臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
65 巻, 10 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
Picture in Clinical Hematology
臨床研究
  • 増田 康隆, 森田 剣, 黒川 峰夫
    2024 年65 巻10 号 p. 1247-1252
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)は脳や脊髄といった中枢神経に発生する節外性悪性リンパ腫である。一般に悪性腫瘍においては診断後早期に治療開始をすることが予後改善に結びつくと考えられているが,PCNSLにおいて診断的脳生検から治療開始までの期間が予後に与える影響については不明な点が多い。今回我々は当院で脳生検によりPCNSLの診断がつき,その後にrituximabを含む化学療法が開始された19例の患者について,生検から化学療法開始(本コホートではrituximab)までの期間と予後との関連を後方視的に解析した。その結果,診断時に年齢とperformance statusとで定義される予後予測スコアが良い患者は,脳生検後により早期にrituximabを投与した症例で全生存期間が長い傾向にあった。以上から,PCNSL診療にあたっては,脳生検・診断確定後にはより早期に化学療法を行うことを考慮すべきだと考えられる。

症例報告
  • 佐々木 陽平, 川口 有紀子, 林 秀憲, 川眞田 夏樹, 長尾 和紀, 黒岩 魁, 成田 雛子, 岡村 玲子, 島田 翔太郎, 綿貫 めぐ ...
    2024 年65 巻10 号 p. 1253-1258
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    症例は48歳,男性。急性骨髄性白血病を再発し臍帯血による2回目の同種造血幹細胞移植を施行した。外来で経過観察されていたが,移植4ヶ月後に体動困難が出現し精査目的に入院した。入院時の画像検査で大脳と肺に多発結節影を認め,血液検査で汎血球減少と線溶系亢進を認めた。入院1日目から抗菌薬,抗真菌薬加療を開始したが臓器不全が進行した。汎血球減少と線溶亢進系亢進が増悪し,発熱も認め血球貪食症候群を疑い,精査目的に入院8日目に骨髄検査を施行した。塗抹標本でToxoplasma gondiiのタキゾイトとシストを確認した。薬剤アレルギーのため投与されていなかったtrimethoprim/sulfamethoxazoleによる治療を開始したが,多臓器不全が進行し入院9日目に死亡した。同種造血幹細胞移植後の播種性トキソプラズマ症で骨髄塗抹標本に虫体が確認できた症例は稀なため報告する。

  • 竹田 喬亮, 鈴木 泰生, 江中 牧子, 泉 陽彦, 立花 崇孝, 田中 正嗣, 藤巻 克通, 中島 秀明
    2024 年65 巻10 号 p. 1259-1264
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    33歳男性。2021年4月に診断した予後中間群の急性骨髄性白血病患者でdaunorubicin+cytarabine療法後に完全寛解となり地固め療法としてvenetoclax+azacitidine(VEN+AZA)療法を施行し10月に臍帯血移植を施行した。2023年5月に視力低下を契機に副鼻腔に髄外腫瘤を認めた。再移植の希望なく緩和的照射を行ったが,鼠径部に腫瘤を認め同様に放射線療法を行った。その後,顎下に髄外腫瘤が出現し以前の副鼻腔内腫瘤と照射野が重なることから照射困難となった。髄外腫瘤に対しVEN+AZA療法を2コース施行し腫瘤は消失した。髄外病変に対するVEN+AZA療法の報告は少なく症例の蓄積が待たれる。

  • 髙畑 篤, 豊田 茂雄
    2024 年65 巻10 号 p. 1265-1269
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    症例は38歳男性。発熱,嘔吐,不明言動で入院となった。血液検査では,溶血性貧血,血小板減少,クレアチニンの上昇を認めた。Coombs試験は陰性で,ADAMTS13活性1%未満,ADAMTS13インヒビター0.7 BU/mlであったため,後天性血栓性血小板減少性紫斑病と診断した。入院同日から血漿交換とPSL 1 mg/kgの投与を開始した。血小板は5日目に正常値まで回復し,溶血所見も改善した。しかし,症状は再び悪化し,24日目に治療抵抗性と判断してrituximab(RTX)を開始した。RTX投与後は,infusion reaction(IR)や再発の兆候は認めなかった。31日目に2回目のRTXを投与し退院した。38日目に膝痛,発熱,紅斑を認め,体動困難となった。CRP上昇,CH50の軽度低下,抗rituximab抗体陽性(197 ng/ml)であり,rituximab-induced serum sickness(RISS)と診断した。Rituximabの投与を中止し,再発なく経過している。RISSを正確に診断することは困難であるが,発症のタイミングやRTXを投与するたびにIR様の症状を繰り返す際には,抗rituximab抗体の存在は診断の一助となる可能性がある。

短報
特集:骨髄不全症診療:新しい展望
  • 櫻井 政寿
    2024 年65 巻10 号 p. 1276
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり
  • 細川 晃平
    2024 年65 巻10 号 p. 1277-1284
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    骨髄不全症とは,骨髄機能が低下しすべての血球が減少する状態である。先天性疾患にはFanconi貧血などがあり,後天性疾患には特発性再生不良性貧血(AA)や骨髄異形成症候群(MDS),発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)が含まれる。AAの多くは,自己免疫的な機序により造血幹細胞(HSC)が傷害される結果発症すると考えられる。ゲノム解析により,PIGA, DNMT3A, ASXL1, BCOR/BCORL1,6pLOHやHLAクラスIアレルの体細胞変異によるクローン性造血がAA患者に高頻度で見られることが分かった。AAのT細胞ではJAK-STATやMAPKパスウェイ関連遺伝子の体細胞変異が報告された。AAにおける遺伝子異常はMDSや健常人の加齢に伴うクローン性造血とは異なっている。特にPNH型血球やHLAクラスIアレル欠失血球は,自己免疫から免れたHSCが造血を支持していることを示している。

  • 山﨑 宏人
    2024 年65 巻10 号 p. 1285-1291
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    再生不良性貧血に対する本邦の薬物療法は,ここ数年,大きく様変わりした。Eltrombopagの併用が免疫抑制療法の治療成績を向上させることが報告され,参照ガイド令和4年度改訂版では,抗胸腺細胞グロブリン+cyclosporine+eltrombopagが重症例に対する標準治療となった。このことは,若年患者に対する免疫抑制療法の位置づけにも変化をもたらした。その後に承認されたウマ由来抗胸腺細胞免疫グロブリンや初発未治療例にも適応が拡大されたromiplostimの登場により,今後,さらに治療成績の向上が期待されている。

  • 大西 康
    2024 年65 巻10 号 p. 1292-1302
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    免疫抑制療法にトロンボポエチン受容体作動薬を追加することで再生不良性貧血の治療成績は向上したが,約1/3は治療抵抗性か再発のために同種造血幹細胞移植(移植)が必要となる。また,年齢が40歳未満(特に20歳未満)かつHLA一致同胞ドナーを有する場合には初回治療として移植が適応となる。さらに,診断時の好中球数がG-CSF投与でも0の劇症型ではドナータイプを問わずに移植が必要である。HLA一致ドナーを有さず,速やかな移植を計画する時は臍帯血移植かハプロ移植が選択肢となる。再生不良性貧血においても,GVHD予防としてpost-transplantation cyclophosphamide(PTCY)を用いたハプロ移植の良好な成績が報告されている。本邦での後方視的研究でもハプロ移植後の生着率が良好であることが示された。再生不良性貧血に対する移植適応とドナーおよび前処置の選択について議論する。

  • —参照ガイド改訂と新規抗補体薬—
    植田 康敬
    2024 年65 巻10 号 p. 1303-1316
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    発作性夜間ヘモグロビン尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria, PNH)の参照ガイドが令和4年度版として改訂され,診断基準,重症度分類について簡潔かつ明確な記述に変更された。また診断,治療の流れがフローチャートとして図示され,これに合わせて10の臨床上の疑問clinical questions(CQ)が,近年急速に集積が進んだエビデンスとともに解説され,実臨床の現場で役立つように工夫されている。参照ガイド改訂版発行後にC3阻害薬であるpegcetacoplan,補体D因子阻害薬danicopan,新たなC5阻害薬であるcrovalimab,そして補体B因子阻害薬iptacopanが相次いで承認された。PNH治療において血管内溶血の継続的な阻害に加え,貧血や倦怠感の改善のための治療指針をどう考えるか,溶血のリスクマジメントと合わせて今後の実臨床でのデータ蓄積が重要となる。

  • 鈴木 隆浩
    2024 年65 巻10 号 p. 1317-1326
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    低リスク骨髄異形成症候群(MDS)は改定国際予後スコアリングシステムVery Low~Intermediateに相当し,血球減少や血球機能障害など骨髄不全症状が臨床上最も問題となるのが特徴である。治療は主に造血改善を目指して行われ,①lenalidomide,②赤血球造血刺激因子,③luspatercept,④免疫抑制薬,⑤蛋白同化ステロイド,⑥ビタミンK, D,⑦メチル化阻害薬,⑧同種造血幹細胞移植,⑨鉄キレート薬などが患者の状態に応じて選択されるが,適応や有効性が限られているものも多く,治療選択に困ることも多い。本総説では,2024年に上市されたばかりのluspaterceptを含め,低リスクMDSにおける治療法について,その位置づけを考察する。

地方会
Introduce My Article
feedback
Top