自家造血幹細胞移植(autologous stem cell transplantation, ASCT)後に移植片対宿主病(graft-versus-host disease, GVHD)様症状を合併することがあるが,多くの場合,その予後は良好とされている。今回,ASCT後の難治性GVHD様胃腸炎症例を経験したので報告する。59歳女性,前医で中枢神経系原発悪性リンパ腫に対して治療開始し,寛解後療法のASCT目的に当院に入院となった。Busulfan/thiotepa前処置後に好中球減少性腸炎を発症し,好中球生着により炎症反応は改善傾向を認めたが,頻回の水様便が持続した。上下部消化管内視鏡検査および病理組織にてGVHD胃腸炎と診断し,全身性ステロイドによる治療を開始した。下痢回数は減少したが,上腹部痛およびcytomegalovirus(CMV)抗原陽性化を認め,内視鏡検査にてCMV胃腸炎と診断した。Ganciclovir投与にてCMV抗原陰性化を確認後の内視鏡検査では,GVHDの残存と思われる浮腫性粘膜,点状発赤を認めた。Prednisoloneからbudesonide内服に変更し,CMV再燃を認めることなく腹部症状も寛解した。ASCT生着後の消化管症状に対しては,GVHDを鑑別に入れ,早期の検査・治療介入が必要と考えられる。
症例は66歳女性。慢性リンパ性白血病に対してacalabrutinib,obinutuzumab併用療法3コース後に汎血球減少を認め,劇症型再生不良性貧血(aplastic anemia, AA)と診断した。肺炎を併発し,AAの発症から1ヶ月後にFluMelTBI(fludarabine 180 mg/m2,melphalan 80 mg/m2,total body irradiation 4 Gy)を前処置に娘をドナーとしてHLA半合致同種末梢血幹細胞移植を行った。移植片対宿主病(graft-versus-host disease, GVHD)予防にtacrolimus,mycophenolate mofetil,移植後cyclophosphamide(80 mg/kg)を用いた。速やかに生着し,GVHDを含む重篤な合併症はなく,CLLも寛解を維持している。
症例は54歳女性,急性骨髄性白血病の第2寛解期に臍帯血移植を施行した。移植前の抗トキソプラズマIgG抗体が陽性であった。好中球生着後に霧視の訴えがあったが脳MRIでは異常を認めなかった。その後,肺のすりガラス影が徐々に増悪し,呼吸不全が急速に増悪し死亡した。剖検では,心,肺,肝,骨髄を含む全身の臓器にトキソプラズマのシストや遊離したタキゾイトを認め,播種性トキソプラズマ症が最終死因と考えられた。造血幹細胞移植後のトキソプラズマ症は,既感染レシピエントにおいてトキソプラズマが再活性化することにより発症し,播種性の場合は全身のあらゆる組織が侵され得る。治療が遅れると急速に致死的な経過を辿るため,抗体陽性例において再活性化のリスクが高いことを認識し,適切な予防と検査を行う必要があるが,本邦ではPCR検査や治療薬の保険診療体制が未確立であり,今後改善が望まれる。
肝原発悪性リンパ腫(PHL)は,病変が肝臓に限局するリンパ腫と定義される。今回我々は,長期に原発性胆汁性胆管炎(PBC)およびShögren症候群(SS)を有する患者に発生した,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)型のPHLを報告する。症例は78歳,女性。心窩部痛を主訴に腹部CTを施行したところ,8ヶ月前には認められなかった孤発性の肝腫瘍が認められた。肝外病変は認められなかった。腹腔鏡下肝外側区域切除標本での病理組織診断は,PBCを肝背景にもつDLBCLであった。術後にR-CHOP療法をおこない,その後4年間完全寛解を維持している。PBCに合併するPHLは非常に稀で,過去の英文報告例6例のうち5例はMALTリンパ腫型のPHLであった。本例では,肝臓を病変の主座とするPBCの免疫異常に二次性SSの病態が加わり長期に続いた結果,稀なDLBCL型のPHLが発生した可能性が考えられた。