できる。治療効果発現には時間がかかることが多く,効果判定は早くても3~6ヶ月後に行う。トロンボポエチン受容体作動薬による遺伝子変異の発生増加は認められていないが,長期間の投与開始後は3~6ヶ月後に骨髄検査を施行し,染色体異常の有無を確認することが勧められる。造血幹細胞移植では心毒性の軽減を期待して,前処置のシクロフォスファミドを減量し,フルダラビンを併用するレジメンが行われつつある。HLA半合致移植が開発され,ドナーが見つからない症例を対象に報告が増えている。

10 (EL1-2F)
  • —最近のアップデートと診療のポイント—
    後藤 明彦
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1080-1088
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の主要な病態は,GPIアンカーの生合成に異常をきたした造血幹細胞がクローン性に拡大し,GPIアンカー型タンパク質で補体制御因子であるCD55とCD59を欠損した赤血球が補体活性化により血管内溶血をきたすことである。クローン拡大には造血幹細胞に対する免疫的攻撃の関与が想定され,これに関連する骨髄不全が様々な程度に病態を修飾する。Eculizumabの導入により補体制御が可能になり,治療の進歩と共にその問題点も明らかになってきたことやPNHが難病指定されたことなどから「PNH診療の参照ガイド」は平成28年度に大きく改訂された。令和1年改訂版ではリサイクリング抗体技術を用いたeculizumabの誘導体,ravulizumabの臨床導入に対する対応を主体としながら治療と病態の理解のさらなる進歩を反映し細かな改訂が加えられている。本稿では今回の改訂のポイントを中心に前回改訂での重要点も含めて概説する。

11 (EL1-2G)
  • —続発性について考える—
    川本 晋一郎
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1089-1097
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    自己免疫性溶血性貧血(AIHA)はまれな疾患であり,原因については不明な点が多い。典型的な症例の診断は教科書的には血清学的検査により容易であるが,実際には直接抗グロブリン試験陰性AIHAなどに苦慮する場合があり,検査法を十分に理解しておく必要がある。また,治療には副腎皮質ステロイド薬が使用され長期投与となることが多いため,病態を的確に捉えて治療を選択し,合併症を避けなければならない。本稿では病態の理解を深めるため検査法の手順を図示し,治療に関しては副腎皮質ステロイド薬の投与方法などの注意点を述べる。また,治療抵抗性の際には続発性が疑われるが,AIHAに関連するリンパ増殖性疾患や自己免疫疾患の病態に,通常は自然免疫に働くとされるB-1細胞が関与するとの知見から,われわれが報告した大腸がんに続発する抗バンド3抗体によるがん関連貧血へのB-1細胞関与の可能性を検討し,正球性・大球性貧血における悪性疾患除外の必要性を示す。

12 (EL1-2H)
  • 石田 文宏
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1098-1104
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    後天性赤芽球癆は正球性貧血,網赤血球減少と骨髄赤芽球系細胞の著減を認める造血障害性疾患である。背景疾患は多岐にわたり,急性の赤芽球癆との判別も含め鑑別は丁寧に行う必要がある。新規の背景要因として免疫チェックポイント阻害薬使用例が報告された。免疫病態として細胞性免疫異常やABO major不適合同種造血幹細胞移植後などでの液性免疫の関与が以前より指摘されている。特発性赤芽球癆を含め4割の症例で細胞傷害性T細胞にSTAT3遺伝子変異を伴っていることが最近判明した。初期治療は赤血球輸血と免疫抑制療法が主体で,本邦ではシクロスポリン使用例が多い。8割で奏効するが再燃・不応の場合もある。複数薬剤に不応の場合は同種造血幹細胞移植も考慮されるが確立した方法はない。長期予後など諸課題解決のため,2016年から特発性造血障害に関する調査研究班による後天性慢性赤芽球癆の前向き登録研究が開始された。

13 (EL2-5C)
  • 川端 浩
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1105-1111
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    炎症は非特異的な生体防御反応であるが,これが長期にわたると貧血を生じる。その発症には免疫細胞から放出されるさまざまな液性因子が関与する。腫瘍壊死因子α(TNFα)は造血幹細胞を白血球系に分化させる転写因子PU.1を増加させ,赤芽球系への分化を促す転写因子GATA-1の発現を低下させる。TNFαとインターロイキン1β(IL-1β)は腎臓におけるエリスロポエチン産生を低下させ,インターフェロンγは造血前駆細胞におけるエリスロポエチン受容体の発現を低下させる。IL-6は肝臓におけるヘプシジン産生を増加させ,これが鉄のリサイクル・システムを阻害して造血系における鉄の利用障害を引き起こす。マクロファージの活性化により赤血球の寿命も短縮する。治療としては原疾患の改善が最も重要であるが,慢性腎臓病合併例では赤血球造血刺激薬が用いられ,関節リウマチ例などではヘプシジンの経路を抑制する抗IL-6受容体抗体も用いられる。

14 (EL2-5D)
  • 清水 律子
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1112-1119
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    Gata1遺伝子欠失マウスは卵黄嚢造血ができないため,胎生12.5日までに重度の貧血により胎生致死となる。Gata2遺伝子欠失マウスは,血管内皮細胞と造血幹細胞の共通祖先細胞であるヘマンジオブラストの機能不全により,全身の出血をきたして胎生10.5日程度で死亡する。一方,Gata3遺伝子欠失マウスは,神経系や腎尿路系の発生障害により,造血系の表現型が出現する前に胎生致死となるが,GATA3がTh2分化のマスター因子として働いていることが知られている。このような事象から,造血系GATA転写因子群の機能異常が造血恒常性維持の撹乱を招来することが予想されたが,同因子群とヒト血液疾患との詳細な関連は長らく不明であった。しかしながら,20世紀末にGATA1遺伝子変異が家族性血小板減少症の原因であることが報告されて以来,様々な病態が報告されている。本稿では,GATA転写因子群の中でも,特に,GATA1とGATA2に焦点を当てて,本転写因子群に関連する血液疾患について概説する。

骨髄系腫瘍:AML
15 (EL3-5A)
  • 昆 彩奈
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1120-1129
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    次世代シーケンス技術の革新を背景とした網羅的ゲノム解析により,骨髄系腫瘍においても,その病態に関わるドライバー変異の全貌が明らかにされた。ドライバー変異は段階的に獲得され,ドライバー変異の間には強い共存・排他関係が存在することが明らかとなり,さらに,骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes, MDS)から二次性白血病に進展する過程の遺伝子変異の全貌の解明も進んだ。一方,造血器腫瘍を発症していない場合であっても,ドライバー変異を有する「クローン性造血」が高頻度に認められることが報告された。さらに,新規の胚細胞変異が同定され,MDSを発症するはるか以前にすでに変異が存在することも明らかとなった。初期のドライバー変異を獲得した胚細胞あるいは正常造血幹細胞が,前がん状態を経てMDS,さらには白血病へ進展する過程におけるクローン進化についての知見の蓄積が進んでいる。

16 (EL3-5B)
  • —ゲノム学および免疫学との融合—
    合山 進
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1130-1137
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia, AML)に,マウスへの生着能を持つ幹細胞様の細胞:白血病幹細胞が存在することは,四半世紀前に行われた異種移植実験で証明された。それ以降多くの研究成果が蓄積し,白血病幹細胞の多様な特性が解明されてきた。造血幹細胞にinitiating変異が入ると幹細胞活性が増強した前白血病幹細胞になり,長い年月をかけて体内で少しずつ増加する。前白血病幹細胞はさらにほかのドライバー変異を獲得して,複数のサブクローンで構成されるAMLを発症する。それぞれのサブクローンに存在する白血病幹細胞の性質はクローン毎に少しずつ異なっており,治療抵抗性や再発の原因となる。また一部のAML幹細胞は,腫瘍免疫からの攻撃を免れる仕組みを持つことも判明した。本稿では,ゲノム学や免疫学の視点を取り入れた最新のAML幹細胞研究について紹介する。

17 (EL3-5C)
  • 宮本 敏浩, 菊繁 吉謙
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1138-1149
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    急性骨髄性白血病(AML)の治療は,寛解導入療法により白血病細胞を減らし,正常造血を回復させ,寛解に導くことが第一関門である。寛解が得られた後も微小残存病変が再発に繋がるため,引き続き予後分類に基づき,寛解後療法が必須である。薬剤耐性の発現を回避するため,交差耐性のない抗がん剤を多剤併用で組み合わせ,各化学療法の投与間隔を短縮して白血病が再増殖する期間を与えないレジメン強化が行われてきた。近年ゲノム解析と分子標的薬創薬の恩恵に与かり,AML治療は大きな進歩を遂げている。しかし,AMLは巧妙に耐性を獲得し,新規薬剤の効果も限定的である。AMLは多彩な遺伝子変異を複雑に組み合わせたマルチクローンであるため,actionable mutationsを有さないサブクローンにも有効な抗がん剤との併用は合目的である。新規薬剤と化学療法の併用が開発されている現時点では,AMLに対する薬物療法の理解は重要性を増している。

18 (EL3-5D)
  • 石川 裕一
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1150-1159
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    急性骨髄性白血病(AML)で認められる分子異常を標的とした微小残存病変(minimal/measurable residual disease, MRD)による治療効果判定,予後予測に基づく治療介入が考えられている。従来の定量PCR,マルチカラーフローサイトメトリーによる評価法に加えて,近年,次世代シークエンス技術を用いたMRD解析の有用性についても多くの報告がされている。しかし,いずれのMRD測定手法においても,その評価方法,時期,閾値設定などは様々であるのが現状である。複数の解析による評価を合わせることにより,MRD測定感度と特異度の向上も期待されるが,AMLの予後の改善のためには,より共通したMRD測定ならびに評価方法の開発,AMLの分子異常をも考慮したMRDガイドによる臨床試験の実施,新規治療戦略の確立が必要である。

19 (EL3-5E)
  • 山口 博樹
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1160-1165
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia, AML)は,近年の遺伝子変異解析技術の進歩によってその発症や再発に関与をする多くの遺伝子変異が発見された。こうしたゲノム解析の結果は予後因子や微少残存病変マーカーとして臨床応用をされるだけでなく新規の分子標的薬創薬に貢献をしている。実際に欧米からは第一世代FLT3阻害薬,IDH1/2阻害薬,BCL2阻害薬など多くの新規薬剤が登場をし,本邦からも第二世代FLT3阻害薬のgilteritinibやquizartinibの登場でAMLの治療成績が向上しつつある。しかし欧米とのドラッグラグが依然として大きく,欧米の治療ガイドラインを本邦の実臨床にあてはめることはできない。そこで本稿では現在の本邦でのAMLの実臨床において遺伝子診断によるAMLの予後層別化や同種造血幹細胞移植の適応を概説する。

20 (EL3-5F)
  • 横山 泰久
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1166-1173
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    未治療の急性前骨髄球性白血病(APL)では,全トランスレチノイン酸(ATRA)と化学療法の併用が長らく治療の中心であり,様々な臨床試験が行われてきた。本邦で実施されたAPL204試験では7年無イベント生存率79%,7年全生存率87%と良好な成績が得られている。しかし近年,海外ではATRAと亜ヒ酸(ATO)の併用が主流である。特に白血球数1万/µl以下の標準リスクAPLでは,ATRA+ATOとATRA+化学療法の無作為化比較試験によってATRA+ATOの有効性が示されており,その長期生存率は90%あるいはそれ以上に達する。ATRA+ATOによって標準リスクAPLは化学療法をほぼ用いることなく治癒が目指せる時代となっており,また高リスクAPLでもその有用性が期待されている。本稿では,本邦でもATRA+ATOが近い将来に実施可能となることを期待し,海外でのATRA+ATOの知見を中心にまとめる。

21 (EL2-3D)
  • 吉田 仁典, 加藤 元博
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1174-1178
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    二次がんは,造血器腫瘍を含むがん患者における最も重篤な晩期合併症の一つであり,がん治療後の長期サバイバーの10%以上が二次がんを発症するとされている。これまでもがんの発症の背景にある生殖細胞系列のバリアントの関与が報告されてきたが,二次がんについても生殖細胞系列のcancer predisposition genesのバリアントがそのリスクと関連することが報告されている。TP53遺伝子の生殖細胞系列のバリアントが二次がんのリスクとなることはその代表的な例である。また,小児がん長期サバイバーを対象とした大規模なコホートを対象とした網羅的なゲノム解析からは,何らかのcancer predisposition genesのバリアントを有することが,二次がんの累積発症率の増加と関連することが示された。さらに他の遺伝的リスクとして,急性リンパ性白血病治療後の二次がんにおいて,6-メルカプトプリンの代謝を制御するTPMT遺伝子などの多型が二次がん発症の一因になる可能性が示唆されている。二次がんのリスクは治療と遺伝的背景の関連によって影響されることが明らかとなった。長期生存率の上昇により晩期合併症への配慮が必要となり,二次がんのリスクに応じた治療選択が必要である。

骨髄系腫瘍:CML/MPN/MDS
22 (EL1-2A)
  • 佐々木 宏治
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1179-1186
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    慢性骨髄性白血病はフィラデルフィア染色体に由来するBCR-ABL1によって恒常的な細胞増殖を通じて引き起こされる造血幹細胞悪性疾患であり,チロシンキナーゼ阻害薬の誕生により,生命予後の劇的な改善が認められた。治療開始後に適切に奏効程度を評価することによって,急性期への進行,慢性骨髄性白血病関連死を抑えることが可能である。深い奏効を達成し長期に安定した臨床経過が認められた場合,治療中断,つまりは機能的治癒が検討されている。第2世代チロシンキナーゼ阻害薬はイマチニブと比較し,より早く深い奏効を達成することが可能であり,より多くの患者が機能的治癒を目指すことが期待される。第3世代チロシンキナーゼ阻害薬は既存の治療法に不耐容・耐性の場合でも有効性が認められた。ELTS分類(EUTOS long-term survival score)をチロシンキナーゼ阻害薬の選択の参考に用いることが可能であり,今後,合併症やチロシンキナーゼ阻害薬の選択を含めた予後モデルが模索されている。

23 (EL1-2B)
  • 枝廣 陽子
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1187-1194
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    真性多血症(polycythemia vera, PV)においては,95%以上の患者がJAK2遺伝子変異を有することが明らかになり,その病態の解明が進んでいる。治療は,血栓症の予防が主となり,血栓症リスクに基づいて低リスクと高リスクに分類し,低リスクでは少量アスピリンと瀉血療法を,高リスクでは細胞減少療法が追加される。細胞減少療法には古くからハイドロキシウレア(hydroxyurea, HU)が使用されてきたが,HU抵抗性/不耐容の患者に対してはJAK阻害薬であるルキソリチニブの有用性が近年示された。さらには,病気の治癒を導く可能性が示唆されているインターフェロン-αが,次世代の治療として注目されている。本稿では,これまでのPVの治療の根拠となっている代表的な治験を紹介するとともに,インターフェロン-αの最新の知見について概説する。

24 (EL1-2C)
  • 竹中 克斗
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1195-1204
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    原発性骨髄線維症は,骨髄増殖性腫瘍の1つで,骨髄線維化とそれに伴う髄外造血により,進行性の貧血,脾腫,全身症状を呈し,骨髄不全や急性白血病へ至る疾患である。病態の中心は,JAK2/STATシグナルの恒常的活性化である。JAK2変異,MPL変異,CALR変異は,ドライバー変異と呼ばれ,JAK2/STATシグナルの活性化により,直接的に病態形成に関わっている。さらに,エピゲノム制御分子やRNAスプライシング分子の変異が病態進展に関わっている。骨髄線維症は,ほかの骨髄増殖性腫瘍に比較して予後不良であり,個々の症例でリスクの評価を行い,治療方針を決定する必要がある。現在では,従来の臨床所見を中心とした予後予測モデルに,遺伝子変異情報を組み込んだモデルが提唱されるようになった。同種造血幹細胞移植は治癒をもたらすことのできる治療法であるが,発症年齢から適応となる症例は少ない。JAK2阻害薬のルキソリチニブは,脾腫や全身症状の改善に有効である。今後は,新規JAK2阻害薬を含む新規薬剤が開発されており,これらの次世代薬物治療が,PMFの予後改善に結びついていくことを期待したい。

25 (EL2-3G)
  • 鈴木 隆浩
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1205-1211
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    難治性貧血疾患では赤血球輸血が必要とされるが,頻回の輸血は輸血後鉄過剰症のリスクとなる。過剰鉄は活性酸素種の産生を介して臓器障害を引き起こし,低リスクMDSでは高フェリチン血症が予後不良因子の一つであることが知られている。このため,輸血後鉄過剰症では鉄キレート療法が行われる。輸血依存になった患者は,定期的に血清フェリチン値を確認し,フェリチン値500 ng/ml以上および総赤血球輸血量20単位以上で輸血後鉄過剰症と診断される。鉄キレート療法はフェリチン値1,000 ng/ml以上で開始し,有害事象などの問題がなければフェリチン値が500 ng/ml未満になるまで治療を継続する。鉄キレート療法によって臓器障害は改善し,低リスクMDSでは臓器障害や死亡リスクの低減が期待される。一部症例では造血改善も認められるが,現時点では造血の改善を目的としたキレート療法は推奨されていない。

26 (EL3-2E)
  • 市川 幹
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1212-1217
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    骨髄異形成症候群(MDS)は造血幹細胞の遺伝子変異によって発症する腫瘍性疾患である。MDSは造血不全が年余にわたって緩徐に進行するものから比較的短期間のうちに白血病に移行して死亡するものまで経過は多様であり,生命予後および白血病化のリスク分類に応じた治療の選択が重要である。改訂版国際予後スコアシステム(IPSS-R)を用いて低リスク群に分類されるMDSにおいて治療の中心は骨髄不全に対する輸血をはじめとした支持療法であるが,本邦においても赤血球造血刺激薬であるダルベポエチンアルファや,5q-症候群に対して貧血改善効果が得られるレナリドミド,輸血後鉄過剰症の改善を目的とした鉄キレート療法としてのデフェラシロクスが使用可能となっている。また,臨床決断分析の手法を用いた同種造血幹細胞移植の至適な施行時期を明らかにする試みもされており,これらによる治療方針選択の最適化が求められている。

27 (EL3-2F)
  • 森田 泰慶
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1218-1226
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes, MDS)は,造血幹細胞由来の造血器悪性腫瘍である。高リスクMDSに対する治療は,同種造血幹細胞移植適応の有無によって分かれる。移植適応例に対しては,特に前治療の実施の有無を規定せず,速やかに移植を実施すべきとされている。一方,移植非適応例に対する第一選択薬はアザシチジンであり,奏効例においては従来治療と比較して生存期間の延長が期待できる。移植適応例においては移植後再発,移植非適応例においてはアザシチジン効果消失例への対応が大きな課題である。本稿では,高リスクMDS全体の予後向上を目指した工夫と新規薬剤を含めた今後の展望について概説する。

リンパ系腫瘍:ALL
28 (EL1-11A)
  • 土橋 史明
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1227-1235
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    Philadelphia染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph陽性ALL)の治療成績は,チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるimatinib(IM)が導入されたことにより,画期的に進歩した。その後,IMよりさらに強力なBCR-ABL1阻害活性を持つ第二・三世代のTKIが登場した。しかし,TKI同士の比較試験はなく,現状ではいずれかのTKIを含んだ寛解導入療法,寛解が得られたらTKIおよび多剤併用化学療法,可能であれば同種造血幹細胞移植(alloSCT)を行うことが推奨されている。AlloSCTは,適応年齢および移植関連合併症の問題を抱えているが,第三世代TKIで治療した場合は,alloSCTが回避できる可能性も示唆された。近年,monoclonal antibodyあるいはimmunotherapyなど新たな治療薬の開発も進んでおり,今後さらなる適切な治療戦略の確立が期待される。

29 (EL1-11B)
  • 八田 善弘
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1236-1243
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    ALLの治療にはステロイド,vincristine, L-asparaginase(L-Asp)などが多く使用されるいわゆる小児型化学療法を用いた方が従来の成人型化学療法より予後が良好である。しかし,これらの薬剤を成人に使用すると有害事象が多く,とくにL-Aspは血栓や肝障害のため小児に投与する量の60~70%程度に減量されることが多い。小児型化学療法の成人に対する至適投与量が検討されている。化学療法の進歩により同種造血幹細胞移植の適応は限られてきている。微小残存病変(>10−4)は予後不良であるが,測定時期や治療への介入方針は確立していない。小児に使用されていたclofarabineは成人再発難治ALLでも選択可能な薬剤である。新規抗体薬のinotuzumab ozogamicinとblinatumomabは微小残存病変の消失率も高く再発難治ALLにおいては移植につなげる有望な治療薬である。

リンパ系腫瘍:悪性リンパ腫
30 (EL1-5A)
  • —Interim PETによる層別化治療の到達点—
    楠本 茂
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1244-1251
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    初発・未治療の古典的ホジキンリンパ腫(cHL)の治療開発においては,ABVD 2コース後のinterim positron emission tomography(iPET-2)による層別化治療(interim PET-guided therapy)デザインの臨床試験が実施されてきた。限局期cHLにおいて,interim PET陰性例で局所放射線照射療法を省略する根拠は乏しく,interim PET陽性例でiPET-2後の増量BEACOPP×2コース+INRT 30 Gyへの切り替えが治療選択肢となりうる。進行期cHLにおいて,iPET-2陽性割合は約2割で,iPET-2陽性例の3年PFSは60~65%と比較的良好であり,ABVD×2コース後にBEACOPPベースの強力な治療への切り替えは治療選択肢である。また,進行期cHLにおけるiPET-2陰性例においては,ブレオマイシン肺毒性の高リスクと判断される例ではブレオマイシンなしのAVD療法への切り替えが妥当である。本稿では,初発・未治療cHLの治療戦略におけるinterim PET-guided therapyの到達点について最新のエビデンスをもとに概説する。

31 (EL1-5B)
  • 福原 規子
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1252-1258
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma, FL)はリツキシマブの臨床導入により治療成績は向上してきたが,未だに治癒は困難とされている。進行期・低腫瘍量の標準治療は無治療経過観察であり,リツキシマブ単剤療法の導入時期の検討が必要である。進行期・高腫瘍量では,抗CD20モノクローナル抗体と化学療法の併用が標準治療である。診断から24ヶ月以内の早期再発群では,予後不良であることが報告されている。早期再発群の中でも,再発時期(超早期再発群とそれ以外)や形質転換の有無によって予後が異なることが明らかになってきた。最近のゲノム解析では,化学療法毎に予後に関連する遺伝子プロファイルが異なる可能性が報告されており,将来的にはゲノム解析結果によって適切な治療を選択できる可能性が期待される。本稿では,FLの治療戦略や予後因子を中心に概説する。

32 (EL1-5C)
  • 永井 宏和
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1259-1265
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    Peripheral T cell lymphoma(PTCL)は,B細胞リンパ腫と比較して予後が不良である。進行期症例が多いなど予後不良因子を持つことが多い。現時点での標準療法はCHOP療法であるが,初回寛解導入療法で奏効が得られた症例においても再発のリスクが高い。化学療法の強化や大量化学療法の導入など,治療開発が進められてきた。CD30陽性PTCL症例に対して,brentuximab vedotin(BV)を初回寛解導入時に化学療法と併用することにより,無増悪生存率が向上することが報告された。抗体薬,低分子化合物など新規薬剤の開発も進んでいる。これら治療薬の最適化により,PTCLの治療成績を改善し,次の標準療法を確立しなければならない。

33 (EL1-5D)
  • 賴 晋也
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1266-1274
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    Rituximabに代表される分子標的療法は,それまで多剤併用化学療法を中心に開発されてきた悪性リンパ腫の治療にパラダイムシフトをもたらした。しかし,それでも治療成績が良好とはいえない組織型も多く,それらの予後を改善するためには分子病態の解明と新規薬剤の開発が急務である。現在,CD79b抗体をはじめとする抗体薬,シグナル伝達分子阻害薬であるBTK阻害薬やPI3K阻害薬,エピゲノムに関わるEZH2阻害薬やHDAC阻害薬,ほかにもBCL2阻害薬やIAP拮抗薬など,数多くの分子標的薬を用いた臨床試験が悪性リンパ腫に対して進行中である。一方,免疫チェックポイント阻害薬やBiTE抗体,CAR-T療法など,抗腫瘍免疫療法の開発も多く行われている。これらの新規治療法によって悪性リンパ腫の治療成績がさらに改善されることを期待したい。

34 (EL2-2E)
  • 小島 研介
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1275-1280
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia, CLL)の標準治療は長らく免疫化学療法であったが,新規分子標的薬の導入により治療戦略は大きく変わった。長期生存を期待しうるFCR(フルダラビン,シクロフォスファミド,リツキシマブ)療法であっても,その恩恵に与かれるのはFCR療法耐容の若年者,かつp53異常(17p欠失/TP53変異)なし,11q欠失なし,免疫グロブリン重鎖可変部体細胞遺伝子変異ステータスがmutatedという限られた患者ポピュレーションであり,この群でもイブルチニブに対する優位性は認められなかった。免疫化学療法より分子標的治療が選択されるchemo-free時代へと進み,適切な治療介入時期と治療薬などの検証が進んでいる。本稿ではCLLの分子遺伝学的バイオマーカーと新規分子標的治療薬(イブルチニブ,ベネトクラクス)について概説する。

35 (EL2-2H)
  • 錦織 桃子
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1281-1285
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    免疫チェックポイント阻害薬は造血器腫瘍を含む幅広い悪性腫瘍に対し用いられるようになっているが,その一方で免疫チェックポイントに関わる分子の体細胞遺伝子変異,あるいはgermlineの遺伝子変異(稀少遺伝子多型)がリンパ系腫瘍の発症や進展に関与する場合があることが知られるようになりつつある。PDCD1遺伝子の機能欠失型変異やCTLA4-CD28融合遺伝子がT細胞リンパ腫で報告され,一方,CTLA4HAVCR2の稀少遺伝子多型が免疫不全関連リンパ腫や皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫の発症に関与することが示唆されている。免疫チェックポイント関連遺伝子の異常の存在下では免疫チェックポイント阻害薬が予期しない結果をもたらす可能性が指摘されており,今後新規免疫チェックポイント阻害薬の開発や実臨床への使用拡大が進むことが予想されることから,こうした可能性については認識しておく必要があると考えられる。

36 (EL3-3D)
  • 磯部 泰司
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1286-1296
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    ヒトにおける最初のがんウイルス,Epstein-Barr virus(EBV)が見つかって早55年以上が経っている。EBVは人種に関わらず,ほとんどのヒトが暴露を受けて,体内に持ち続けているが,実際ヒトのがんのごく一部にしか関与していない。個体内でこのウイルスはリンパ球指向性を持っており,潜伏感染を樹立させると,最終的には静止期に入ったメモリーB細胞中に潜むことになる。しかし,この潜伏感染を維持できずに再活性化を生じると,EBVが原因となるリンパ増殖性疾患やリンパ腫が発症してしまうのである。B細胞性のリンパ増殖性疾患やリンパ腫は免疫不全の患者に特に生じやすく,一方でT/NK細胞性リンパ増殖性疾患やリンパ腫は免疫適格性の個体に主に生じる。これらの疾患の病態とその疾患におけるEBVの役割の理解が進めば,EBV特異的な分子を標的とした新たな治療の可能性が広がるであろう。

リンパ系腫瘍:骨髄腫
37 (EL3-2A)
  • 鈴木 智貴
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1297-1305
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    移植非適応の高齢多発性骨髄腫患者に対してプロテアソーム阻害薬,免疫調整薬,抗体薬等の新規薬剤を用いたレジメンが複数開発され,治療成績の向上が得られている。一方で高齢患者は身体・臓器機能だけでなく,認知・精神的機能あるいは社会的な機能といった,様々な因子において若年患者と比してより多様性に富む集団であるため,移植非適応の高齢患者に対する標準治療レジメンをone-size-fits-all的なアプローチで全ての高齢患者に実施することは困難である。したがって,治療方針を決定する上で臓器機能およびfrailtyの評価等によって高齢者の多様性(患者側の因子)を可能な限り客観的に把握することが重要である。加えて,予後不良染色体異常の有無等の腫瘍側の因子も考慮した上で,治療選択を行うことが望ましい。本稿では,移植非適応の未治療骨髄腫患者に対する標準治療レジメンについて概説し,治療方針を決定する際の検討事項およびその課題について述べる。

38 (EL3-2B)
  • 堺田 惠美子
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1306-1316
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    プロテアソーム阻害剤や免疫調節薬,抗体薬など新規治療薬の導入により,多発性骨髄腫の治療成績は目覚ましい進歩を遂げている。移植適応初発骨髄腫の現在の標準治療は,腫瘍量の速やかな減少を目的とした寛解導入療法,その後の自家造血幹細胞移植を併用したメルファラン大量療法である。移植後の地固め療法,維持療法のエビデンスも増加しており,これらの後治療により深い奏効の獲得とともに,微少残存病変(MRD)の陰性化が可能となる患者も増加している。MRD陰性を獲得した症例では,無増悪生存期間,全生存期間の有意な延長が認められており,MRDをガイドとする治療決断も重要な課題として検証が進んでいる。本稿では,日本血液学会の多発性骨髄腫の治療ガイドラインを紹介し,初発移植適応骨髄腫患者の治療戦略,MRDを用いた治療効果判定の意義とともに今後の展望について概説する。

39 (EL3-2C)
  • 田中 宏和
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1317-1324
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    多発性骨髄腫(multiple myeloma, MM)治療において,近年の新規治療薬の登場は予後の著しい改善をもたらした。しかしながら,現状では治癒をもたらすことは困難である。この要因として,MMの進展過程における遺伝学的事象により,症例間だけでなく,個体内において不均一性が生じていることが挙げられる。また,他の腫瘍と同様,わずかな骨髄腫幹細胞が生体内に存在し,自己複製と同時に,腫瘍を構成する大多数の細胞を生みだすことで,MMの病態形成,薬剤抵抗性に関与していることも挙げられる。さらに,MM細胞を取り巻く微小環境や抗骨髄腫免疫が,病勢の進展や維持に及ぼす影響についての知見も集積されつつある。このようにMMの病態解明は大きく進展したが,未だ不明な点も多く残されている。本稿では,細胞起源の視点から見たMMにおける病態に関する最新の話題,それに基づく治癒をめざした治療戦略について概説する。

血栓/止血
40 (EL1-5E)
  • 柏木 浩和
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1325-1330
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    本邦における成人ITPの治療は,長い間,ファーストラインは副腎皮質ステロイド,セカンドラインは脾臓摘出術(脾摘)とされ,その他の治療はすべてサードラインとして,副腎皮質ステロイドおよび脾摘無効例に使用されることが推奨されてきた。しかし,近年,トロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)が副腎皮質ステロイド不応性ITPにおいて広く使用されるようになり,またリツキシマブの保険適用がITPに拡大され,ITP治療は大きく変化してきている。2019年に改訂された「成人ITP治療参照ガイド」においては,TPO-RAおよびリツキシマブが脾摘とともにセカンドライン治療として同等に推奨された。それぞれの治療の長所・短所および個々の患者の合併症,ライフスタイルなどを考慮しセカンドライン治療を選択することが望まれる。またセカンドライン治療の選択肢が増えたことから,副腎皮質ステロイド不応/依存症例においては早期のセカンドライン治療への移行を考慮する。

41 (EL1-5F)
  • 宮川 義隆
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1331-1337
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura, TTP)は,ADAMTS13酵素の減少により発症する血栓性微小血管症である。病名は広く知られているが,稀な疾患であるため,血液専門医でも診断と治療に苦労することが多い。TTPは急性かつ致死的な疾患であり,適切な治療をしないと発症から2週間以内に9割が死亡する。学生時代に5徴候(発熱,動揺する精神神経症状,溶血性貧血,血小板減少,腎障害)を暗記した方が多いと思うが,5つの症状が揃う患者は7%と少ない。微小血管障害性溶血性貧血と血小板減少を診たらTTPを疑い,ADAMTS13検査を提出した上で,速やかに血漿療法を開始する。本稿では,TTPの臨床現場で役立つ鑑別診断,標準的治療と新薬(リツキシマブ,カプラシズマブ)について解説する。

42 (EL1-5G)
  • 德川 多津子
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1338-1348
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    血友病は,血友病Aが凝固第VIII因子(FVIII),血友病Bが凝固第IX因子(FIX)の質的・量的異常による遺伝性凝固異常症で,確定診断は,FVIII・FIX活性の測定と,FVIII・FIX活性低下をきたすほかの病態や疾患の鑑別で行う。重症度は,活性値で重症・中等症・軽症に分類され,通常,出血傾向と重症度は相関するため,重症では,乳幼児期の頭蓋内出血や反復した関節内出血により関節障害を合併するリスクが高い。しかし,非重症でも重篤な出血や関節障害を合併する例もあるため,重症度だけでなく出血症状なども踏まえた治療方針の決定が必要である。治療法は,主に凝固因子製剤(標準型または半減期延長型)を用いた補充療法 —定期補充療法,出血時補充療法など— であるが,静脈アクセスやインヒビター発生という課題がある。最近では,新たな選択肢であるnon-factor製剤も登場し,血友病治療は転換期を迎えている。

43 (EL1-5H)
  • 鈴木 優子, 浦野 哲盟
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1349-1357
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    近年目覚ましく進歩したリアルタイムイメージング技術により,in vivoからin vitroまで適時適所で作動する血栓形成溶解反応に対する理解が進んできた。傷害血管壁では迅速な血小板の活性化,凝固反応の促進,線溶抑制により強固な止血血栓が完成する一方で,血管内腔が閉塞しないように,過剰な血栓の増大は抑制される。生体における血管壁傷害止血血栓モデルの解析,ヒト血小板血漿を用いたクロット形成溶解過程の連続的な可視化解析を通して,ダイナミックに変化する各因子の局在性が見えてきた。血友病に代表される凝固異常症では,止血障害のみならず血友病関節症などの特有な病態形成に線溶抑制機構の障害が関与することが新たに明らかになってきた。血栓形成-溶解反応のクロストーク機構を踏まえた時空間的な制御という観点からさらなる検討が求められる。

44 (EL3-2D)
  • 安本 篤史
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1358-1364
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    アテローム血栓症の予防・治療には抗血小板薬を用いるがその薬効を評価できる臨床検査は確立していない。我々は血中の血小板凝集塊に着目し,細胞の高速イメージングと深層学習を用いた画像解析で細胞をひとつひとつ網羅的に高速識別し,その解析結果に応じて任意の細胞を分取する世界初の基盤技術であるintelligent Image-Activated Cell Sorterを発表した。本技術では血中の2 µmほどの単一血小板すら検出でき,血小板凝集塊の割合をサイズごとに定量化することができる。また,この技術を応用して,血小板を活性化させるアゴニストの種類により血小板凝集塊の形態が異なることを見出した。血液疾患では血栓性微小血管症(TMA)の早期診断への応用を考えている。TMAの初期には血小板の過剰な活性化による消耗性血小板減少をきたすことから,過剰な血小板凝集塊を検出することで早期診断へと導くことが可能となる。

小児科領域
45 (EL2-3A)
  • 土居 岳彦, 岡田 賢
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1365-1372
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    リンパ増殖性疾患(LPD)は一過性リンパ節腫脹からリンパ腫に至る包括的概念である。原発性免疫不全症候群(IEI)や臓器移植後など基礎疾患を有する場合に発症しやすく,EBウイルス感染が関連することが多い。重症複合免疫不全症やX連鎖リンパ増殖症候群患者では,極めて高い頻度でLPDを発症する。LPDの代表的疾患である自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)は,アポトーシス関連遺伝子であるFASFASLCASP10CASP8FADDの変異により肝脾腫やリンパ節腫脹などのリンパ増殖症と自己免疫疾患を発症する。ALPS関連疾患としてRAS関連ALPSやCTLA4ハプロ不全症も知られている。またEBV関連LPDを発症しやすいIEIとしてXLP,CD27,CD70,CD137,ITK,CTPS1,RASGRP1,MAGT1欠損症などがあり,EBV関連LPDはIEIにおいて注意が必要な臨床病態である。

46 (EL2-3B)
  • —診断と治療管理の課題—
    大賀 正一, 江上 直樹, 石村 匡崇, 山村 健一郎, 落合 正行, 康 東天
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1373-1381
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    血栓性素因の分子疫学的解明が進み,成人では血栓症の治療管理も近年急速に進歩した。一方,成長期の血栓症は新生児と思春期に多く,各々特徴が異なり,診療に関するエビデンスの集積が遅れている。早発型遺伝性血栓症は,電撃性紫斑病,頭蓋内出血・梗塞など壮年例とは異なる発症様式で診断が難しく,重篤な後遺症を生涯残す。多因子病である血栓症の個別治療を行うためには,早発型の胚細胞異常を明らかにする必要がある。遺伝性血栓性素因は民族で異なり,強い素因ほど一般集団の頻度は低い。日本人の成人にはプロテインS多型(K196E)の頻度が高く,小児の血栓症患者にはプロテインC異常が多く見つかる。患者集団の遺伝子型は出生後に高リスクから低リスクへと変化する。「特発性血栓症」が指定難病となり,遺伝子検査も保険収載されたが,個別治療管理法の確立が課題である。本稿では成人までに発症する血栓症の遺伝性素因,治療と予防について概説する。

47 (EL2-3C)
  • 多賀 崇
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1382-1387
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    ダウン症(DS)合併骨髄性白血病(ML-DS)は,ほとんどがFAB分類M7の形態を呈し,4歳までに発症,芽球の薬剤感受性が高い一方治療毒性が強いなどの特性をもち,独立した治療研究が行われている。近年の国内外の臨床試験の3年無イベント生存率は,85%以上となっている。本邦では,日本小児白血病リンパ腫研究グループのもと,AML-D05,AML-D11の2つの試験が行われた。AML-D05は初回治療反応に基づくリスク層別化試験で,ほとんどの症例で先行研究より治療減弱が行えたが,成績悪化はなかった。引き続き行われたAML-D11では,寛解導入療法後と治療終了時の微小残存病変(MRD)の有用性を検証し,寛解導入療法後のフローサイトメトリー(FCM)とGATA1によるMRDが予後と相関することが示された。現在,寛解導入療法後のFCM-MRDに基づくリスク層別化試験AML-D16が行われている。

造血幹細胞移植
48 (EL2-2A)
  • 賀古 真一
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1388-1394
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    輸血依存の中等症以上の再生不良性貧血では,同種移植が治療の選択肢となる。同種移植を行う場合には拒絶とgraft-versus-host disease(GVHD)の予防が重要である。そのための治療戦略として前処置では大量cyclophosphamide(CY)とanti-thymocyte globulin(ATG)を組み合わせてきたが,治療関連毒性を減らすためfludarabine(Flu)を併用してCYを減量をした前処置が考案されている。関東造血幹細胞移植共同研究グループではFluと減量CY,低用量サイモグロブリンを前処置に用いた前向き試験を行い,1年生存率96.3%という成績を報告している。ただしFlu使用は2次性生着不全のリスクとなる可能性があり,注意が必要である。なお代替ドナーからの移植の治療成績が向上しており,再生不良性貧血に対して同種移植を行う際の移植方法の選択肢は広がっている。

49 (EL2-2B)
  • 小澤 幸泰
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1395-1401
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    GVHDは同種造血幹細胞移植後に起こる最も重要な合併症である。従来は移植後100日を境に急性か慢性GVHDか区別していたが,現在のNIH基準では発症時期によらず,主に臨床症状により診断されている。この10年間で本邦においても非血縁者間末梢血幹細胞移植が始まり,さらにHLA一致ドナーを持たない同種造血幹細胞移植適応の患者に対してもHLA半合致移植が可能になった。そういった状況よりGVHDの重症化,治療抵抗性の増加が懸念される。急性GVHDの初期治療は2 mg/kgのステロイドであるが,抵抗性の際には速やかな二次治療が必要となる。本邦ではATGとMSCが二次治療薬として保険承認されているが,ステロイド抵抗性GVHDに対する新たな治療薬の登場が望まれる。一方,重篤な慢性GVHDは予後とQOLに強く影響する。GVHDを惹起する各々の機序を標的とした新規治療薬が多く開発されており,世界で60以上の臨床試験が行われ,適応獲得を目指している。GVHD治療の新たなエビデンスの蓄積が望まれている。

50 (EL2-2C)
  • 杉田 純一
    2020 年 61 巻 9 号 p. 1402-1410
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル 認証あり

    移植後シクロホスファミド(PTCY)は,もともとはHLA半合致移植のGVHD予防薬として開発されたが,最近ではHLA適合移植においても試みられている。HLA半合致移植とHLA適合移植を比較した後方視的研究がいくつか行われており,これらの報告では移植成績は同等であることから,PTCYを用いたHLA半合致移植は,HLA適合移植の代替として有効であると考えられる。HLA適合移植に関しては,骨髄移植ではPTCY単独でGVHDを予防できる可能性がある一方,末梢血幹細胞移植では単独では十分ではなく,カルシニューリン阻害剤やミコフェノール酸モフェチルなどと併用することで優れたGVHD抑制効果を示している。さらに,PTCYは,再生不良性貧血,生着不全に対するサルベージ移植,免疫チェックポイント阻害剤使用後などでも役割を果たしつつある。PTCYは特別な設備や技術を必要とせず,安価であるため,今後も世界的に普及していくことが期待される。

feedback
Top