臨床血液
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66 巻, 1 号
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Picture in Clinical Hematology
臨床研究
  • 中野 裕史, 中島 詩織, 今井 唯, 内田 智之, 井上 盛浩, 萩原 政夫
    2025 年 66 巻 1 号 p. 3-6
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/08
    ジャーナル 認証あり

    Tixagevimab/cilgavimab(Tix/Cil)はsevere acute respiratory syndrome coronavirus 2感染症の発症抑制を目的とした中和抗体薬であり,2022年9月より2023年9月まで当院において投与を行った142例のべ157回投与(2回投与15例)の発症および重症化抑制効果について後方視的に検討した。また,発症症例に対してはウイルス変異株遺伝子解析を行った。15名(9.5%)が感染し,そのうち3名が2回投与症例であった。背景疾患は悪性リンパ腫(18.9%),多発性骨髄腫(17.5%)の順に多かった。感染した15例中11例で遺伝子解析を施行し,2症例がTix/Cilに感受性があり,それぞれ中等症IIまたはIの重症度であった。Tix/Cil非感受性のXBB1関連変異株が7割を超える割合となった2023年5年以降のブレイクスルー感染は4%から35%に増加しいずれもTix/Cil感受性以外株であった。Tix/Cilは非感受性株が優位となっている現状では,予防投与の意義がないことは明らかである。特にリンパ系疾患に感染頻度が高いことから,ワクチン接種や標準予防策徹底などの対策を引き続き強化することが求められる。

  • 大月 俊輔, 片桐 誠一朗, 荒井 勇弥, 若松 昇平, 森山 充, 山田 晃子, 勝呂 多光子, 浅野 倫代, 吉澤 成一郎, 赤羽 大悟 ...
    2025 年 66 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/08
    ジャーナル 認証あり

    2021年1月から2023年2月まで当院で新たに骨髄異形成腫瘍(MDS)と診断した30症例を対象に,IPSS-RとIPSS-Mを比較した。遺伝子解析は骨髄パネルで行った。年齢中央値は66歳(35~80歳),内訳はMDS-LBが18例,MDS IB-1が1例,MDS IB-2が2例,MDS-SF3B1が2例,MDS-biTP53が1例,MN-pCTが6例であった。症例あたりの変異数は0~8(中央値1)であった。最も多く検出した変異はTET2であり,5例以上で検出された変異はU2AF1TP53RUNX1であった。IPSS-Rによる分類では2例がvery low,14例がlow,5例がintermediate(Int),3例がhigh,6例がvery highであり,IPSS-Mによる分類では3例がvery low,9例がlow,7例がmoderate low(ML),2例がmoderate high(MH),4例がhigh,5例がvery highであった。IPSS-M MLおよびMHをIPSS-R Intと同等のリスクとした場合,13例(43%)がIPSS-Mでリスクが修正された。また1名はIPSS-Rではlowであったが,IPSS-Mではhighと評価された。一部の症例ではIPSS-RとIPSS-Mによる評価は大きく異なることもあり,治療方針の決定には注意が必要であることがわかった。

症例報告
  • 土井 究, 野々原 洋輔, 坂本 宗一郎, 北野 俊行
    2025 年 66 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/08
    ジャーナル 認証あり

    血管内大細胞型B細胞性リンパ腫(intravascular large B cell lymphoma, IVLBCL)はB症状や神経症状,皮膚病変を含む多彩な症状で発症する。我々は脊髄症を初発症状として発症したIVLBCLを経験した。症例は64歳男性。両下肢麻痺症状,膀胱直腸障害が月単位で進行した。当初神経症状以外の発熱,盗汗,体重減少等の症状は見られず,血液検査・髄液検査・ランダム皮膚生検・骨髄生検は,いずれも明らかにリンパ増殖性疾患を示唆する所見は認めなかった。徐々に発熱,LDH,可溶性sIL-2受容体(sIL-2R)の上昇を認め,PET/CTでは集積を伴う肺病変を認めた。同部位に対する経気管支肺生検(transbronchial lung biopsy, TBLB)により,病理組織学的にIVLBCLと確定診断した。R-CHOP療法6コースと大量MTX療法2コースにより,全身状態および神経症状は改善し,PET-CTでも代謝学的完全寛解(CMR)が得られた。

  • 國定 浩大, 小倉 瑞生, 小田 祐貴, 余語 萌, 武井 智美, 佐藤 広太, 菊池 拓, 阿部 有, 塚田 信弘, 石田 禎夫
    2025 年 66 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/08
    ジャーナル 認証あり

    【症例】65歳男性(2011年),【現病歴】2011年3月に胸部異常影を指摘,2017年11月に嗄声を認め,同部位生検で共にALアミロイドーシスと診断,加療目的に当科に2018年3月に紹介。全身性ALアミロイドーシスとして5月よりmelphalan+dexamethasone療法を6コース投与。病状は良好であったが,2019年8月の血液検査で白血球数5万/µl,末梢血に芽球を44.9%認め,治療関連急性白血病(AML with inv(16)(p13.1q22);CBFB::MYH11と診断した。標準治療で完全寛解を達成したが,2020年5月に再発,9月に中枢神経再発,2021年7月に中枢神経再発,2022年5月に3度目の中枢神経再発を認め,強力化学療法,whole brain radiation therapy(20 Gy),髄腔内抗がん剤投与×13回,VEN+AZA×5コースを施行したが,次第に全身状態は増悪し,11月にBSCに移行し,2023年6月に永眠した。【考察】全身性ALアミロイドーシスは治療の進歩に伴って生存期間が延長したが晩期合併症のリスクにさらされる患者は増えており,二次発がんの長期フォローアップが重要である。

  • 山村 綾子, 野坂 生郷, 立津 央, 安永 純一朗
    2025 年 66 巻 1 号 p. 24-29
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/08
    ジャーナル 認証あり

    70歳女性。咽頭痛,左顔面の浮腫で受診。左頸部リンパ節腫大を認め,生検の結果,AITLの診断となり,加療目的にて当科入院となった。入院時Hb 4.2 g/dlと著明な貧血を認め,骨髄検査ではdry tapであり,骨髄生検にて腫瘍細胞の骨髄浸潤,赤芽球系細胞の著明な減少,grade-1の繊維化を認めた。THP-COP療法でリンパ節は縮小したが,骨髄浸潤の残存,網赤血球低値で,週に1回程度の赤血球輸血を必要としたためEPOCH療法へ治療変更した。2コース後に貧血の改善が得られ,4コース後の骨髄検査では骨髄線維化や赤芽球癆の所見も消失した。しかしリンパ腫の骨髄浸潤の残存を認め,mogamulizumab療法を施行し,5年間完全寛解を維持している。骨髄浸潤や赤芽球癆,骨髄線維化を認めるAITL症例には,治療強度を上げたEPOCH療法,mogamulizumab療法も治療選択肢の一つと考えられた。

  • 北村 愛花, 長田 眞, 國枝 尚子, 塚田 唯子, 岩本 創哉, 大木 宏一, 菊池 隆秀, 山崎 皓平
    2025 年 66 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/08
    ジャーナル 認証あり

    橋中心髄鞘崩壊(central pontine myelinolysis, CPM)は低ナトリウム血症の急激な補正により引き起こされる。悪性リンパ腫に続発して発症したCPMは我々の渉猟しえた範囲では11例と稀である。症例は80歳代女性。食欲不振を主訴に受診し,体幹部CTで多発リンパ節腫大を指摘されたことを契機にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma, DLBCL)と診断された。治療開始直後に強直性痙攣と意識障害を呈し,頭部MRIで橋に左右対称性の病変を認めた。髄液細胞診は悪性細胞を認めず,MRIで病変の造影効果も乏しく,悪性リンパ腫の中枢神経浸潤を積極的に示唆する所見は得られなかった。低Na血症を補正した経過はなかったが,画像所見が最も合致し,報告例も散見されたため悪性リンパ腫に続発したCPMと診断した。DLBCLに対する化学療法を継続し,橋の高信号域は経時的に縮小し,意識も清明となった。悪性リンパ腫に続発したCPMの症例は稀であるため,過去の報告例をまとめて報告する。

  • 安藤 久美子, 中道 一生, 廣瀬 健陽, 種山 雄一, 角田 治美, 落合 秀匡
    2025 年 66 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/08
    ジャーナル 認証あり

    症例は22歳男性。8年前にT細胞性リンパ芽球性リンパ腫を発症し,治療中再発をきたし,血縁者間HLA半合致末梢血幹細胞移植を行い寛解となった。移植後全身型の重度慢性GVHDを合併し,長期にわたり免疫抑制剤の内服を数種類継続していた。移植後約3年9ヶ月で抑うつ状態,食欲不振,体重減少が出現した。頭部MRIでは,T2強調画像で右小脳半球から中小脳脚にかけて,淡い造影効果を伴う高信号域を認め,リンパ腫再発も疑われた。最終的に定量的リアルタイムPCR検査で,髄液中JCウイルスが61コピー/mlと陽性であり,進行性多巣性白質脳症(PML)と診断した。移植後の二次性免疫不全の遷延が原因と考えられ,免疫抑制剤を徐々に減量し,髄液中JCVは検出感度未満となった。造血幹細胞移植後の晩期合併症の一つとしてPMLの発症にも注意が必要であり,免疫抑制剤の減量中止のみで改善が得られた貴重な症例を経験した。

  • 中垣 秀隆, 島 隆宏, 米田 玲子, 林 正康, 内海 紗江, 平川 聖也, 久原 千愛, 瀧川 健, 吉野 明久, 南 満理子, 松尾 ...
    2025 年 66 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/08
    ジャーナル 認証あり

    骨髄原発悪性リンパ腫(primary bone marrow lymphoma, PBML)はリンパ節腫大を伴わず骨髄内でのみ腫瘍細胞が増殖する予後不良な悪性リンパ腫であるが,非常に稀な病型であるため病態に関するエビデンスも乏しく,症例の蓄積が重要である。我々の施設でPBMLを3症例経験したため報告する。1例目は80歳男性。入院時から血球貪食症候群・汎血球減少を合併しており初回化学療法中に敗血症性ショックで死亡した。2例目は64歳男性。強力化学療法にて寛解を維持したが最終化学療法終了後早期に再発した。3例目は66歳女性。化学療法および同種造血幹細胞移植を行うも移植後早期に再発した。PBMLの治療には早期化学療法介入が重要とされるが,リンパ節病変を呈さず診断に苦慮するのみならず,既存の化学療法や移植療法の治療反応性も不良であり,さらなる症例の蓄積と治療戦略の開発が望まれる。

  • 野口 真由子, 山崎 夏維, 東 紗希子, 菊池 菜摘, 仁谷 千賀, 岡田 恵子, 清河 信敬, 磯部 清孝, 滝田 順子, 藤崎 弘之, ...
    2025 年 66 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/08
    ジャーナル 認証あり

    SPI1融合遺伝子をもつT細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)は,本邦で同定され極めて予後不良と報告されたサブグループである。症例は7歳男児。発熱・頸部リンパ節腫脹・眼瞼浮腫・紫斑を主訴に当院を受診した。白血球数551,000/µl,cyCD3,CD1a,CD8,HLA-DRが陽性のT-ALLで,遺伝子検査でTCF7::SPI1が検出された。JPLSG ALL-T11に準じた治療を行い,ステロイド反応性が極めて不良であったが,L-asparaginaseへの反応は良好で,早期強化療法終了時に分子学的寛解を確認した。ステロイド反応性不良とSPI-1融合遺伝子陽性の結果から,第1寛解期にHLA一致非血縁ドナーから同種骨髄移植を施行し,発症から36ヶ月間寛解を維持している。SPI1融合遺伝子をもつT-ALLにおいて,第1寛解期での造血幹細胞移植が予後改善に寄与する可能性が示唆された。

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