近年,急性骨髄性白血病(AML)に特徴的なミトコンドリア代謝依存性が特定され,代謝酵素がAMLの遺伝子発現を調節し,細胞分化と幹細胞性を制御することが実証された。これらのミトコンドリア代謝適応は,根本的なゲノム異常とは無関係に発生し,化学療法抵抗性や再発に寄与する。一方で,ミトコンドリアの変化はAML細胞の代謝脆弱性にもつながる。AML細胞に特徴的な代謝特性には,酸化的リン酸化(oxidative phosphorylation, OXPHOS)への依存性,脂肪酸代謝の役割,活性酸素種(reactive oxygenspecies, ROS)の生成,ミトコンドリア動態変化,等が含まれる。現在,AML細胞や白血病幹細胞(leukemic stem cell, LSC)のミトコンドリア特性について,代謝,シグナル伝達,ミトコンドリア呼吸,ROS,マイトファジーなどに着目した研究が行われている。また,臨床試験においてもミトコンドリアを標的とする薬剤の有望な結果が示されている。本稿では,最近のミトコンドリア関連分子や代謝経路を標的とする薬剤の有用性に関して臨床前研究,臨床試験の知見や既存の化学療法との組み合わせ効果を含めて概説する。
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