臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
最新号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
Picture in Clinical Hematology
学会奨励賞受賞論文
  • 森井 真理子
    2025 年66 巻12 号 p. 1545-1551
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/09
    ジャーナル 認証あり

    造血幹細胞は一生にわたり血液の恒常性を維持するが,加齢に伴いその機能が変化し,造血および免疫系の異常や血液疾患リスクの増加につながる。近年の研究から,この背景にはエピゲノム制御異常を含む遺伝子発現調節の破綻が関与していることが明らかとなってきた。一方,ダウン症候群ではこうした老化関連の変化が若年期から顕在化しやすく,白血病の高リスクや易感染性による感染症の重症化が平均寿命の短縮に関与している。筆者らは,ダウン症モデルマウスを用いたエピジェネティックおよび転写調節機構の解析を通じて,新たな治療戦略構築に資する知見の創出を目指している。本稿では,造血幹細胞による血液の恒常性維持機構と加齢に伴う機能変化に関する最新の知見を概説し,ダウン症候群で見られる造血幹細胞機能異常と早期老化について論じる。

臨床研究
症例報告
  • 前田 都秋, 八田 俊介, 神波 圭太, 渡邉 樹也, 木葉 大地, 川尻 昭寿, 猪倉 恭子, 小野寺 晃一, 大西 康, 福原 規子, ...
    2025 年66 巻12 号 p. 1560-1565
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/09
    ジャーナル 認証あり

    慢性骨髄性白血病(chronic myelocytic leukemia, CML)の急性転化の場合,多くは骨髄系あるいはB細胞系の形質を呈し,骨髄で芽球の増加を認める。今回我々は,T細胞/骨髄系混合表現形質を呈し,リンパ節に限局した非常に稀なCMLの急性転化例を経験した。症例は80歳,女性。右腋窩リンパ節腫大を自覚し,PET-CTで全身のリンパ節腫大を認めた。リンパ節生検の結果,T細胞系/骨髄系の混合表現形質を示す,中等大の異型リンパ球様細胞の増殖を認めた。一方で,血算異常や骨髄の形態学的異常所見は認めなかった。骨髄およびリンパ節病変でBCR::ABL1転座陽性であること,末梢血好中球FISHでPhiladelphia染色体陽性であることから,CMLの急性転化と診断した。Dasatinibで治療を開始したところ,腫瘤の縮小を認めており,高齢症例であるが大きな有害事象はなく経過している。

特集:造血不全疾患治療の最前線 ―QOLを加味した治療選択―
  • 小原 直
    2025 年66 巻12 号 p. 1566-1567
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/09
    ジャーナル 認証あり
  • 鈴木 隆浩
    2025 年66 巻12 号 p. 1568-1573
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/09
    ジャーナル 認証あり

    再生不良性貧血や骨髄異形成腫瘍(MDS)などの造血不全症における赤血球輸血では,ヘモグロビン値6~7 g/dlをトリガー値とした制限輸血が推奨されているが,頻回に輸血を行うと鉄過剰症を発症する。過剰鉄は活性酸素種の産生を介して様々な臓器障害を引き起こし,高フェリチン血症はMDSの予後増悪因子であることも知られていることから,輸血依存症例では鉄過剰症による臓器障害の予防や改善および低リスクMDSでは生命予後の改善のために鉄キレート療法が検討される。輸血を開始した症例では定期的に血清フェリチン値をモニターし,フェリチン値500 ng/ml以上および累積輸血量20単位以上で輸血後鉄過剰症と診断する。そして,フェリチン値1,000 ng/ml以上を目安に鉄キレート療法を開始し,フェリチン値を500 ng/ml以下に保つことを目標に治療を継続することが推奨されている。

  • 石山 謙
    2025 年66 巻12 号 p. 1574-1582
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/09
    ジャーナル 認証あり

    骨髄異形成症候群(MDS)の病因は造血幹細胞の異常であり,有効な薬物療法は限られている。病型が多様であるため,予後予測に基づき症例毎に治療選択が必要となる。近年公表されたWHO分類改訂版やICC分類には遺伝子異常が診断に組み込まれ,IPSS-Rに遺伝子変異を加味したIPSS-Mは,より個別化された予後予測を可能にする。低リスクMDSの治療はQOL維持と感染症・骨髄不全への対応が中心となり,赤血球造血刺激因子製剤やlenalidomide,azacitidine,luspaterceptなどの薬物療法,同種移植が行われる。治療の選択は診断時のプロファイルや予後予測の結果に拠る。治療導入時期や治療目標に関する明確なエビデンスは少ないが,NCCNガイドラインではHb 10~12 g/dlが目標とされている。今年本邦に導入される造血器腫瘍遺伝子パネル検査(ヘムサイト®,大塚製薬)は,遺伝子情報に基づいた個別化治療の発展に寄与すると期待される。

  • 植田 康敬
    2025 年66 巻12 号 p. 1583-1588
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/09
    ジャーナル 認証あり

    寒冷凝集素症は,単クローン性IgMである寒冷凝集素(CA)が赤血球I抗原に結合して補体古典経路を恒常的に活性化し,慢性溶血を来す希少自己免疫性溶血性貧血である。従来特異的な治療法がなかったが,2022年に補体C1s抗体薬であるsutimlimabが承認され,貧血改善にとどまらず生活の質(quality of life, QOL)を大幅に向上させ得る治療時代が到来した。しかし,抗補体薬ではIgM凝集自体による末梢循環障害は依然として残り,血栓リスク減少や生命予後の改善につながるかは,今後の症例の蓄積が必要である。B細胞を標的とした治療はCAの産生を低下させ,根本的な病態の改善が期待できる一方,IgMや寒冷凝集素価の大幅な低下が得られても臨床症状が改善しない例もみられる。今後は抗補体治療とB細胞を標的とした治療の両面からのアプローチが必要になると考えられる。

  • 上野 志貴子
    2025 年66 巻12 号 p. 1589-1598
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/09
    ジャーナル 認証あり

    発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の患者は,血管内溶血に関連した様々な症状や臓器障害によって著しいQOL低下をきたす。従来の対症療法のみでは溶血自体を抑制できず,赤血球輸血などで最小限のQOL改善は可能であるが,血栓症や慢性腎障害の進展は防ぎようがなかった。2010年に上市されたC5阻害薬eculizumabは,血管内溶血そのものを抑制することで溶血関連症状の解消のみならず,臓器障害の予防も可能となり,生命予後まで改善したことで,PNH治療のパラダイムシフトを起こした。こうして,抗補体治療時代の治療目標は血管内溶血の阻止となったのだが,新たにC5遺伝子多型による初期不応,breakthrough hemolysis,血管外溶血などが問題となり,そのためにQOL改善が得られない患者への対応が課題となった。これらを解決すべく,半減期の長いC5阻害薬の開発(ravulizumab,crovalimab)や血管外溶血に対応可能な近位補体阻害薬(C3標的のpegcetacoplan,B因子標的のiptacopan,D因子標的のdanicopan)が開発された。特に後者は,血管内・血管外両方の溶血抑制が可能となったことで,より良好なHb改善と輸血離脱が実現し,QOLのさらなる向上が可能となった。現在では,ファーストライン治療として3種類のC5阻害薬,セカンドライン治療として3種類の近位補体薬を,患者の病状や生活スタイルに合わせてうまく使い分けて,最適なQOL改善・維持を目指すことが可能となった。

  • 坂本 竜弘
    2025 年66 巻12 号 p. 1599-1607
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/09
    ジャーナル 認証あり

    再生不良性貧血は骨髄低形成と汎血球減少を特徴とする造血不全症候群であり,T細胞を介した自己免疫疾患の側面を持つ症例が多い。造血回復を目標とした治療として免疫抑制療法・トロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)・同種造血幹細胞移植(同種移植)がある。TPO-RAが使用可能となり,従来の抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリンとcyclosporin Aを用いた免疫抑制療法にTPO-RAを併用した治療が標準となった。従来のHLA一致同胞ドナーからの骨髄を用いた同種移植の治療成績向上に加えて,近年では臍帯血やHLA半合致ドナーからの同種移植の良好な成績が報告され,有効な治療選択肢が増加しつつある。治療成績の向上により期待生存が延長していることから,免疫抑制療法後の再燃・clonal evolutionに加え,二次がんの発症を含めた移植後晩期合併症の影響が以前より大きくなってきており,今後の課題である。

Introduce My Article
feedback
Top