臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
63 巻, 6 号
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
症例報告
  • 黒木 航, 小林 敬宏, 馬越 通信, 北舘 明宏, 今泉 ちひろ, 齋藤 雅也, 小林 五十鈴, 藤島 眞澄, 藤島 直仁, 吉岡 智子, ...
    2022 年 63 巻 6 号 p. 523-529
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり

    非外傷性脾破裂(ASR)は悪性リンパ腫の致死的合併症である。血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVLBCL)に伴うASR(IVLBCL-ASR)の報告は過去に1例のみで,その機序は不明な点が多い。今回我々は,剖検所見からIVLBCL-ASRと診断した1例を報告する。症例は78歳男性。IVLBCLの精査中に出血性ショックのため突然死し,剖検所見で大量の血性腹水と脾破裂を認めた。全身の小血管内にCD20陽性大型異型リンパ球の浸潤を認めIVLBCLと診断し,腫瘍細胞浸潤は裂創部位を含めた脾被膜部ではわずかで脾臓中心部で著明で,脾中心部での腫瘍増殖による脾内圧亢進がASRの原因と考えられIVLBCL-ASRと確定診断した。患者は入院3ヶ月前に舌がんの精査目的で施行された18F-FDG PET/CT検査で右副腎に異常集積を認めており,病理所見では同部位に一致して腫瘍浸潤を認めた。IVLBCLの早期診断における18F-FDG PET/CT検査の有用性を再認識し,IVLBCLの進行に伴いASRの発症リスクが上昇することが示唆され,早期の全身化学療法の実施が重要であると考えられた。

  • 中山 綾菜, 酒井 康平, 藤岡 侑香, 松村 卓郎, 富永 貴元, 池田 安宏, 田中 慎介, 高橋 徹
    2022 年 63 巻 6 号 p. 530-535
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり

    蛋白漏出性胃腸症と悪性リンパ腫の合併は稀である。今回我々は,蛋白漏出性胃腸症を合併したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を経験したため報告する。症例は67歳男性。水様下痢に浮腫と腹満を伴い入院となった。入院時に,体重増加,腹水,肝脾腫,低albumin血症があった。99mTc標識ヒト血清albuminを用いたシンチグラフィーで腸管からの蛋白漏出があり蛋白漏出性胃腸症の診断を得た。内視鏡検査では胃~結腸粘膜にびらんと浮腫性肥厚があり,同部にCD20,CD5陽性の腫瘍細胞の増生がみられ,DLBCLの組織診断に至った。同様の腫瘍細胞の骨髄浸潤もあったがリンパ節病変はなかった。以上より,CD5陽性DLBCLに合併した蛋白漏出性胃腸症と考えられた。R-CHOP療法開始後に低albumin血症と下痢は改善し始め,治療終了後にリンパ腫の完全奏効を得ると,消化管病変や肝脾腫も改善し,蛋白漏出所見も消失した。

  • 住谷 龍平, 原田 武志, 中村 昌史, 水口 槙子, 大浦 雅博, 曽我部 公子, 丸橋 朋子, 髙橋 真美子, 藤井 志朗, 中村 信元 ...
    2022 年 63 巻 6 号 p. 536-543
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり

    進行期の原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(pcALCL)に対する標準治療は定まっていない。症例は71歳,男性。多発性の皮膚紅斑と結節病変を認め,左耳介後部からの生検でリンパ腫性丘疹症(LyP)と診断された。局所電子線照射にて全ての病変は消退したが,5ヶ月後に両内眼角に結節病変が出現し,同部位の生検ではCD30陽性大型細胞が大部分を占めpcALCLと診断された。PET/CTにて右口蓋扁桃腫大,頸部,鼠径部の表在リンパ節腫大およびFDG集積を認め,TNM分類T3bN3M0であった。慢性閉塞性肺疾患による呼吸機能低下と肺炎を反復していたため,多剤併用化学療法ではなくmethotrexate(MTX)15 mg/週の内服療法を選択した。皮膚,リンパ節病変は縮小し,副作用なく長期間病勢コントロールが可能であった。pcALCLの標準治療は確立されていないが様々な治療法が開発されてきており,少量MTX療法は呼吸器感染症を繰り返すフレイルな患者に有用であった。LyPにpcALCLが続発する機序や本疾患群に対する少量MTX療法の作用機序の解明が望まれる。

  • 石田 大貴, 佐藤 理亮, 鴨田 吉正, 平尾 理子, 飯塚 浩光, 木田 理子, 橋本 浩次, 三浦 咲子, 森川 鉄平, 臼杵 憲祐
    2022 年 63 巻 6 号 p. 544-549
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり

    症例は44歳女性。43歳時に右顎下部リンパ節生検で濾胞性リンパ腫grade 3A stage IIIと診断した。高腫瘍量だったが治療を望まず,1年半後に呼吸苦で受診し,表在リンパ節腫大の増悪と胸水貯留を認めた。PETで骨髄,肝,脾,肺,全身リンパ節(頸部,縦隔,傍大動脈,鼠径等)にSUVmax 10~18の集積増強を認めた。左鼠径部リンパ節生検を行うと混合細胞型古典的Hodgkinリンパ腫(CHL)で,病型移行または複合的な病態と考えた。A+AVD療法を施行し病変縮小や腫瘍熱改善,胸水減少を得た。2コース後PETで大半の病変の縮小または集積低下を認めたが,骨髄や左頸部に新出病変や集積増悪を認めた。左頸部リンパ節生検を行うと結節硬化型CHLだった。ESHAP療法に不応だったがnivolumabが著効した。濾胞性リンパ腫からHodgkinリンパ腫への病型移行は珍しく,無治療での病型移行としては初の報告である。

  • 西田 彩, 三ツ木 崇, 石綿 一哉, 和氣 敦
    2022 年 63 巻 6 号 p. 550-554
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり

    症例は66歳男性。発熱を機にフィラデルフィア染色体陰性B細胞性急性リンパ性白血病と診断され,Hyper-CVAD療法を施行するも寛解に入らず,同種移植検討目的に当院へ転院となった。転院時の骨髄検査ではblast 97.5%であった。臍帯血移植を行う方針としたが,検査の結果,広範囲な抗HLA抗体を有していることが判明した。化学療法およびblinatumomabによる治療を行ったが非寛解であり,mini MEC療法後に寛解を得ることができた。Blinatumomab投与後のタイミングで再度抗HLA抗体検査を行ったところ,保有していた広範囲な抗HLA抗体が大幅に減少していることが確認されたため,引き続いて寛解期で臍帯血移植を行うことができた。本症例においてはCD19を標的とした薬剤であるblinatumomabを含む治療によって抗体産生細胞が減少し,抗HLA抗体の大幅な消失につながった可能性が考えられた。

第82回日本血液学会学術集会
学会奨励賞受賞論文
  • 綿貫 慎太郎
    2022 年 63 巻 6 号 p. 555-560
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり

    造血幹細胞の代謝動態は細胞運命ならびに分化を規定する。造血幹細胞の幹細胞性を維持するには,解糖系,ミトコンドリアによるATP産生のバランスを適切に保つ必要がある。従来の細胞内ATP測定では大量の細胞を融解した後にスナップショット解析が行われ,単一細胞レベルかつ時空間的な情報を喪失していた。そこで我々は“GO-ATeam2”と呼ばれる,フェルスター蛍光共鳴エネルギー移動の原理を用いた細胞内ATP濃度バイオセンサーのノックインマウスを用い,生きた造血幹前駆細胞におけるATP濃度測定技術を開発した。本稿では造血幹細胞におけるこれまでの代謝学的な理解に加え,GO-ATeam2を用いることで明らかとなった代謝依存性の理解や今後の新たな代謝測定技術の展望について概説する。

  • 藤野 赳至
    2022 年 63 巻 6 号 p. 561-572
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり

    エピジェネティクス制御因子であるASXL1の変異は,骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome, MDS)や急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia, AML)を含む骨髄系腫瘍で高頻度に見出される予後不良の変異である。大部分の症例でASXL1変異は他の変異と共存していることから,その変異単独では発症に不十分であり,複数の遺伝子変異による協調的な腫瘍発症機構の存在が示唆される。また,ASXL1変異は加齢に伴うクローン性造血(clonal hematopoiesis, CH)においても同定され,造血器腫瘍の発症リスクを上昇させることが明らかとなっている。したがって,ASXL1変異は腫瘍の発症プロセスにおいて,最も早期に起こる変異の一つであると考えられる。本稿では,ASXL1変異による造血器腫瘍の発症機構について,筆者の研究から得られた知見を交えて概説する。

第83回日本血液学会学術集会
JSH-ASH Joint Symposium (Symposium 9)
  • 伊藤 拓水
    2022 年 63 巻 6 号 p. 573-579
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり

    1950年代に開発されたthalidomideはその深刻な催奇形性により市場からの撤退を余儀なくされた有名な睡眠薬であるが,多発性骨髄腫への優れた治療効果を有することから再評価を受け,再び認可をされている。Thalidomideがいかなる作用機構であるかは長年にわたり不明であったが,筆者らによりthalidomide標的因子であるユビキチンリガーゼ・セレブロン(cereblon, CRBN)が発見され,またそれが近年開発されていたthalidomide誘導体であるlenalidomideやpomalidomideといった強力な抗がん剤の治療薬の標的でもあることが判明している。現在では,セレブロンを標的とする薬剤をセレブロンモジュレーターと総称しており,その作用機構についてはかなり明らかになってきている。本稿では,主に筆者らがこれまでに成し遂げたセレブロンの発見やその展開,そして海外研究者らによる成果などについても概説したい。

  • 後藤 秀樹
    2022 年 63 巻 6 号 p. 580-588
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり

    新規薬剤の登場により,多発性骨髄腫の治療成績は飛躍的に向上している。一方,現状では治癒を得ることは困難な疾患であり,各種治療に抵抗性となった症例の予後は極めて不良である。近年,治療に難渋する多発性骨髄腫を対象としたキメラ抗原受容体T細胞(chimeric antigen receptor T-cell, CAR-T細胞)療法の臨床試験が進められ,2021年3月に米国FDAは,再発または難治性の多発性骨髄腫に対するBCMA標的CAR-T細胞療法として,idecabtagene vicleucel(ide-cel)を承認した。本邦においても2021年12月にide-celが保険承認され,間もなく多発性骨髄腫に対するCAR-T細胞療法を日常診療で使えるようになる。本稿では,多発性骨髄腫に対するCAR-T細胞療法について最新のエビデンスをもとに概説する。

特集:臨床血液学2022 ―血液疾患診療の注目すべき進歩と将来像(赤血球系疾患)―
  • 和田 秀穂
    2022 年 63 巻 6 号 p. 589
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり
  • 濱 麻人
    2022 年 63 巻 6 号 p. 590-599
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり

    赤血球疾患における遺伝性骨髄不全症として,Diamond-Blackfan貧血(DBA),先天性赤血球形成異常性貧血(CDA),および遺伝性鉄芽球性貧血(ISA)が代表的疾患にあげられる。DBAは主にリボゾームの機能不全により発症する。末梢血では網状赤血球が減少し,骨髄では赤血球系細胞のみが著減する。CDAは赤血球の成熟障害と骨髄内溶血による無効造血のため発症する。主にI型からIII型に分けられ,骨髄では多核赤芽球,特にI型では核間架橋がみられる。ISAはヘム合成不全などにより,ミトコンドリアにおける鉄代謝に異常が生じることにより発症する。赤芽球系前駆細胞のミトコンドリアに鉄が沈着するため,環状鉄芽球が出現する。いずれの疾患も確定診断のためには遺伝子解析が必須であるが,末梢血における赤血球形態,および骨髄における赤芽球の形態を評価することにより,診断を絞り込むことが重要である。

  • 藤原 亨
    2022 年 63 巻 6 号 p. 600-607
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり

    鉄芽球性貧血は,ミトコンドリアに鉄が異常に沈着した環状鉄芽球の出現を特徴とする貧血の総称で,先天性と後天性の様々な病態が含まれている。先天性鉄芽球性貧血は,ミトコンドリアにおけるヘム生合成,鉄硫黄クラスター代謝,およびミトコンドリアにおける蛋白質合成を担う遺伝子群の変異により引き起こされる。一方,後天性鉄芽球性貧血はアルコール常飲や銅欠乏など明らかな原因のある二次性と,骨髄異形成症候群に代表される特発性に大別される。特に,特発性においてはRNAスプライシング機構に関わるSF3B1遺伝子の変異を大部分の症例で認める。近年の遺伝子改変技術や次世代シークエンサーの普及に伴い,本疾患の分子病態が急速に明らかとされた。本稿では,鉄芽球性貧血に関して最新の知見を含めて整理させていただきたい。

  • 植田 康敬
    2022 年 63 巻 6 号 p. 608-617
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり

    自己免疫性溶血性貧血(AIHA)は,何らかの理由により自身の赤血球膜抗原に結合する自己抗体が産生されることで赤血球が破壊(溶血)され,赤血球寿命が短縮することにより生ずる貧血の総称である。自己抗体の温度作動域の違いにより,体温(37°C)付近で抗原に強く結合する温式AIHAと,体温以下で強く結合する冷式AIHAに分けられる。臨床症状として貧血や黄疸を来すが,冷式AIHAのうち寒冷凝集素症では,赤血球凝集に伴う末梢循環不全症状を示す。近年,温式,冷式ともにAIHAにおける血栓症リスクが明らかとなり,その主因として血管内溶血が考えられている。AIHAにおける血管内溶血には補体の活性化が重要と考えられるが,血栓症の発症には血小板,凝固系,補体系など様々な経路が複雑に関与することが明らかとなってきている。今後のAIHAの治療には,貧血改善だけではなく,血栓症予防の観点も必要と考えられる。

特集:臨床血液学2022 ―血液疾患診療の注目すべき進歩と将来像(リンパ系疾患)―
  • 石澤 賢一
    2022 年 63 巻 6 号 p. 618
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり
  • 宮﨑 香奈
    2022 年 63 巻 6 号 p. 619-625
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり

    B細胞リンパ腫は悪性リンパ腫全体の約7割を占める。Rituximab導入はB細胞リンパ腫の予後に劇的な改善をもたらした。標準治療であるR-CHOP療法を受けたとしても,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の30~40%は満足のいく結果が得らえていない。分子遺伝学的研究により,その疾患発症機構や予後不良性の原因が明らかにされつつある。この基礎的研究を基盤として,関連シグナル伝達経路の分子・細胞抗原,もしくはエピゲノムに関わる酵素を標的とした新しい分子標的療法が開発されている。またCD19-CAR-T療法や二重特異性抗体療法などの細胞治療の開発が進み,再発難治DLBCLに対する治療法のパラダイムシフトが起こっている。本稿ではDLBCL,濾胞性リンパ腫やリンパ形質細胞リンパ腫などのB細胞リンパ腫の治療戦略に影響を与えた臨床試験結果を中心に概説する。

  • 坂田(柳元) 麻実子, 末原 泰人
    2022 年 63 巻 6 号 p. 626-634
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり

    T細胞リンパ腫はWHO分類2017年度改訂版によれば約30種類に分類される。いずれも稀少がんであるため,病態解明が遅れていた。しかしながら,ゲノム解析や遺伝子発現解析などのオミクス解析を中心とした技術革新により病態解明は飛躍的に進歩した。これらの基礎研究の成果に伴い,T細胞リンパ腫の病型分類に変更がなされている。さらには,T細胞リンパ腫の病型診断にゲノム解析や遺伝子発現解析などから明らかになった新たなマーカーを取り入れることで,診断はより客観的かつ普遍的になると期待される。また,T細胞リンパ腫の治療については,再発難治例を対象に多数の新規薬剤が承認された。これらの新規薬剤と旧来の治療を組み合わせた治療についても臨床開発が行われ,一部は実際に初発例の治療に取り入れられるなど,治療についても変革期にある。

  • 石田 禎夫
    2022 年 63 巻 6 号 p. 635-645
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり

    多発性骨髄腫は現在も,最も治癒させることの難しい疾患の一つである。治療に成功したとしても再発してしまう疾患である。最近の10年間で,多発性骨髄腫に対する治療選択肢はプロテアソーム阻害薬,免疫調節薬,モノクローナル抗体などが次から次へと開発された。それでもなお再発難治骨髄腫となるまでの寛解期間は短いままである。近年の最も注目される治療の開発はBCMAを標的とした治療法である。特にCAR-T細胞療法については,3クラスの薬剤に不応となった再発難治骨髄腫患者に対する治療効果のデータは期待できるものであり,再発難治骨髄腫患者に対する治療のブレイクスルーとなると考える。幸いにも,CAR-T細胞療法は2022年1月に日本でも承認された。しかし,解決しなければならない問題があることも事実である。CAR-T細胞療法を受けた多くの患者が再発し,無増悪生存期間が短いことが問題である。本稿ではBCMAを標的にしたCAR-T細胞療法,抗体-薬物複合体,二重特異性抗体,selinexorやvenetoclaxに関して概説する。

特集:臨床血液学2022 ―血液疾患診療の注目すべき進歩と将来像(骨髄系疾患)―
  • 宮本 敏浩
    2022 年 63 巻 6 号 p. 646
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり
  • —COVID-19とMPN—
    幣 光太郎
    2022 年 63 巻 6 号 p. 647-654
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり

    SARS-CoV-2のパンデミックにより,血液疾患患者のCOVID-19マネジメントは血液内科医にとって重要なテーマとなった。骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms, MPNs)患者はSARS-CoV-2の感染リスク,感染後の重症化リスクが共に高く,全ての患者へのワクチン接種を含む十分な感染予防が必要である。COVID-19罹患後の予後は他の血液悪性腫瘍と同様に不良である。MPNsの元々もつ血栓形成性の特徴は,COVID-19による静脈血栓症リスクを増大させる。罹患後は症例ごとのリスクに応じて抗凝固療法を行うが,特に本態性血小板血症患者では注意が必要である。骨髄線維症患者には重症化と出血のリスクがある。罹患前のJAK阻害薬ruxolitinibは感染リスクであるが,罹患後の急な中止は死亡リスクとなる。日々更新されるエビデンスは各学会の治療ガイドラインに反映されている。

  • —慢性骨髄性白血病の最新治療—
    入山 規良
    2022 年 63 巻 6 号 p. 655-659
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/12
    ジャーナル 認証あり

    慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia, CML)はチロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor, TKI)の臨床応用により予後が劇的に改善した疾患である。わが国では第三世代TKIであるponatinibを含む5種類のTKIが利用可能であり,TKI抵抗性はほぼ克服できている。一方,TKI関連の有害事象が臨床上の懸念となっており,ことにponatinibは血管閉塞性事象の発生頻度が高い。最近,ponatinibの用量適正化試験の結果が報告され,CMLにおけるリスクベネフィットを考慮した投与レジメンが示された。また,欧米では新しい作用機序を有するCML治療薬であるasciminibが利用可能となっており,臨床への応用が進められている。したがって,本稿では前治療を有する慢性期CMLに対して開発された最新の治療について概説する。

  • 市川 幹
    2022 年 63 巻 6 号 p. 660-666
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル 認証あり

    骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes, MDS)は造血細胞のクローン性異常によって造血不全と急性骨髄性白血病への移行をきたす造血幹細胞腫瘍である。中高年層に多く発症し化学療法への反応が得られないことが多く,同種造血幹細胞移植以外の治療法では治癒が期待できない予後不良の疾患である。近年代替ドナーや減弱した前処置により高齢者においても同種造血幹細胞移植の適応が拡大したほか,疾患の原因遺伝子の解明とともに活発に新規薬剤の開発が行われており,すでに疾患の経過を改善できる薬剤としてazacitidineやlenalidomideといった分子標的薬がわが国においても用いられている。貧血の治療では赤血球造血刺激因子製剤が,支持療法では経口鉄キレート薬などが使用できるようになり,新規薬剤の治験も進行中である。本稿ではMDSのリスク別の治療方針を示すとともに,開発中の薬剤についても一部触れる。

  • 森田 泰慶
    2022 年 63 巻 6 号 p. 667-677
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル 認証あり

    急性骨髄性白血病(AML)は,分化・成熟能が障害された幼若な骨髄系細胞のクローナルな自律性増殖を特徴とする造血器悪性腫瘍である。近年の次世代シーケンス技術の進歩により,その病態が遺伝子レベルで解明されつつある中で,2017年以降,白血病細胞を効率的に駆逐する治療法である分子標的治療が急速に普及しつつある。本邦と欧米との間に存在する新薬上市時期の差(ドラッグラグ)が解決されぬまま,本邦でようやくFLT3を標的とするgilteritinibおよびquizartinib,BCL-2を標的とするvenetoclaxが使用可能になった。Venetoclaxとほぼ同時期にAMLへ適応拡大となったazacitidineとの併用により,移植非適応患者に従来治療を上回る効果をもたらすことが期待されている。本稿では,強力化学療法に対するfitness別に定められた本邦および米国NCCNガイドラインを概説し,新規薬剤の開発状況を加えて今後のAML治療の展望を述べる。

地方会
Introduce My Article
Erratum
feedback
Top